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バカ

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ヴァンの話しは、全部が全部、分かったかと言えば、そうでもない。
でも、俺の胸は張り裂けそうだった。

「ぐすっ、うぅっ、そんなの、そんなの…ヴァンが、可哀想だろ…ひどいよ、そいつ…」

ボロボロ泣いて、ヴァンに貰ったハンカチで涙を拭く。
ティッシュも渡されて鼻をかむ。

「酷いなどと思ったことは無かった。ただ、私は近くで分かち合いたかった。幸も不幸も分かち合いたかった」

ヴァンは、眉を困ったように下げて、俺の世話をしながら昔話を続ける。

「だが、その過去があったからこそ、今、こうしてヒロと出会えた」

これは、ジェットコースターなんちゃらかもしれない。
物凄い感情が揺さぶられてる時に恋に落ちるやつ。
それでもいい。
それでもいいと思えた。

「うん、うん…俺達、幸せになろうな」

ぎゅっとヴァンの手を握る。
ヴァンが、俺をじっと見つめて、急に跪く。

「ヒロ、今更だが、私と番になってくれるだろうか」

真剣な面持ちで、緊張してるのが分かる。
俺の手を握る指が震えてる。
唇も震えてる。

「うん…番ってのが、いまいち何するんだか分からないけど、いいよ!ヴァンと一緒にいてやるよ!」

「ヒロ!!!ありがとう、ありがとう…永遠に私と生きてくれるんだね?」

明るくなったヴァンの表情で、否定する気も起きない。

「あー…永遠って、ほんとに永遠?」

「そう。私達は死なないから」

一瞬、気持ちが冷静になりかけるが、目の前で絶世の美男子が跪いてる。
目元を紅く染めながら。

「うっ、うん。俺は、ヴァンを裏切ったりしない。永遠にヴァンと生きる」

良く分からない正義感でもって、俺は宣言した。
俺も、酔ってたんだと思う。
哀れなヴァンを救えるのは自分だけだという状況に。

「ーーーーーっっ!!!ヒロ!!!愛してる!!」

ガバっと抱き締められた。
その身体は、やっぱり男。
硬いけど、今では安心する。

「あ、ありがと…俺も、好き…」

蚊の鳴くような声で答えると、更にぎゅうぎゅう抱き締められて、俺の指には再び金の指輪が嵌められた。
俺の部屋で放り投げた金の指輪。
耳元で、啜り泣く声が聞こえる。

「ーーっ、ひっく、ぐすっ、ヒロ、ヒロ…」

あまりに切なくて、胸が引き絞られる。
正直、まだちゃんと聞けてないこともあるけど、そんなことは、またいつでも聞ける。
俺達には長すぎる時間があるんだから。

「ヴァン…俺、俺がヴァンの為に出来ること、考えるから」

俺なんかがヴァンの為に出来ることなんて、はっきり言って思い付か無い。
でも、ヴァンの役に立ちたかった。

「ヒロ…ヒロは、私の子を孕んでくれれば、それが私にとっての最高の幸せだ」

「………?ん?孕む?」

首を傾げる。

「そうだ。二人で、温かい家庭を築くのが私の長年の夢なんだ」

「へー…あー、そう…ヴァン」

純粋に夢を語るヴァン。
これは、何も知らないパターンか。
ここは俺が、バシッと現実を教えないといけないかもしれない。

「俺さ、男だから。子供は産めないよ?」

「問題無い」

バシッと逆に返されましたけど。

「私とヒロの愛の結晶は、卵で産まれる。だから男でも問題無い。良い子をたくさん産んで欲しい」

「いやいやいやいや?!は?え?なに?卵って?」

俺の腹を優しく撫でて、うっとりしてるんですけど。
何言っちゃってるんですか?!
ちょっと、この人、何者?

「あのさ!ヴァンって、何者?吸血鬼じゃないの?!」

一番気になってたことを、この際聞いてみた。

「吸血鬼…?それは西洋の作り話だろう?ここは日本だ。日本に吸血鬼など存在しないよ?ふふっ、かわいいな、ヒロは。吸血鬼を信じていたんだね」

「えっ?だって、俺の首を噛んで血を吸ったじゃん?それで、俺も永遠の命になって…普通に考えて、吸血鬼じゃねぇの?」

クスクス笑われて、恥ずかしくなる。
まるで、幼い子供のように頭を撫でられる。

「きちんと説明しなくて、本当にすまなかった。私は、この土地の神だ」

「???神?は?」

ゆっくりと、優しく耳元で話されて、俺の腰が砕けそう。
ぶるり、と揺れる。

「私は、ここの土地を守る神。ヒロには、私の力を与えて、私と近しい存在とした。全く同じでは無いから、これからも時々、私の力を与えて行くことになる。私とヒロの子もまた、神の子であるから、いずれあちこちの土地を守ることになる」

「はぁ…さいですか」

他に返事の仕方があれば、教えて欲しい。
俺の頭の限界は、とうに超えた。

「神が増えれば、その土地の災害も減らすことが出来る。この国の為にも、頑張ろうな、ヒロ」

「あー、そっすねー。頑張りまーす」

遠い目をする俺を他所に、ヴァンは嬉しそうに頬擦りする。
俺、ほんとに卵産むの?
え、ヴァンって、神様なの?
神様の子供って、卵から産まれるの?
なぁ、それって爬虫類とかじゃ…

一瞬、思い付いたことを頭から振り払う。
いやいやいや、そんなこと在る訳無い。
ヴァンの正体なんて関係無い。
俺は、ヴァンのことが好きだ。
今も、俺の身体はヴァンを求めて切なく疼いている。

「じゃ、じゃあさ…」

「うん?なんだ?ヒロ。ヒロの望む物は何でも用意しよう」

今更だけど、照れる。
でも、俺は言わずには居られない。

「子作り、しよ?」

光の速さで担がれて、秒でベッドに縫い付けられた。
でも、痛くない。
優しいけど、光の速さって、流石は神。
ヴァンの瞳が、紅く光る。

「はぁ、ヒロ、本当にヒロは、私を煽る。そんなことを言ったら、孕むまで止めらないぞ?私達はしばらく食べなくとも生きられるのだから」

「だって、ヴァンのこと、俺…好きだから」

ヴァンの瞳をしっかり見つめて、はっきり伝える。
やっぱり、何事も言葉で伝えないとね。
しばらく食べなくとも生きられる…?
うん、忘れよ。

「ーーーーっヒロ!!!」

貪られた。
しばらく食べなくとも、じゃなくて、俺を食べるから、しばらく食べなくとも平気なんだと思う。

「ああっ、この銀の輪は、新しく付け替えよう。私の手作りの金の輪を、すぐに用意するからね」

あ、あれ手作りだったんだ。
器用だなー。
揺さぶられながら、そんなことが、頭の片隅を過る。

「この山からは、僅かだが金が取れる。それを加工したんだ。今度こそ、ヒロに喜んでもらえるようにするから」

健気なヴァンに、愛しさが募る。

「んあんっ、ヴァンっ、ヴァンっ」

その名を呼べる幸せを噛みしめる。
ヴァンが、俺の手を引き寄せて口付ける。

「ヒロっ、ヒロっ!愛してる。二度と離れないでくれ!さあ、私の子種を全て受けとめてーーーっ、くぅっ」

ドクドクと注がれる感触に、俺は腹の底から安堵する。
これを求めていた、と全身が歓ぶ。

「はぁーーーっ、きもち、いいっ、ヴァン、ずっと、ナカ、注いで、てぇ?」

ナカのヴァンが膨らむ。
ほー、これ以上、大きくなるんだ?

「またそんなことを…ヒロは、私を試しているのか」

ヴァンの目が、ギラリと捕食者になる。
食べられる。
もう全部食べられてるけど。

「んっ、ヴァン、俺の身体、ヴァン好みにして良いよ?だから、ずっと愛して…俺に、ヴァンの全部を、愛させて?」

ずるっとヴァンのモノが抜かれた。
寂しくて、俺のソコはヒクヒク収縮をくり返す。

「はぁ、はぁ、はぁ…ヒロは、何を言っているか、解っているの?私の為にヒロの身体を変えても良いなど、そんな…」

ヴァンが、顔を抑えて震えてる。
大げさだなー、ヴァンは。
良く言うセリフだろ?
ラブラブカップルが、貴方好みに私を変えて♡って。
ちょっと古いけど。

「いいよ♡俺の身体、ヴァン好みにして♡だから、ヴァンも隠し事無しで、ヴァンの全部で、たくさん愛して?」

俺の頭はお花畑だったんだと思う。
何も理解していなかった。
ただ、ヴァンとの両想いラブラブ状態に浮かれてた。

「はぁ、ヒロ…本当に良いんだね?本当に…身体を変えても…私の全部でヒロを愛し尽くしても」

「もちろん!俺の全部、ヴァンの好きにして♡」

ヴァンが、胸を抑えてブツブツと何か言ってる。
その顔は、なんだか恐いような、でも綺麗で、うっとりと眺めていた。

「じゃあ…遠慮なく」

フワァと、何かがヴァンを覆った。
同時に、ヴァンのアレが、姿を変えた気がした。
気がした、じゃなくて、変えた。
間違いなく、変わった。

「…ほぇ?」

「ありのままの私を受け止めてくれ、ヒロ」

ヴァンのアレ、二本に見えるの俺だけ?
今までのアレの腹側に、細めのモノが付いてません?
はあ?

「あの、ちょっ、ええっ?」

「挿れるよ」

制止も間に合わず、ちゅぷん、と挿し込まれる。
柔らかく柔軟な俺のソコは、当然飲み込んでいく。
俺が後退ろうとしても、ヴァンの腕に阻まれて動けない。
むしろ、腰を引き寄せられ、余計に深くなっていく。
でもって、その、一本増えたアレが…

「ひぃぃぃぃぃっっっっっ!!!!!!」

俺の前立腺を、挿入した瞬間から、延々と押し潰しやがる!!!
しかも、この新しい方は、ウネウネとナカで蠢く。

「これが、私の本当の姿だ。悦んでくれて、嬉しいよ、ヒロ」

ヤバい!ヤバい!
ヤバ過ぎて、癖になる!!

もう、戻れなくなるーーー!!!!
頭、バカんなるー!!!

やっぱり、隠された扉は開けないに限る。
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