パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬

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第15話 初めての食事と今後の方針

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「これがファングの肉ですか……」

「ああ。まぁ、そこまで豪華な物じゃないけど我慢してくれな」

「いえいえ、そんなっ。まさか奢っていただけるとは思いませんでした」

「まぁ、助手だしな」

 ファングをバングの所に持っていったところ、解体後の査定額は明日の朝になるとの話だった。

 バング曰く、解体料金を差し引いても一体あたり一万ダウになると言われた。昔、ファングを持っていったときは血抜きをしても三千ダウだった気がしたのだが、どうも鮮度によって値段も変わるらしい。

 そして、おそらく今後新鮮な状態のファングの買い取り手が固定で付けば、もっと値段も上がるとのことだった。

 もしかしたら、下手なクエストをやるよりも珍しい魔物を倒して、その肉を売って生きていく方がいいのかもしれない。

 そんなことを本気で考えてしまうのだった。

 そして、俺たちは俺の泊まっている宿に戻ってその食堂で飯を食べていた。

 リリがこの世界に来て初日ということもあったので、少しだけ贅沢をしてファング肉のステーキを食べる事にした。

「それでは、ありがたく頂戴致します」

「はいよ」

 リリは俺にそう言うと、ファング肉のステーキを一口サイズに切って口の中に放った。

 俺もリリに倣うようにファング肉のステーキを口の中に入れた。

 ファング肉のステーキというのは、どうしても生臭さが出てしまう。それでも、香辛料や塩に漬けてあるおかげであまり生臭さを感じなかった。

 焼き加減も程よく、噛むと肉のうまみがしっかりとしてくる。これは、調理のしかたがかなり上手いのだと思う。

 それでも、はやり獣匂いは完全に消せていない。

 もしも、もっと新鮮な状態で捌いて焼いて食べたら味も違うのだろうか。

「……お、おいしいです」

「え? そっか、確かにこの店って結構料理が評判みたいだからな」

「ほんっとうに、凄くおいしいです!」

 リリは何か特別な物を口にしたかのように感動をしていた。一般的なただの魔物肉。リリは獣匂など気にする素振りも見せず、初めて食べる肉に感動をしていた。

 こんな一般的なご飯でそんなに感動されると、奢ったこっちも嬉しいものがある。

 微かに瞳を潤ませてまで食べる姿を見て、俺はもっとおいしいものを食べさてあげたいと思ってしまった。

 新鮮な肉をバングの所に卸すという依頼。その重要度が少しだけ上がった気がした。

「そうだ。飯食べながらでいいんだけど、明日以降の方針を決めよう。とりあえず、リリの装備品は冒険者ギルドの方で安く貸してくれるらしい。冒険者になってから一ヵ月はレンタルできるんだってさ」

 冒険者登録をした際にミリアからそんな話を受けた。

 本当は装備品とかも買ってやりたいのだが、まだ新品の装備品を揃えてやれるほど金銭的な余裕もない。

 かかる費用は今までの二倍。その分お金を稼がなくてはならない。

「余裕ができるまではレンタル品で我慢してくれ。金が入ったら色々買おうな、リリの必要な物とか」

「ありがとうございます! 私は全然レンタル品で問題ないですよ」

「そう言ってもらえると助かるよ。まぁ、そのためにもお金を稼ぐ必要があるんだけど、とりあえずはクエストをこなしながら魔物肉を売って金を稼ごう」

 バングの話によると、魔物肉を新鮮な状態で売れば結構いい値段がつくらしい。それなら、肉として売れそうな魔物を討伐しながら、ついでにクエストをこなして冒険者ランクを上げるのがいいだろう。

 そうしていく中で、『道化師の集い』のパーティランクも上げていく必要がある。

パーティランクはそこに所属するメンバーの冒険者ランクによって決まる。Fランクの冒険者の俺と、Gランクのリリが所属している『道化師の集い』はまだFランクのパーティだ。

そっちも少しずつ上げていかないとな。

「分かりました。どこまでもついていきますよ。私、助手ですから」

「はいよ。あっ、そうだ部屋の手配もしないとだよな。一番安い部屋をもう一部屋借りようと思うんだけど、それでいいか?」

「もう一部屋?」

 少なくとも、俺が泊まっている残り九日間はこの街に残ることになる。そう思って、リリの分の部屋を借りるつもりだったのだが、リリはなぜかこてんと首を傾けた。

「私はアイクさんと同じ部屋に泊まるつもりですけど」

「……え?」

 当たり前のことをいうかのように、リリはそんな言葉を口にした。
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