14 / 36
閑話:忘れられた男
しおりを挟む一人、ウェントルプにて朝っぱらから修練に励む者がいた。彼の手には木の棒が握られている。
「すう...」と息を吸う。そして、
「はぁ!!」
目の前の大岩に向かって棒を横に振った。
岩に少しだけ傷ができた。
彼は岩の前に仰向けに倒れた。
(父さんは一刀両断できるのに...俺はなんで傷しかつけらんねぇんだ...これじゃ...これじゃあいつを...)
その時、後ろから肩をポンと叩かれた。父さんだ。
「力みすぎだ。もっとこう、肩の力を抜いてなぁ...?」
「いや、今の俺は技術よりまず筋力だと思うんだ。こんな子供の、筋肉が全然足りてない体じゃ切れるものも切れねぇ。」
そう言って、リュウジは先程まで棒を振るっていた大岩を持ち上げ、スクワットを始めた。
(いや...普通に筋力あるよなぁ...やっぱり技術が圧倒的に足りねぇ...)
ケンはおもむろにある本を取り出した。タイトルは「勇者覚醒のノウハウ」だ。著者はグレイン・グレイドールという女性、人々は彼女のことを「英雄」と呼んでいる。現在、彼女は世界中を旅していると言われている。
ぺらぺらとページをめくると、そこにちょうど「勇者の力を増幅させる方法」とあった。彼は、リュウジに技術を教えることより、勇者としての力を高め、「剣聖」に対抗しうる戦力にしようと考えた。
(勇者の力を増幅させる方法...まず守りたいものとの絆を深める...これは自然に生活してたらできるしな...)
次のページをめくろうとした時、リュウジがケンの手を掴んだ。
「...?なんだ?お前もこれに興味あるのか?」
「んなわけ、無いだろ!?」
そう言って、リュウジはケンが手に持っている本を奪い、投げ、棒で刻んだ。その本は紙切れになった。
「ちょ、はぁぁぁぁぁ!?な、何やってんだお前ぇ!?!?」
「俺はこんなのに頼らないといけないほど弱くねぇ!!これを教えるくらいなら俺に技術を教えてくれ!!!」
(さっきと言ってること...ちがぁう...)
あの本は英雄の直筆で、ファンにものすごい高値で売れるのに...。
(まぁいいかぁ、金より息子だなぁ。)
「よし、わかった。じゃあまず.....」
ケンはリュウジに技を教え始めた。
✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤
現在、目の前にあの英雄、グレイン・グレイドールがいる
「...ねぇ、あんたさ、私の本ダメにしたよね?」
「.......」
(まさかバレるなんて...)
わざわざ呼び出された。ここはウェントルプの郊外にある高原だ。といっても首都からかなり離れていて、隣の国の国境と近い。
ここまで来るのに5時間かかった。
「なんで黙ってるの?ねぇ?」
「...いやー...あれは息子がやっちゃってねぇ...」
「いや、止めなさいよ。」
ぐうの音も出ない。
「...まあいいわ、そもそもあれはいらない物だし。」
「え?あれいらねぇの?」
「どこまでいっても私達は世界のルールには逆らえないの。勇者は超自然的な条件下でのみ生まれ、成長する。外野が手を出しても意味ないの。」
「ほへ~...ってじゃあなんで俺を呼び出したんだよ。」
彼女は、急に顔をしかめて俺を見た。
「金になるからに決まってるじゃない...あれ、今どんだけ高価になってるか知らなかったでしょ?」
「あぁ、どんくらい?」
彼女はウェントルプの方向を指した。
「あの国の半分が買える。」
「.......すいませんでした!」
彼女は、謝罪が聞けたからもういいと言い、また旅に出た。
.....背中に巨大な鉄板のような剣を担いで。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる