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連載
第55話 お味噌
しおりを挟む女将さんに通してもらった厨房で、調理器具を自分の前に揃えた私は今晩の夕食について考えていた。
今回は暇をしていたシキが狩ってきてくれた、ボアポークという豚とイノシシの中間みたいな魔物を使って料理をしていこうと思う。
シキが運動がてらよく森に行ってくるので、アイテムボックスには常にシキが倒した魔物をエルドさんが解体してくれた食材が収納されている。
肉以外のものは買い取りに出しているらしく、その収入だけでも十分に暮らしていけるほどの額になるらしい。
ただお金が入ったから良い店にご飯を食べに行こうとはならないから、あんまりお金を稼いでいるという実感が湧かない。
高いお金を出して外食するなら、そのお金で良い食材を買って、魔法の調味料で自分で作った方が美味しいものが食べれる気がしてしまうから、外食自体あまりしないのだ。
まぁ、それでも、いつかちゃんとしたレストランでご飯を食べるのもいいかもしれない。
いやいや、今はそんなことよりも目の前の調理に集中しよう。
アイテムボックスからボアポークのお肉の塊を出してまな板の上に置いてから、私はどんな料理をしようかと考えていた。
豚肉といえばとんかつのイメージがあるけど、とんかつは衣が必要だし、貸してもらった厨房でがっつり油物をするのも気が引ける。
それでも、たくさんお肉があるわけだし、薄切りとかじゃなくてガツンと食べたい。
ある程度の厚い豚肉を使ったとんかつ以外の料理といえば……豚肉の味噌漬け?
味噌かぁ。味噌が作れれば、また料理の幅も広がるし、試しに味噌が生成できるのか試してみるのにいい機会かもしれない。
そう思った私は、頭の中で味噌をイメージしながら【全知鑑定】のスキルを使って、目の前に味噌の材料が表示された画面を出した。
そこには、次のように文字が書かれていた。
【全知鑑定 味噌の材料……大豆 麹 塩】
なるほど、これが味噌の材料なんだ。
醤油といい、味噌といい、大豆の汎用性半端ないな。
そんなことを考えつつ、私は味噌を生成するために味噌の味を思い出してみることにした。
発酵食品ということで不安であるけど、醤油も作れたし、多分今回も問題ないはず。
イメージするのは、いつも実家にいるときに出てきていた味噌汁に使われていた合わせ味噌の味。
社会人になって一人暮らしをするようになっても、よくインスタントの味噌汁は飲んでいたし、味噌の味は簡単にイメージできる。
私は味噌の材料が表示されている画面を見つめながら、合わせ味噌の味と触感と香り材料を思い出しながら、それを形作るイメージを膨らませていった。
込める魔力の量と質はマヨネーズを作った時と同じでいい。今回はむしろ味を重視する感じで……。
私が小皿の方に手のひらを向けて、徐々に味噌を形作るイメージをしていくと、何もなかったはずの小皿が微かに光った。
私がその小皿を覗き込むと、そこには私の知っている合わせ味噌の色と形をした物があった。
「うん、今回もできてるっぽい」
どうやら、今回も調味料の生成は上手くいったみたいだった。
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