パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬

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第166話 メンバーの秘密

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「本当に申し訳なかった。その、ワイバーンを一人で倒したっていうのが常識外の力で疑ってしまった」

「いや、全然大丈夫ですから」

 『モンドルの夜明け』に俺の力を示すため、俺はメンバーの一人であるドエルと一対一の戦いをすることになった。

 その結果、軽くひねっただけで、ドエルを骨折させるほどの重傷を負わせる結果になってしまった。

 今は回復魔法でその怪我も完治しており、ドエルには目立つような外傷はなくなった。

こうして、力があることを証明して、実力も認められた俺たちは本当の仲間になれてーーいるのか非常に怪しくなってしまった。

「ドエルが失礼な態度を取ってしまって、本当に申し訳ないです」

 平謝りをするモルンとノアン。それと、敗北を認めて失礼な態度を取ってしまったことを謝るドエル。

 そして、その三人の態度と、先程の戦いを見てビビり始めた周囲のメンバー。

 俺に向ける感情は、警戒から恐怖に近い感情に変わったようで、先程から顔色を窺うような視線を浴びることが多い。

 ……これは、完全にやり過ぎてしまったな。

【感情吸収】によって、一時的に俺のことがどう見えていたのか深く聞いてみたいことではあるが、今はそれ以上に聞いておかねばならないことがあった。

「えっと、ドエルさんが結構な戦力って話でしたけど……その、今回の戦いって戦力的に大丈夫なんですよね?」

 一瞬で勝負がついてしまうくらい、ドエルは強くなかった。そうなると、ここにいる戦力もあまり期待できないのではないかと思えてしまう。

 言葉を選びながら発言しようと思ったのだが、少し棘のある言い方になってしまったかもしれない。

 しかし、これから戦いをするにあたり、それは確認しなければならない事項であることは確かだった。

「ドエルは一般的に見れば、強い戦士です。その、一人でワイバーンを倒すほどの戦力者は正直、アイクさん達しかいないですけど」

「で、でも、そんなバケモノ染みた力を持つ人は、モンドル王国の方にもあまりいないはずですから!」

「……ば、バケモノ」

 モルンとノアンがドエルを庇うように、そんな言葉を口にした。

 確かに、一般的に地面にひびを入れるほどの攻撃を入れられるというのは、弱くはないのかもしれない。

 認識がずれているとしたら、ここ最近S級冒険者や裏傭兵団とばかり対峙してきた俺の方なのかもしれない。

 ……それにしても、バケモノ染みているのか。

 なんか面と向かって言われると、少し来るものがあるかもしれない。

 いや、多分悪気なく褒めてくれただけだよな?

「あの、参考までにリリさんも同じくらい強いんですか?」

 俺がそんなことを考えていると、ずっと気になっていたのかモルンが控えめにそんなことを聞いてきた。

 そういえば、まだリリ達の力を見せていなかったな。

「いえ、私はアイクさんほどではありません」

 なんて答えようかと思っていると、リリが当たり前のようにそんな返答をした。

 本当なのかと少し疑うようなモルンの視線を受けて、俺は少し考えた後言葉を続けた。

「確かに、俺ほどではありませんけど、リリもワイバーンを一人で倒せるくらいバケモノ染みていると思います」

「アイクさん?!」

 俺の言葉を受けて、俺単体に向けられていた、恐れるような視線がリリの方にも向けられることになった。

 よし、これでこの組織の中で一人ボッチになることはなくなったな。

 そして、視線が分散したことで少しは俺の恐怖も減っただろう。

 ……一組織の一員として動く上で、過剰に怖がられてやりにくいしな。

「そういえば、モルンさんとノアンさんも、ドエルと同等くらいの強さなんですか?」

 不意に、この中で一番強いと言われていたなと思って、モルンとノアンに聞いてみると、それを聞いていたドエルが失笑気味に口を開いた。

「いや、俺はこの二人の足元にも及ばないさ。俺とは受けてきた実験がまるで違う」

「受けてきた実験?」

 通ってきた修羅場とかなら話は分かるが、あまり聞き慣れない言葉だった。

 それに一瞬小首を傾げたが、この国で意味するその言葉を、理解するのに時間を要さなかった。

「説明がまだでしたね」

 モルンはどこか悲しそうな笑みを浮かべると、ちらりと他のメンバーに視線を向けながら言葉を続けた。

「ここにいるメンバーはみんな、実験体だった者たちです」

「……え?」

「もちろん、私も含めて」

 予期しないタイミングで、俺たちは『モンドルの夜明け』のメンバーの秘密を知らされることになったのだった。

「人工的に、スキルや魔力を付加させられたメンバーからなる組織。どうですか? 弱い組織には思えないでしょう?」

 モルンはどこかおどけるように、そんな言葉を口にしていた。
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