上 下
8 / 23

交わる、交わらない、交わる

しおりを挟む
 やはり、邪神だった。
 だが、その言葉は俺の心を甘く蝕んだ。
 天使を汚すような言葉は、それだけで罪深いというのに、俺は想像してしまった。
 サンクチュアリ様を汚す妄想を……

 一度想像してしまえば、それは歯止めが効かない呪いだった。

 気付けば、長い奴隷生活で完全に機能を失ったと思っていたソレが、完全に首をもたげていた。
 俺は、なんと罪深く愚かな奴隷なのだ。
 あろうことか、あの天使たる主人に対して、そんな汚れた想いを抱くなど、抱く、いだく、だく、だく……?つまり……

あぁぁぁぁぉぁ!!!!!
バカ!俺のバカ!今なら死にたい!
どうか、かの小太り貴族よ、俺を完全に殺してくれ!今なら、いかなる拷問も喜んで受けよう!

そんな邪な想いを何とか打ち消そうと湯浴みをしていると、ふとサンクチュアリ様の声がした気がした。
思わずそちらを見れば、布巾をサンクチュアリ様が取り落としたところだった。目隠しの布を避けて、地面に落ちた布巾を何気なく拾ってサンクチュアリ様に手渡す。
と、サンクチュアリ様の視線を一点に感じた。

「???」

ふ、と自分も視線を辿って見れば………

サンクチュアリ様が一目散に走り去った。
それはそうだろう。
俺だって逃げたい。

こんな、万全の態勢で頭をもたげたモノを見せることになるなんて………



俺は、走った。
湯浴みしていた所から、一番近くて一番太い大木の元へ。
なぜって?
落ち着く為だ。
サンクチュアリ様に、こんな酷いモノを見せてしまったにも関わらず、ソレは増々増長するばかりで、一向に治まろうとしなかった。
むしろ、先端から透明な液体まで溢れさせ始めている。さっきから、サンクチュアリ様の唇がソレの近くにあった様子が何度も何度も頭の中を駆け巡り、一向に治まらない。早く何とかしなければ……!!!

そこで、その大木に俺はしがみついた。
何をしてるかって?
ナニをしているんだ。
奴隷は、自慰が禁じられている。一切の行動は主人の指示に従うのだ。
けれど、ここではサンクチュアリ様は指示などされない。

「家の中や周りでは自由に過ごして下さいね。それが、僕にとっても嬉しいから」

本当に、神………
そんな天使であり、真の神であるサンクチュアリ様を想いながら、俺は………
大木に向けて擦り付けた。ナニを。

はぁ、はぁ、と荒く息をすれば首輪は多少苦しいが、これまでの拷問では、もっと苦しい思いを沢山してきたから、全く苦にならない。むしろ、楽なくらいだ。
それなのに、今ではサンクチュアリ様との絆の証となった首輪を外すことを邪神に頼むなんて……しかも、サンクチュアリ様の身体と引き換えに!!
あの邪神め、俺と交われなどと、不埒な……交わ……まじ……交わるって、つまりは………あああああぁぁぁぁあ!!

心の中で、何度も絶叫しながら腰を大木に擦り付けていた。
肩を叩かれるまで。

「……グ、ログ?何してるの?」

「!!!!!!!」

俺は大木を抱えたまま、背後のサンクチュアリ様を振り返って固まった。
終わった……みられた……捨てられる……
最悪の終わりが見えた。
もはや、向こうで地獄の門番が手を振っている。あれ、門番って、もしかしてシザエラ?

「ログ?ねえ、大丈夫?その……赤くなってるから、そろそろ……痛くないの?」

ハッとこちらの世界に意識が戻って来た。背後には、麗しきサンクチュアリ様。と、全裸の奴隷。しかも、俺は大木で自慰真っ最中。サンクチュアリ様の視線を辿って見れば、確かに先端が大木の厚い皮に擦られ過ぎて少しだけ赤くなっている。
こんなの、何の痛みも感じない。
が、俺は正気を失っていた。もう、これで俺の天国は終わりで、天使に捨てられたら、また元の生活が待っていると思ったら、涙が溢れて来た。奴隷は泣いてはいけないのに。


「……!!やっぱり、痛むんだね?もう…困ったな……ほら、こっち向いて?その……治療だから、ね?」

俺は言われるがまま、サンクチュアリ様の方に向き直って大木に背中を付けた。
目の前には、サンクチュアリ様。心無しか目が潤んで頬も上気しているような……
呆然としている俺の前に、事もあろうかサンクチュアリ様が跪いた。

「?!?!??!!!」

俺がアタフタとしていると、ソコを両手でそっと掴まれた。

「その……初めてだから、上手くは出来ないけど……我慢してね?」

我慢?初めて?上手??
えっ、あのっ、そのっ、それはっ、一体……!!?

パクっと紅色の果実のような唇が、俺の醜い先端を食んだ。あの、先端から溢れさせていたアレを、だ。

「~~~~~っっ!!!」

瞬間に、俺は吐き出してしまった。
何をって?
アレを、だ。

「んん~~っ!!ゴホッ、ハアっ、んっ、飲んじゃった……けホッ」

オーマイガー………


シザエラ……今すぐ、俺を殺してくれ……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵
BL
創作BL Dom/Subユニバース 自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話 短編 約13,000字予定 人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...