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第171話 アイクVSギース
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「殺してっやる……アイク……ははっ、アイ、お前のせいでっ、し、ころっ、殺すっ」
久しぶりの再会。行方の分からなくなった元パーティのリーダーだった、元S級冒険者のギース。
人工的なスキルの付加や魔力の増強によって、その体はボロボロになっていて、パッと見た感じ別人に思えるほど変わり果てていた。
「俺、俺俺、強くなった……アイク! お前、なんかよりもっ、つよ、変わったんだよぉぉ!!」
しかし、変わったのは外見だけ。その中身の考え方は変わっておらず、自分の非を一切認めずに、周りのせいにして怒りを撒き散らす。
そこは全然変わってなどいなかった。
「分かったよ。相手してやるから、かかってきなって」
俺がそう言うと、ギースは口の端から垂らした涎を飛ばしがら、言葉を続けた。
「お前が俺を馬鹿にするなっ! ば、ばば、馬鹿に、馬鹿にしただと! だれ、誰が、アイクがかぁ!!」
どうやら、俺の一言がギースの導火線に火をつけたらしかった。
ギースの血走った目が俺を一瞬捉えると、ギースは腰に下げていた長剣を引き抜いた。
その剣は俺が知っているギースの持っていた物とは違っていた。どこか禍々しささえ感じさせる黒剣は今のギースが持っていると、違和感がなかった。
「け、【剣技】! 『筋力増強』!『筋力増強』!!『筋力増強』!!!」
ギースは発狂するようにスキルと魔法を使用した。俺が知る限り、ギースが自ら魔法をかけて筋力を増強させる術を持っていなかった気がする。
ただ自分で使わなかっただけで、使えていたのだろうか?
それとも、この国に来て、何かしらの方法で人工的に体に叩きこんだのか。
目の前で膨れ上がっていく筋肉は歪なほど膨れ上がり、無理やり膨らんだ筋肉は音を立てて筋線維を切り裂いていった。
「いや、やり過ぎると体に良くないって」
「お前っ……お前ごときが、し、心配してんじゃねーぞ!!」
そして、我慢の限界を迎えたようなギースは、その引き抜いた黒剣で俺に切りかかってきた。
「さすがに、速いな」
『筋力増強』を重ね掛けしただけあって、その速度は見事な物だった。それでも、かわせない一撃というほど速いわけではない。
俺がその一撃をかわして、空振りした黒剣が地面に当たった瞬間、地面に爆発するような衝撃が伝わった。
何か爆発物を刀身に埋め込んでいたかのような、そんな衝撃だった。
「っ!」
咄嗟に【肉体強化】をした体で地面を強く蹴って、ギースと距離を取ると、それを見たギースは含みのあるような笑みを浮かべていた。
「怖い、怖いのか、アイク。はははっ! はぁっ、はっ……お前、弱いもんなぁ、そうだよなぁ……」
ギースの黒剣が当たった地面は大きな亀裂が入っており、その周辺の地面はえぐり取られていた。
とても、そんな威力のある一撃には見えなかった。それに、筋力で破壊したような跡ではない。
「……その剣、何か仕組みがあるんだろ?」
俺がそう尋ねると、ギースは逆上したように大きな声を上げていた。
「お、俺の力だ! 俺の魔力を吸って、それを力に変えてるだけだ!……だから、俺の力……俺の魔力、使ってんだよ!」
どうやら、ギースの返答を聞く限り、あの剣が今のギースの強さの秘訣らしい。
魔力を強さに変換する剣。人工的に魔力を増強できるこの国の研究と、見事にマッチした武器だとは思う。
「そんなの何発も打ったら、まともじゃいられないぞ?」
「魔力ならあるっ……ま、まともじゃないのは、世界だ……あああっ!! お前がまともじゃないんだよ! アイク!!」
ギースはそう言うと、激昂したように再び俺に切りかかってきた。
いくら感情的になっても、剣の動きが分かりやすくなるだけで、他に効果はない。
俺はその攻撃をかわしながら、腰に下げていた短剣を引き抜いた。
仮にも見知った人間を相手に、【精神支配】のスキルは使いたくないといった気持ちと、最後はせめて剣で切られて死ぬ方が、冒険者らしいかと気を遣っての判断だった。
「【剣技】」
俺は引き抜いた短剣で、そのままギースの腹を切り裂いた。手ごたえ的には深くまで切りつけた感覚が手に残り、この一撃で仕留めたという確信を持っていた。
「ぐわぁああっ! くわあぁぁ!」
「……なんだ?」
切断とまではいかないまでも、確かに深くまで切りつけたはずの刀傷。しかし、振り返ってみると、その切られた傷跡は、ブクブクと泡を噴き出しながら筋線維を修復していた。
どうやら、再生能力のあるスキルまでも持っているらしい。
なるほど、どうりで『モンドルの夜明け』も警戒されるわけだ。
「はぁ……なら、仕方ないよな」
いくら肉体を傷つけても復活するというのなら、肉体以外を傷つける他ない。あまり気は進まないが、他に方法がないのだから、仕方がないだろう。
俺は覚悟を決めて、振り返りざまにギースの頭を掴んだ。
その瞬間、【感情吸収】のスキルによって吸収している恐怖の感情が、膨れ上がった感覚があった。
「あ、アイク? あ、あれ? ……だ、誰だ、お前は」
俺がギースの頭を鷲掴みすると、どこか気の抜けたようなギースの声が聞こえてきた。
ぎりっと強く握れば握るほど、強まっていく恐怖の感情。
それが誰から来ているものなのか、状況的にすぐに分かった。
「俺が別人に見えるのか?」
俺の返答に対して、ギースは小さく体を震わせることしかできなくなっていた。
「それは、お前が俺に恐怖している証拠だ」
どうやら、何をしても逃げられないということを悟ったのだろう。抱いていしまった恐怖の感情によって、【感情吸収】が見せている幻覚。
その中にギースはいるらしかった。
「あ、悪魔がいる」
「……【精神支配】」
俺はギースの言葉を聞き流し、そのスキルを使用した。
そして、最後にギースの断末魔が戦場に響いたのだった。
久しぶりの再会。行方の分からなくなった元パーティのリーダーだった、元S級冒険者のギース。
人工的なスキルの付加や魔力の増強によって、その体はボロボロになっていて、パッと見た感じ別人に思えるほど変わり果てていた。
「俺、俺俺、強くなった……アイク! お前、なんかよりもっ、つよ、変わったんだよぉぉ!!」
しかし、変わったのは外見だけ。その中身の考え方は変わっておらず、自分の非を一切認めずに、周りのせいにして怒りを撒き散らす。
そこは全然変わってなどいなかった。
「分かったよ。相手してやるから、かかってきなって」
俺がそう言うと、ギースは口の端から垂らした涎を飛ばしがら、言葉を続けた。
「お前が俺を馬鹿にするなっ! ば、ばば、馬鹿に、馬鹿にしただと! だれ、誰が、アイクがかぁ!!」
どうやら、俺の一言がギースの導火線に火をつけたらしかった。
ギースの血走った目が俺を一瞬捉えると、ギースは腰に下げていた長剣を引き抜いた。
その剣は俺が知っているギースの持っていた物とは違っていた。どこか禍々しささえ感じさせる黒剣は今のギースが持っていると、違和感がなかった。
「け、【剣技】! 『筋力増強』!『筋力増強』!!『筋力増強』!!!」
ギースは発狂するようにスキルと魔法を使用した。俺が知る限り、ギースが自ら魔法をかけて筋力を増強させる術を持っていなかった気がする。
ただ自分で使わなかっただけで、使えていたのだろうか?
それとも、この国に来て、何かしらの方法で人工的に体に叩きこんだのか。
目の前で膨れ上がっていく筋肉は歪なほど膨れ上がり、無理やり膨らんだ筋肉は音を立てて筋線維を切り裂いていった。
「いや、やり過ぎると体に良くないって」
「お前っ……お前ごときが、し、心配してんじゃねーぞ!!」
そして、我慢の限界を迎えたようなギースは、その引き抜いた黒剣で俺に切りかかってきた。
「さすがに、速いな」
『筋力増強』を重ね掛けしただけあって、その速度は見事な物だった。それでも、かわせない一撃というほど速いわけではない。
俺がその一撃をかわして、空振りした黒剣が地面に当たった瞬間、地面に爆発するような衝撃が伝わった。
何か爆発物を刀身に埋め込んでいたかのような、そんな衝撃だった。
「っ!」
咄嗟に【肉体強化】をした体で地面を強く蹴って、ギースと距離を取ると、それを見たギースは含みのあるような笑みを浮かべていた。
「怖い、怖いのか、アイク。はははっ! はぁっ、はっ……お前、弱いもんなぁ、そうだよなぁ……」
ギースの黒剣が当たった地面は大きな亀裂が入っており、その周辺の地面はえぐり取られていた。
とても、そんな威力のある一撃には見えなかった。それに、筋力で破壊したような跡ではない。
「……その剣、何か仕組みがあるんだろ?」
俺がそう尋ねると、ギースは逆上したように大きな声を上げていた。
「お、俺の力だ! 俺の魔力を吸って、それを力に変えてるだけだ!……だから、俺の力……俺の魔力、使ってんだよ!」
どうやら、ギースの返答を聞く限り、あの剣が今のギースの強さの秘訣らしい。
魔力を強さに変換する剣。人工的に魔力を増強できるこの国の研究と、見事にマッチした武器だとは思う。
「そんなの何発も打ったら、まともじゃいられないぞ?」
「魔力ならあるっ……ま、まともじゃないのは、世界だ……あああっ!! お前がまともじゃないんだよ! アイク!!」
ギースはそう言うと、激昂したように再び俺に切りかかってきた。
いくら感情的になっても、剣の動きが分かりやすくなるだけで、他に効果はない。
俺はその攻撃をかわしながら、腰に下げていた短剣を引き抜いた。
仮にも見知った人間を相手に、【精神支配】のスキルは使いたくないといった気持ちと、最後はせめて剣で切られて死ぬ方が、冒険者らしいかと気を遣っての判断だった。
「【剣技】」
俺は引き抜いた短剣で、そのままギースの腹を切り裂いた。手ごたえ的には深くまで切りつけた感覚が手に残り、この一撃で仕留めたという確信を持っていた。
「ぐわぁああっ! くわあぁぁ!」
「……なんだ?」
切断とまではいかないまでも、確かに深くまで切りつけたはずの刀傷。しかし、振り返ってみると、その切られた傷跡は、ブクブクと泡を噴き出しながら筋線維を修復していた。
どうやら、再生能力のあるスキルまでも持っているらしい。
なるほど、どうりで『モンドルの夜明け』も警戒されるわけだ。
「はぁ……なら、仕方ないよな」
いくら肉体を傷つけても復活するというのなら、肉体以外を傷つける他ない。あまり気は進まないが、他に方法がないのだから、仕方がないだろう。
俺は覚悟を決めて、振り返りざまにギースの頭を掴んだ。
その瞬間、【感情吸収】のスキルによって吸収している恐怖の感情が、膨れ上がった感覚があった。
「あ、アイク? あ、あれ? ……だ、誰だ、お前は」
俺がギースの頭を鷲掴みすると、どこか気の抜けたようなギースの声が聞こえてきた。
ぎりっと強く握れば握るほど、強まっていく恐怖の感情。
それが誰から来ているものなのか、状況的にすぐに分かった。
「俺が別人に見えるのか?」
俺の返答に対して、ギースは小さく体を震わせることしかできなくなっていた。
「それは、お前が俺に恐怖している証拠だ」
どうやら、何をしても逃げられないということを悟ったのだろう。抱いていしまった恐怖の感情によって、【感情吸収】が見せている幻覚。
その中にギースはいるらしかった。
「あ、悪魔がいる」
「……【精神支配】」
俺はギースの言葉を聞き流し、そのスキルを使用した。
そして、最後にギースの断末魔が戦場に響いたのだった。
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