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第79話 キャンプでの朝ご飯
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「んんっ、おはようございます。気持ちいい朝ですね」
「おう。おはよう、アン。そうだな、気持ちいいくらいに晴れたみたいだ」
私がテントの中からもそっと出てみると、すでに火を起こしていたエルドさんが寝起きの私を見て顔を緩めていた。
昨日、お腹いっぱいキャンプ飯を食べた私たちは、そのままゆっくりと夜を過ごして、眠くなったタイミングでシキが張ってくれた結界の中にあるテントの中で眠った。
フェンリルのシキが近くにいるということと、シキの魔力で作った結界ということもあって、私は安心してよく眠ったらしい。
まさか、昨夜お酒を飲んでいたエルドさんよりも後に起きることになるとは。
「昨日は美味い食事と美味い酒があって良い夜だったぞ、アン」
「あっ、シキもおはよう。そう言ってもらえてよかったよ」
私がテントから出てくると、どうやら先に起きていたらしいシキが焚火の火を眺めながらそんな言葉を口にしていた。
確か、昨日は私の方が先に寝たから、その感想を伝えてくれたのだろう。
小さくパタパタとさせている尻尾は昨日の食事を思い出しているのか、嬉しそうに動いているようだった。
昨日のお礼を今日も伝えてくれるくらいだから、結構昨日料理を気に入ってくれたのだろう。
朝から褒められるとは、作ったかいがあるというものだ。
「何か飲み物でも入れるけど、アンも飲むだろ?」
「あっ、はい。お願いします」
そういえば、私も朝ご飯作らないと。
キャンプで作る朝ごはん。まだまだ炭は持ってきていたし、炭をおこして軽く何か作ろうかな?
寝起きの頭でアイテムボックスをごそごそとしていると、そこしまったままにしていた物を思い出した。
あ、ここに来る前に買ったチーズみたいな乳製品を食べるの忘れてた。
エルドとシキがお酒を飲むときに出そうと思っていたんだっけ。
まぁ、チーズはいつでも食べれるし、また今度の機会ということでもいいか。それよりも朝ご飯を考えよう。
ん? 焚火があって、チーズがある。そして、食パンみたいな形状のパンもある。
この状況、あれを作らなければむしろ失礼なのではないだろうか?
「……エルドさん、焚火の火を貰ってもいいですか? 今から炭を使って朝ご飯を作ります」
「おお、もちろんいいぞ。朝ご飯を作ってくれるのか、ありがとうな」
「楽しみだ。一体、今日はどんな朝ご飯を作ってくれるんだ?」
まだ何を作るのか告げていないのに、エルドさんシキも早くも期待してくれているらしかった。
昨日のキャンプ飯の後だから、いつもよりも期待してくれているのかもしれない。
それなら、その期待に応えなくては。
昨日ほど豪勢ではないけど、きっと昨日のご飯に負けるようなこともないだろう。
「キャンプ飯の定番で、誰もが憧れるあの料理です」
私はもったいぶるようにそう言うと、エルドさんから火をもらって炭を温めていった。
炭がいい感じに熱を帯びてきて、火が移りだしたら料理を始めていく。
さて、ここからは料理の時間。
と言っても、料理というほどのものではないので簡単に。
まず初めに、買っておいたチーズをパンに乗るくらいのサイズにして、それを鉄の串に刺して炭火の近くに持っていく。
じっくりとゆっくりとチーズに火を入れていく必要があるので、パンを温めるタイミングはもう少し後にしよう。
シキのチーズだけ大きめに切って、それらを火に触れないくらいの距離で温めていく。
「エルドさん、こっちのシキの分だけ持ってもらっていいですか?」
「おう、分かった。俺は持っているだけでいいのか?」
「そのうち表面のチーズがとろけてくるので、チーズを下に落とさないようにくるくると回してください」
シキの分は重いし、私もチーズの刺さった串は二本までしか持てなさそうだったので、エルドさんにシキの分を任せることにして、私は目の前のチーズに集中することにした。
このチーズを落してしまっては、時間をかけて火を入れた苦労が台無しになってしまう。
適度なタイミングでパンを炭で温めつつ、私はチーズの面倒をみていた。
そんな感じでゆっくりとチーズに火を入れて、表面がとろけてきたらそれを落さないように少し回す。そして、チーズがとろけていない個所を加熱していき、とろけてきたら落さないようにしながら別の箇所を温めていく。
そんな行動を何度も繰り返していくと、固形だったチーズが柔らかくとろとろになってきた。
「ごくっ」
「エルドさん、そろそろいいでしょう」
私はとろけてチーズを見て喉を鳴らしたエルドさんにそう言った後、火からチーズを遠ざけてそのまま焼いておいたパンの上にそれを乗せた。
パンの上でゆっくりと広がっていく様子が可愛らしく、とろけてしまったチーズが私の心を掴んで食欲を刺激してきた。
これは、結構再現できたのではないだろうか?
某アニメに出てくるチーズをパンに乗せた例のあれの完成。
初めて生で成功したそれを前にして、私は感動のあまり生唾を呑み込んでいた。
「おう。おはよう、アン。そうだな、気持ちいいくらいに晴れたみたいだ」
私がテントの中からもそっと出てみると、すでに火を起こしていたエルドさんが寝起きの私を見て顔を緩めていた。
昨日、お腹いっぱいキャンプ飯を食べた私たちは、そのままゆっくりと夜を過ごして、眠くなったタイミングでシキが張ってくれた結界の中にあるテントの中で眠った。
フェンリルのシキが近くにいるということと、シキの魔力で作った結界ということもあって、私は安心してよく眠ったらしい。
まさか、昨夜お酒を飲んでいたエルドさんよりも後に起きることになるとは。
「昨日は美味い食事と美味い酒があって良い夜だったぞ、アン」
「あっ、シキもおはよう。そう言ってもらえてよかったよ」
私がテントから出てくると、どうやら先に起きていたらしいシキが焚火の火を眺めながらそんな言葉を口にしていた。
確か、昨日は私の方が先に寝たから、その感想を伝えてくれたのだろう。
小さくパタパタとさせている尻尾は昨日の食事を思い出しているのか、嬉しそうに動いているようだった。
昨日のお礼を今日も伝えてくれるくらいだから、結構昨日料理を気に入ってくれたのだろう。
朝から褒められるとは、作ったかいがあるというものだ。
「何か飲み物でも入れるけど、アンも飲むだろ?」
「あっ、はい。お願いします」
そういえば、私も朝ご飯作らないと。
キャンプで作る朝ごはん。まだまだ炭は持ってきていたし、炭をおこして軽く何か作ろうかな?
寝起きの頭でアイテムボックスをごそごそとしていると、そこしまったままにしていた物を思い出した。
あ、ここに来る前に買ったチーズみたいな乳製品を食べるの忘れてた。
エルドとシキがお酒を飲むときに出そうと思っていたんだっけ。
まぁ、チーズはいつでも食べれるし、また今度の機会ということでもいいか。それよりも朝ご飯を考えよう。
ん? 焚火があって、チーズがある。そして、食パンみたいな形状のパンもある。
この状況、あれを作らなければむしろ失礼なのではないだろうか?
「……エルドさん、焚火の火を貰ってもいいですか? 今から炭を使って朝ご飯を作ります」
「おお、もちろんいいぞ。朝ご飯を作ってくれるのか、ありがとうな」
「楽しみだ。一体、今日はどんな朝ご飯を作ってくれるんだ?」
まだ何を作るのか告げていないのに、エルドさんシキも早くも期待してくれているらしかった。
昨日のキャンプ飯の後だから、いつもよりも期待してくれているのかもしれない。
それなら、その期待に応えなくては。
昨日ほど豪勢ではないけど、きっと昨日のご飯に負けるようなこともないだろう。
「キャンプ飯の定番で、誰もが憧れるあの料理です」
私はもったいぶるようにそう言うと、エルドさんから火をもらって炭を温めていった。
炭がいい感じに熱を帯びてきて、火が移りだしたら料理を始めていく。
さて、ここからは料理の時間。
と言っても、料理というほどのものではないので簡単に。
まず初めに、買っておいたチーズをパンに乗るくらいのサイズにして、それを鉄の串に刺して炭火の近くに持っていく。
じっくりとゆっくりとチーズに火を入れていく必要があるので、パンを温めるタイミングはもう少し後にしよう。
シキのチーズだけ大きめに切って、それらを火に触れないくらいの距離で温めていく。
「エルドさん、こっちのシキの分だけ持ってもらっていいですか?」
「おう、分かった。俺は持っているだけでいいのか?」
「そのうち表面のチーズがとろけてくるので、チーズを下に落とさないようにくるくると回してください」
シキの分は重いし、私もチーズの刺さった串は二本までしか持てなさそうだったので、エルドさんにシキの分を任せることにして、私は目の前のチーズに集中することにした。
このチーズを落してしまっては、時間をかけて火を入れた苦労が台無しになってしまう。
適度なタイミングでパンを炭で温めつつ、私はチーズの面倒をみていた。
そんな感じでゆっくりとチーズに火を入れて、表面がとろけてきたらそれを落さないように少し回す。そして、チーズがとろけていない個所を加熱していき、とろけてきたら落さないようにしながら別の箇所を温めていく。
そんな行動を何度も繰り返していくと、固形だったチーズが柔らかくとろとろになってきた。
「ごくっ」
「エルドさん、そろそろいいでしょう」
私はとろけてチーズを見て喉を鳴らしたエルドさんにそう言った後、火からチーズを遠ざけてそのまま焼いておいたパンの上にそれを乗せた。
パンの上でゆっくりと広がっていく様子が可愛らしく、とろけてしまったチーズが私の心を掴んで食欲を刺激してきた。
これは、結構再現できたのではないだろうか?
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