ご主人さまと呼ばないで

いや、ハッピーエンドて

サンクチュアリとログは、変わらず森の奥にある小さな家で二人きりで暮らしている。

ログも、村の皆とも、少しずつ打ち解けているようだ。
ログの美しさにも皆、すぐに慣れて、今ではサンクチュアリの夫として広く認知されている。

なにせ、村長主催で盛大な結婚式まで開かれたのだから。

「では、誓いのキッスを」

「「えっ？！」」

村人全員がガン見している中で、目いっぱい着飾られた二人は真っ赤な顔で向かい合っている。
その中央には、ニヤニヤした村長。
手には何も書いて無い本。
村長の加減次第で進む式なのだ。

「深いやつね？ぶっちゅ～って」

「「いや、あの、それは…」」

チラチラと互いを見合っていると、ヤジが飛んできた。

「さっさとやっちまえ～っ！」

「ほら、がぶっと！」

「ちゅ～うっ♡ちゅ～～っ♡」

なんとも下品な野次である。
勿論、女神も混ざる。

『ベロ入れろよ～！！唾液交換！唾液交換！ヒューヒュー！』

最低である。

二人は、腹を決めたらしく、真っ赤になりながらも見つめ合い、そっと唇を寄せた。
優しく触れ合って離れた二人の唇に、群衆は、それでも満足したらしい。
大きな拍手と歓声が挙がった。

「よっ！おめでとう～！！」

「結婚おめでとう～！！」

「サンク！ログ！お幸せに！！」

なんのかんの、皆、二人を祝福してくれていた。
若い二人が手を取り合って立つ姿は、あまりに美しく絵のようだった。

「綺麗だね」

小さな女の子が言った。

「そうだな」

父親が言った。

「幸せそうだね」

母親が言った。

「見守っていこうね」

祖父が言った。

「愛って眩しいね」

男の子が言って祖母が笑う。

「そう、愛は眩しくて、いつも隣にあるものだよ」

誰かが言った。



そうして、ログとサンクチュアリは、慎ましやかに永遠に幸せに暮らしました。





ほんとの終わり