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第93話 港町での今後
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アジザカナづくしの食事を終えた私たちは、そのまま宿の外に置いてあるテーブルで少しだけくつろいでいた。
この世界の海魚の魅力にやられて、私も小さな体でご飯を食べ過ぎてしまったらしい。調子に乗って食べ過ぎたせいでお腹がパンパンだった。
そんなこともあって、私たちは少しの食休みをすることになったのだった。
ちらりとエルドさんとシキの顔を見てみると、二人とも料理に満足してくれたのか、食後の余韻を楽しむように表情を緩めていたようだった。
「……さっきの料理、この街の人が食べたら衝撃を受けるだろうな」
そんな中、エルドさんが独り言のようにそんな言葉を呟いていた。
海魚が盛んなこの街に醤油を使った料理を出したらどうなるか。そんなの深く考えるまでもなく大盛況となるだろう。
おそらく、エルランドでやっていた屋台の比ではないくらい大盛況になる気がする。
エルドさんとシキの反応を見て思ったが、せっかく海魚とそれに合う調味料を持っているのなら、それをこの街の人たちにも味わってもらいたいとも思う。
私たちだけしかしならないよりも、色んな人に食べてもらいたいしね。
「そうですね。この街の屋台とかで出せれば面白そうですけど」
「アンがその気なら、ここでも屋台をやるか?」
私がなんとなくそんなことを呟くと、エルドさんがこちらに視線を向けていたことに気がついた。
どうやら、エルドさんは私の意見に反対ではないらしい。
「もしかして、商人ギルドに入ってるから、ここで屋台をすることも可能だったりするんですか?」
「一度この街のギルドに行く必要はあるが、問題ないだろう」
「なるほど。それなら、ここで屋台を出してみたいかもしれませんね」
せっかくなら、この街の人たちにこそ、生魚を使った料理を食べてもらいたい。
しかし、さすがに炎天下の中で商売をする屋台で生魚を扱うのはどうだろうか?
いや、アイテムボックスがあるから食材が悪くなるようなことはないか。
そうなると、食材調達がどうなるかだけど。
私がちらりとシキの方を見ると、シキは食べたばかりで眠くなったのか大きなあくびをしていた。
今この瞬間はフェンリルというよりも、大型犬のような仕草だった。
「シキは海で魚を捕ったりすることってできるよね?」
「当たり前だ。アンが美味しいものを作ってくれるなら、この海に棲む主を狩ってきてもいいぞ」
シキは伸びをしながら何でもないことのようにそんな言葉を口にした。
多分、冗談で言っている訳ではないのだろう。
シキなら本当にやれそうだから、きっとお願いしたら本気で狩ってきそうだ。
……さすがに、海に棲む主を料理するつもりはないよ。
市場で屋台をやるに至って、食材の確保とそれを料理する腕と調味料があって、お金もある。
そして何より、この街の人たちが私の料理を食べてどんな反応をしてくれるのか気になる。
「それじゃあ、明日にでも商人ギルドに行きましょう」
海魚の街で私の作った調味料がどこまで受け入れられるか。それを試すタイミングは今しかないだろう。
そんな少しのチャレンジ精神を胸に、私たちは明日商人ギルドに向かうことになったのだった。
この世界の海魚の魅力にやられて、私も小さな体でご飯を食べ過ぎてしまったらしい。調子に乗って食べ過ぎたせいでお腹がパンパンだった。
そんなこともあって、私たちは少しの食休みをすることになったのだった。
ちらりとエルドさんとシキの顔を見てみると、二人とも料理に満足してくれたのか、食後の余韻を楽しむように表情を緩めていたようだった。
「……さっきの料理、この街の人が食べたら衝撃を受けるだろうな」
そんな中、エルドさんが独り言のようにそんな言葉を呟いていた。
海魚が盛んなこの街に醤油を使った料理を出したらどうなるか。そんなの深く考えるまでもなく大盛況となるだろう。
おそらく、エルランドでやっていた屋台の比ではないくらい大盛況になる気がする。
エルドさんとシキの反応を見て思ったが、せっかく海魚とそれに合う調味料を持っているのなら、それをこの街の人たちにも味わってもらいたいとも思う。
私たちだけしかしならないよりも、色んな人に食べてもらいたいしね。
「そうですね。この街の屋台とかで出せれば面白そうですけど」
「アンがその気なら、ここでも屋台をやるか?」
私がなんとなくそんなことを呟くと、エルドさんがこちらに視線を向けていたことに気がついた。
どうやら、エルドさんは私の意見に反対ではないらしい。
「もしかして、商人ギルドに入ってるから、ここで屋台をすることも可能だったりするんですか?」
「一度この街のギルドに行く必要はあるが、問題ないだろう」
「なるほど。それなら、ここで屋台を出してみたいかもしれませんね」
せっかくなら、この街の人たちにこそ、生魚を使った料理を食べてもらいたい。
しかし、さすがに炎天下の中で商売をする屋台で生魚を扱うのはどうだろうか?
いや、アイテムボックスがあるから食材が悪くなるようなことはないか。
そうなると、食材調達がどうなるかだけど。
私がちらりとシキの方を見ると、シキは食べたばかりで眠くなったのか大きなあくびをしていた。
今この瞬間はフェンリルというよりも、大型犬のような仕草だった。
「シキは海で魚を捕ったりすることってできるよね?」
「当たり前だ。アンが美味しいものを作ってくれるなら、この海に棲む主を狩ってきてもいいぞ」
シキは伸びをしながら何でもないことのようにそんな言葉を口にした。
多分、冗談で言っている訳ではないのだろう。
シキなら本当にやれそうだから、きっとお願いしたら本気で狩ってきそうだ。
……さすがに、海に棲む主を料理するつもりはないよ。
市場で屋台をやるに至って、食材の確保とそれを料理する腕と調味料があって、お金もある。
そして何より、この街の人たちが私の料理を食べてどんな反応をしてくれるのか気になる。
「それじゃあ、明日にでも商人ギルドに行きましょう」
海魚の街で私の作った調味料がどこまで受け入れられるか。それを試すタイミングは今しかないだろう。
そんな少しのチャレンジ精神を胸に、私たちは明日商人ギルドに向かうことになったのだった。
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