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金
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「そんな訳にはいきません!借金は、必ず自分達で返済します!!」
僕は絶対に、それだけは譲れないと叫んだ。いくら、天真爛漫な母の言う事でも、これはダメだ。危うくマルス様の綺麗な瞳に吸い込まれて頷きそうになっていた自分が恐ろしい。
「でもでもでもでも……」
「でもじゃない!!!それだけはダメです!!父上の借金に人を巻き込むなど、あってはいけないことです!!」
え~っと、母はいじけている。
「……その、僭越ながら、私にも手伝わせて頂けないでしょうか。せっかく、こうしてお話出来たご縁もありますし…私としては、その……このご縁を……その、大切に、その、したいというか……」
最後の方は小さくて聞き取れなかったが、僕も同じ気持ちだったから、聞き取れなくても通じ合った。僕の顔は真っ赤だろう。
「それは、その……僕も、あの、せっかくお会い出来て、その……また、お会いできたら、あの……嬉し……い、ですし……でも、あの…借金のことは、ほんとに……額も額ですし……」
「そのことですが、金貨300枚でしたら、今日中に用意出来ます。勿論、返せなんてことは言いません。あなたに、その……また、あの…、一度でもお会いする機会だけでも、与えて頂きたいのですが……やはり、気持ち悪い、ですかね……」
「気持ち悪いだなんて!!むしろ、あなたの瞳を見ると、胸が高鳴って苦しくて、僕は、僕は……」
「マルス様のことが好き」
「そう、僕はマルス様のことが………って、母上??!!」
うふふ、と少女のように母が笑う。
「私がいることを、二人共、すぐに忘れてしまうんですもの。とてもお似合いですよ?いっそのこと、婚約してしまえば良いのでは?」
「こ、ここここここここかこかここかこか???!!」
「こんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこん??!!」
「こ♡ん♡や♡く♡」
はぁはぁと、二人の息が自然と荒くなっていく。
視線が合うと、雷が落ちたように弾かれる。
あまりに眩しくて直視出来ない。
ああ、運命の相手とは、こんなにも眩しいものなのか。
「は、は、母上ぇ?!そ、そんな、マルス様に、し、し、し、失礼なっ!!!」
思わず声が裏返った。
「そ、その……スファン様、その……あの、す、す、好き、という、のは……?私の聞き間違いでしょうか……」
美しい瞳が潤んでいるように見える。日焼けした肌なのに、こんなに上品に見えるのは、岩のようだなんて思った時もあったが、こうして見れば均整の取れた体つきをしており、なんて美しい。鍛え上げられた身体の美しさを皆は知らないだけなのだ。
こんな、美しい身体に包みこまれたなら、きっと自分は意識を保ってなどいられないだろう。
ほぅ、とため息をつく。
「やはり、勘違いでしたか……申し訳ありません」
「違うんですよ?!この子は今、あなたとのあらぬ行為の妄想をして悦びの溜め息をついたのです!!ほら、鼻の下が伸びて頬が真っ赤でしょう?!」
「なっ!!!母上!!なんて卑猥なことをマルス様に言うのですか!!僕は、ただマルス様に抱き締められた時のことを想像していただけで、決してあらぬ行為の妄想など、していません!!」
ハッと口を右手で抑えた。
でも、言葉は二度と戻らない。
サーッと血の気が引いた。なんてことを口走ってしまったんだ。
嫌われる。
「嫌わないで下さい!!僕は、僕は!!」
「抱き締めても、良いのですか?」
「えっ?!は、はぃ………」
そっと抱き締められた。厚い胸板に頬が当たる。太い腕に抱えられると、とてつもない安心感があった。あ、ドクドクドクドクと高速な心臓の音が聞こえる。きっと、僕の心臓も同じくらい早鐘を打っている。
「あなたを一目見た時から、恋に落ちていました」
僕の頭の上から、落ち着く声色で、マルス様が、そんな夢のようなことを仰ってくれた。
本当に?!という思いと共に、すぐに自分の想いも伝えなくては、と気ばかり焦った。
「ぼ、僕も!!あなたの、その、美しい瞳を見た時から、僕の心はあなたでいっぱいでした!!す、好きです!け、けけけけけけけけけけけけけ」
「け?」
「結婚して下さい!!!!!!」
「はい」
「えっ!!良いんですか??!!」
「こんな私で良ければ、ぜひよろしくお願いします」
「やったわね!!!スファン!!これで、万事解決!!!」
高笑いする母を見て、もしかして、この人の掌で転がされた?と思ったが、そんなことは、もうどうでもよかった。
逞しい腕と胸に包まれて、安堵とときめきで胸がいっぱいだった。
間違いなく世界一、幸せだ。
僕は絶対に、それだけは譲れないと叫んだ。いくら、天真爛漫な母の言う事でも、これはダメだ。危うくマルス様の綺麗な瞳に吸い込まれて頷きそうになっていた自分が恐ろしい。
「でもでもでもでも……」
「でもじゃない!!!それだけはダメです!!父上の借金に人を巻き込むなど、あってはいけないことです!!」
え~っと、母はいじけている。
「……その、僭越ながら、私にも手伝わせて頂けないでしょうか。せっかく、こうしてお話出来たご縁もありますし…私としては、その……このご縁を……その、大切に、その、したいというか……」
最後の方は小さくて聞き取れなかったが、僕も同じ気持ちだったから、聞き取れなくても通じ合った。僕の顔は真っ赤だろう。
「それは、その……僕も、あの、せっかくお会い出来て、その……また、お会いできたら、あの……嬉し……い、ですし……でも、あの…借金のことは、ほんとに……額も額ですし……」
「そのことですが、金貨300枚でしたら、今日中に用意出来ます。勿論、返せなんてことは言いません。あなたに、その……また、あの…、一度でもお会いする機会だけでも、与えて頂きたいのですが……やはり、気持ち悪い、ですかね……」
「気持ち悪いだなんて!!むしろ、あなたの瞳を見ると、胸が高鳴って苦しくて、僕は、僕は……」
「マルス様のことが好き」
「そう、僕はマルス様のことが………って、母上??!!」
うふふ、と少女のように母が笑う。
「私がいることを、二人共、すぐに忘れてしまうんですもの。とてもお似合いですよ?いっそのこと、婚約してしまえば良いのでは?」
「こ、ここここここここかこかここかこか???!!」
「こんこんこんこんこんこんこんこんこんこんこん??!!」
「こ♡ん♡や♡く♡」
はぁはぁと、二人の息が自然と荒くなっていく。
視線が合うと、雷が落ちたように弾かれる。
あまりに眩しくて直視出来ない。
ああ、運命の相手とは、こんなにも眩しいものなのか。
「は、は、母上ぇ?!そ、そんな、マルス様に、し、し、し、失礼なっ!!!」
思わず声が裏返った。
「そ、その……スファン様、その……あの、す、す、好き、という、のは……?私の聞き間違いでしょうか……」
美しい瞳が潤んでいるように見える。日焼けした肌なのに、こんなに上品に見えるのは、岩のようだなんて思った時もあったが、こうして見れば均整の取れた体つきをしており、なんて美しい。鍛え上げられた身体の美しさを皆は知らないだけなのだ。
こんな、美しい身体に包みこまれたなら、きっと自分は意識を保ってなどいられないだろう。
ほぅ、とため息をつく。
「やはり、勘違いでしたか……申し訳ありません」
「違うんですよ?!この子は今、あなたとのあらぬ行為の妄想をして悦びの溜め息をついたのです!!ほら、鼻の下が伸びて頬が真っ赤でしょう?!」
「なっ!!!母上!!なんて卑猥なことをマルス様に言うのですか!!僕は、ただマルス様に抱き締められた時のことを想像していただけで、決してあらぬ行為の妄想など、していません!!」
ハッと口を右手で抑えた。
でも、言葉は二度と戻らない。
サーッと血の気が引いた。なんてことを口走ってしまったんだ。
嫌われる。
「嫌わないで下さい!!僕は、僕は!!」
「抱き締めても、良いのですか?」
「えっ?!は、はぃ………」
そっと抱き締められた。厚い胸板に頬が当たる。太い腕に抱えられると、とてつもない安心感があった。あ、ドクドクドクドクと高速な心臓の音が聞こえる。きっと、僕の心臓も同じくらい早鐘を打っている。
「あなたを一目見た時から、恋に落ちていました」
僕の頭の上から、落ち着く声色で、マルス様が、そんな夢のようなことを仰ってくれた。
本当に?!という思いと共に、すぐに自分の想いも伝えなくては、と気ばかり焦った。
「ぼ、僕も!!あなたの、その、美しい瞳を見た時から、僕の心はあなたでいっぱいでした!!す、好きです!け、けけけけけけけけけけけけけ」
「け?」
「結婚して下さい!!!!!!」
「はい」
「えっ!!良いんですか??!!」
「こんな私で良ければ、ぜひよろしくお願いします」
「やったわね!!!スファン!!これで、万事解決!!!」
高笑いする母を見て、もしかして、この人の掌で転がされた?と思ったが、そんなことは、もうどうでもよかった。
逞しい腕と胸に包まれて、安堵とときめきで胸がいっぱいだった。
間違いなく世界一、幸せだ。
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