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完結
しおりを挟む僕が悪いことなんて分かってるよ。
でも、男もなら分かってくれるはず…
僕は、僕は、童貞なんだぁー!!!
女の子とイタしたいんだよ!!
一生に一度くらいは!!
あの柔らかいおっぱいに顔を埋めたい!
アンアン言わせたい!!
それの、何がいけないんだよぉーーー!!!
僕はミチさんに電話をした。
「もしもし?ミチちゃん?遅くにごめんね?」
『あ、どうしたんですかぁ?ヒロキさぁん♡』
あー、癒やされる~♡
「あのね、僕、ほら前に言ってた家庭の事情で、急に今月中に仕事を辞めないといけなくなっちゃって」
僕は、以前のタケル襲撃事件のことを家庭の事情で誤魔化している。
タケルは兄弟と説明してる。
それで納得してくれるミチちゃんは、本当に可愛い。
『え~っ?!困るぅ~、ミチ、ヒロキさんいないと、もうお仕事行けない~っ』
あ~っ、かわいい!
甘ったるくて最高。
ニヤニヤするのを止められない。
「僕もだよ、ミチちゃん♡でも、仕事は辞めても、また会えるから」
『えー?本当にぃ?じゃーあ、お泊りも出来るのぉ?』
ゴクン、と唾を飲む。
頭の中はパラダイスだ。
「もっ、もちろんだよ!ミチちゃんとお泊りなんて最高だなぁー!早く行きたい」
「どこに行きたいって?」
ガッシリと僕のスマホは別の手に握られていた。
『どーしたんですかぁ?ねぇ、ヒロキさぁ~んっ、お泊り、いつにしますぅ?初めてのお泊り、楽しみぃ~っ♡ミチ、エッチなパンツ買っちゃう♡』
ぐいぐい上げられたスマホの音量で、静かな部屋にミチちゃんの声が響く。
「あ、あの、ちが、これは」
僕の手から、いや、頭から、全身から汗が大量に流れ出す。
これ、脱水症状になるんじゃないだろうか。
「へえ、エッチなパンツね」
地獄の門が開いた音がした。
「ほら、あの女にちゃんと説明してやれよ」
僕は涙目だ。
分かってる。
さっき、プロポーズを受けたばっかりなのに、女の子に電話してお泊りの約束するなんて、僕はクズだ。
「ま、待って、タケル、説明は、会社で」
スマホをぐいぐいと顔に押し付ける鬼の目が底光りしてる。
「今だ。俺の見てる前で、全部話せ」
『ヒロキさぁん?なぁにぃ?聞こえなーい。ミチ、お風呂入っちゃうぞぉ♡ミチの裸、想像しちゃダメなんだからねっ♡』
あ、僕のスマホにヒビ入った。
「みっ、ミチちゃん!あのね」
更にヒビが入る。
「ごめっ、山田さん!僕には恋人がいて」
更にメキメキとスマホが悲鳴を上げる。
「ちがっ、結婚するんだ!愛するパートナーと!だから、お泊りには行けないんだ!ごめん!!」
『はぁ?!なにそれ!二股ってこと?ふざけてんのか、このカス!クズ!死ね!』
ブツッと切れた画面と、にんまり笑う悪鬼。
僕は涙目で肩で息をしてる。
「まあ、ギリ合格点だな」
「ひどいよ、タケル…こんな無理矢理」
僕は気が動転していたんだ。
だから、失言にも気付かなかった。
「彼女と、本当に泊まりになんて行くわけないだろ?ただの冗談だよ。どうせ仕事も辞めるんだから、そのくらい許してくれたって」
「二股って言ってたが?」
一段と声が低くなって、僕は初めて自分の失言に気付いた。
「お前、俺とあのクソ女を二股かけてたってことだよなぁ?このまま謝るなら聞き流してやろうかと思ったが、気が変わった」
僕は最低な男です。
パートナーの気持ちを考えられない最低男です。
二度と浮気なんてしません。
タケルだけを生涯愛し続けます。
だから、だから
「ぐすっ、ひっく、ひいっく、も、許してぇっ」
僕は近くの公園に連れて来られていた。
深夜とはいえ人も通らないとは言えない公園のベンチ。
そこで、僕はタケルの膝にうつ伏せに乗せられ丸出しにされて尻を叩かれていた。
「あ?何をだ?俺は、一体、どれから許せばいいんだ?」
「ごべんだざいぃ~っ!!いだっ!やべでっ」
ベチン、ベチン、と叩かれる間、僕のチンコはタケルの太腿の間にがっちり挟まれている。
抜くことは出来ないし、叩かれて衝撃は来るわで、よく分からない液体でぐちゃぐちゃだ。
「俺になんの不満があるんだ?言ってみろ」
絶対言えない。
この状況で不満なんて言ったら、次に何されるかなんて分からない。
「ない、ないよぉ、ぞんなのっ、ごめんよぉ、いだっ!」
もう真っ赤に腫れてるだろう尻が悲鳴を上げてる。
絶対、会社で椅子に座れない。
「じゃあ、なんでこんなに浮気ばっかりする」
ぐうの音も出ない。
タケルは、こんなにイケメンなのに、付き合ってから一度も浮気したことはない。
「ふぐっ、それはっ、あがっ!いだいっ、も、ゆるして」
「答えろ」
タケルの手が大きく振りかぶるのが見えた。
僕は痛いのが嫌で必死だった。
逃れたかっただけなんだ。
「おっ、女の子とエッチしたいだけだよ!」
言ってしまった。
タケルが止まった。
「ご、ごめ、ちが、これは、その」
言い訳が思い付かない。
そろりとタケルを見上げると、タケルは完全に止まっていた。
ゆっくり膝から降りて、タケルを見上げても、タケルは止まったままだ。
ズボンを急いで上げて、タケルに呼びかける。
「た、タケル?えと、ごめんね?今のは、ほんの冗談」
「…行くぞ」
僕の手首をがっしり掴まれてタケルに連れ去られた。
恐くて振りほどくなんて出来なかった。
「ここで済ませろ」
着いたのは、風俗店。
「え?え?」
僕はタケルとお店を交互に見て、頭がハテナばっかりだ。
「女とヤるのは、プロなら許す」
そういうことらしい。
僕はタケルからお金を押し付けられて、店に押し込まれた。
なんだか不思議な気分だけど、お店の説明なんかを聞いてるうちに、そんなことは忘れてた。
「お兄さん、こういうとこ初めて?かわいい顔してるわね~っ、モテるでしょ」
ついてくれた女の子は、女の子というよりも、僕のお母さんみたいな歳だった。
「は、はい。初めて、です」
でも緊張してる僕を優しく優しく解してくれて、僕は安心していられた。
ああ、これで僕もようやく童貞卒業。
「…出来なかった」
あんなに良くしてくれたのに。
僕は勃たなかったんだ。
なんでか、一度も反応すらせず、もちろん射精もしなかった。
お母さんのような嬢は困った顔をして、僕を慰めてくれた。
「こんなおばちゃんじゃあ、仕方ないわよね。ごめんなさいね?気にしちゃだめよ」
僕は、優しいおばちゃんに身体を綺麗にしてもらって、店の外へ出た。
そこには、ガードレールに寄りかかって僕を待つ、めちゃくちゃ格好いい男がいた。
そりゃ、そうだ…
「ごめん…無理だったわ」
アハハ、と乾いた笑いの僕に、タケルは何も言わなかった。
プロポーズした日に他の女と泊まりの約束されて、挙げ句に女を抱かせる為に風俗店まで連れて来て、頑張って稼いだ金も渡して…
タケルの後ろをついて歩きながら、僕は泣いていた。
「た、たけ、る…ぼく、ごめっ、も、ごめんっ」
遂には歩けなくなって道端にへたりこんだ。
あんまりにも僕が最低過ぎて、指に光る指輪が眩しくて、耐えられなかった。
タケルは黙って僕を抱き上げて連れ帰ってくれた。
力強い腕に抱かれながら、何も言わない寂しげなタケルの顔を見詰めて…
僕は、タケルの為だけに生きることを心に決めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっとヒロキが完全に俺のものになった。
全く、あいつはすぐにフラフラするから困ったもんだが、そこもかわいいから仕方ない。
今では、仕事も辞めたヒロキは新居の高層マンションで手料理を作って毎日、俺を出迎えてくれる。
やらしい尻を振りながら。
風俗店でヒロキが勃たないことくらい分かってた。
なにせ、もう何年もケツやら乳首やらでイクことばっかり教え込んで来たんだ。
今更、チンコ弄られたって反応するわけない。
しかも、あの店は地元じゃ評判の下手くそババアがいる店だ。
誰でも無理だとネットで調べた。
まあ、初体験のヒロキに分かるわけもない。
あのくそ女も、まあ結果的には良い働きをしてくれた。
これで二度とヒロキは俺から離れないし、女にも行かない。
「えっ、こんなの挿れるの?どうしよ…」
ヒロキが、腰をくねくね揺らしながら目の前のオモチャを見てる。
今は、俺が仕事で出張中、ヒロキが寂しくないように挿れるオモチャを選定してる。
絶対に浮気させないための対策だ。
「どれでもいいし、全部でもいい」
腰をするっとなで上げると、ひゃん、と悦ぶ。
「やだ、想像したら…」
モジモジと前を抑えるヒロキは、あれから、すっかり俺に対して素直になった。
「全部買って、毎日違うモノを咥え込めばいい」
穴の周りを、ふにふにと弄ってやれば、はぁ、と息が上がって目がトロンとしてくる。
「うん♡そうする♡じゃあ、届くまでは、タケルので栓して?」
する、と服を脱いで誘ってくる美しいヒロキ。
「奥まで、な?」
「うれしっ♡」
早く会いたい一心で、寝る間も惜しんで出張を繰り上げて山のような土産をぶら下げて帰って来たら、配達員の男を玄関で咥え込んで喘いでいる場面に出食わすまで、あと2週間。
「…殺す」
「ちがうのっ、これはっ」
完
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