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第103話 今後の予定をお酒と共に
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「えっと、なんか知らないけど、騎士爵になりました。乾杯」
「「「「乾杯!!」」」」
盗賊団から姫を奪い返して、ただの冒険者だった俺は、気づけば騎士爵になっていた。
そして、今は以前にA級に昇格したときに、俺たちを祝ってくれた面々にそのお祝いをしてもらっていた。
なんか屋敷に戻るとガリアから大量のお酒が送られてきていた。ガリアは一足先に俺が騎士爵になることを知っていたようで、そのお祝いの品をミリアに聞いていたらしい。
その結果、現金以外ならお酒が良いだろうということになって、十数本のお酒が送られてきた。
それも、高そうな瓶に入っているものが多く、その額は中々馬鹿にできるものではないことが想像できた。
多分、これはただのお祝いというよりも、今後の付き合いもよろしく頼む的な物だろうな。
ということは、今後もこの前みたいな依頼を頼まれるということになるのだろうか?
……ていうか、いつの間にか俺が酒飲みキャラになってきている気がするのは、気のせいだよな?
酒以外の贈り物をもらった気がしない気がする。
そんな高そうなお酒に負けじと、リリも気合を入れて料理を作ると言い出したので、せっかくなら人を呼ぶかということになり、いつもの面々を呼ぶことになった。
そして今、ちょっとした宴会のような物が始まっていた。
「冒険者から騎士爵だなんて、凄い出世じゃないかよ、アイク! そして、この酒は美味い!」
「まさか、私の知らない所でそんなクエストが行われていたとは……あっ、美味しい! ガリアさんにお酒を提案しておいてよかったです。はぁ……美味しいお酒とご飯に囲まれて、最高の気分です」
バングとミリアは俺以上に騎士爵になったことを驚き、それ以上にお酒の味に感動していた。
ミリアに至っては、グラスを傾けながらうっとりしてしまっている。
……初めから、これが目的でお酒を勧めたわけではない、よな?
「なんか、アイクくんって会う度に出世してるね。今度会ったら、一体何になってるのかしら?」
イーナはそんな二人に視線を向けた後、微かに笑みを浮かべながらそんな言葉を口にした。
少しからかっているようで、どこか本気で期待しているような視線。確かに、イーナと顔を合わすときって、大概祝いの席のような気がする。
普段この街にいないイーナからしたら、この街に来る度に俺が出世しているように思うのかもしれないな。
「いや、俺もこんなことになるとは思ってなかったんだよ」
俺は少し照れるようにイーナから視線を外して、その感情を誤魔化そうとグラスに注がれているお酒を飲もうとしたところで、ふと思い出したことがあった。
「あっ、ミリアさん。俺よりも強いステータスの人って、結構たくさんいるんですかね?」
今回の依頼で圧倒的な差がある相手と対面した。多分、これほど差を感じたのは俺が【道化師】になってから、初めてのことだっただろう。
そうなると、今の自分の立ち位置がどのくらいなのか知っておきたくなった。
ミリアは職業柄多くの人のステータスを見る機会があるだろうし、参考までにミリアの言葉を聞いてみたかった。
しかし、そんな俺の言葉を聞いたミリアは、リリの作ったパスタを食べながら、ジトっとした目をこちらに向けたまま言葉を続けた。
「いや、アイクさん並みの人がたくさんいるわけないじゃないですか。なんですか、そのバケモノだらけの街、普通に怖いですよ」
「ば、バケモノって……」
「アイクさんはA級の中でもステータス高い方だと思いますよ。今回も結構余裕だったんじゃないですか?」
「いや、今回は殺されそうになりました」
「んぐっ! え? あ、アイクさんがですか?! ど、どういうことですか?!」
ミリアは思ってもいなかった返答が返ってきたのか、口の中を流し込もうとしていたお酒を噴き出しそうになっていたようだった。
「そもそも、A級の冒険者自体多くないだろ? アイクが殺されそうになるほどの奴って……本当に、そんな奴いるのか?」
バングも俺の発言を疑うように、訝しげに眉を潜めていた。
どうやら、俺がただ自分の強さに天狗になっているという訳ではなさそうだ。客観的に見ても、俺を圧倒できる存在は稀という認識で合っているようだった。
なので、俺は今回の依頼であったことをそのまま話すことにしたのだった。
「――ていうことがあったで、もっとレベル上げしないとかなと思ってたんですけど」
「ワルド王国ですもんね……もしかしたら、表の人間じゃない説もありますね」
「ああ。なんか昔、どこかの犯罪者を攫ってきて傭兵にしてるって噂もあったしな」
俺の話を聞き終えると、バングとミリアはそんな言葉を口にしていた。
どうやら、ワルド王国があまり良い国ではないという認識は、間違っていなかったらしい。
都市伝説みたいなのも含めれば、結構闇が深い国だったりするのだ、ワルド王国は。
「まだ公表はしてないだろうけど、今回の事件がきっかけで、ワルド王国とのバランスが崩れるでしょうね」
「まぁ、そうなるよな」
一国の姫を誘拐したワルド王国に対する処遇については、まだ正式に発表をされていなかった。
今後どんな処遇が下されるのかは分からないが、国としての信頼は落ちるとは思う。
いや、全ての責任を盗賊団に擦り付けて、国は知らんぷりということもできるのか。
……まぁ、後は俺が考えても仕方がない。必要な情報は全て伝えておいたし、後はお偉いさん方がどうにかするだろう。
「ていうか、アイク。レベル上げもいいが、少しくらい休まないと倒れるぞ?」
「いや、程々に休んではいますよ」
忙しい日もあるけれど、自分のペースで依頼を受けることができているし、こうしてお酒を飲むくらいの余裕はある。
そう思ってそんな返答をしたのだが、俺はリリ以外の面々からジトっとした目を向けられていた。
「……程々に休んでる人が、短期間でF級からA級まで冒険者ランクを上げて、騎士爵に出世するわけないじゃないですか」
ミリアがそんなことを言うと、リリ以外の面々は俺に向けている視線をそのままに小さく頷いていた。
あれ? なんか周囲の反応が思ったのと違う?
「もしかして、リリとポチは結構疲れてたりするのか?」
「私はアイクさんの助手なので、問題ありません!」
「きゃんっ!」
誇らしげに胸を張っている二人だが、二人が正直に疲れたと口にするようなことはないような気がする。
そういえば、今まで二人の疲労具合について聞いたことがなかったな。
リリとポチは平気だと言ってはいるが、普段の魔物との戦闘においても、俺よりもステータスが低い二人は疲労を溜めていると思う。
俺も今回の一件で結構疲れてたりするし、休むにしては悪くないタイミングかもしれない。
「貰った土地と屋敷ってオルロにあるんですよね? 一度訪れてもいいのでは?」
俺たちが褒美で貰った屋敷はオルロという少し田舎の街にある。穏やかな海が近い街で、天然の温泉もあると聞いたことがある。
俺たちが王都に屋敷を持っていることから、穏やかな街にある屋敷をプレゼントしてくれたのだろう。
確かに、一度くらいは自分の屋敷がある街を見てみたいな。
「あ、そういえば、オルロって言えば海近いわよね。……新鮮な海魚かぁ」
「食べたいのか?」
「…………売りたい」
しみじみとそんなことを口にしたイーナは、少しだけ物欲しそうな視線をこちらに向けてきた。
そういえば、俺は冒険者としてだけでもなく、『道化師商会』としてブランド肉を扱う商会の一人でもあったのだった。
「オルロかぁ」
これまでの疲れを癒しつつ、新鮮な魚も卸せるし、貰った屋敷も見れる。
どうやら、レベル上げよりも先にやることが決まったようだった。
「「「「乾杯!!」」」」
盗賊団から姫を奪い返して、ただの冒険者だった俺は、気づけば騎士爵になっていた。
そして、今は以前にA級に昇格したときに、俺たちを祝ってくれた面々にそのお祝いをしてもらっていた。
なんか屋敷に戻るとガリアから大量のお酒が送られてきていた。ガリアは一足先に俺が騎士爵になることを知っていたようで、そのお祝いの品をミリアに聞いていたらしい。
その結果、現金以外ならお酒が良いだろうということになって、十数本のお酒が送られてきた。
それも、高そうな瓶に入っているものが多く、その額は中々馬鹿にできるものではないことが想像できた。
多分、これはただのお祝いというよりも、今後の付き合いもよろしく頼む的な物だろうな。
ということは、今後もこの前みたいな依頼を頼まれるということになるのだろうか?
……ていうか、いつの間にか俺が酒飲みキャラになってきている気がするのは、気のせいだよな?
酒以外の贈り物をもらった気がしない気がする。
そんな高そうなお酒に負けじと、リリも気合を入れて料理を作ると言い出したので、せっかくなら人を呼ぶかということになり、いつもの面々を呼ぶことになった。
そして今、ちょっとした宴会のような物が始まっていた。
「冒険者から騎士爵だなんて、凄い出世じゃないかよ、アイク! そして、この酒は美味い!」
「まさか、私の知らない所でそんなクエストが行われていたとは……あっ、美味しい! ガリアさんにお酒を提案しておいてよかったです。はぁ……美味しいお酒とご飯に囲まれて、最高の気分です」
バングとミリアは俺以上に騎士爵になったことを驚き、それ以上にお酒の味に感動していた。
ミリアに至っては、グラスを傾けながらうっとりしてしまっている。
……初めから、これが目的でお酒を勧めたわけではない、よな?
「なんか、アイクくんって会う度に出世してるね。今度会ったら、一体何になってるのかしら?」
イーナはそんな二人に視線を向けた後、微かに笑みを浮かべながらそんな言葉を口にした。
少しからかっているようで、どこか本気で期待しているような視線。確かに、イーナと顔を合わすときって、大概祝いの席のような気がする。
普段この街にいないイーナからしたら、この街に来る度に俺が出世しているように思うのかもしれないな。
「いや、俺もこんなことになるとは思ってなかったんだよ」
俺は少し照れるようにイーナから視線を外して、その感情を誤魔化そうとグラスに注がれているお酒を飲もうとしたところで、ふと思い出したことがあった。
「あっ、ミリアさん。俺よりも強いステータスの人って、結構たくさんいるんですかね?」
今回の依頼で圧倒的な差がある相手と対面した。多分、これほど差を感じたのは俺が【道化師】になってから、初めてのことだっただろう。
そうなると、今の自分の立ち位置がどのくらいなのか知っておきたくなった。
ミリアは職業柄多くの人のステータスを見る機会があるだろうし、参考までにミリアの言葉を聞いてみたかった。
しかし、そんな俺の言葉を聞いたミリアは、リリの作ったパスタを食べながら、ジトっとした目をこちらに向けたまま言葉を続けた。
「いや、アイクさん並みの人がたくさんいるわけないじゃないですか。なんですか、そのバケモノだらけの街、普通に怖いですよ」
「ば、バケモノって……」
「アイクさんはA級の中でもステータス高い方だと思いますよ。今回も結構余裕だったんじゃないですか?」
「いや、今回は殺されそうになりました」
「んぐっ! え? あ、アイクさんがですか?! ど、どういうことですか?!」
ミリアは思ってもいなかった返答が返ってきたのか、口の中を流し込もうとしていたお酒を噴き出しそうになっていたようだった。
「そもそも、A級の冒険者自体多くないだろ? アイクが殺されそうになるほどの奴って……本当に、そんな奴いるのか?」
バングも俺の発言を疑うように、訝しげに眉を潜めていた。
どうやら、俺がただ自分の強さに天狗になっているという訳ではなさそうだ。客観的に見ても、俺を圧倒できる存在は稀という認識で合っているようだった。
なので、俺は今回の依頼であったことをそのまま話すことにしたのだった。
「――ていうことがあったで、もっとレベル上げしないとかなと思ってたんですけど」
「ワルド王国ですもんね……もしかしたら、表の人間じゃない説もありますね」
「ああ。なんか昔、どこかの犯罪者を攫ってきて傭兵にしてるって噂もあったしな」
俺の話を聞き終えると、バングとミリアはそんな言葉を口にしていた。
どうやら、ワルド王国があまり良い国ではないという認識は、間違っていなかったらしい。
都市伝説みたいなのも含めれば、結構闇が深い国だったりするのだ、ワルド王国は。
「まだ公表はしてないだろうけど、今回の事件がきっかけで、ワルド王国とのバランスが崩れるでしょうね」
「まぁ、そうなるよな」
一国の姫を誘拐したワルド王国に対する処遇については、まだ正式に発表をされていなかった。
今後どんな処遇が下されるのかは分からないが、国としての信頼は落ちるとは思う。
いや、全ての責任を盗賊団に擦り付けて、国は知らんぷりということもできるのか。
……まぁ、後は俺が考えても仕方がない。必要な情報は全て伝えておいたし、後はお偉いさん方がどうにかするだろう。
「ていうか、アイク。レベル上げもいいが、少しくらい休まないと倒れるぞ?」
「いや、程々に休んではいますよ」
忙しい日もあるけれど、自分のペースで依頼を受けることができているし、こうしてお酒を飲むくらいの余裕はある。
そう思ってそんな返答をしたのだが、俺はリリ以外の面々からジトっとした目を向けられていた。
「……程々に休んでる人が、短期間でF級からA級まで冒険者ランクを上げて、騎士爵に出世するわけないじゃないですか」
ミリアがそんなことを言うと、リリ以外の面々は俺に向けている視線をそのままに小さく頷いていた。
あれ? なんか周囲の反応が思ったのと違う?
「もしかして、リリとポチは結構疲れてたりするのか?」
「私はアイクさんの助手なので、問題ありません!」
「きゃんっ!」
誇らしげに胸を張っている二人だが、二人が正直に疲れたと口にするようなことはないような気がする。
そういえば、今まで二人の疲労具合について聞いたことがなかったな。
リリとポチは平気だと言ってはいるが、普段の魔物との戦闘においても、俺よりもステータスが低い二人は疲労を溜めていると思う。
俺も今回の一件で結構疲れてたりするし、休むにしては悪くないタイミングかもしれない。
「貰った土地と屋敷ってオルロにあるんですよね? 一度訪れてもいいのでは?」
俺たちが褒美で貰った屋敷はオルロという少し田舎の街にある。穏やかな海が近い街で、天然の温泉もあると聞いたことがある。
俺たちが王都に屋敷を持っていることから、穏やかな街にある屋敷をプレゼントしてくれたのだろう。
確かに、一度くらいは自分の屋敷がある街を見てみたいな。
「あ、そういえば、オルロって言えば海近いわよね。……新鮮な海魚かぁ」
「食べたいのか?」
「…………売りたい」
しみじみとそんなことを口にしたイーナは、少しだけ物欲しそうな視線をこちらに向けてきた。
そういえば、俺は冒険者としてだけでもなく、『道化師商会』としてブランド肉を扱う商会の一人でもあったのだった。
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