33 / 83
連載
第67話 豚汁
しおりを挟む
さて、ここからは料理の時間。
本日も大量に作るので、エルドさんと並んで厨房に立って一緒に調理をしていくことにした。
まず初めに、食品庫に入っていた玉ねぎみたいな野菜を薄切りにして、根菜系の野菜を半月切りにしたものをさらに半分にしていく。
このときに、イモ類の野菜があると嬉しい。食品庫にはいくつか種類があったけど、私はその中でジャガイモに近い野菜を選んだ。
確か、日本だと地域によって豚汁に入れるイモの種類が異なるらしいが、私からすればここでジャガイモ以外の選択をすることはあり得ないのだ。
ジャガイモが少し汁に溶けたドロッとした感じ。あの舌触りを出せるのはジャガイモしかないと私は思っている。
ジャガイモみたいな野菜は乱切りにして、他の野菜と一緒に鍋の中に投入。鍋に水を入れて少し度煮込んだら、そこにボアポークの細切れを投入する。
あとは、生成した合わせ味噌を溶かし入れて、ことこと煮込む。
根菜に火が通り、ジャガイモみたいな野菜が崩れそうになるギリギリのタイミングで火を止める。
最後に盛り付けたときに、ネギのような野菜を刻んで上にかけてあげれば完成。
『ボアポークの豚汁』のできあがり。
「おぉ、優しい匂いなのに食欲が刺激されるな」
「ええ。汁物にしておくのはもったいない一品です」
たまに店とかでも豚汁定食とか見るし、豚汁はご飯の主役を張れるくらいのポテンシャルを持っているのだと思う。
そして、作っているときにそんなポテンシャルを持つ香りを嗅ぎ続けた私たちが、何もしないでいられるはずがない。
「それでは、恒例の味見の時間です」
「やったぜ、待ってました」
私が少しおどけるようにそう言うと、エルドさんもそれに乗るように表情を緩めて喜んでいるようだった。
異世界の調味料を使った料理を一番最初に食べることができる。これは厨房に立っている私とエルドさんの特権でもある。
豚汁の味を知っている私であっても、特別な調味料を使った料理という物はどうしても楽しみになってしまうのだ。
私は新しい2枚の小皿に少しの豚汁を注いで、そのうち1枚をエルドさんに手渡した。
そして、湯気に乗ってくる豚汁の香りに誘われて、私たちは顔を見合わせた後、一気に小皿に乗っている豚汁を口に運んだ。
「おおっ、うまい! 味付けは味噌だけなのに、味噌汁とは別の美味さがあるな」
「んんっ、美味しいですね。これは……白米も欲しくなる味です」
口の中に広がるのは心地よい味噌の風味と、野菜とボアポークから溶け出てきた旨味。
ボアポークの油と、ジャガイモみたいな野菜が少し溶けた汁が絡み合った旨味が鼻に抜けていく。
次の一口を促すような後味を前に、私たちはまた小皿を傾けていた。
しかし、一口分しか注いでいない私たちの小皿を傾けたところで、そこに豚汁は残されていなかった。
「……も、もう少しだけ味見しましょうか」
「そ、そうだな。味見は大事だ」
私たちはそんな言い訳を口にしながら、もう三口分ほど味見を堪能したのだった。
三口で我慢した私とエルドさんの辛抱強さについては、もっと評価されてもいいのではないかと思う。
本日も大量に作るので、エルドさんと並んで厨房に立って一緒に調理をしていくことにした。
まず初めに、食品庫に入っていた玉ねぎみたいな野菜を薄切りにして、根菜系の野菜を半月切りにしたものをさらに半分にしていく。
このときに、イモ類の野菜があると嬉しい。食品庫にはいくつか種類があったけど、私はその中でジャガイモに近い野菜を選んだ。
確か、日本だと地域によって豚汁に入れるイモの種類が異なるらしいが、私からすればここでジャガイモ以外の選択をすることはあり得ないのだ。
ジャガイモが少し汁に溶けたドロッとした感じ。あの舌触りを出せるのはジャガイモしかないと私は思っている。
ジャガイモみたいな野菜は乱切りにして、他の野菜と一緒に鍋の中に投入。鍋に水を入れて少し度煮込んだら、そこにボアポークの細切れを投入する。
あとは、生成した合わせ味噌を溶かし入れて、ことこと煮込む。
根菜に火が通り、ジャガイモみたいな野菜が崩れそうになるギリギリのタイミングで火を止める。
最後に盛り付けたときに、ネギのような野菜を刻んで上にかけてあげれば完成。
『ボアポークの豚汁』のできあがり。
「おぉ、優しい匂いなのに食欲が刺激されるな」
「ええ。汁物にしておくのはもったいない一品です」
たまに店とかでも豚汁定食とか見るし、豚汁はご飯の主役を張れるくらいのポテンシャルを持っているのだと思う。
そして、作っているときにそんなポテンシャルを持つ香りを嗅ぎ続けた私たちが、何もしないでいられるはずがない。
「それでは、恒例の味見の時間です」
「やったぜ、待ってました」
私が少しおどけるようにそう言うと、エルドさんもそれに乗るように表情を緩めて喜んでいるようだった。
異世界の調味料を使った料理を一番最初に食べることができる。これは厨房に立っている私とエルドさんの特権でもある。
豚汁の味を知っている私であっても、特別な調味料を使った料理という物はどうしても楽しみになってしまうのだ。
私は新しい2枚の小皿に少しの豚汁を注いで、そのうち1枚をエルドさんに手渡した。
そして、湯気に乗ってくる豚汁の香りに誘われて、私たちは顔を見合わせた後、一気に小皿に乗っている豚汁を口に運んだ。
「おおっ、うまい! 味付けは味噌だけなのに、味噌汁とは別の美味さがあるな」
「んんっ、美味しいですね。これは……白米も欲しくなる味です」
口の中に広がるのは心地よい味噌の風味と、野菜とボアポークから溶け出てきた旨味。
ボアポークの油と、ジャガイモみたいな野菜が少し溶けた汁が絡み合った旨味が鼻に抜けていく。
次の一口を促すような後味を前に、私たちはまた小皿を傾けていた。
しかし、一口分しか注いでいない私たちの小皿を傾けたところで、そこに豚汁は残されていなかった。
「……も、もう少しだけ味見しましょうか」
「そ、そうだな。味見は大事だ」
私たちはそんな言い訳を口にしながら、もう三口分ほど味見を堪能したのだった。
三口で我慢した私とエルドさんの辛抱強さについては、もっと評価されてもいいのではないかと思う。
174
お気に入りに追加
3,282
あなたにおすすめの小説

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。