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第65話 秘密の作戦
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「まさか、あんなに上手くいくとは思わなかったな」
「ほら、だから言ったでしょ? 噂は作れるのよ」
俺たちは宿屋にて、今後の方針について話し合っていた。
やはり、その中で触れなく得てはならないのは今日のイーナのファインプレイについてだった。
冒険者ギルド裏の倉庫に行く前に、イーナからこんなことを言われていたのだ。
「倉庫で解体の依頼してもらうときに職員さんが食べてみたいって言うから、そしたら数百グラムだけ分けてあげてもいいって言ってね」
イーナは当たり前のことを言うかのようにそんなことを言っていた。来る質問の内容を前もって知っているような言葉遣いに、俺は首を傾げてしまっていた。
「別にそのくらいなら良いけど、なんでそんな質問が来るって分かるんだ?」
「ううん。分かるんじゃないの。そう言わせるの」
「言わせる?」
余計に訳が分からない。そんな俺の考えていることが表情に出ているのか、イーナは俺の顔を見て小さく笑みを浮かべていた。
「うん。私が誘導するから安心して。あっ、こっちから提案したりはしないでね。相手が言わなそうでも、言ったりしたらダメ」
「え? な、なんで?」
もしも職員が言ってこなかったら、こっちから言えばいいかと安直に考えていたのだが、その考えはあっさりと否定されてしまった。
「自発的に動いてもらうことが重要なの。自分で選んでその経験をしたっていう体験をしてもらえれば、まるで自分の手柄みたいに自慢するものなのよ、人間って」
リリはそんなことを言いながら不敵な笑みを浮かべていた。
何か人間の芯の部分を知っているような言葉と、妙に説得力のある口調に俺は微かにたじろんでしまった。
普通に同い年くらいの女の子が口にする言葉ではない気がする。
「……イーナって、実は俺と一回りくらい違ったりする?」
「ちょっ、どういう意味?!」
だから、何か誤解を与えるような結果になったのも仕方がないことだと思う。
人の発言を誘導するなんてことができるのだろうか。そんな半信半疑で俺は冒険者ギルドの倉庫に向かった。
その結果、本当にイーナの言ったとおりになり、すぐにその噂は広まったらしい。
夕食を食べているときも周りの席から幻の肉の話が上がっていたようだった。
『とあるルートでしか手に入らない幻の肉がある』そんな噂がすぐに広がった
もう一日もすれば、街中で知らないものはいないくらいに広まることだろう。
さすが、商業の街ブルク。金の匂いがする話題についての情報の広まり方が早い。
イーナ曰く、伝達速度が速いということは、次に新しい別の噂が立った時は俺達の肉の噂はかき消されるらしい。
だから、噂が広まり始めた序盤にそれがデマでないことを証明する必要があるらしく、二日後にリリが料理を振るまう日を持ってきたとか。
どこまで考えているんだろうな、本当に。
「あとは解体が明日の夕方には終わるみたいだから、アイクくん達で料理で使う物を買っておいてくれると助かるかな。残った時間はゆっくりしてもらっていいわよ」
「了解。それじゃあ、リリ。明日は市場の方に行ってみるか」
「はいっ、分かりました」
イーナも方も最終調整をするようで、俺達も最後の準備に取り掛かる必要があるみたいだった。
ファングとハイヒッポアリゲーターの魔物肉をリリがどう料理するのか。そして、それがどんな結果をもたらすのか。
これから俺にできることはかなり少ないだろう。今回は俺がリリを支えることになりそうだな。
俺たちはそれからもうしばらく打ち合わせをして、その日は解散をすることになった。
「ほら、だから言ったでしょ? 噂は作れるのよ」
俺たちは宿屋にて、今後の方針について話し合っていた。
やはり、その中で触れなく得てはならないのは今日のイーナのファインプレイについてだった。
冒険者ギルド裏の倉庫に行く前に、イーナからこんなことを言われていたのだ。
「倉庫で解体の依頼してもらうときに職員さんが食べてみたいって言うから、そしたら数百グラムだけ分けてあげてもいいって言ってね」
イーナは当たり前のことを言うかのようにそんなことを言っていた。来る質問の内容を前もって知っているような言葉遣いに、俺は首を傾げてしまっていた。
「別にそのくらいなら良いけど、なんでそんな質問が来るって分かるんだ?」
「ううん。分かるんじゃないの。そう言わせるの」
「言わせる?」
余計に訳が分からない。そんな俺の考えていることが表情に出ているのか、イーナは俺の顔を見て小さく笑みを浮かべていた。
「うん。私が誘導するから安心して。あっ、こっちから提案したりはしないでね。相手が言わなそうでも、言ったりしたらダメ」
「え? な、なんで?」
もしも職員が言ってこなかったら、こっちから言えばいいかと安直に考えていたのだが、その考えはあっさりと否定されてしまった。
「自発的に動いてもらうことが重要なの。自分で選んでその経験をしたっていう体験をしてもらえれば、まるで自分の手柄みたいに自慢するものなのよ、人間って」
リリはそんなことを言いながら不敵な笑みを浮かべていた。
何か人間の芯の部分を知っているような言葉と、妙に説得力のある口調に俺は微かにたじろんでしまった。
普通に同い年くらいの女の子が口にする言葉ではない気がする。
「……イーナって、実は俺と一回りくらい違ったりする?」
「ちょっ、どういう意味?!」
だから、何か誤解を与えるような結果になったのも仕方がないことだと思う。
人の発言を誘導するなんてことができるのだろうか。そんな半信半疑で俺は冒険者ギルドの倉庫に向かった。
その結果、本当にイーナの言ったとおりになり、すぐにその噂は広まったらしい。
夕食を食べているときも周りの席から幻の肉の話が上がっていたようだった。
『とあるルートでしか手に入らない幻の肉がある』そんな噂がすぐに広がった
もう一日もすれば、街中で知らないものはいないくらいに広まることだろう。
さすが、商業の街ブルク。金の匂いがする話題についての情報の広まり方が早い。
イーナ曰く、伝達速度が速いということは、次に新しい別の噂が立った時は俺達の肉の噂はかき消されるらしい。
だから、噂が広まり始めた序盤にそれがデマでないことを証明する必要があるらしく、二日後にリリが料理を振るまう日を持ってきたとか。
どこまで考えているんだろうな、本当に。
「あとは解体が明日の夕方には終わるみたいだから、アイクくん達で料理で使う物を買っておいてくれると助かるかな。残った時間はゆっくりしてもらっていいわよ」
「了解。それじゃあ、リリ。明日は市場の方に行ってみるか」
「はいっ、分かりました」
イーナも方も最終調整をするようで、俺達も最後の準備に取り掛かる必要があるみたいだった。
ファングとハイヒッポアリゲーターの魔物肉をリリがどう料理するのか。そして、それがどんな結果をもたらすのか。
これから俺にできることはかなり少ないだろう。今回は俺がリリを支えることになりそうだな。
俺たちはそれからもうしばらく打ち合わせをして、その日は解散をすることになった。
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