Code @7

ricoooo

文字の大きさ
上 下
7 / 11
第1章

懐へ

しおりを挟む

私とサラナがそんな話をしていた時、同じ列車内には2人を追いかけてダリアが乗っていた。
「アイツがSEEDねぇ」とサングラスをずらして視界に入る2人を睨んでいた。
「ダリアさん、うまいっすよこのサンドイッチ!」と後輩のシンがサンドイッチを渡そうと声をかけてきた。
「太るからやめとく」
それを聞いたシンは、そっとダリアの横にサンドイッチを置くと、向かいの席に座った。
「あれがSEEDっすか?」
「顔写真も一致した、あいつ」
「じゃぁ隣の女が涙の……」
ダリアは頷いて続けた。
「おそらくミッシェルで降りるから準備して」
「どうして分かるんですか?」
「ミッシェルは街の外れに異端者の集まる区画がある」
「あー、あの軍の監視村ですか」
「SEEDの狙いが結婚であるなら、市民権がある新婚がわざわざそんな所行かないでしょ」
「つまり狙いは結婚じゃなかったという事ですか?」
「その可能性は十分ある。あんな化け物みたいな力がある女とアンタなら結婚したい?」
尋ねられたシンは荷物を降ろしているコニーたちの方をチラッと見て答えた。
「無理です」

ミッシェルは、国の1番端にある都市だが、その都市の外れには異端者が集まる区画があった。
そこは国の異端者が集められていた。各地で保護された異端者はここに送られる。軍の管理下に置かれた異端者は、軍内部で仕事を貰いながら生活する事を強いられることになっていた。招集がかかれば戦地に送り込まれるともあるとかないとか。

列車を降りる前に、サラナは私に帽子を渡してきた。
「今日はルルちゃんって呼ばせてもらう」
『結婚して市民権がある異端者が1番踏み込んではいけない場所だから?』
「そう、俺の仕事の助手として来てもらいます」
軍からも追われない自由な異端者を、追われる身の異端者は嫌っている。欲しくて欲しくてたまらない自由。
それは私自身もそうだったから。
時には、異端者同士の物騒な話もよく聞いたものだった。
サラナは、守ろうとしてくれてるのが純粋に嬉しかった。

深く帽子をかぶって、私はサラナの後をついて行った。
「ミッシェルには来たことある?」
『ない。軍管理下って聞くと足が遠のく』
「だろうね」
駅から出ると、小さな商店はチラホラ見えたものの、ひときわ大きく見えたのは大きな軍施設だった。
サラナは、迷わず正面玄関に立つと、門番である軍人に声をかけた。
「あれ?サラナ先生じゃないですか。今日はどのご用件で」
「管理村のじいさんに呼ばれたんだ」
軍人とサラナは顔馴染みのようだった。あまりにフランクに話すのでこちらの肩の力が抜ける。
「その方は?」軍人は後ろにいた私に声をかけた。
「助手だ」
下から上まで舐めるような視線が私に刺さるが、私は帽子をとらずニコッと笑った。
「それはそうと先生、結婚なさったんでしょ?なんでも異端だとか」
「まぁその話は後日、じいさんが待ってる。通してくれないか?」
軍人はハイハイ、と門の鍵を開けて無線機を使ってどこかと通信のやり取りをしていた。
「迎えの車が来るんだ。管理村まで直通さ」
やがて、小型の車がきた。
それに乗り込むと、車は再び走り出した。
「先生、また来たの。もう軍医にでもなったらどうだい?」ドライバーはサラナに笑った。
「いいや、軍人として働くより外の医者の方がよっぽど稼ぎはいい」
「違いねぇな」とガハハとドライバーは笑った。
10分ほど車を走らせて、管理村の入口に到着。その間サラナはずっとドライバーと話をしていた。
まるで私に興味をひかせないように。私は外の景色を見ることもなく、サラナに渡された荷物をぎゅっと握りしめていただけだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...