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1巻
1-3
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◆
時は数日前に遡る。
パーティメンバーの裏切りによって崖から落とされた俺――ソータは、再び目にしたタウロの街並に感動していた。
「ほ、本当に帰ってこられた。もう見られないかと思っていたよ」
俺は傷を負うことなく、なんとか街に帰ってくることができたのだ。
一時はどうなるかと思ったけど、まさかあそこから生還するなんて……
少し遠かったが、『魔力探知』で魔物の少ない道を選んで進んだ甲斐あって、安全に街まで戻れた。
それに、距離があるにしては思ったよりも時間はかからなかった。
パーティにいたときは、オリバたちのわがままを聞きながらだったから、非効率だったんだよなぁ。
そんなことを考えていると、ケルが辺りを見渡してふむと声を漏らす。
「ここがソータの住んでいる街か。ふむ、なかなか良い所じゃないか」
「うん、結構住みやすいかもね。とりあえず、冒険者ギルドに行って、俺が死んでないことを報告しないと」
殉職扱いになると、当然冒険者として活動ができなくなる。
色々と複雑な手続きをしないと復帰させてもらえないだろうから、一刻も早く生存を伝えなければならない。後はオリバたちが出したであろう俺の殉職届が嘘だと報告しないと。
……それに、彼らに殺されかけたことも報告しておかないとね。
パーティの追放だけならまだしも、さすがにこの仕打ちは許せない。
そう考えた俺は、一息つく間もなく冒険者ギルドに向かったのだった。
「あ、ソータくん、お疲れ様です」
冒険者ギルドに着くと、ギルド職員のエリさんが俺に声をかけてくれた。
「お疲れ様です、エリさん」
いつもオリバたちが受ける依頼の手続きとかをやってくれていたので、彼女とはすっかり顔なじみだった。
「あれ? 『黒龍の牙』って、今依頼中でしたよね? ソータくんだけ先に帰ってきたんですか?」
「え? 俺だけ? 他のメンバーたちって、まだ帰ってきてないんですか?」
俺は崖の下から歩いて来たから少し時間がかかったけど、いつもなら一日で帰ってこられる距離のはず。
それなのに、なんで俺の方が先に帰れたんだろう?
「ふんっ……やはり、こうなったか」
ケルは力強く鼻息を吐いてから、そう呟いた。
驚く素振りはまるでなく、小さく欠伸をしている。
それを見たエリさんは目を輝かせる。
「あらっ、可愛い子じゃないですか! 一緒にいるってことはソータくんの使い魔ですか?」
「ふむ、我はソータの使い魔である」
「え? ええ? 今の声って……」
返事があると思っていなかったのか、エリさんは目をぱちぱちとしながら、俺を見る。
「人間の言葉を話せるんですよ。変わってますよね」
エリさんが興味を持ったみたいだったので、俺はケルを抱きかかえて彼女に見せる。
エリさんはキャッと声を出してその可愛さに悶絶した。
彼女は断りを入れてからケルの頭を撫でる。その感触に癒されているようだ。
一応、これでもケルベロスなんだけどなと思いながら、撫でられて心地よさそうにしているケルを見て、俺は小さく笑う。
「あ、そうでした。それで、なんでソータくんだけ早く帰ってきたんですか?」
エリさんは思い出したように首を傾げる。
そうだった。
そのことを報告しに来たんだった。
色々とあったし、長くなっても報告しないとだよな。
俺はそう考えると、苦笑を浮かべる。
「えっと、実はオリバたちにパーティを追放されて……そのまま殉職に見せかけて殺されそうになりまして」
「……はい?」
エリさんは素っ頓狂な声を漏らしたが、俺の話を最後まできちんと聞いてくれた。
「……つまり、ソータくんは依頼中に崖から落とされて、死にかけたということですね」
「とんでもない奴らだな」
これまでの経緯をエリさんに話していると、男の人が会話に入ってきた。いつの間にかギルドマスターのハンスさんもやってきて、一緒に俺の話に耳を傾けていたのだ。
ハンスさんはガタイが良くて一見強面だが、面倒見の良い人だ。
こうして話を聞いてもらうのも、一度や二度ではない。
「まぁ、なんとか生きて帰ってこられましたけどね」
俺がそう言うと、エリさんは俺の代わりに怒ってくれているのか、プンスカッと片頬を膨らませる。
「それは、あくまで結果論です。未遂とはいえ、そんな行為をするなんて、あってはならないことですよ」
確かに、エリさんの言う通りだよな。
偶然、ケルが魔界から追放されたのと、俺が崖から落とされたタイミングが重なったから助かっただけだ。
少しでもズレていたらと思うと、ゾッとする。
「さすがに、今回の件は素行が悪いというだけでは済みませんからね。厳重に処罰をしないといけませんね」
「はい、お願いしたいです……ただ、何も証拠がないので、言い逃がれされそうですけど」
エリさんの言葉に頷いてから、俺は頬を掻く。
オリバの素行の悪さは、この街の冒険者なら誰もが知っている。
S級に上がるまでが早かっただけに、大きな顔をすることが日常的だった。
他のパーティメンバーもオリバほどではないが、横柄な態度を取っている姿を何度も目にしている。
要するに、天狗になっているのだ。
特にオリバは、自分が悪くても大声で言い訳をして誤魔化す癖がある。
……逆上して、相手が謝るまで怒鳴り散らすという場面を何度見たことか。
「確かに、オリバさんなら、十分にあり得ますね」
エリさんは顔をしかめてそう言うと、腕を組んでむむっと考え込む。
証拠を揃えても逆ギレしそうなんだよなぁ。
悩むエリさんと俺を見たハンスさんが、顎に手を置いて呟く。
「ふむ……もしかしたら、別の容疑で捕まえられるかもしれないな」
「別の容疑?」
どういうことだろうかと思って聞くと、ハンスさんは小さく頷く。
「ああ。ソータを殺そうとしたのは、殉職金目当ての犯行だろう。それなら詐欺として――」
「殉職金? え、そんなの出るんですか?」
死と隣り合わせな冒険者という職業なのに、そんな制度があるのか。
俺が感心して声を漏らしていると、エリさんとハンスさんは顔を見合わせた。
そして、エリさんは目をぱちくりとさせてから、俺を見る。
「申請者も少ないので覚えてますけど、ソータくんは殉職金の保険に入ってますよね? 毎月高い保険料を払ってくれてるじゃないですか」
「保険料? なんの話ですか?」
この制度自体初めて知ったので、当然俺が入っているわけがない。
誰かと間違えているのだろうか?
俺が眉間に皺を寄せていると、エリさんは想定と違う反応だったのか、ピタッと固まってしまった。
「ソータに何も知らせていないとは……オリバの奴、俺たちが思っていた以上に汚いやり方をしていたみたいだな」
ハンスさんはそう言うと、白い髪を雑にグシャグシャッと掻く。
そして、俺はオリバたちの本当の目的を知ることになるのだった。
◆
――そして今、俺の目の前でオリバたちが冒険者ギルドに嘘の報告をしていた。
なんか、俺の知らない所で色んな準備をしていたんだな、オリバたちって。
そう考えながら、俺は彼らの大根芝居を後ろから見物していた。
周囲にいる冒険者たちも俺とエリさんとのやり取りを聞いていたので、オリバが何をやろうとしていたのかは知っている。
だからだろう。冒険者たちはこの酷すぎる演技を前に、うわぁっと声を漏らして引いているみたいだった。
普段の素行の悪さのせいで、オリバは冒険者たちに嫌われている。
そんな事情もあって、みんなは俺の話を素直に信じてくれたみたいだ。
つまり、オリバたちは大勢の前で、全て把握されている状態で、大根芝居をしていたということだ。
なんだか、見ているこちらが恥ずかしくなる。
俺が生温かい目で見ていると、オリバたちがエリさんに指摘されてこちらに目を向ける。
振り向いた瞬間、彼らは目を見開いて腰を抜かしてしまった。
「うわぁっ! な、なんでお前がいるんだよ!」
なんでと言われても困るんだけどな。
……なんだか、少しでもこの人たちを仲間だなんて思っていたことが恥ずかしくなってきた。
今まで敬語を使っていたのも馬鹿みたいだ。
まぁ、自分を殺そうとした相手を敬えるわけがないし、もう敬語なんて使わないでいいか。
俺は大きなため息を吐いてから、侮蔑するようにオリバたちを見る。
「お前に崖から落とされて殺されそうになった後、なんとか帰ってきたんだよ」
「はぁ? 嘘つけ!! あの高さから突き落としたんだぞ!! どう考えても生きて帰ってこられるはずがないだろうがぁ!!」
俺が挑発気味にふっかけると、オリバは逆上しながら見事に自白してしまった。
「オ、オリバ! 落ち着け! マズいことを言っているぞ!」
ロードが慌ててオリバの肩を掴んで止めたが、時すでに遅しだ。
「オリバ、ロード。何がマズいんだ?」
ギルドマスターのハンスさんが腕を組みながら近づいてくると、ようやくオリバも自分の失態に気づいたようだった。
オリバは目に見えて焦りだす。
「じゅ、殉職したと思っていたパーティメンバーが帰ってきたから、気が動転してしまっただけだ。これ以上は誤解を招く恐れがあるかもな、ロード」
「あ、ああ。全くその通りだ、オリバ」
二人わざとらしくハハハッと笑って、誤魔化そうとしていた。
どうやら、本気で切り抜けられると思っているらしい。さすがに、今からじゃ何をしても手遅れな気しかしないんだけど。
「そうか、誤解か。それなら、これは一体どういうことだ?」
ハンスさんはそう言うと、カウンターの上に置かれていた書類を数枚手に取って、オリバたちにその紙が見えるように掲げる。
「あっ、やばっ」
リリスはそんな声を漏らしてから、慌てた様子で自分の口を覆う。
ハンスさんはリリスの反応に呆れるような目を向けてから、俺を見る。
「ソータ。これはお前が書いたのか? パーティメンバーに殉職金を渡してくれという手紙らしいが」
「書いてません。そもそも、殉職金の保険に自分で入った記憶もありません」
「っ!」
俺が淡々と答えると、オリバの体がぴくんっと跳ねた。
さすがにここまで来れば、オリバの頭でもこの先の展開が読めたらしい。
「なるほど。つまり、お前らは殉職金目当てで書類の偽造をやったみたいだな。この時点で、お前らには重い処罰が下る。殉職金詐欺だけに留まらず、殺人未遂まで犯した。とてもじゃないが、ギルドで裁ける罪の重さじゃない……色々と覚悟しておくんだな」
ハンスさんが低い声で脅すように言うと、ナナがヒッと小さな悲鳴を上げる。
オリバ以外の三人は諦めたように青い顔をして俯いていた。
しかし、オリバだけは他の三人と違って、顔を真っ赤にしている。
そして、彼は肩をプルプルと震わせて顔を上げると、バンッと強くカウンターを叩いた。
「しょ、証拠がないだろ!!」
「いや、証拠って……さっき自白してたじゃないですか」
苦し紛れのオリバの言葉に、思わずカウンター越しにエリさんが小声で漏らす。
「さっきのは取り乱しただけだ! こいつが俺たちをハメようとしているだけで、俺たちは何も悪くない!」
どこまで見苦しく足掻くのだろうと思っていたら、オリバは思い出したように俺を指さしてそんなことを言い始める。
「え、俺?」
俺は頬を掻きながら、言葉を続ける。
「俺がそんなことをしても、なんのメリットもないんだけど……」
「うるさいっ! あれだけ面倒見てやったのに、恩を仇で返しやがって、クソガキがぁ!」
勢いだけでなんとかしようとしているのか、オリバはあまりにも理不尽すぎることを言う。
それから、再びカウンターを強く叩くと、大声を張る。
「書類偽装は認めてやるが、他のことは何一つ認めないからな!」
「いや、さすがにそれは無理があるって」
俺がそう言うと、オリバは眉間に皺を寄せて睨んでくる。
「なんで不満そうな顔してんだ、お前は!」
オリバは俺に近づいてくると、ビシッと人差し指を向けて言い放つ。
「冒険者なんだから、言いたいことがあるなら力で語るべきだ! 反論があるのなら、俺よりも強くなってから出直すんだな!」
ぼ、暴論がすぎる。
あまりにも幼稚に怒鳴り散らすので、俺は言葉を失ってしまった。
しかし、オリバは論破でもしたと勘違いしたのか、満足げな笑みを浮かべている。
いや、誰もそんな暴論に乗っかる奴なんていないでしょ。
と思ったら――
「なるほど。確かに一理あるな」
ケルがうんうんと頷いていた。
「え? ケ、ケル?」
「冒険者たるもの、拳で語り合うべきか。弱肉強食の世界、強い方の意見を尊重するべきだな」
「ほぅ、アホ面の魔物のくせに、よく分かってるじゃねーか。ん? なんで魔物がしゃべってんだ?」
ケルはオリバを無視して軽くぴょんっと跳ねてカウンターに乗ると、ハンスさんを見る。
「ギルドの職員よ。何か対決になるような依頼はないか?」
「対決か? そうだな……」
ハンスさんはケルをじっと見た後、腕を組んでしばらく考え込む。
そして奥から一枚の依頼書を取ってきて、カウンターの上に置いた。
「こんなのはどうだ?」
「ふむ。このくらいがちょうどいいだろうな」
一体、どんな依頼なんだろう?
カウンターに近づいて依頼書を見てみると、その依頼書にはC級ダンジョンと書かれていた。
C級ダンジョンというのは、C級パーティが挑むのにちょうどいいとされている難度のダンジョンのことだ。
「なんだ? C級ダンジョンじゃねーか。こんなの、俺たちなら一日もかからないぜ」
オリバは俺をドンッと押しのけて依頼書を覗き込むと、余裕そうな笑みを浮かべる。
どうやら、始まる前から勝ちを確信しているみたいだ。
S級パーティとの対決……さすがに、劣勢すぎる気がする。
そんな俺の不安など知らないケルは、ふふんっと得意げに鼻を鳴らす。
「それなら、このダンジョンの最下層にいるボスを倒して、その素材を持って帰ってきた者が勝者ということでよいな」
どんどん進んでいく話をエリさんが止めようとするが――
「ちょっと、勝手に決めないでくださいよ! ハンスさんからも言ってください! ……ハンスさん?」
ハンスさんは何も言わずにただ俺をじっと見ていた。そして彼は重々しく口を開く。
「ソータ。お前はどうしたい?」
ハンスさんの力強い視線から、俺は何かを試されているような気がした。
ちらっと見ると、ケルは任せておけとでもいうかのように余裕の表情をしていた。
普通に考えたら、勝てるはずがない勝負。
それでも、俺が古代魔法の使い手であることや、ケルが優秀な使い魔であることを加味すれば、全く勝機がないわけではない。
そして何より、俺をずっと馬鹿にしてきたオリバたちに一泡吹かせたい。
「その依頼、受けさせてください」
「ソータくん……!」
エリさんは心配そうに眉を下げているが、ハンスさんは力強く頷いた。
そんな俺たちのやり取りを見て、オリバは抑えきれなくなった笑い声を漏らす。
「ハハハッ! じゃあ、俺たちが勝ったら、殺人未遂と殉職金詐欺はなかったことにしてもらうからな!」
オリバはそう言うと、他のパーティメンバーを連れてギルドを後にした。
ロードたちは先程までうな垂れていたのに、刑が軽くなる可能性を示されて、盲目的に縋っているのだろう。どこか嬉しそうにオリバについていった。
「オリバさんたち、行っちゃいましたよ!」
エリさんが焦ったように言ったが、ハンスさんは落ち着いた様子でオリバたちが出ていった扉の方を見ていた。
「殉職金詐欺だけに留まらず、殺人未遂まで犯した。とてもじゃないが、ギルドで裁ける罪の重さじゃない……俺はそう言ったはずだ。この依頼をあいつらが先に達成しても、罪が軽くなることはない。罪を軽くする権限などギルドにはないからな」
ハンスさんはそう言うと、大きなため息を漏らす。
「じゃ、じゃあ、なんで止めなかったんですか?」
エリさんは不満そうにハンスさんを見る。
すると、ハンスさんはニッと笑って俺の背中をポンッと叩く。
「舐められたままじゃいられない。そういうことだろ?」
「ええ、そうですね」
俺は背中を押してくれたハンスさんの言葉に頷く。
ただの憂さ晴らしだと言われるかもしれない。
それでも、馬鹿にされ続けて殺されかけたのなら、最後に見返してやりたいという気持ちにもなる。
「自分たちが強いと思っている勘違い、高すぎるプライド……全てズタズタにしてやろうではないか、ソータよ」
ケルはそう言うと、可愛らしい顔で悪巧みをするような笑みを浮かべる。
俺はそこまでは考えてなかったと思いつつも、見返すことのできる機会を作ってくれたケルに感謝をして、軽く頭を撫でてやるのだった。
4 新しいパーティの仲間
オリバたちが去った後、俺とケルは冒険者ギルドの奥にある個室にお邪魔していた。
ソファーとテーブルしかない簡素な部屋だが、少し話し合いをするにはちょうど良い広さの場所だった。
「さて、念のために作戦会議をしておくか」
ハンスさんの一言から、俺たちはここで簡易的な作戦会議をすることになった。
「仮にもオリバさんたちはS級ですからね。それなりに作戦を練った方がいいでしょうね」
エリさんはそう言うと、むむっと唸る。
ハンスさんもエリさんも、まるで自分のことのように真剣に考えてくれている。
それが嬉しい反面、俺はどうしても気になって、疑問を口にする。
「あの、どうしてこんなに良くしてくれるんですか?」
冒険者ギルドはあくまで中立な立場だと思っていただけに、こんなに俺に肩入れしてくれることが純粋に不思議だった。
すると、ハンスさんとエリさんは深いため息を漏らしてから、順々に言葉を続ける。
「元々、オリバたちが気に入らなかったんだ。ソータみたいな子供に面倒事を押し付けているような奴らだからな。頑張っていたソータに対する扱いもなっていない」
「そうなんですよ。多分、うちのギルドでオリバさんたちの肩を持つ人はいませんよ。今まで表立って行動できませんでしたが、問題を起こした今なら、遠慮せずにソータくんの肩を持てます」
二人は互いの意見に同意するようにうんうんと頷く。
そして、ハンスさんはニッと笑ってから俺を見る。
「そもそも、ソータの相手はS級のパーティだからな。ギルドにできる範囲で手を貸すぞ」
どれだけ頑張っても、オリバたちにかけられる言葉は罵声ばかりだったので、そんなふうに自分を見てくれている人がいるなんて思いもしなかった。
「あ、ありがとうございます」
俺は少しじんときた心を落ち着かせて、平常心を保とうと心掛ける。
思わず涙がこぼれそうになったけど、これから勝負だってときに泣くわけにはいかない。
そう思って、俺は力強く顔を上げる。
すると、そんなやり取りを見ていたケルが俺の手をペロッと舐める。
時は数日前に遡る。
パーティメンバーの裏切りによって崖から落とされた俺――ソータは、再び目にしたタウロの街並に感動していた。
「ほ、本当に帰ってこられた。もう見られないかと思っていたよ」
俺は傷を負うことなく、なんとか街に帰ってくることができたのだ。
一時はどうなるかと思ったけど、まさかあそこから生還するなんて……
少し遠かったが、『魔力探知』で魔物の少ない道を選んで進んだ甲斐あって、安全に街まで戻れた。
それに、距離があるにしては思ったよりも時間はかからなかった。
パーティにいたときは、オリバたちのわがままを聞きながらだったから、非効率だったんだよなぁ。
そんなことを考えていると、ケルが辺りを見渡してふむと声を漏らす。
「ここがソータの住んでいる街か。ふむ、なかなか良い所じゃないか」
「うん、結構住みやすいかもね。とりあえず、冒険者ギルドに行って、俺が死んでないことを報告しないと」
殉職扱いになると、当然冒険者として活動ができなくなる。
色々と複雑な手続きをしないと復帰させてもらえないだろうから、一刻も早く生存を伝えなければならない。後はオリバたちが出したであろう俺の殉職届が嘘だと報告しないと。
……それに、彼らに殺されかけたことも報告しておかないとね。
パーティの追放だけならまだしも、さすがにこの仕打ちは許せない。
そう考えた俺は、一息つく間もなく冒険者ギルドに向かったのだった。
「あ、ソータくん、お疲れ様です」
冒険者ギルドに着くと、ギルド職員のエリさんが俺に声をかけてくれた。
「お疲れ様です、エリさん」
いつもオリバたちが受ける依頼の手続きとかをやってくれていたので、彼女とはすっかり顔なじみだった。
「あれ? 『黒龍の牙』って、今依頼中でしたよね? ソータくんだけ先に帰ってきたんですか?」
「え? 俺だけ? 他のメンバーたちって、まだ帰ってきてないんですか?」
俺は崖の下から歩いて来たから少し時間がかかったけど、いつもなら一日で帰ってこられる距離のはず。
それなのに、なんで俺の方が先に帰れたんだろう?
「ふんっ……やはり、こうなったか」
ケルは力強く鼻息を吐いてから、そう呟いた。
驚く素振りはまるでなく、小さく欠伸をしている。
それを見たエリさんは目を輝かせる。
「あらっ、可愛い子じゃないですか! 一緒にいるってことはソータくんの使い魔ですか?」
「ふむ、我はソータの使い魔である」
「え? ええ? 今の声って……」
返事があると思っていなかったのか、エリさんは目をぱちぱちとしながら、俺を見る。
「人間の言葉を話せるんですよ。変わってますよね」
エリさんが興味を持ったみたいだったので、俺はケルを抱きかかえて彼女に見せる。
エリさんはキャッと声を出してその可愛さに悶絶した。
彼女は断りを入れてからケルの頭を撫でる。その感触に癒されているようだ。
一応、これでもケルベロスなんだけどなと思いながら、撫でられて心地よさそうにしているケルを見て、俺は小さく笑う。
「あ、そうでした。それで、なんでソータくんだけ早く帰ってきたんですか?」
エリさんは思い出したように首を傾げる。
そうだった。
そのことを報告しに来たんだった。
色々とあったし、長くなっても報告しないとだよな。
俺はそう考えると、苦笑を浮かべる。
「えっと、実はオリバたちにパーティを追放されて……そのまま殉職に見せかけて殺されそうになりまして」
「……はい?」
エリさんは素っ頓狂な声を漏らしたが、俺の話を最後まできちんと聞いてくれた。
「……つまり、ソータくんは依頼中に崖から落とされて、死にかけたということですね」
「とんでもない奴らだな」
これまでの経緯をエリさんに話していると、男の人が会話に入ってきた。いつの間にかギルドマスターのハンスさんもやってきて、一緒に俺の話に耳を傾けていたのだ。
ハンスさんはガタイが良くて一見強面だが、面倒見の良い人だ。
こうして話を聞いてもらうのも、一度や二度ではない。
「まぁ、なんとか生きて帰ってこられましたけどね」
俺がそう言うと、エリさんは俺の代わりに怒ってくれているのか、プンスカッと片頬を膨らませる。
「それは、あくまで結果論です。未遂とはいえ、そんな行為をするなんて、あってはならないことですよ」
確かに、エリさんの言う通りだよな。
偶然、ケルが魔界から追放されたのと、俺が崖から落とされたタイミングが重なったから助かっただけだ。
少しでもズレていたらと思うと、ゾッとする。
「さすがに、今回の件は素行が悪いというだけでは済みませんからね。厳重に処罰をしないといけませんね」
「はい、お願いしたいです……ただ、何も証拠がないので、言い逃がれされそうですけど」
エリさんの言葉に頷いてから、俺は頬を掻く。
オリバの素行の悪さは、この街の冒険者なら誰もが知っている。
S級に上がるまでが早かっただけに、大きな顔をすることが日常的だった。
他のパーティメンバーもオリバほどではないが、横柄な態度を取っている姿を何度も目にしている。
要するに、天狗になっているのだ。
特にオリバは、自分が悪くても大声で言い訳をして誤魔化す癖がある。
……逆上して、相手が謝るまで怒鳴り散らすという場面を何度見たことか。
「確かに、オリバさんなら、十分にあり得ますね」
エリさんは顔をしかめてそう言うと、腕を組んでむむっと考え込む。
証拠を揃えても逆ギレしそうなんだよなぁ。
悩むエリさんと俺を見たハンスさんが、顎に手を置いて呟く。
「ふむ……もしかしたら、別の容疑で捕まえられるかもしれないな」
「別の容疑?」
どういうことだろうかと思って聞くと、ハンスさんは小さく頷く。
「ああ。ソータを殺そうとしたのは、殉職金目当ての犯行だろう。それなら詐欺として――」
「殉職金? え、そんなの出るんですか?」
死と隣り合わせな冒険者という職業なのに、そんな制度があるのか。
俺が感心して声を漏らしていると、エリさんとハンスさんは顔を見合わせた。
そして、エリさんは目をぱちくりとさせてから、俺を見る。
「申請者も少ないので覚えてますけど、ソータくんは殉職金の保険に入ってますよね? 毎月高い保険料を払ってくれてるじゃないですか」
「保険料? なんの話ですか?」
この制度自体初めて知ったので、当然俺が入っているわけがない。
誰かと間違えているのだろうか?
俺が眉間に皺を寄せていると、エリさんは想定と違う反応だったのか、ピタッと固まってしまった。
「ソータに何も知らせていないとは……オリバの奴、俺たちが思っていた以上に汚いやり方をしていたみたいだな」
ハンスさんはそう言うと、白い髪を雑にグシャグシャッと掻く。
そして、俺はオリバたちの本当の目的を知ることになるのだった。
◆
――そして今、俺の目の前でオリバたちが冒険者ギルドに嘘の報告をしていた。
なんか、俺の知らない所で色んな準備をしていたんだな、オリバたちって。
そう考えながら、俺は彼らの大根芝居を後ろから見物していた。
周囲にいる冒険者たちも俺とエリさんとのやり取りを聞いていたので、オリバが何をやろうとしていたのかは知っている。
だからだろう。冒険者たちはこの酷すぎる演技を前に、うわぁっと声を漏らして引いているみたいだった。
普段の素行の悪さのせいで、オリバは冒険者たちに嫌われている。
そんな事情もあって、みんなは俺の話を素直に信じてくれたみたいだ。
つまり、オリバたちは大勢の前で、全て把握されている状態で、大根芝居をしていたということだ。
なんだか、見ているこちらが恥ずかしくなる。
俺が生温かい目で見ていると、オリバたちがエリさんに指摘されてこちらに目を向ける。
振り向いた瞬間、彼らは目を見開いて腰を抜かしてしまった。
「うわぁっ! な、なんでお前がいるんだよ!」
なんでと言われても困るんだけどな。
……なんだか、少しでもこの人たちを仲間だなんて思っていたことが恥ずかしくなってきた。
今まで敬語を使っていたのも馬鹿みたいだ。
まぁ、自分を殺そうとした相手を敬えるわけがないし、もう敬語なんて使わないでいいか。
俺は大きなため息を吐いてから、侮蔑するようにオリバたちを見る。
「お前に崖から落とされて殺されそうになった後、なんとか帰ってきたんだよ」
「はぁ? 嘘つけ!! あの高さから突き落としたんだぞ!! どう考えても生きて帰ってこられるはずがないだろうがぁ!!」
俺が挑発気味にふっかけると、オリバは逆上しながら見事に自白してしまった。
「オ、オリバ! 落ち着け! マズいことを言っているぞ!」
ロードが慌ててオリバの肩を掴んで止めたが、時すでに遅しだ。
「オリバ、ロード。何がマズいんだ?」
ギルドマスターのハンスさんが腕を組みながら近づいてくると、ようやくオリバも自分の失態に気づいたようだった。
オリバは目に見えて焦りだす。
「じゅ、殉職したと思っていたパーティメンバーが帰ってきたから、気が動転してしまっただけだ。これ以上は誤解を招く恐れがあるかもな、ロード」
「あ、ああ。全くその通りだ、オリバ」
二人わざとらしくハハハッと笑って、誤魔化そうとしていた。
どうやら、本気で切り抜けられると思っているらしい。さすがに、今からじゃ何をしても手遅れな気しかしないんだけど。
「そうか、誤解か。それなら、これは一体どういうことだ?」
ハンスさんはそう言うと、カウンターの上に置かれていた書類を数枚手に取って、オリバたちにその紙が見えるように掲げる。
「あっ、やばっ」
リリスはそんな声を漏らしてから、慌てた様子で自分の口を覆う。
ハンスさんはリリスの反応に呆れるような目を向けてから、俺を見る。
「ソータ。これはお前が書いたのか? パーティメンバーに殉職金を渡してくれという手紙らしいが」
「書いてません。そもそも、殉職金の保険に自分で入った記憶もありません」
「っ!」
俺が淡々と答えると、オリバの体がぴくんっと跳ねた。
さすがにここまで来れば、オリバの頭でもこの先の展開が読めたらしい。
「なるほど。つまり、お前らは殉職金目当てで書類の偽造をやったみたいだな。この時点で、お前らには重い処罰が下る。殉職金詐欺だけに留まらず、殺人未遂まで犯した。とてもじゃないが、ギルドで裁ける罪の重さじゃない……色々と覚悟しておくんだな」
ハンスさんが低い声で脅すように言うと、ナナがヒッと小さな悲鳴を上げる。
オリバ以外の三人は諦めたように青い顔をして俯いていた。
しかし、オリバだけは他の三人と違って、顔を真っ赤にしている。
そして、彼は肩をプルプルと震わせて顔を上げると、バンッと強くカウンターを叩いた。
「しょ、証拠がないだろ!!」
「いや、証拠って……さっき自白してたじゃないですか」
苦し紛れのオリバの言葉に、思わずカウンター越しにエリさんが小声で漏らす。
「さっきのは取り乱しただけだ! こいつが俺たちをハメようとしているだけで、俺たちは何も悪くない!」
どこまで見苦しく足掻くのだろうと思っていたら、オリバは思い出したように俺を指さしてそんなことを言い始める。
「え、俺?」
俺は頬を掻きながら、言葉を続ける。
「俺がそんなことをしても、なんのメリットもないんだけど……」
「うるさいっ! あれだけ面倒見てやったのに、恩を仇で返しやがって、クソガキがぁ!」
勢いだけでなんとかしようとしているのか、オリバはあまりにも理不尽すぎることを言う。
それから、再びカウンターを強く叩くと、大声を張る。
「書類偽装は認めてやるが、他のことは何一つ認めないからな!」
「いや、さすがにそれは無理があるって」
俺がそう言うと、オリバは眉間に皺を寄せて睨んでくる。
「なんで不満そうな顔してんだ、お前は!」
オリバは俺に近づいてくると、ビシッと人差し指を向けて言い放つ。
「冒険者なんだから、言いたいことがあるなら力で語るべきだ! 反論があるのなら、俺よりも強くなってから出直すんだな!」
ぼ、暴論がすぎる。
あまりにも幼稚に怒鳴り散らすので、俺は言葉を失ってしまった。
しかし、オリバは論破でもしたと勘違いしたのか、満足げな笑みを浮かべている。
いや、誰もそんな暴論に乗っかる奴なんていないでしょ。
と思ったら――
「なるほど。確かに一理あるな」
ケルがうんうんと頷いていた。
「え? ケ、ケル?」
「冒険者たるもの、拳で語り合うべきか。弱肉強食の世界、強い方の意見を尊重するべきだな」
「ほぅ、アホ面の魔物のくせに、よく分かってるじゃねーか。ん? なんで魔物がしゃべってんだ?」
ケルはオリバを無視して軽くぴょんっと跳ねてカウンターに乗ると、ハンスさんを見る。
「ギルドの職員よ。何か対決になるような依頼はないか?」
「対決か? そうだな……」
ハンスさんはケルをじっと見た後、腕を組んでしばらく考え込む。
そして奥から一枚の依頼書を取ってきて、カウンターの上に置いた。
「こんなのはどうだ?」
「ふむ。このくらいがちょうどいいだろうな」
一体、どんな依頼なんだろう?
カウンターに近づいて依頼書を見てみると、その依頼書にはC級ダンジョンと書かれていた。
C級ダンジョンというのは、C級パーティが挑むのにちょうどいいとされている難度のダンジョンのことだ。
「なんだ? C級ダンジョンじゃねーか。こんなの、俺たちなら一日もかからないぜ」
オリバは俺をドンッと押しのけて依頼書を覗き込むと、余裕そうな笑みを浮かべる。
どうやら、始まる前から勝ちを確信しているみたいだ。
S級パーティとの対決……さすがに、劣勢すぎる気がする。
そんな俺の不安など知らないケルは、ふふんっと得意げに鼻を鳴らす。
「それなら、このダンジョンの最下層にいるボスを倒して、その素材を持って帰ってきた者が勝者ということでよいな」
どんどん進んでいく話をエリさんが止めようとするが――
「ちょっと、勝手に決めないでくださいよ! ハンスさんからも言ってください! ……ハンスさん?」
ハンスさんは何も言わずにただ俺をじっと見ていた。そして彼は重々しく口を開く。
「ソータ。お前はどうしたい?」
ハンスさんの力強い視線から、俺は何かを試されているような気がした。
ちらっと見ると、ケルは任せておけとでもいうかのように余裕の表情をしていた。
普通に考えたら、勝てるはずがない勝負。
それでも、俺が古代魔法の使い手であることや、ケルが優秀な使い魔であることを加味すれば、全く勝機がないわけではない。
そして何より、俺をずっと馬鹿にしてきたオリバたちに一泡吹かせたい。
「その依頼、受けさせてください」
「ソータくん……!」
エリさんは心配そうに眉を下げているが、ハンスさんは力強く頷いた。
そんな俺たちのやり取りを見て、オリバは抑えきれなくなった笑い声を漏らす。
「ハハハッ! じゃあ、俺たちが勝ったら、殺人未遂と殉職金詐欺はなかったことにしてもらうからな!」
オリバはそう言うと、他のパーティメンバーを連れてギルドを後にした。
ロードたちは先程までうな垂れていたのに、刑が軽くなる可能性を示されて、盲目的に縋っているのだろう。どこか嬉しそうにオリバについていった。
「オリバさんたち、行っちゃいましたよ!」
エリさんが焦ったように言ったが、ハンスさんは落ち着いた様子でオリバたちが出ていった扉の方を見ていた。
「殉職金詐欺だけに留まらず、殺人未遂まで犯した。とてもじゃないが、ギルドで裁ける罪の重さじゃない……俺はそう言ったはずだ。この依頼をあいつらが先に達成しても、罪が軽くなることはない。罪を軽くする権限などギルドにはないからな」
ハンスさんはそう言うと、大きなため息を漏らす。
「じゃ、じゃあ、なんで止めなかったんですか?」
エリさんは不満そうにハンスさんを見る。
すると、ハンスさんはニッと笑って俺の背中をポンッと叩く。
「舐められたままじゃいられない。そういうことだろ?」
「ええ、そうですね」
俺は背中を押してくれたハンスさんの言葉に頷く。
ただの憂さ晴らしだと言われるかもしれない。
それでも、馬鹿にされ続けて殺されかけたのなら、最後に見返してやりたいという気持ちにもなる。
「自分たちが強いと思っている勘違い、高すぎるプライド……全てズタズタにしてやろうではないか、ソータよ」
ケルはそう言うと、可愛らしい顔で悪巧みをするような笑みを浮かべる。
俺はそこまでは考えてなかったと思いつつも、見返すことのできる機会を作ってくれたケルに感謝をして、軽く頭を撫でてやるのだった。
4 新しいパーティの仲間
オリバたちが去った後、俺とケルは冒険者ギルドの奥にある個室にお邪魔していた。
ソファーとテーブルしかない簡素な部屋だが、少し話し合いをするにはちょうど良い広さの場所だった。
「さて、念のために作戦会議をしておくか」
ハンスさんの一言から、俺たちはここで簡易的な作戦会議をすることになった。
「仮にもオリバさんたちはS級ですからね。それなりに作戦を練った方がいいでしょうね」
エリさんはそう言うと、むむっと唸る。
ハンスさんもエリさんも、まるで自分のことのように真剣に考えてくれている。
それが嬉しい反面、俺はどうしても気になって、疑問を口にする。
「あの、どうしてこんなに良くしてくれるんですか?」
冒険者ギルドはあくまで中立な立場だと思っていただけに、こんなに俺に肩入れしてくれることが純粋に不思議だった。
すると、ハンスさんとエリさんは深いため息を漏らしてから、順々に言葉を続ける。
「元々、オリバたちが気に入らなかったんだ。ソータみたいな子供に面倒事を押し付けているような奴らだからな。頑張っていたソータに対する扱いもなっていない」
「そうなんですよ。多分、うちのギルドでオリバさんたちの肩を持つ人はいませんよ。今まで表立って行動できませんでしたが、問題を起こした今なら、遠慮せずにソータくんの肩を持てます」
二人は互いの意見に同意するようにうんうんと頷く。
そして、ハンスさんはニッと笑ってから俺を見る。
「そもそも、ソータの相手はS級のパーティだからな。ギルドにできる範囲で手を貸すぞ」
どれだけ頑張っても、オリバたちにかけられる言葉は罵声ばかりだったので、そんなふうに自分を見てくれている人がいるなんて思いもしなかった。
「あ、ありがとうございます」
俺は少しじんときた心を落ち着かせて、平常心を保とうと心掛ける。
思わず涙がこぼれそうになったけど、これから勝負だってときに泣くわけにはいかない。
そう思って、俺は力強く顔を上げる。
すると、そんなやり取りを見ていたケルが俺の手をペロッと舐める。
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