2 / 13
ド変態への道
しおりを挟む「ふざけんな!この変態!アホ!ばか!侵入者!どろぼう!出てけ!」
思いつく限りの罵詈雑言を吐きながら俺は室内を逃げ回った。
警察を呼ぼうにも、さっきから俺の指はガタガタ震えて一向に操作させてくれない。
「はぁっ、はぁっ、」
ひとまずは、ここから出て警察に連絡してから…
玄関の扉に手を伸ばしたはずが、後ろから伸びて来たアイツの手に捕まった。
「ひいっ!!離せ、離せぇっ!!」
ジタバタともがくが、平均身長はある俺の動きが全く関係無いかのように軽々と抑えられる。
背は高いけど、こんなに細いのに何で??!!バカ力過ぎんだろ!!
「ふふふっ、恥ずかしがりなところは相変わらずだ。そこも初々しくて好きだ」
「あんた、男だろっ!!離せ!なんだ、この変態っ!!ちくしょう!警察に突き出してやる!!」
あまりに綺麗で思わず見惚れたけど、この不法侵入ド変態は男だ。
声を聞けばすぐに分かるし、身体も完全に男だ。
何より力の強さが尋常じゃない。
「そんな些末なことは気にしなくて良い。私はあなたの魂を待ち続けていたのだから」
「はあ?!なんのドッキリだよ、これ!マジ無理なんだけど、そういうの!!とにかく離せって言ってんだろ!!クソ野郎!!」
股間を蹴り上げてやろうとすると、ガッツリ脚まで抑え込まれた。
そのまま、気付けばお姫様抱っこされていた。
思い切り胸を叩いて暴れるが、笑って首筋にキスされた。
「ひぃぃーーーーーっ!!!!なっ、なにすんだっ!おま、なんてっことっ」
あまりの事態に叫んだはいいものの、抵抗らしい抵抗も出来ず固まっていると、額にもキスを落とされる。
は、初めてなのに!!
「私の為に純潔を保っていてくれたのだろう。そのウブな様子で分かる…今の名は?」
「ひ、ヒロ…」
つい答えてしまう俺の頭はパンクしていた。
「そうか、ヒロ…美しい名だ。愛してる、ヒロ」
大輪の花が綻ぶように、華やかに美しく、ふんわりと笑った。
そのまま、ゆっくりと顔が降りてきて…
優しく唇が重なった。
はあ…なんか、気持ちいい…
ぼんやりと、そのまま俺はうっとりと受け入れていた。
………
…………
……………
ちがう!!!
「やっやめろ!俺はゲイじゃない!いや、そうじゃない!お前は誰だ!何だって、こんなとこに」
なんとか顔を押し返して、ぼんやりしちゃうキスを止めさせる。
綺麗な顔が押されて、少しだけ崩れて面白くなってる。
「うぐっ、す、すまない…つい嬉しくて名乗ることを忘れた。やはり覚えてはないか…私はヴァン。呼びにくければ、バンで良い」
少し寂しそうに名乗るヴァンに、少しだけキュンとする。
そうか、俺が覚えてないから、ヴァンにこんな顔をさせてしまって…
って
ちがぁーーーーうぅぅぅ!!!!!
「バンさんね!はい、警察呼びますから、一旦降ろして下さいね!!まずは離して!言っとくけど、訴えますからね??!!」
お姫様抱っこでも強気で行く俺。
こういう時は強気が大事。
「…分かった。構わない。警察に連絡してヒロが落ち着くならば、それで」
すんなりと俺は床に降ろされた。
うん…なんか拍子抜けっていうか、もう少し抱っこされていたかったっていうか…
いやいやいやいや!!
「じゃ、じゃあ!そこ動かないで!すぐ連絡するから!」
俺は一旦、外に出てスマホで警察に連絡した。
ようやく動くようになった指で、会ったこともない警察官の声に安堵する。
「……あー、はいはい、ヴァンさんねー。この建物の管理人やってくれてんだよね。で、あんたは?」
地元の警察官が来て、むしろ初めて見る俺の身分が不審がられた。
「え?でも!ここは俺のばあちゃんが管理してたはずで」
訝しげに俺の身分証明書を診る警察官。
なんでだよ!被疑者はそっちだ!!
「いつもご苦労さまです。彼のお祖母様から管理を任せられ、私がこちらに住み始めてから、もうしばらく経ちますかね」
「そうだねぇ、もう長いよねぇー。ヴァンさんには、皆よく助けられてるよー。この前も助かったよ、あの道が大木で塞がったとき」
すげー仲良し。
警察官とツーカーの仲ってやつ?
「困った時はお互いさまですから。こちらのお孫さんも困ってるようなので、私としては、しばらくはこちらで同居して頂いても構いません」
え、なに、その立ち位置。
はあ?このド変態と同居?
「いやいや、お巡りさん!この人は不法侵入で変態」
「あのねぇ!ヴァンさんは、この建物の管理人さん。あんたこそ、何の連絡も無しに来たらヴァンさんに警察に突き出されてもおかしくないんだよ?まったく、今の若いもんは…ヴァンさんが親切な人で感謝しないとね!!」
はい、敗北…
完膚無きまでの完敗…
「はい…すみませんでした…」
俺は所詮は子供だ。
大人の世界は遠く、とてもじゃないけど乗り越えられない。
だから、就職も出来ないんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「と、いうわけでよろしくね。ヒロ」
気付けば、俺はド変態不法侵入男…いや、ド変態管理人さんと同居することになった。
「…よろしく…お願いします…」
リビングの洒落たテーブルに向かい合って座り、俺の手をすりすりする変態。
「待っていた時間が長すぎて、焦ってしまい悪かった。ヒロは初雪のように美しく純粋なのに、私ときたら欲望が止まらなくて、はずかしいよ。これからゆっくり愛を育もう」
俺は遠くを見ることにした。
現実は、あまりにしんどい。
「はぁ…そうですか…はは…」
とりあえず、変態の妄想話に合わせて頷いておいた。
考えるのは止めよう。
疲れ切った俺は、何よりも早く寝ることにした。
帰るという選択肢は毛頭なかった。
俺には帰っても辛い現実しか無い。
どっちも辛いなら、快適な別荘だ。
「じゃあ、こっちの寝室お借りします。おやすみなさい…」
幾つもある寝室のうち、一番こじんまりとした部屋を借りて寝る。
シーツも綺麗に洗濯されていて、隅々まで清潔だ。
これも、あのド変態が…
まさかな。
そのまま気付けば寝ていた。
「ん…んぅ…ふっ、うん」
心地よい。
むしろ気持ちいい。
幸せだ。
こんなに気持ちいい朝なんて、これまで無かった。
「はぁ、きもち、うんっ、ああっ」
やばい、これはパンツが汚れる。
咄嗟に止めようとするが、更に射精感が強まる。
とにかくヌルヌルして気持ち良すぎて耐えられない。
「でる、でるぅっ!!」
ビュルビュルーっと、暫く溜まってた分を勢い良く出してしまった。
なんてこった…
パンツが…
「ごくん…はあ、美味」
あ、パンツじゃない。
これ、パンツなんかじゃない。
「ヒロ?朝食出来たよ。お腹空いただろう。昨日は何も食べずに寝てしまって」
優しく揺り起こされ…たくない!
断固として目を開けない!
「そうか…私に起こして欲しいんだね?私を朝から試すとは悪い子だ。悪い子には…お仕置きが必要かな」
待って、お仕置き?
それ、やばい?
それとも冗談?
これで目を開けたら、テッテレーってドッキリの看板持って笑われる?
え、正解って何?
「ああ…ここも可憐だ」
あれこれ考えて目を開けられないうちに、ヴァンは俺の胸を揉んでいた。
いや、男の胸揉んで何が楽しいの?
やっぱりコイツの頭やばいわ。
俺、やっぱりここから出たほうが…
「あんっ!!」
甲高い声が聞こえた。
誰?まさか別の人現る?
まさかの第三者?
「あっ!ひぃんっ! 」
あ、ちがったわ。
「やっ、だめえっ、ちくび、やめてぇっ」
この声、俺だわ。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
大親友に監禁される話
だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。
目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。
R描写はありません。
トイレでないところで小用をするシーンがあります。
※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。
【R18】【Bl】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の俺は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します
ペーパーナイフ
BL
主人公キイロは森に住む小人である。ある日ここが絵本の白雪姫の世界だと気づいた。
原作とは違い、7色の小人の家に突如やってきた白雪姫はとても傲慢でワガママだった。
はやく王子様この姫を回収しにきてくれ!そう思っていたところ王子が森に迷い込んできて…
あれ?この王子どっかで見覚えが…。
これは『【R18】王子様白雪姫を回収してください!白雪姫の"小人"の私は執着王子から逃げたい 姫と王子の恋を応援します』をBlにリメイクしたものです。
内容はそんなに変わりません。
【注意】
ガッツリエロです
睡姦、無理やり表現あり
本番ありR18
王子以外との本番あり
外でしたり、侮辱、自慰何でもありな人向け
リバはなし 主人公ずっと受け
メリバかもしれないです
平凡な研究員の俺がイケメン所長に監禁されるまで
山田ハメ太郎
BL
仕事が遅くていつも所長に怒られてばかりの俺。
そんな俺が所長に監禁されるまでの話。
※研究職については無知です。寛容な心でお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる