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第1章
懐へ
しおりを挟む私とサラナがそんな話をしていた時、同じ列車内には2人を追いかけてダリアが乗っていた。
「アイツがSEEDねぇ」とサングラスをずらして視界に入る2人を睨んでいた。
「ダリアさん、うまいっすよこのサンドイッチ!」と後輩のシンがサンドイッチを渡そうと声をかけてきた。
「太るからやめとく」
それを聞いたシンは、そっとダリアの横にサンドイッチを置くと、向かいの席に座った。
「あれがSEEDっすか?」
「顔写真も一致した、あいつ」
「じゃぁ隣の女が涙の……」
ダリアは頷いて続けた。
「おそらくミッシェルで降りるから準備して」
「どうして分かるんですか?」
「ミッシェルは街の外れに異端者の集まる区画がある」
「あー、あの軍の監視村ですか」
「SEEDの狙いが結婚であるなら、市民権がある新婚がわざわざそんな所行かないでしょ」
「つまり狙いは結婚じゃなかったという事ですか?」
「その可能性は十分ある。あんな化け物みたいな力がある女とアンタなら結婚したい?」
尋ねられたシンは荷物を降ろしているコニーたちの方をチラッと見て答えた。
「無理です」
ミッシェルは、国の1番端にある都市だが、その都市の外れには異端者が集まる区画があった。
そこは国の異端者が集められていた。各地で保護された異端者はここに送られる。軍の管理下に置かれた異端者は、軍内部で仕事を貰いながら生活する事を強いられることになっていた。招集がかかれば戦地に送り込まれるともあるとかないとか。
列車を降りる前に、サラナは私に帽子を渡してきた。
「今日はルルちゃんって呼ばせてもらう」
『結婚して市民権がある異端者が1番踏み込んではいけない場所だから?』
「そう、俺の仕事の助手として来てもらいます」
軍からも追われない自由な異端者を、追われる身の異端者は嫌っている。欲しくて欲しくてたまらない自由。
それは私自身もそうだったから。
時には、異端者同士の物騒な話もよく聞いたものだった。
サラナは、守ろうとしてくれてるのが純粋に嬉しかった。
深く帽子をかぶって、私はサラナの後をついて行った。
「ミッシェルには来たことある?」
『ない。軍管理下って聞くと足が遠のく』
「だろうね」
駅から出ると、小さな商店はチラホラ見えたものの、ひときわ大きく見えたのは大きな軍施設だった。
サラナは、迷わず正面玄関に立つと、門番である軍人に声をかけた。
「あれ?サラナ先生じゃないですか。今日はどのご用件で」
「管理村のじいさんに呼ばれたんだ」
軍人とサラナは顔馴染みのようだった。あまりにフランクに話すのでこちらの肩の力が抜ける。
「その方は?」軍人は後ろにいた私に声をかけた。
「助手だ」
下から上まで舐めるような視線が私に刺さるが、私は帽子をとらずニコッと笑った。
「それはそうと先生、結婚なさったんでしょ?なんでも異端だとか」
「まぁその話は後日、じいさんが待ってる。通してくれないか?」
軍人はハイハイ、と門の鍵を開けて無線機を使ってどこかと通信のやり取りをしていた。
「迎えの車が来るんだ。管理村まで直通さ」
やがて、小型の車がきた。
それに乗り込むと、車は再び走り出した。
「先生、また来たの。もう軍医にでもなったらどうだい?」ドライバーはサラナに笑った。
「いいや、軍人として働くより外の医者の方がよっぽど稼ぎはいい」
「違いねぇな」とガハハとドライバーは笑った。
10分ほど車を走らせて、管理村の入口に到着。その間サラナはずっとドライバーと話をしていた。
まるで私に興味をひかせないように。私は外の景色を見ることもなく、サラナに渡された荷物をぎゅっと握りしめていただけだった。
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