パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬

文字の大きさ
上 下
43 / 191

第43話 リリの料理と【助手】スキル

しおりを挟む
 リリが料理を始めてからその匂いで群がってくる魔物たちを討伐しながら料理の完成を待つこと十数分。

 料理が完成したというリリの言葉を受けて、俺はその魔物たちから鉱石を『スティール』で回収して、リリの元に戻っていった。

 そして、簡易的なテーブルにはおろした辛み成分のある山菜の根と、香辛料で味付けされたブラックポークの肉が薄く切られて皿に盛りつけてあった。そこに、市場で買った黒パンが添えられていた。

 黒みがかったソースから匂ってくる香りが食欲を誘い、俺はその匂いに促されるように口の中にそれを放り込んで、思わず感嘆の声を漏らしていた。

「……うまい」

「えへへっ、おいしいですか?」

「これ、かなりうまいぞ。店で出せるレベルの味だ」

「胃袋、掴まれましたか?」

 リリは少しの笑みを浮かべながら、首をこてんと傾けてそんなことを言ってきた。微かにその頬に熱があるような気がしたのは、きっとさっきまで料理で火を使っていたからだろう。 

「つ、掴みかけられてはいるな」

がっつり胃袋を掴まれた気はするが、それを肯定すると違う意味が発生しそうなので、少しだけ言葉を誤魔化すことにした。

俺はその言葉を聞いて嬉しそうに口元緩めたリリから視線を逸らして、口の中に広がる旨味を堪能した。

少しツン辛い香辛料が食欲を誘い、食べる手を止めさせない。素材の味を引き立てながらも、そのソースのおかげで素材が柔らかくなっている気さえしてくる。ブラックポークの肉のジューシーさと油の甘味が口の中に広がり、それらがソースと絡み合って相乗効果で旨味を倍増させていた。

「ていうか、ブラックポークの肉って、こんなにうまかったか? ……ていか、これ本当にブラックポークなのか? どこかの高級品みたいな肉なんだけど」

「確かに、お肉自体の味が濃いですよね。すぐ噛み切れて、柔らかいですしね。……なるほど、確かにバンクさんとイーナさんが注目するわけです」

 リリはそう言うと、自分が作ったものを美味しそうに食べていた。とても、鉱山で食べているとは思えないような至福の表情をしていた。

 美味しい肉を食べさせてあげたいと思っていたが、まさかその肉をリリに料理してもらうことになるとは思わなかったな。

「リリ。ありがとうな、まさかこんな美味しいものが食べれると思わなかったよ」

「えへへっ、そう言ってもらえて嬉しいです!」

 まだ出会って数日ということもあって、まだまだ俺はリリのことを知れていないのかもしれない。

 そう思うと、いつか時間を取ってリリとゆっくり話すのも悪くないなと、結構本気で考えたりしていた。

「リリも今日はいっぱい働いてくれたし、疲れただろ? 飯食べ終わったら、テント組み立てるからゆっくり寝ていいぞ。見張りは任せとけ」

「え? アイクさん、一緒に寝てくれないんですか?」

「い、一緒にって……こんな魔物がいるところで二人で寝たらお陀仏だろ」

 リリは一緒のテントで寝るつもりだったのか、俺の言葉を聞いて驚いている様子だった。

 言葉回し的にも一緒に寝たがっているような言葉なのが気になる所ではある。

「でも、料理食べて始めてからもう魔物来てませんよ。あれだけ倒したから、もう周りには魔物いないんじゃないですか?」

「いや、他の所から魔物が来るかもしれないし」

 確かに、リリのいう言葉は一理あった。周辺にいる魔物は狩りつくした気がするし、二人で寝てしまっても問題はない気もする。

 あくまで、魔物が襲ってくる心配はないという意味の問題ではあるが。

「……分かりました、それなら少し頑張ってみます」

「頑張る? え、リリ?」

 リリは食事を平らげるとすくっと立ち上がって、手のひらを前方にぐっと伸ばした。そして、そのまま何をするわけでもなく瞳を閉じてじっとしていた。

 ……何をしてるんだろう?

 そんなふうに思いながら、しばらくリリの様子を見ていると、リリが突然パチリと目を開けて振り向いてきた。

「アイクさん! 【助手】のスキルを使って、【結界魔法】のスキルを取得しました!」

「……はい? え、【結界魔法】? ちょっ、どういうことだ?」

【結界魔法】っていえば、他の属性魔法とは違う性質をもつ特別な魔法だ。そもそも使える人が限られるような特殊な魔法。

 それをこの場で習得しただと? え、何がどうしてそうなった。

「えーと、アイクさんの助手として、アイクさんに見張りをして貰う訳にもいかなかったので、頑張りました」

「そ、それは助かる、な」

 どこか言葉を考えながら発言している気がしたのは、気のせいだろうか。

 リリ曰く、この結界は外からの攻撃に強いものらしく、ここにいるような魔物では頑張っても破壊できないくらいの物らしい。

 それに加えて、破壊されればその情報は結界の作成者であるリリに伝わるという物。

 そんなご都合主義な結界があるのかと思うが、それが【助手】のスキルによるものだと言われると何も言えなくなってしまう。

 俺を守るため、俺を助けるためだと思えば、そんな結界を作ることもできるということか。

 まさか、【助手】のスキルにこんな隠れた一面があったとは。

 ……いや、何もこんな場面でそんな能力を覚醒しなくてもいいんじゃないか?

「えへへっ、旅先で一緒にお泊りとか、凄い助手らしいです」

 そんな独り言を言いながら嬉しそうに頬を緩めているリリを前に、当然一緒に寝るという提案を断れるはずがなく、俺は本当にいいのかと考えながらリリと一緒のテントで寝ることになったのだった。


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─ これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...