パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬

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第136話 裏傭兵団

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「アイクさん、援護いただきありがとうございました!」

「いえ、そんなに気にしないでください」

 騎士団の一人が代表するように、俺の近くまで来ると深く頭を下げてきた。

 戦いの中で自分達が劣勢に追い込まれていく中で助けられたということもあって、必要以上に感謝しているのかもしれない。

 盗賊団を捕らえたときは、俺のスキルを初めて見たせいか、少し警戒されてしまっていたから少し焦った。

 しかし、今はこの屋敷に移動するときに向けられていたような、羨望に近い視線を向けられている。

 まぁ、危険な状況に颯爽と現れて敵を瞬殺するように捕らえれば、そんな反応にもなるか。

 大勢の騎士団からそんな目を向けられれば、当然俺だって嫌な気はしない。

 しかし、素直に喜んでいられる状況ではないのは確かだった。

「それよりもすぐに来ますよ」

「来る、とは?」

「第二波ですね。先程までの盗賊団とは随分レベルが違う気配を感じます」

 俺が近くに来た騎士団にそう告げると、その声が他の騎士団たちにも聞こえたのか、一気に緩みかけていた空気が張りつめた物に変わった。

【気配感知】で感知している数個の気配。その気配の大きさが魔物と間違えるほどの大きさをしているものがある。

 それがすぐそこまで近づいてーー

「きた」

 俺がそんなことを呟いた瞬間、俺の目の前に大剣を構えた大男が突っ込んできた。

 剃り上げた頭に筋骨隆々な体つき。俺の身長を優に超える大きさで、その体と同じくらいの大きさの大剣を上段に構えて、それを俺の脳天に振り下ろしていた。

 しかし、そこでその男の動きは止まってしまっていた。

 いや、止められたのだ。自分の影から伸びるような黒い鞭によって、体を縛り上げられて。

【影支配】。大柄な魔物も縛り上げて動けなくさせるスキル。そのスキルを前に、男は体を動かすことができなくなっていた。

「うわっ、な、なんだ?!」「か、構えろ!」「なんあの男、止まってるぞ」

 突然現れた大男に驚く騎士団だったが、ピタリと動かないその様子を見て、頭に疑問符を浮かべていた。

 何か奇天烈な物でも見るかのような視線を大男に向けていて、その視線を受けた男はすぐ目の前にいる俺を眼光だけで殺すような目つきで睨んでいた。

 凄いな。下手な猛獣よりも何かに飢えているような目をしている。

「てめぇ、何をした?」

「状況分かってんのか? 質問するのはおれだ。おまえが裏傭兵団って奴か?」

「だとしたら、なんだよ」

 自分が捕まっている状態だというのに、まるで恐れている様子がない。

 先程までの盗賊団との圧倒的な力の差からすると、こいつが裏傭兵団っていうことで間違いはなさそうだ。

「まぁ、いいや。とりあえず、気を失っててもらうか」

 あんまり乱暴なことはしたくはないが、【催眠】が途中で解かれてしまっても面倒だ。

 多分、力を抑えれば死ぬことはないだろう。

 俺はそんなことを考えながら、そっと男の額の前に手をかざした。

「【精神支――】」

 俺がスキルを発動させようとした瞬間、俺は急いでその右手を引いた。

 そして、その右手があった場所に何かが通ったと思った瞬間、その後方にいた騎士団にそれが着弾した。

「ぐわっ! ……え?」

 何かが着弾してその痛みで悶える声が聞こえたと思った次の瞬間、後方でいきなり爆発音がした。

「は?」

 驚いて振り向いてみると、そこにはその爆発に巻き込まれて数人の騎士団が倒れていた。

 焼かれた服なのか焦げた人肉の匂いなのか、鼻にこびりつく匂いを残して、倒れた数人の騎士団は動くこともままならなくなっていた。

「外しましたか」

 木陰から姿を現したのは銀縁の眼鏡をかけた三十代くらいの男。線は細いのに、歩き方だけで体幹が尋常じゃないのが伝わってくる。

 手にしている弓矢を見るに、先程俺の手を打ち抜こうとした犯人であることは明確だった。

 先程の紙一重の攻撃。そして、着弾するだけで数人を巻き込む爆発する矢。

 こいつも、この大男と同じ裏傭兵団の一員ってことか。

「おいおい、ラルドが簡単に止められてんじゃねーか」

 そして、その後ろからやってきた男の姿を見て、俺は無意識下で生唾を呑み込んでいた。

 無造作に伸ばしっぱなしになっているような黒髪に、大きな肩幅。服の上からでも分かる膨れ上がった筋肉をそのままに、その男は防具も着けずに長剣を引き抜いていた。

「あのときの……」

「ん? どこかで会ったことあんのか? わるいな、覚えてなくて」

 その男はまるで悪びれる素振りを一切見せずに、口元を微かに緩めていた。

 まさか、こんなに早く再会できるとは思っていなかった。

 俺はその男に釣られるように、微かに口元を緩めてしまっていた。

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