パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬

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第19話 F級パーティ『道化師の集い』の初戦

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「いたな」

 俺たちは【気配感知】と【潜伏】のスキルをしてワイドウルフの群れの近くまで来ていた。

 ワイドウルフは四体が一塊になっていて、二体が少し離れた位置にいた。

 距離にして数十メートル。ここまで近づいても気づかないということは、【潜伏】が効果的に働いているということになる。

 それはつまり、俺達とワイドウルフのレベルやステータスの差が大きいことを意味していた。

「……全然気づきませんね」

「ああ。このまま魔法でも試してみるか」

 俺は以前から初級魔法などは使えていた。その魔法の威力が上がっているのか、他の魔法が使えるようになっているのかは確かめておきたいところだった。

「それなら、私は離れたワイドウルフをやりましょうか?」

「二体いるけどいけるか?」

「大丈夫です。これでも私、ステータスも結構高い方なんですよ」

 リリは心配をしている俺に笑みを向けると、短剣にそっと手を置いた。

 確かに、いつまでも過保護に接するわけにはいかないよな。リリは俺の子供でもなければ、妹でもない。

 助手ならば、それなりに戦闘経験を踏んで俺と並んでもらわなくてはならない。

「分かった。あっちの二体は任せるぞ」

 俺はそう言うと、リリの手を握っていない方の手のひらを四体のワイドウルフの方に向けて、初級魔法を唱えた。

「『ファイアボール』」

 俺がその魔法を唱えると、俺の手のひらから片腕分くらいの大きさの火の玉が形成された。そして、十分な大きさになると、そのまま手のひらからワイドウルフの方に一直線に向かって行き、ワイドウルフの方に着弾したと同時に爆発した。

「ギャァァ!」

 もろにファイアボールを食らってしまったワイドウルフは大声を出しながら、見事に焼かれてしまった。

 ……想像の数倍の威力になっている。初級魔法の威力がこんなに強くていいのだろうか。

「それでは、私も行ってきます」

 そう言うと、今度はリリが少し離れているワイドウルフの方へと走っていた。その速さからステータスの高さを感じたので、俺は打ち漏らしがないかを確認するために四体のワイドウルフの方へ視線を向けた。

 いくら強化されているとはいっても、所詮は初級魔法。直撃したワイドウルフと間近にいた二体は倒れていたが、一体だけは体をプルプルとさせながら立ち上がっていた。

 そして、その一匹はリリの方に向かおうとしていた。俺のことが見えないから、さっきの攻撃をしたのをリリだと勘違いしたのだろう。

 ここでリリの負担を増やすわけにはいかない。

 俺はそう思って投げナイフを一本手に取った。『道化師見習い』の頃から投げナイフで攻撃はしていた。

 もちろん、一撃で相手を倒せるような物ではなかったのだが、相手の動きを封じるようなことはできていたと思う。

 まぁ、地味過ぎたせいでそんな俺の活躍を知っている者はいなかったけど。

 俺は【投てき】のスキルを使いながら、手に持った投げナイフをワイドウルフに投げつけた。

 リリの方に向かおうとしていたワイドウルフは一歩地面を強く蹴った瞬間に、俺の投げナイフを首元に食らった。

 そして、そのまま投げナイフはワイドウルフの首を貫通して、奥にあった木にスコンッと音を立てて突き刺さった。

「え? うそ」

 自分でもびっくりするくらいの投げナイフの貫通力。そして、そのナイフを食らったワイドウルフは何が起こったのか分からないまま倒れ込んでしまった。

 ……なんか、投げナイフっていう威力ではない気がする。

「アイクさん。こっちも終わりましたよ」

 俺が自分のナイフの威力に驚いていると、リリが俺のいる方を見て手を振ってきた。少し俺とは違う方を向いている。どうやら、まだ【潜伏】のスキルが効いているらしい。

「おう。お疲れ」

 俺は【潜伏】のスキルを解いて、ワイドウルフ二体を短時間で倒したリリに手を振り返した。

 小規模のワイドウルフを出会って数秒で瞬殺するパーティ。

 もしかして、俺たちのパーティ『道化師の集い』は中々強いのではないだろうか。

 そんなことをふと考えてしまうのだった。

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