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第57話 商業都市ブルク
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商業都市ブルク。ミノラルから相乗りの馬車で二日ほど離れた場所にある街だ。王都の西側の商業の栄えている所以上に活気があり、街全体で商売を盛り上げようという雰囲気を感じる。
少し店を覗けば店員がすぐにお客さんについて接客をするし、その奥では店主と商人が商売の話をしている。
そんなお金の匂いが常に漂っているような場所、それが商用都市ブルクだった。
「突然だったのに、ついてきてくれてありがとうね」
バングたちとお酒を飲んだ翌朝。イーナが突然屋敷にやってきた。
どうやら、俺のアイテムボックスの時間停止機能を使って、新鮮な魔物肉を卸す手はずを整えてくれているらしいのだが、最後の一押しが足りていないようだった。
屋敷で出されたリリの料理を食べて、その現物を見せて食べてもらえば強い印象を与えられると思ったらしく、俺たちに協力を仰いできたのだ。
「それじゃあ、私は色々手はずを整えてくるから、宿が決まったら前に私が教えた住所の所に来て。宿代とご飯代、魔物を討伐しに行くならその移動費とかしっかり請求してね。ケチって徒歩で移動しないで馬車とかで移動すること。いい?」
「いや、さすがにそこまでしてもらうのは悪いって」
「いいの。むしろ、私が強引に誘っておいて、その滞在費をアイクくん達に払わせるほうがおかしいわよ。こういうのは先行投資っていうの、後で何倍にもなって返ってくるんだから、気にしないの」
俺たちは馬車で移動中にイーナから今回のブルクでの予定を聞かされた。
まずはイーナが最終調整と調理場の手配などを三日かけて行ってくれるらしい。その調整が終わったあとに、商人や店に魔物肉を使った料理を振舞って欲しいとのことだった。
俺たちが頼まれたのは魔物肉の調達と、当日の料理。
その他の時間は好きにしていていいらしく、その滞在費は全額イーナが持ってくれると言い出した。
さすがにそれは悪いと断っているのだが、どうもイーナは折れる気配を見せなかった。
「その代わり、魔物を解体してもらうときは、私と一緒に行くことを約束して。それを守ってくれるだけで、滞在費を帳消しにできるんだから」
「え? なんでだ?」
何をどうしたらそんな滞在費がチャラになるのか分からず、俺がそんなことを聞くと、イーナは人差し指をピンと立てて説明をしてくれた。
「バングさんも解体をするときに、アイクくんの魔物肉が異常に新鮮だったことことに気づいたんだって。だから、この街の人も絶対に気づくと思う。そうなったら、アイクくんこの街から出られなくなるくらい営業かけられることになるよ」
「そ、それはさすがに面倒くさい」
少し歩いただけでもお金のセンサーがビンビンに立っているような街だ。確かに、そんな人たちがバングが気づいたことに気づかないわけがない気がする。
そして、気づいたらその魔物肉を何とか手に入れようとしてくるだろう。
俺もバングやイーナだから伸び伸びとやらせてもらっているが、もっと束縛してくるような商人とは一緒にやっていける気がしない。
「でしょ? それに、私としてもちょっかいかけられたくないの。……あっ、もちろん、商人としてね」
イーナはリリの方をちらりと見て、何かを誤魔化すように咳ばらいを一つした。
「でも、私がいれば私の専属の取引相手ってことで営業をかけられないで済む。そして、一気にその新鮮過ぎる魔物肉の存在は広まることになるの。なかなか手に入らない幻の肉として無料で広告できるのよ!」
「な、なるほど」
イーナは名案だと言うかのように、身を乗り出されたようにそんなことを言ってきた。お金の匂いを嗅ぎ取ったような煌めいた瞳を向けられて、俺は思わず笑ってしまった。
「な、なにかしら?」
「いや、イーナも商人なんだなって思ってな」
「そ、そうだけど。なんで今さら?」
普段はただの華奢な女の子にしか見えなかったが、しっかりとお金の匂いをかぎ取って商売をしている商人なのだ。
初めて見るそんな姿が少しだけ新鮮で、イーナの新たな一面を見た気がした。
「いや、何でもないよ。うん、分かった。せっかくだから、イーナの好意に甘えることにするよ」
三日間の滞在費をかけてでも守りたいルートと、それによる宣伝効果までも考えて提案してくれているのだ。
お金のことはイーナに任せることにしよう。ここまで考えてくれているのに、滞在費を断る理由もない。
俺たちは任されたことをすることにしよう。
こうして、俺たちの魔物肉のルート確保の挑戦が始まったのだった。
少し店を覗けば店員がすぐにお客さんについて接客をするし、その奥では店主と商人が商売の話をしている。
そんなお金の匂いが常に漂っているような場所、それが商用都市ブルクだった。
「突然だったのに、ついてきてくれてありがとうね」
バングたちとお酒を飲んだ翌朝。イーナが突然屋敷にやってきた。
どうやら、俺のアイテムボックスの時間停止機能を使って、新鮮な魔物肉を卸す手はずを整えてくれているらしいのだが、最後の一押しが足りていないようだった。
屋敷で出されたリリの料理を食べて、その現物を見せて食べてもらえば強い印象を与えられると思ったらしく、俺たちに協力を仰いできたのだ。
「それじゃあ、私は色々手はずを整えてくるから、宿が決まったら前に私が教えた住所の所に来て。宿代とご飯代、魔物を討伐しに行くならその移動費とかしっかり請求してね。ケチって徒歩で移動しないで馬車とかで移動すること。いい?」
「いや、さすがにそこまでしてもらうのは悪いって」
「いいの。むしろ、私が強引に誘っておいて、その滞在費をアイクくん達に払わせるほうがおかしいわよ。こういうのは先行投資っていうの、後で何倍にもなって返ってくるんだから、気にしないの」
俺たちは馬車で移動中にイーナから今回のブルクでの予定を聞かされた。
まずはイーナが最終調整と調理場の手配などを三日かけて行ってくれるらしい。その調整が終わったあとに、商人や店に魔物肉を使った料理を振舞って欲しいとのことだった。
俺たちが頼まれたのは魔物肉の調達と、当日の料理。
その他の時間は好きにしていていいらしく、その滞在費は全額イーナが持ってくれると言い出した。
さすがにそれは悪いと断っているのだが、どうもイーナは折れる気配を見せなかった。
「その代わり、魔物を解体してもらうときは、私と一緒に行くことを約束して。それを守ってくれるだけで、滞在費を帳消しにできるんだから」
「え? なんでだ?」
何をどうしたらそんな滞在費がチャラになるのか分からず、俺がそんなことを聞くと、イーナは人差し指をピンと立てて説明をしてくれた。
「バングさんも解体をするときに、アイクくんの魔物肉が異常に新鮮だったことことに気づいたんだって。だから、この街の人も絶対に気づくと思う。そうなったら、アイクくんこの街から出られなくなるくらい営業かけられることになるよ」
「そ、それはさすがに面倒くさい」
少し歩いただけでもお金のセンサーがビンビンに立っているような街だ。確かに、そんな人たちがバングが気づいたことに気づかないわけがない気がする。
そして、気づいたらその魔物肉を何とか手に入れようとしてくるだろう。
俺もバングやイーナだから伸び伸びとやらせてもらっているが、もっと束縛してくるような商人とは一緒にやっていける気がしない。
「でしょ? それに、私としてもちょっかいかけられたくないの。……あっ、もちろん、商人としてね」
イーナはリリの方をちらりと見て、何かを誤魔化すように咳ばらいを一つした。
「でも、私がいれば私の専属の取引相手ってことで営業をかけられないで済む。そして、一気にその新鮮過ぎる魔物肉の存在は広まることになるの。なかなか手に入らない幻の肉として無料で広告できるのよ!」
「な、なるほど」
イーナは名案だと言うかのように、身を乗り出されたようにそんなことを言ってきた。お金の匂いを嗅ぎ取ったような煌めいた瞳を向けられて、俺は思わず笑ってしまった。
「な、なにかしら?」
「いや、イーナも商人なんだなって思ってな」
「そ、そうだけど。なんで今さら?」
普段はただの華奢な女の子にしか見えなかったが、しっかりとお金の匂いをかぎ取って商売をしている商人なのだ。
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「いや、何でもないよ。うん、分かった。せっかくだから、イーナの好意に甘えることにするよ」
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