上 下
30 / 191

第30話 魔物の買い取り金額

しおりを挟む
「おう、来たなアイク」

「お疲れ様です、バングさん」

 武器屋で依頼を受けた後、俺たちはちょうど良い時間になったので、ギルド裏の倉庫へと向かった。

 入り口から顔を覗かせると、バングは上機嫌そうな笑みを浮かべていた。

 どうやら、今日の交渉にかなり自信があると見てもいいだろう。

「そうだ。一旦、昨日の魔物の分の金渡しちまった方がいいよな。ちょっと待ってくれ」

 バングはそう言うと、倉庫にある簡単なカウンターの方に移動して、お金を数えながら取り出した。

「31体の魔物の合計で、40万ダウだな」

「40万ダウ!? そんなに貰えるんですか?」

 昨日一日クエストに行って、出てきた魔物を狩っただけでそんなにもらえるのか?

 今までそんなに素材を売っても儲けた記憶がない。それも、俺たちが狩ったのはレアな魔物でもない。

 それなのに、そんな額になるのか。

 ていうか、40万ダウもあればリリと二人でも一ヵ月は何もしないでも暮らせるのではないだろうか。

「……いや、31体も新鮮な魔物を持ってくれば、そのくらいになるだろ」

 バンクは何を言ってるんだと言いたげな目をこちらに向けていた。どうやら、バンクからしたら額を聞いて驚いている方が不思議みたいだった。

「そんじゃあ、これで40万ダウな」

「あ、ありがとうございます」

 俺は魔物を討伐した分のお金をしまって、重くなった財布をしばらく眺めていた。

 まさか、一日でこれほど稼ぐことができるとは。

 ……クエストなんかやらずに、こっちの道で生きていけば結構な金持ちになれるのではないか。

 そんなことを本気で考えてしまうのだった。

「あっ、分け前は宿に戻ったらちゃんと渡すからな」

「え、私も貰えるんですか?」

「当たり前だろ。同じパーティなんだから」

 俺は驚いているようなリリの表情に、少しだけ呆れるような笑みが零れてしまった。

 俺がギース達のパーティでひどい扱いを受けたから、余計にこういう所はきちんとしたい。

 リリだって色々欲しいものとかあるだろうし、お金も必要になるだろう。

 ……あれ、ていうか40万ダウも貰えるなら、ガルドの依頼受けなくてよかったんじゃないか?

「バングさん、いる?」

「おっ、来たか。久しぶりだな、イーナ」

「思ったよりも早く仕事終わったからさ、こっち来ちゃった……あれ? まだ仕事中?」

 倉庫にぴょこんと顔を覗かせたのは俺たちと同い年くらいの女の子だった。少し釣り目がちな目に凛としたような顔つき。話し方は少し親しみを持てるような感じがあって、見た目以上に柔らかい性格をしているようだった。

 胸は控えめで手足がすらりと長い明るい髪色をした女の子。この子がバングの料理人時代の知り合いってことか。

 知り合い?

「いや、もう上がる所さ。まぁ、ここに来てくれたならちょうどいいか」

「ば、バングさん。この子とどういうご関係で?」

「ん? ああ、世話になった店の娘でな。今は色んな所に食材を下ろす商人やってんだよ。……なんだ、アイク気になるのか?」

 バングは何を勘違いしたのか、にやりとした笑みを浮かべてきた。からかうような目は、俺がイーナを女の子として意識していることを疑うようなものだった。

 いや、確かにこれだけ可愛い子を意識しないということはないが……。

「アイクさん?」

「な、なんだよ」

 俺がイーナに視線を向けているのに気づいたのか、俺の隣にいたリリがジトっとした目を向けてきていた。

「……やっぱり、今日来ておいて正解でした」

 そんな独り言を呟きながら、リリは俺から視線を外そうとはしなかった。

 いや、俺は何も言ってないんだけどな。まぁ、そう言う目で一切見ていないと言えば嘘にはなるけど……うん、急に振ってきたバングが悪いと思う。

 俺がリリから向けられた視線をそのままバングに向けると、バングは首を傾げた後に言葉を続けた。

「イーナ。お前に面白いものを見せてやるよ。話しはそれからだ」

「面白い物?」

 きょとんと可愛らしく首を傾げたイーナを見て、バングは得意げな笑みを浮かべていた。

 ……俺がリリにジトっとした目で見られてるのはスルーですか、バングさん。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...