20 / 83
連載
第54話 宿での食事
しおりを挟む「なんか変に疲れました」
結局、その日は馬車で行ける所まで行って、夜には街のエネストに入ったところで今日は止まることになった。
馬車に座っていただけなのに、ずっとじっとしているというのも、それはそれで案外疲れるものだった。
シキと一緒に走っていた方が疲れなかったかもしれないが、エリーザ伯爵の屋敷から来てくれた御者の人を驚かせないためにも、私は馬車の中で静かにしていたのだった。
本日泊ることになった宿はエネストの中心から外れている田舎なのに、落ち着いている綺麗な宿だった。
他にも安い宿もあったのだが、エリーザ伯爵の所の御者さんも一緒だったので、ある程度の宿に泊まることにしたのだった。
ここで宿代をケチってポケットマネーにすることも考えたが、さすがに印象が悪いだろう。
それに、エリーザ伯爵から貰ったお金はあくまで旅費と滞在費。この旅の中である程度は使わないと、エリーザ伯爵にも失礼だろうという話にもなったのだった。
御者の方が宿の手続きまでしてくれるのを少し遠くで見ていると、宿の店主の年配の女性と話していた御者の男性が私たちの方にやってきた。
「ご飯はこの宿で食べることもできるみたいですけど、どうしますか?」
どうやら、素泊まりか外で食べるか選べるタイプの宿らしく、私たちがどうした以下の確認に来てくれたみたいだった。
なんだか今日はエリーザ伯爵の屋敷を出てからずっと動いてないし、何かしらしたい気分だし、このまま宿で食べて寝るのはつまらない。
かといって、外に食べに行っても多分シンプル過ぎる料理しかないだろう。
そう思った私は、御者の男性の奥にいる女将さんらしき人と目を合わせてから口を開いた。
「あの、厨房を借りることってできますか?」
「ん? ああ、厨房を貸すくらいなら全然構わないよ」
女将さんは私と目が合うと、口元を緩めた優しい表情を浮かべてた表情でそんな言葉を言ってくれた。
「何か作ってくれるのか?」
「はい。少し元気が有り余っているので、何か作ろうかと」
ずっと馬車に乗っていたので、少しぼーっとする感じがする。料理でもすれば、そんな気持ちを多少は晴れるだろう。
そう思った私は、厨房を借りて料理をすることにしたのだった。
これは別に、食事代をケチるとかそんなんじゃない。
たまたま最近暇をしていたシキが狩りをしてきた食材がアイテムボックスにあって、たまたま私が調味料を生成で来て、たまたま料理ができる環境だからしようと思っただけ。
そう、だから食事代をケチるとはそんなことではないのだ。……うん、たまたまなのだ。
私は誰に言うでもなくそんな言い訳を胸の中で独り言のように言いながら、女将さんに案内されて厨房へ向かったのだった。
187
お気に入りに追加
3,262
あなたにおすすめの小説
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。