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第135話 盗賊団の第一波
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「アイクさん? どうかされましたか?」
イリスの部屋の外に出ると、すぐに部屋の前に立っていたハンスに声をかけられた。
俺の表情から何かを感じ取ったのか、ハンスの顔は俺が話し始めるよりも早く顔が少し引き締まっていた。
「屋敷に誰か近づいてきてます」
「なんと……盗賊団ですかね?」
「おそらくはそうなんじゃないかと。【気配感知】……数は、20、いや、30? どんどん増えていきますね」
リリは俺の【気配感知】に似た効果をもつ結界魔法を張ることができる。それで屋敷から少し外の領域までを確認してもらっていた。
リリに侵入者がいることを知らされて、すぐにその数を確認しようと思ったのが、想像よりも数が多いな。
幸いなことは、この屋敷にくるまでの道は一本しかないということ。
それだけで、ある程度侵入経路が搾れるのはありがたい。
「ちょっと俺も行ってきます」
「アイクさんがですか? 騎士団もいるので、そこは騎士団にお任せ頂いて問題ないかと思うのですが。それに、アイクさんにはイリスの警護をお願いしたいのです」
「ここにはリリもポチもいますから、大丈夫ですよ。それよりも、騎士団が殲滅させられた方が、イリスさんは気に病むでしょうし」
ここに来るまでの道中の戦いなどを見て確信したが、リリとポチの二人でも止められない誘拐犯だとしたら、俺でもイリスを守るのは難しいだろう。
それに、リリに至っては結界をある程度自由に造れるだろうし、守るということに関しては俺よりも上かもしれない。
それなら、俺がやるべきことはむしろ攻めに出ることだと思う。
裏傭兵団という実力者が攻めてくるかもしれないという状況で、一方的に攻めこまれたら逆に不利になる。
それに、そいつらが前にワルド王国であった男と同等の力があるとしたら、騎士団は瞬殺されるだろう。
そんな事実を前にして、イリスが気にしないわけがないし、気に病む未来しか見えない。
警護は完璧にしましたと言っても、その子の心をまるで守れなかったら、その依頼は失敗同然だろう。
「そこまでの人物が……分かりました。くれぐれも、お気をつけてください」
「ハンスさんもお気をつけて」
俺は律義に頭を下げてくるハンスの姿をその場に残して、戦場になっているであろう外に向かって走り出した。
外に出ると、そこは案の定、騎士団と盗賊団の戦場になっていた。
「あれ? 結構優勢……いや、そんなこともないか」
しっかりと隊列を組んで自陣を守ろうとする騎士団の活躍は素人目でも分かるくらい、立派な活躍をしていた。
すでに捕縛した盗賊たちや、地面に転がっている盗賊たちもいて、一見優勢のように思える。
「また人海戦術か」
確かな実力がある騎士団なのだが、さすがにその数を前に圧倒されつつあった。
【気配感知】で確認をしてみると先程よりも盗賊たちの数が増えていて、それに押されるように騎士団の隊列も押されていた。
こんな数の暴力をされたら、どんな奴でも自陣を守るのは厳しいだろう
「【肉体支配】」
それが普通の騎士や冒険者の場合はな。
俺がそのスキルを使用した瞬間、真っ赤な丸い形をしたバルーンが何もない所から無数に生まれた。
初めからそこにあったかのようなそれらは、形容しがたい不気味さがあった。
「な、なんだあれ?」「こんなの作戦にあったか?」「風船?」
そのバルーンはその戦場で一定間隔に配置されていて、ただぷかぷかと浮いていた。
そんな奇妙な光景に、今ここにいる人物は全員釘付けになっていた。
そして、次の瞬間、周囲に浮かんでいる無数のバルーンが破裂した。
残ったのはバルーンの破裂音と、その後の余韻だけ。
急に現れたバルーンが割れた。その奇妙な出来事を前にただ静寂が流れていた。
「はい。それじゃあ、騎士団以外の奴ら集合」
その静寂を破ったのは、柏手のような俺の手の音と俺の声。
俺が彼らの肉体にそう命令をすると、騎士団に襲い掛かっていた盗賊団の足が俺の方に向けられて、ぞろぞろと集まってきた。
自分の意思と反して動く体が気持ち悪いのか、未知の経験を前に顔を歪ませて、所々悲鳴が上がっている。
「な、なんだこれ!」「か、体が勝手に!」「くそっ、くそっ!!」
いや、ただ肉体を操っているだけなのだけど。
しかし、そのタネを分かっている俺から見ても、数十人が一気に操られている様子は、形容しがたい奇妙さがあった。
顔を引きつらせながらやってきた盗賊団は、その命令主が俺であることにどこかで気づいたのか、俺に畏怖の念でも抱いているような目を向けていた。
これから皆殺しでもされると思ったのか、脅えた表情をしている奴らまでいる。
俺はやってきた盗賊団の足元に、アイテムボックスから縄を取り出して、地面にそれを投げた。
「これで自分達を縛って、騎士団に確保されること」
俺が異常に脅えているような盗賊団に、少しの笑みを向けてそう言うと、盗賊団は自分達の仲間を拘束し合って、騎士団の前に正座をしてお縄についたのだった。
「あ、悪魔だ」
いや、道化師だからな。むしろ、無傷で確保してだから天使だろ。
どこかから聞こえてきた声に心の中でツッコミを入れつつ、俺たちは無事に盗賊たちの第一波を無事に防ぐことに成功――。
「騎士団の方たちは、捕らえた盗賊をお願いします」
「あっ、はい」
成功したと思った次の瞬間には、すぐに【気配感知】に反応があった。
どうやら、このまま第二派がやってくるみたいだ。
俺は騎士団たちよりも数歩だけ前に出て、次の攻撃に備えた。
気のせいか、少しだけ空気の色が変わったような気がした。
イリスの部屋の外に出ると、すぐに部屋の前に立っていたハンスに声をかけられた。
俺の表情から何かを感じ取ったのか、ハンスの顔は俺が話し始めるよりも早く顔が少し引き締まっていた。
「屋敷に誰か近づいてきてます」
「なんと……盗賊団ですかね?」
「おそらくはそうなんじゃないかと。【気配感知】……数は、20、いや、30? どんどん増えていきますね」
リリは俺の【気配感知】に似た効果をもつ結界魔法を張ることができる。それで屋敷から少し外の領域までを確認してもらっていた。
リリに侵入者がいることを知らされて、すぐにその数を確認しようと思ったのが、想像よりも数が多いな。
幸いなことは、この屋敷にくるまでの道は一本しかないということ。
それだけで、ある程度侵入経路が搾れるのはありがたい。
「ちょっと俺も行ってきます」
「アイクさんがですか? 騎士団もいるので、そこは騎士団にお任せ頂いて問題ないかと思うのですが。それに、アイクさんにはイリスの警護をお願いしたいのです」
「ここにはリリもポチもいますから、大丈夫ですよ。それよりも、騎士団が殲滅させられた方が、イリスさんは気に病むでしょうし」
ここに来るまでの道中の戦いなどを見て確信したが、リリとポチの二人でも止められない誘拐犯だとしたら、俺でもイリスを守るのは難しいだろう。
それに、リリに至っては結界をある程度自由に造れるだろうし、守るということに関しては俺よりも上かもしれない。
それなら、俺がやるべきことはむしろ攻めに出ることだと思う。
裏傭兵団という実力者が攻めてくるかもしれないという状況で、一方的に攻めこまれたら逆に不利になる。
それに、そいつらが前にワルド王国であった男と同等の力があるとしたら、騎士団は瞬殺されるだろう。
そんな事実を前にして、イリスが気にしないわけがないし、気に病む未来しか見えない。
警護は完璧にしましたと言っても、その子の心をまるで守れなかったら、その依頼は失敗同然だろう。
「そこまでの人物が……分かりました。くれぐれも、お気をつけてください」
「ハンスさんもお気をつけて」
俺は律義に頭を下げてくるハンスの姿をその場に残して、戦場になっているであろう外に向かって走り出した。
外に出ると、そこは案の定、騎士団と盗賊団の戦場になっていた。
「あれ? 結構優勢……いや、そんなこともないか」
しっかりと隊列を組んで自陣を守ろうとする騎士団の活躍は素人目でも分かるくらい、立派な活躍をしていた。
すでに捕縛した盗賊たちや、地面に転がっている盗賊たちもいて、一見優勢のように思える。
「また人海戦術か」
確かな実力がある騎士団なのだが、さすがにその数を前に圧倒されつつあった。
【気配感知】で確認をしてみると先程よりも盗賊たちの数が増えていて、それに押されるように騎士団の隊列も押されていた。
こんな数の暴力をされたら、どんな奴でも自陣を守るのは厳しいだろう
「【肉体支配】」
それが普通の騎士や冒険者の場合はな。
俺がそのスキルを使用した瞬間、真っ赤な丸い形をしたバルーンが何もない所から無数に生まれた。
初めからそこにあったかのようなそれらは、形容しがたい不気味さがあった。
「な、なんだあれ?」「こんなの作戦にあったか?」「風船?」
そのバルーンはその戦場で一定間隔に配置されていて、ただぷかぷかと浮いていた。
そんな奇妙な光景に、今ここにいる人物は全員釘付けになっていた。
そして、次の瞬間、周囲に浮かんでいる無数のバルーンが破裂した。
残ったのはバルーンの破裂音と、その後の余韻だけ。
急に現れたバルーンが割れた。その奇妙な出来事を前にただ静寂が流れていた。
「はい。それじゃあ、騎士団以外の奴ら集合」
その静寂を破ったのは、柏手のような俺の手の音と俺の声。
俺が彼らの肉体にそう命令をすると、騎士団に襲い掛かっていた盗賊団の足が俺の方に向けられて、ぞろぞろと集まってきた。
自分の意思と反して動く体が気持ち悪いのか、未知の経験を前に顔を歪ませて、所々悲鳴が上がっている。
「な、なんだこれ!」「か、体が勝手に!」「くそっ、くそっ!!」
いや、ただ肉体を操っているだけなのだけど。
しかし、そのタネを分かっている俺から見ても、数十人が一気に操られている様子は、形容しがたい奇妙さがあった。
顔を引きつらせながらやってきた盗賊団は、その命令主が俺であることにどこかで気づいたのか、俺に畏怖の念でも抱いているような目を向けていた。
これから皆殺しでもされると思ったのか、脅えた表情をしている奴らまでいる。
俺はやってきた盗賊団の足元に、アイテムボックスから縄を取り出して、地面にそれを投げた。
「これで自分達を縛って、騎士団に確保されること」
俺が異常に脅えているような盗賊団に、少しの笑みを向けてそう言うと、盗賊団は自分達の仲間を拘束し合って、騎士団の前に正座をしてお縄についたのだった。
「あ、悪魔だ」
いや、道化師だからな。むしろ、無傷で確保してだから天使だろ。
どこかから聞こえてきた声に心の中でツッコミを入れつつ、俺たちは無事に盗賊たちの第一波を無事に防ぐことに成功――。
「騎士団の方たちは、捕らえた盗賊をお願いします」
「あっ、はい」
成功したと思った次の瞬間には、すぐに【気配感知】に反応があった。
どうやら、このまま第二派がやってくるみたいだ。
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