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バトル
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オレの名はサトシ。
あのポケ○ントレーナーと同じだ。
これは、恐らく運命。
オレは、遂に見つけた。
そう、たった一つ、この手に掴むオレの運命を。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やあ、こんにちは」
あの人に、また街で出会った。
「ひっ!あ、いや、あの、こんにちは」
やたらにビビられる。
それもこれも、このオレの強靭な肉体のせいだろう。
オレは生まれつき、やたらに身体が丈夫だった。
きっと、この手に掴む為。
「はははっ、そんなに怯えないで下さいよ。取って食いやしませんから」
そう笑いかけると、少しだけ安心したように頷く。
小動物みたいで、かわいいな。
彼は、歩道脇のベンチにちょこんと座っていた。
「ヴァンさんは、来てないんですか?今日も、お一人ですか?」
「いえ、ヴァンは、向こうで買い物を済ませて来るって、俺はお留守番です…」
お留守番…
二十代男性の、お留守番…
なんか萌える。
「じゃあ、ちょっと待ってて下さい」
「はっ?えっ?いや」
オレは、俊足を活かして、抹茶フラペチー○を2つ買って来た。
この足の速さには、定評がある。
ちなみに、長距離もイケる。
「ヴァンさんが来るまで、これでも飲んで待ちましょう」
「あ、ありがとうございます…」
おずおずと受け取り、太めのストローで飲み始めた小動物。
オレも隣にどっかり座ってズゾスゾ飲む。
美味い。
やっぱり、抹茶に限る。
和の心を、こんなに手軽に楽しめるように発展させた企業努力に、オレはスタンディングオベーションを送る。
「聞き忘れてたんですが、お名前は何ていうんですか?」
「あ…ヒロ、です」
ヒロくん、かあ。
ヒロ…ヒロシ…なんか親近感湧くなぁ。
「オレは、サトシです。ちなみに歳は?」
「えと、22…」
3歳年下か。
なんとなく、背もたれに、ぐいーんと背中を伸ばす。
「ふーん、オレ、25。敬語いらないよね?」
「はぁ、そうですか…ご自由に」
自然と会話が止まる。
何だかヒロくんの元気が無い。
変だな、何か悩みでもあるのかな。
「どうかした?何かあった?あのヴァンさんと」
「ーっ?!え?!なんで?は?」
めちゃくちゃ動揺してる。
当たったらしい。
ヒロ、ゲットだぜ!
「んー、顔に書いてあるから?もしかして、ケンカした?」
「いや、そんなんじゃないけど…ヴァンが、俺が他の人と話すと嫌がるから…俺を家から出したく無いみたいだし」
すげー束縛。
外に出れないとか、軟禁じゃね?
「ほんとに?ヴァンさんって、ヤバいんだねー。それ、深みに嵌まる前に別れた方がいいんじゃない?」
「えっ、深み?」
今、名前知ったばかりのオレの話を真剣に聞いてくれてる。
かわいいなぁ。
純粋そうで、付け込みたくなっちゃう。
オレの右手には、ポケモ○ボールが構えられてるよ。
「そうそう。依存し過ぎて、別れられなくなる前に、傷の浅いうちに別れた方がお互いの為には良いんだよ」
「依存…?」
その唇、なんでそんなにピンクなの?
ぷるぷるだよねー。
別の生き物かな。
新種かなー。
「相手が居ないと生きて行けない!とかなったらヤバいでしょ。そうならないように、恋人同士だとしても、ある程度、お互いに距離保たないと。ダメだよ、共依存とか」
「共依存…?でも、俺、もう、ヴァンがいないと…」
すっごい悩んでる。
ガチじゃん。
頭を撫で撫ですると、涙目でオレを見上げてくる。
やべー、かわいー。
ボールにゲットして、家で飼いてぇー。
軟禁どころか、檻の中で監禁してぇー。
「ほら、それだよ。それは、もう恋とかじゃなくて、ただ相手に依存してるだけ。麻薬と一緒だから。抜け出すなら、早い方がいいよ!なんならオレ、手伝おうか?」
「恋じゃない…麻薬…って、え?手伝うって?何を?」
キョトンとして見上げる顔が、めちゃくちゃタイプ。
やっぱりな。
オレの運命だと思ってた。
左手を掴むと、少しひんやりとして気持ち良い。
「だから、オレが協力してあげようか?ヴァンさんと別れる為の」
「誰と誰が別れるって?」
いつの間にか、オレとヒロくんの間にヴァンさんが座ってた。
掴んだ左手は、とっくに離れていた。
くそっ、せっかくゲット出来そうだったのに。
「ヴァンさんと、ヒロくん」
二人を指差して教えてやる。
ゴゴゴ…とヴァンさんの背中から地鳴りのような音がする。
流石のオレも、何かマズいことを言ったかもしれないとは、薄々感じた。
地面が揺れてる気がする。
「…では、勝負しましょう。私が負けたら、少しだけ話を聞いてあげます」
どんな苦難にも立ち向かって行くぜ!
なんてったって、オレはサトシなんだから!
運命もゲットしちゃうぜ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
完敗した。
「この私の、ヒロへの愛の前では、お前の粗末な筋肉など、一枚のコピー用紙同様」
腕相撲大会を急遽、二人きりで開催した。
inベンチ。
観客、ヒロ。
「は?愛とかじゃなくて、単純に力の差だろ。あんた、バカ力だよな」
負け惜しみじゃない。
事実だ。
オレの手首が折られそうになった。
この素晴らしい筋肉が無ければ病院送りだ。
「違うな。そもそも、私とお前の力の差など、無いに等しい」
ふふん、と威張っている。
無い訳あるか、バーカ!!
「私に力があるとすれば、それはヒロが私に与えてくれているのだ。これが、愛の力」
んなわけ、あるか!!
ヒロは、とっくにお前のことなんて…
「ヴァン…格好いい…♡」
「ヒロ…君の前で、こんなはしたないことをした私を許してくれる?」
二人は、ベンチの前で手を取り合って見つめ合ってる。
はあ?
「ううん!俺の為に全力を尽くしてくれるヴァンを見て、俺、気付いたんだ。やっぱり、俺…ヴァンの望みを叶えたいって」
「!!!本当?いいの?アレ」
二人しか分からない会話が進む。
置いてけぼりの、敗者。
まさか、このオレが、敗者側に回る日が来るなんて…
「あのー…ここに居るんですけど」
「ああ、ご苦労さん。また、配達宜しくね」
ヒラヒラとヴァンさんに手を振られ、抱き合いながら、二人は帰って行った。
木枯らしが吹く季節だっけ。
寒いな…
「よし、コーンポタージュ飲もう」
オレの新しい運命を、また探さないと。
「あ、いた」
サトシも歩けば運命に当たる。
「君に、決めたっ!」
「うちの犬になにか?」
あのポケ○ントレーナーと同じだ。
これは、恐らく運命。
オレは、遂に見つけた。
そう、たった一つ、この手に掴むオレの運命を。
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「やあ、こんにちは」
あの人に、また街で出会った。
「ひっ!あ、いや、あの、こんにちは」
やたらにビビられる。
それもこれも、このオレの強靭な肉体のせいだろう。
オレは生まれつき、やたらに身体が丈夫だった。
きっと、この手に掴む為。
「はははっ、そんなに怯えないで下さいよ。取って食いやしませんから」
そう笑いかけると、少しだけ安心したように頷く。
小動物みたいで、かわいいな。
彼は、歩道脇のベンチにちょこんと座っていた。
「ヴァンさんは、来てないんですか?今日も、お一人ですか?」
「いえ、ヴァンは、向こうで買い物を済ませて来るって、俺はお留守番です…」
お留守番…
二十代男性の、お留守番…
なんか萌える。
「じゃあ、ちょっと待ってて下さい」
「はっ?えっ?いや」
オレは、俊足を活かして、抹茶フラペチー○を2つ買って来た。
この足の速さには、定評がある。
ちなみに、長距離もイケる。
「ヴァンさんが来るまで、これでも飲んで待ちましょう」
「あ、ありがとうございます…」
おずおずと受け取り、太めのストローで飲み始めた小動物。
オレも隣にどっかり座ってズゾスゾ飲む。
美味い。
やっぱり、抹茶に限る。
和の心を、こんなに手軽に楽しめるように発展させた企業努力に、オレはスタンディングオベーションを送る。
「聞き忘れてたんですが、お名前は何ていうんですか?」
「あ…ヒロ、です」
ヒロくん、かあ。
ヒロ…ヒロシ…なんか親近感湧くなぁ。
「オレは、サトシです。ちなみに歳は?」
「えと、22…」
3歳年下か。
なんとなく、背もたれに、ぐいーんと背中を伸ばす。
「ふーん、オレ、25。敬語いらないよね?」
「はぁ、そうですか…ご自由に」
自然と会話が止まる。
何だかヒロくんの元気が無い。
変だな、何か悩みでもあるのかな。
「どうかした?何かあった?あのヴァンさんと」
「ーっ?!え?!なんで?は?」
めちゃくちゃ動揺してる。
当たったらしい。
ヒロ、ゲットだぜ!
「んー、顔に書いてあるから?もしかして、ケンカした?」
「いや、そんなんじゃないけど…ヴァンが、俺が他の人と話すと嫌がるから…俺を家から出したく無いみたいだし」
すげー束縛。
外に出れないとか、軟禁じゃね?
「ほんとに?ヴァンさんって、ヤバいんだねー。それ、深みに嵌まる前に別れた方がいいんじゃない?」
「えっ、深み?」
今、名前知ったばかりのオレの話を真剣に聞いてくれてる。
かわいいなぁ。
純粋そうで、付け込みたくなっちゃう。
オレの右手には、ポケモ○ボールが構えられてるよ。
「そうそう。依存し過ぎて、別れられなくなる前に、傷の浅いうちに別れた方がお互いの為には良いんだよ」
「依存…?」
その唇、なんでそんなにピンクなの?
ぷるぷるだよねー。
別の生き物かな。
新種かなー。
「相手が居ないと生きて行けない!とかなったらヤバいでしょ。そうならないように、恋人同士だとしても、ある程度、お互いに距離保たないと。ダメだよ、共依存とか」
「共依存…?でも、俺、もう、ヴァンがいないと…」
すっごい悩んでる。
ガチじゃん。
頭を撫で撫ですると、涙目でオレを見上げてくる。
やべー、かわいー。
ボールにゲットして、家で飼いてぇー。
軟禁どころか、檻の中で監禁してぇー。
「ほら、それだよ。それは、もう恋とかじゃなくて、ただ相手に依存してるだけ。麻薬と一緒だから。抜け出すなら、早い方がいいよ!なんならオレ、手伝おうか?」
「恋じゃない…麻薬…って、え?手伝うって?何を?」
キョトンとして見上げる顔が、めちゃくちゃタイプ。
やっぱりな。
オレの運命だと思ってた。
左手を掴むと、少しひんやりとして気持ち良い。
「だから、オレが協力してあげようか?ヴァンさんと別れる為の」
「誰と誰が別れるって?」
いつの間にか、オレとヒロくんの間にヴァンさんが座ってた。
掴んだ左手は、とっくに離れていた。
くそっ、せっかくゲット出来そうだったのに。
「ヴァンさんと、ヒロくん」
二人を指差して教えてやる。
ゴゴゴ…とヴァンさんの背中から地鳴りのような音がする。
流石のオレも、何かマズいことを言ったかもしれないとは、薄々感じた。
地面が揺れてる気がする。
「…では、勝負しましょう。私が負けたら、少しだけ話を聞いてあげます」
どんな苦難にも立ち向かって行くぜ!
なんてったって、オレはサトシなんだから!
運命もゲットしちゃうぜ!!
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完敗した。
「この私の、ヒロへの愛の前では、お前の粗末な筋肉など、一枚のコピー用紙同様」
腕相撲大会を急遽、二人きりで開催した。
inベンチ。
観客、ヒロ。
「は?愛とかじゃなくて、単純に力の差だろ。あんた、バカ力だよな」
負け惜しみじゃない。
事実だ。
オレの手首が折られそうになった。
この素晴らしい筋肉が無ければ病院送りだ。
「違うな。そもそも、私とお前の力の差など、無いに等しい」
ふふん、と威張っている。
無い訳あるか、バーカ!!
「私に力があるとすれば、それはヒロが私に与えてくれているのだ。これが、愛の力」
んなわけ、あるか!!
ヒロは、とっくにお前のことなんて…
「ヴァン…格好いい…♡」
「ヒロ…君の前で、こんなはしたないことをした私を許してくれる?」
二人は、ベンチの前で手を取り合って見つめ合ってる。
はあ?
「ううん!俺の為に全力を尽くしてくれるヴァンを見て、俺、気付いたんだ。やっぱり、俺…ヴァンの望みを叶えたいって」
「!!!本当?いいの?アレ」
二人しか分からない会話が進む。
置いてけぼりの、敗者。
まさか、このオレが、敗者側に回る日が来るなんて…
「あのー…ここに居るんですけど」
「ああ、ご苦労さん。また、配達宜しくね」
ヒラヒラとヴァンさんに手を振られ、抱き合いながら、二人は帰って行った。
木枯らしが吹く季節だっけ。
寒いな…
「よし、コーンポタージュ飲もう」
オレの新しい運命を、また探さないと。
「あ、いた」
サトシも歩けば運命に当たる。
「君に、決めたっ!」
「うちの犬になにか?」
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