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プロローグ

ウェディングロードは茨の道

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男からの唐突な言葉に私は絶句した。
『はぁ?』
「今更だが【稀な異端者】として追われてる【涙の子】で良いんだよな?」
私は黙って頷いた。
「国から追われてる異端者が、国外逃亡する他に逃れる方法を知ってるか?」
『………死亡?』
「結婚だ」
『け?結婚!?』
「単刀直入に言う。ルルちゃんの涙の力が欲しい」
『どうせ戦争の道具にするかアンタも変態野郎なんでしょ?』
「悪いがどっちも違う」
男が続けて話をしようとしたその瞬間、足音が私の耳に聞こえてきた。その音は男にも聞こえたようだった。
「また後でくる」
呼びかける暇もなく男はすぐにその場を離れた。

私はその数時間後、檻ごとオークション会場の舞台に立っていた。
舞台を360度囲むようにお客がひしめき合っていて、表情までは見えなかったが買い物をするような刺さる視線に不快になった。

「さぁ、今回の目玉となります【涙の子】がやってきました!何をしても傷のつかない身体は不老不死!流す涙で人々の身体の傷を癒すその力は戦争に使うのもよし、コレクションにするのもよし!では……」と司会がスタート価格を発表するまえに、会場には野太い声で3億!と声が響いた。

4億、5億、とどんどん競り上がる私のの値段に気持ち悪さを覚えた。
手を挙げる奴らは多分私を人間とは扱ってくれない。こんな所に来る奴らには持ち合わせていない感覚なんだろう。

7億!と声をあげたのは、中年の男性だった。一言でいうと小汚い。
その声と同時に会場が静寂に包まれた。
あぁこれで私の人生終わったのか。せめて容姿の整った人に拾われたかったなぁと諦めの表情を見せた途端、会場の扉が勢いよく開いた。
暗闇に突如差した光と同時に軍服の人間が会場に入ってきた。
「全員その場を動かず手を上げろ!」
素直に従う者は少なく、会場は一瞬で逃惑う観客とそれを追う軍人で溢れかえった。
ステージに取り残された私はただそれを見ているしか出来なかったが、これを逃したら私も軍隊に捕まってしまう。それは避けたい。檻から出ようとしたがやはり施錠されたままだった。
私が全て諦めた瞬間だった。

会場の怒号が少しおさまったころ、檻に近付いてくる人影があった。私は檻の中で力が抜けて膝を抱え込んで座り込んでいたが、その人物はいつの間にか檻の中に入り込んでいて私の前にしゃがみ込んでいた。
「ルルちゃんお待たせ」
馴染みのある声に思わず顔をあげると、そこにいたのはプロポーズしてきた男だった。
驚いて声が出ない私に男は少し微笑むと、ちょっとごめんな、と私の身体をヒョイッと持ち上げステージを降りていく。
『なにするの!?』
男は私の問いかけには答えず、近くにいた軍人に駆け寄ると静かにこう告げた。
「拉致された婚約者を迎えに来ました」
「異端と婚約したのか?」軍人が鼻で笑っている様子に私は苛立ちを覚えた。
ここで男は私をそっと地に降ろしてくれた。
「ええ、彼女の勤め先に毎日通って口説き落としました」
軍人は私の身体を下から上へと眺めていく。
その間にゾロゾロと軍人が集まりだしていた。
「お前、名前は?」
男の口角が上がったようだった。
まったく、本名も知らない奴と結婚する気だったのか。
『コニー•セブン』
その瞬間、軍人たちが静まり返った。
「コニー………あの涙の子か?」
『だったらなによ?ウェディングロードでも用意してくれるの?』















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