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第1章

自由を求めた生活は

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管理村の入口は、高い塀に覆われていて、先が見えなかった。
サラナは入口の管理簿に記入してくる、と私に言い残すと入口に向かっていってしまった。
『ここですか……?』思わず声をあげた私に、ドライバーは笑った。
「初めて来る子はみんなそんな反応さ」
『これ刑務所じゃないんですよね?みなさん何か罪でも犯したんですか?』
思わず前のめりになる私にドライバーの顔が曇った。
「ごめん、この子初めて来たから」と慌てて戻って来たサラナは私を制止したようだった。
ドライバーは私から視線を外すと、じゃぁと車を走らせて行ってしまった。
その去り行く車を見送りながら、サラナはため息をついた。
「大丈夫?」
『絶対におかしい、なにもしてないんだよ?異端ってだけでこんな……。』
怒りや不満やともかく負の感情で今にも押しつぶされそうだった。
「まぁ入ったらその考えも変わるよ」とサラナは私の腕を取ると、中に入っていく。

高い塀の向こうは、小さな家が並び、商店もチラホラ見受けられた。なんなら通行人もいる。
普通の街と変わらない。
「ちょっと散歩しよ」とついて来て、とサラナは歩き出した。
大半の人は軍施設に仕事に行っていていたのか静かだったが、商店には買い物客が見えていた。
驚いたのが誰も悲壮感に溢れた顔をしていないのだ。
そして、サラナ先生と声をかける人もいた。
そのたびにサラナは声をかけて来た人と穏やかに談笑していた。
「あれ?この子は?」と私に視線を向けてきた時には、助手なんだ、と答えた。

人の目が離れたとき、私にサラナは切り出して来た。
「どう?普通の街と変わらないでしょ」
『変わらないというより、外より穏やかな感じがする』
「ここは確かに異端の街だけど、仕事は貰えるし住む場所は与えてもらえるんだ」
『その代わり、外の情報は与えられないんだね。サラナが異端と結婚したなんて絶対1人は知ってそう』
「そう、基本的に軍人や外部との必要以上の雑談は禁止で新聞や雑誌も持ち込み禁止されてる」
『遮断された街なんだ』
「手紙も書けないし届かないし、こうやって限られた医者や軍人、商人しかこの街には入って来れないんだ」
サラナは小声でそう言うと、遠くで手を振る男性に手を振り返していた。
『外で聞く話とはちょっと違う』
「みんなここの生活を受け入れてる、外で生活すると追われる身だからね」
少しサラナの表情が悲しげに見えた。
自由を持つ、奪われる、ここの生活はどちらになるんだろうか。気が付いたら私は異端者の話も聞きたくなっていた。
「さぁ、そろそろ仕事に行こう」
『言ってたおじいさんのところ?』
「ああ、この街で1番の古株さ」

おじいさんの家、といっても今にも崩れそうな木製の小屋で、ここに人が住んでいるのかレベルだった。
サラナは慣れた手つきで扉を開けてズカズカ奥に入っていく。
「じいさーん、健康診断にきたぞー」
『こ、こんにちは!』私もその後を追う。
部屋の端に毛布が置かれており、その毛布の下からとても大きなイビキが聞こえた。
サラナはその毛布を勢いよく捲ると、老人が気持ち良さそうに寝ていた。



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