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第178話 謁見のお時間
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『モンドルの夜明け』と共に、モンドルの国家転覆に成功した俺たちは、モルンたちと合流した後、サラ王女をモルンに引き渡して早々にモンドルを出ることにした。
王の首を打ち取った後、夜明けの名にふさわしい盛り上がりを見せる中、すぐにモンドルを離れるのは残念な気もした。
しかし、あまり長居をするわけにはいかなかったのだ。
理由は単純で、そのまま残っていたら、他国の冒険者がテロ行為に参加していることを多くの人に知られてしまうからだ。
『モンドルの夜明け』の一部のメンバーにバレるくらいならいいが、大々的にこの街の住民に知られるのはあまりよくはないだろう。
実際に王の首を取ったのはモルンたちなわけだし、出過ぎた黒子として一部の人が認識しているくらいのが丁度いい。
そう思って、圧力から解放された人々の笑顔を見ながら、人知れず俺たちはモンドル王国を離れたのだった。
そんな一国が変わった瞬間に立ち会ってから、しばらく経ったある日のこと。
俺は再び王城に呼ばれていた。
なぜ俺が王城に呼ばれることになったのか。その理由が思い当たらないほど、俺は馬鹿ではない。
「アイクよ。お主、モンドル王国で起きた革命、『モンドルの夜明け』に参加していていたと聞いたが、本当か?」
「……はい、本当です」
俺は微かに冷や汗を垂らしながら、その言葉に頷いていた。
どうやら、俺が参加していたことはがっつりバレてしまったらしい。おかしいな、一部の人間にしかバレていないはずだったのに。
わざわざ城に呼ぶということは、おそらくある程度裏は取れてあるのだろう。それなら、下手に嘘を吐くよりも正直に言ってしまった方がいい。
「……参加した理由を聞こうか」
王は少し間を置いた後、そんな言葉を口にした、どうやら、問答無用で何かの罰を受けるというような事態には発展しないようだ。
俺は安堵のため息を漏らしながら、言葉を続けた。
「理由は二つあります。一つ目は、モンドル王国がミノラルに戦争を仕掛けようとしていたこと。二つ目は、元S級冒険者のギースというミノラルの冒険者が、モンドル王国側についていたので、それを止めるためです。なので、事前に戦争を防ぐためと、ミノラルの冒険者としてギースを止めるために参加しました」
俺がそう言うと、王は少し考え込むように髭を触って目を閉じていた。
何を考えているのかは分からない。もしかしたら、証拠がないことを言及してくるかおもしれない。
確かに、モンドル王国が戦争を仕掛けようとしていたことなんて、証明することはできない。
まずいな、そこを突かれると弱いぞ。
俺が心の中で勝手に劣勢に追い込まれていると、突然謁見の間の扉が開かれた。
「ミノラル王! その話は本当です!!」
そこにいたのは、俺よりも三つか四つくらい年下の女の子。桃色の長い髪を揺らして、自信満々な表情で扉の前に立っていた。
活発的な女の子を思わせる言動だというのに、顔の造りは繊細な作り物のように整っていた。
「え、サラ王女?」
その女の子は、いつかモンドルの牢で出会った覚えのある、モンドルの王女の姿だった。
「アイク様! お会いしとうございました!!」
そして、何を思ったのかサラは片膝をついて頭を下げている俺に勢いよく突っ込んできた。
そのまま抱きつくようにして倒されてしまい、俺は何が起きたのか分からずに静かに瞬きをすることしかできないでいた。
「あ、アイク様……」
漏れ出たようなイリスの声。それがどこかから聞こえてきたので、その方に顔を向けようとしたのだが、それを上書きするかのようにサラは顔をぐいっと近づけて言葉を続けた。
「なぜ何言わずに去ってしまったのですか?! ずっと探してましたのに!」
少し怒っているように頬を膨らませていながら、表情を緩ませているサラ。
そんな器用な表情筋の使い方を見せられても、今何が起きているのは理解できるはずがなかった。
「え、これは、一体どういうことですか?」
「それはこちらが聞きたいくらいじゃ」
俺の質問に対して王はため息を吐いてから、理由を尋ねるように俺に抱きついているサラに視線を向けた。
すると、サラはきょとんとした様子で言葉を続けた。
「あら? ミノラルの属国になるのですから、私がいるのはおかしくないのでは?」
「ぞ、属国?!」
「『英雄 ミノラルの道化師様』。モンドル王国の救世主様の下に付きたいというのは、普通のことではないですか?」
「英雄? お、俺がですか?!」
当たり前みたいな顔をして、当たり前ではないことを言いだしたぞ、この子。
曇りのない眼でまっすぐ見つめられると、何か冗談を言っているようにも見えない。
話がまるで見えずに困惑していると、そんな俺の状態を察してくれたのか、王がため息まじりに口を開いた。
「モンドルと我が国の間にあるリース王国。あの国も属国にして欲しいと言ってきたぞ」
「……何がどうなっているんですか?」
「ワシが聞きたいくらいじゃ。ワルド王国、モンドル王国、モンドルの属国のアンデル王国、リース王国。急にミノラルは大国になって、ワシはその大国の王様じゃよ……本当にどうしよう」
なんか最後の方に行くにつれて失笑混じりになっていった王の言葉。どう反応したらいいのか分からず、俺は言葉にもなっていない声を漏らしていた。
「あ、あの、」
「まぁ、よい。今日はサラ王女が会いたがっていたから呼んだんじゃ。あとは、他国の革命に参加していたわけを知りたかっただけじゃからな」
「は、はぁ」
「事前に戦争を二度も止めた功績……これに相当する報酬ってなんじゃ。前例がなさ過ぎるぞ」
王はそう言うと、本気で悩むように頭を抱えていた。どうやら、王はただ国が大きくなったことだけに悩んでいるのではないみたいだった。
まさか、俺の報酬についてそこまで考えてくれているとは。
王に言われて気づいたが、歴史上にもそんな人物はいなかった気がするな。
別に報酬欲しさに色々と動いていたわけではないのだが、本気で悩んでいるような表情を向けられると、少しだけ報酬にも期待してしまう。
そして、ずっと俺に抱きついているサラのこの態度と、先程の言葉。
本当に、何がどうなっているんだ?
こうして、ただただ疑問だけを増やして、王との謁見の時間は終了したのだった。
王の首を打ち取った後、夜明けの名にふさわしい盛り上がりを見せる中、すぐにモンドルを離れるのは残念な気もした。
しかし、あまり長居をするわけにはいかなかったのだ。
理由は単純で、そのまま残っていたら、他国の冒険者がテロ行為に参加していることを多くの人に知られてしまうからだ。
『モンドルの夜明け』の一部のメンバーにバレるくらいならいいが、大々的にこの街の住民に知られるのはあまりよくはないだろう。
実際に王の首を取ったのはモルンたちなわけだし、出過ぎた黒子として一部の人が認識しているくらいのが丁度いい。
そう思って、圧力から解放された人々の笑顔を見ながら、人知れず俺たちはモンドル王国を離れたのだった。
そんな一国が変わった瞬間に立ち会ってから、しばらく経ったある日のこと。
俺は再び王城に呼ばれていた。
なぜ俺が王城に呼ばれることになったのか。その理由が思い当たらないほど、俺は馬鹿ではない。
「アイクよ。お主、モンドル王国で起きた革命、『モンドルの夜明け』に参加していていたと聞いたが、本当か?」
「……はい、本当です」
俺は微かに冷や汗を垂らしながら、その言葉に頷いていた。
どうやら、俺が参加していたことはがっつりバレてしまったらしい。おかしいな、一部の人間にしかバレていないはずだったのに。
わざわざ城に呼ぶということは、おそらくある程度裏は取れてあるのだろう。それなら、下手に嘘を吐くよりも正直に言ってしまった方がいい。
「……参加した理由を聞こうか」
王は少し間を置いた後、そんな言葉を口にした、どうやら、問答無用で何かの罰を受けるというような事態には発展しないようだ。
俺は安堵のため息を漏らしながら、言葉を続けた。
「理由は二つあります。一つ目は、モンドル王国がミノラルに戦争を仕掛けようとしていたこと。二つ目は、元S級冒険者のギースというミノラルの冒険者が、モンドル王国側についていたので、それを止めるためです。なので、事前に戦争を防ぐためと、ミノラルの冒険者としてギースを止めるために参加しました」
俺がそう言うと、王は少し考え込むように髭を触って目を閉じていた。
何を考えているのかは分からない。もしかしたら、証拠がないことを言及してくるかおもしれない。
確かに、モンドル王国が戦争を仕掛けようとしていたことなんて、証明することはできない。
まずいな、そこを突かれると弱いぞ。
俺が心の中で勝手に劣勢に追い込まれていると、突然謁見の間の扉が開かれた。
「ミノラル王! その話は本当です!!」
そこにいたのは、俺よりも三つか四つくらい年下の女の子。桃色の長い髪を揺らして、自信満々な表情で扉の前に立っていた。
活発的な女の子を思わせる言動だというのに、顔の造りは繊細な作り物のように整っていた。
「え、サラ王女?」
その女の子は、いつかモンドルの牢で出会った覚えのある、モンドルの王女の姿だった。
「アイク様! お会いしとうございました!!」
そして、何を思ったのかサラは片膝をついて頭を下げている俺に勢いよく突っ込んできた。
そのまま抱きつくようにして倒されてしまい、俺は何が起きたのか分からずに静かに瞬きをすることしかできないでいた。
「あ、アイク様……」
漏れ出たようなイリスの声。それがどこかから聞こえてきたので、その方に顔を向けようとしたのだが、それを上書きするかのようにサラは顔をぐいっと近づけて言葉を続けた。
「なぜ何言わずに去ってしまったのですか?! ずっと探してましたのに!」
少し怒っているように頬を膨らませていながら、表情を緩ませているサラ。
そんな器用な表情筋の使い方を見せられても、今何が起きているのは理解できるはずがなかった。
「え、これは、一体どういうことですか?」
「それはこちらが聞きたいくらいじゃ」
俺の質問に対して王はため息を吐いてから、理由を尋ねるように俺に抱きついているサラに視線を向けた。
すると、サラはきょとんとした様子で言葉を続けた。
「あら? ミノラルの属国になるのですから、私がいるのはおかしくないのでは?」
「ぞ、属国?!」
「『英雄 ミノラルの道化師様』。モンドル王国の救世主様の下に付きたいというのは、普通のことではないですか?」
「英雄? お、俺がですか?!」
当たり前みたいな顔をして、当たり前ではないことを言いだしたぞ、この子。
曇りのない眼でまっすぐ見つめられると、何か冗談を言っているようにも見えない。
話がまるで見えずに困惑していると、そんな俺の状態を察してくれたのか、王がため息まじりに口を開いた。
「モンドルと我が国の間にあるリース王国。あの国も属国にして欲しいと言ってきたぞ」
「……何がどうなっているんですか?」
「ワシが聞きたいくらいじゃ。ワルド王国、モンドル王国、モンドルの属国のアンデル王国、リース王国。急にミノラルは大国になって、ワシはその大国の王様じゃよ……本当にどうしよう」
なんか最後の方に行くにつれて失笑混じりになっていった王の言葉。どう反応したらいいのか分からず、俺は言葉にもなっていない声を漏らしていた。
「あ、あの、」
「まぁ、よい。今日はサラ王女が会いたがっていたから呼んだんじゃ。あとは、他国の革命に参加していたわけを知りたかっただけじゃからな」
「は、はぁ」
「事前に戦争を二度も止めた功績……これに相当する報酬ってなんじゃ。前例がなさ過ぎるぞ」
王はそう言うと、本気で悩むように頭を抱えていた。どうやら、王はただ国が大きくなったことだけに悩んでいるのではないみたいだった。
まさか、俺の報酬についてそこまで考えてくれているとは。
王に言われて気づいたが、歴史上にもそんな人物はいなかった気がするな。
別に報酬欲しさに色々と動いていたわけではないのだが、本気で悩んでいるような表情を向けられると、少しだけ報酬にも期待してしまう。
そして、ずっと俺に抱きついているサラのこの態度と、先程の言葉。
本当に、何がどうなっているんだ?
こうして、ただただ疑問だけを増やして、王との謁見の時間は終了したのだった。
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