136 / 191
第136話 裏傭兵団
しおりを挟む
「アイクさん、援護いただきありがとうございました!」
「いえ、そんなに気にしないでください」
騎士団の一人が代表するように、俺の近くまで来ると深く頭を下げてきた。
戦いの中で自分達が劣勢に追い込まれていく中で助けられたということもあって、必要以上に感謝しているのかもしれない。
盗賊団を捕らえたときは、俺のスキルを初めて見たせいか、少し警戒されてしまっていたから少し焦った。
しかし、今はこの屋敷に移動するときに向けられていたような、羨望に近い視線を向けられている。
まぁ、危険な状況に颯爽と現れて敵を瞬殺するように捕らえれば、そんな反応にもなるか。
大勢の騎士団からそんな目を向けられれば、当然俺だって嫌な気はしない。
しかし、素直に喜んでいられる状況ではないのは確かだった。
「それよりもすぐに来ますよ」
「来る、とは?」
「第二波ですね。先程までの盗賊団とは随分レベルが違う気配を感じます」
俺が近くに来た騎士団にそう告げると、その声が他の騎士団たちにも聞こえたのか、一気に緩みかけていた空気が張りつめた物に変わった。
【気配感知】で感知している数個の気配。その気配の大きさが魔物と間違えるほどの大きさをしているものがある。
それがすぐそこまで近づいてーー
「きた」
俺がそんなことを呟いた瞬間、俺の目の前に大剣を構えた大男が突っ込んできた。
剃り上げた頭に筋骨隆々な体つき。俺の身長を優に超える大きさで、その体と同じくらいの大きさの大剣を上段に構えて、それを俺の脳天に振り下ろしていた。
しかし、そこでその男の動きは止まってしまっていた。
いや、止められたのだ。自分の影から伸びるような黒い鞭によって、体を縛り上げられて。
【影支配】。大柄な魔物も縛り上げて動けなくさせるスキル。そのスキルを前に、男は体を動かすことができなくなっていた。
「うわっ、な、なんだ?!」「か、構えろ!」「なんあの男、止まってるぞ」
突然現れた大男に驚く騎士団だったが、ピタリと動かないその様子を見て、頭に疑問符を浮かべていた。
何か奇天烈な物でも見るかのような視線を大男に向けていて、その視線を受けた男はすぐ目の前にいる俺を眼光だけで殺すような目つきで睨んでいた。
凄いな。下手な猛獣よりも何かに飢えているような目をしている。
「てめぇ、何をした?」
「状況分かってんのか? 質問するのはおれだ。おまえが裏傭兵団って奴か?」
「だとしたら、なんだよ」
自分が捕まっている状態だというのに、まるで恐れている様子がない。
先程までの盗賊団との圧倒的な力の差からすると、こいつが裏傭兵団っていうことで間違いはなさそうだ。
「まぁ、いいや。とりあえず、気を失っててもらうか」
あんまり乱暴なことはしたくはないが、【催眠】が途中で解かれてしまっても面倒だ。
多分、力を抑えれば死ぬことはないだろう。
俺はそんなことを考えながら、そっと男の額の前に手をかざした。
「【精神支――】」
俺がスキルを発動させようとした瞬間、俺は急いでその右手を引いた。
そして、その右手があった場所に何かが通ったと思った瞬間、その後方にいた騎士団にそれが着弾した。
「ぐわっ! ……え?」
何かが着弾してその痛みで悶える声が聞こえたと思った次の瞬間、後方でいきなり爆発音がした。
「は?」
驚いて振り向いてみると、そこにはその爆発に巻き込まれて数人の騎士団が倒れていた。
焼かれた服なのか焦げた人肉の匂いなのか、鼻にこびりつく匂いを残して、倒れた数人の騎士団は動くこともままならなくなっていた。
「外しましたか」
木陰から姿を現したのは銀縁の眼鏡をかけた三十代くらいの男。線は細いのに、歩き方だけで体幹が尋常じゃないのが伝わってくる。
手にしている弓矢を見るに、先程俺の手を打ち抜こうとした犯人であることは明確だった。
先程の紙一重の攻撃。そして、着弾するだけで数人を巻き込む爆発する矢。
こいつも、この大男と同じ裏傭兵団の一員ってことか。
「おいおい、ラルドが簡単に止められてんじゃねーか」
そして、その後ろからやってきた男の姿を見て、俺は無意識下で生唾を呑み込んでいた。
無造作に伸ばしっぱなしになっているような黒髪に、大きな肩幅。服の上からでも分かる膨れ上がった筋肉をそのままに、その男は防具も着けずに長剣を引き抜いていた。
「あのときの……」
「ん? どこかで会ったことあんのか? わるいな、覚えてなくて」
その男はまるで悪びれる素振りを一切見せずに、口元を微かに緩めていた。
まさか、こんなに早く再会できるとは思っていなかった。
俺はその男に釣られるように、微かに口元を緩めてしまっていた。
「いえ、そんなに気にしないでください」
騎士団の一人が代表するように、俺の近くまで来ると深く頭を下げてきた。
戦いの中で自分達が劣勢に追い込まれていく中で助けられたということもあって、必要以上に感謝しているのかもしれない。
盗賊団を捕らえたときは、俺のスキルを初めて見たせいか、少し警戒されてしまっていたから少し焦った。
しかし、今はこの屋敷に移動するときに向けられていたような、羨望に近い視線を向けられている。
まぁ、危険な状況に颯爽と現れて敵を瞬殺するように捕らえれば、そんな反応にもなるか。
大勢の騎士団からそんな目を向けられれば、当然俺だって嫌な気はしない。
しかし、素直に喜んでいられる状況ではないのは確かだった。
「それよりもすぐに来ますよ」
「来る、とは?」
「第二波ですね。先程までの盗賊団とは随分レベルが違う気配を感じます」
俺が近くに来た騎士団にそう告げると、その声が他の騎士団たちにも聞こえたのか、一気に緩みかけていた空気が張りつめた物に変わった。
【気配感知】で感知している数個の気配。その気配の大きさが魔物と間違えるほどの大きさをしているものがある。
それがすぐそこまで近づいてーー
「きた」
俺がそんなことを呟いた瞬間、俺の目の前に大剣を構えた大男が突っ込んできた。
剃り上げた頭に筋骨隆々な体つき。俺の身長を優に超える大きさで、その体と同じくらいの大きさの大剣を上段に構えて、それを俺の脳天に振り下ろしていた。
しかし、そこでその男の動きは止まってしまっていた。
いや、止められたのだ。自分の影から伸びるような黒い鞭によって、体を縛り上げられて。
【影支配】。大柄な魔物も縛り上げて動けなくさせるスキル。そのスキルを前に、男は体を動かすことができなくなっていた。
「うわっ、な、なんだ?!」「か、構えろ!」「なんあの男、止まってるぞ」
突然現れた大男に驚く騎士団だったが、ピタリと動かないその様子を見て、頭に疑問符を浮かべていた。
何か奇天烈な物でも見るかのような視線を大男に向けていて、その視線を受けた男はすぐ目の前にいる俺を眼光だけで殺すような目つきで睨んでいた。
凄いな。下手な猛獣よりも何かに飢えているような目をしている。
「てめぇ、何をした?」
「状況分かってんのか? 質問するのはおれだ。おまえが裏傭兵団って奴か?」
「だとしたら、なんだよ」
自分が捕まっている状態だというのに、まるで恐れている様子がない。
先程までの盗賊団との圧倒的な力の差からすると、こいつが裏傭兵団っていうことで間違いはなさそうだ。
「まぁ、いいや。とりあえず、気を失っててもらうか」
あんまり乱暴なことはしたくはないが、【催眠】が途中で解かれてしまっても面倒だ。
多分、力を抑えれば死ぬことはないだろう。
俺はそんなことを考えながら、そっと男の額の前に手をかざした。
「【精神支――】」
俺がスキルを発動させようとした瞬間、俺は急いでその右手を引いた。
そして、その右手があった場所に何かが通ったと思った瞬間、その後方にいた騎士団にそれが着弾した。
「ぐわっ! ……え?」
何かが着弾してその痛みで悶える声が聞こえたと思った次の瞬間、後方でいきなり爆発音がした。
「は?」
驚いて振り向いてみると、そこにはその爆発に巻き込まれて数人の騎士団が倒れていた。
焼かれた服なのか焦げた人肉の匂いなのか、鼻にこびりつく匂いを残して、倒れた数人の騎士団は動くこともままならなくなっていた。
「外しましたか」
木陰から姿を現したのは銀縁の眼鏡をかけた三十代くらいの男。線は細いのに、歩き方だけで体幹が尋常じゃないのが伝わってくる。
手にしている弓矢を見るに、先程俺の手を打ち抜こうとした犯人であることは明確だった。
先程の紙一重の攻撃。そして、着弾するだけで数人を巻き込む爆発する矢。
こいつも、この大男と同じ裏傭兵団の一員ってことか。
「おいおい、ラルドが簡単に止められてんじゃねーか」
そして、その後ろからやってきた男の姿を見て、俺は無意識下で生唾を呑み込んでいた。
無造作に伸ばしっぱなしになっているような黒髪に、大きな肩幅。服の上からでも分かる膨れ上がった筋肉をそのままに、その男は防具も着けずに長剣を引き抜いていた。
「あのときの……」
「ん? どこかで会ったことあんのか? わるいな、覚えてなくて」
その男はまるで悪びれる素振りを一切見せずに、口元を微かに緩めていた。
まさか、こんなに早く再会できるとは思っていなかった。
俺はその男に釣られるように、微かに口元を緩めてしまっていた。
1
お気に入りに追加
1,526
あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

種から始める生産チート~なんでも実る世界樹を手に入れたけど、ホントに何でも実ったんですが!?(旧題:世界樹の王)
十一屋 翠
ファンタジー
とある冒険で大怪我を負った冒険者セイルは、パーティ引退を強制されてしまう。
そんな彼に残されたのは、ダンジョンで見つけたたった一つの木の実だけ。
だがこれこそが、ありとあらゆるものを生み出す世界樹の種だったのだ。
世界樹から現れた幼き聖霊はセイルを自らの主と認めると、この世のあらゆるものを実らせ、彼に様々な恩恵を与えるのだった。
お腹が空けばお肉を実らせ、生活の為にと家具を生み、更に敵が襲ってきたら大量の仲間まで!?
これは世界樹に愛された男が、文字通り全てを手に入れる幸せな物語。
この作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる