フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!

荒井竜馬

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第103話 提供するメニュー決めと

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「それじゃあ、実際に提供するメニューを決めましょうか」

 ドーナさんの弟子として働くことが決まり、商人ギルドからドーナさんとエルドさんがその手続きを終えて帰宅してきてから、私たちは実際に店で提供するメニューを決めることにした。

「正直、作ってくれた料理はどれも美味しすぎた。多分、すぐに行列ができる店になるだろうから、あまり提供に時間がかからないものがいいのだろうな」

 店のテーブルに全員が腰かけるなり、ドーナさんはそんな言葉を口にした。

 どうやら、私たちが作った料理の評価は結構高いらしい。

 提供に時間をかけないようにするためには、作り置きは必須だろう。

「それなら、お刺身とか鉄火丼、あら汁とブリ大根……あとは、なめろうあたりですかね」

 正直な所、ただの海魚のお刺身も醤油と一緒に出すことで程々にお金を取れると思う。効率重視ならお刺身だけでもいいが、お刺身を作る時にはあらも一緒に出る。

 お酒のお供にはお刺身だけだと心もとないし、ブリ大根となめろうもあればいいだろう。

 ただご飯を食べに来た人向けには鉄火丼みたいな丼ものもあった方がいい。鉄火丼もマグロザカナを長時間漬け過ぎなければ、ある程度は作り置きができるし問題はないはず。

「ああ、それだけメニューがあれば十分……なめろう? そんな料理もあるのか?」

「アジザカナを叩いた物に、味噌を混ぜた食べ物です。良ければ、後で作りますよ」

「ほぅ、あら汁に使っていた調味料か……ああ、ぜひ頼む」

 ドーナさんは料理の説明だけで味を想像したのか、生唾を呑み込むようにしながらそんな言葉を口にした。

 正直、ただお店のお店に来るお客の数だけを考えるのなら、つまみになるようなものは出さない方がいいかもしれない。

 それでも、今回は売上が重要になってくるわけだし、お酒をたくさん開けてもらうためにも、つまみがあった方がいいだろう。

 居酒屋ってお酒で儲けるって話をどこかで聞いたことあるし、数種類はおつまみもあった方がいいよね。

 種類はそこまで出せないけど、これだけあれば十分だろう。

「お刺身を出すとなると、やっぱり卓上に醤油は完備しておいた方がいいですかね?」

「いや、それはダメだ。この街は料理人が多いからな。卓上になんか置いたら、持って帰る客も出るだろ」

 ドーナさんはそう言うと、私ではない何かを見ながら、少しだけつまらない物を見るような目をしていた。

 持って帰るであろう同業者のことでも想像しているのだろうか?

 確かに海魚が盛んなこの街の料理人からしたら、醤油を持って帰って自分の店で出したいと思うかもしれない。

「それなら、お刺身に対して必要な量だけを小皿に入れて、持っていく方がいいですかね?」

「そうだな。そうした方がいいだろう」

 ドーナさんは目つきを普段のものに戻して頷いた後、その視線をエルドさんの方に向けた。

「あとは、エルドに少し仕込めば準備は完璧だな」

「仕込む?」

 突然話を振られたエルドさんは、少しだけ間が抜けたような声を漏らしていた。そして、ドーナさんはエルドさんに向けて何かを企むような顔をした後、言葉を続けた。

「とりあえず、今日は基礎だけでも叩き込んでやるよ。安心してくれ、朝までには習得できるようにしてやるから」

 こうして、お店に出すメニューが決まったと同時に、エルドさんの修業のための長い夜が始まったのだった。

 ……がんばれ、エルドさん。


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