4 / 4
午前中は、のんびり
しおりを挟む
「はい、おはようございます。小梅さん」
「あらぁ、ノッキョちゃん、今日は海賊狩りかい?」
杖をついた可愛いばあちゃんが、オレのタオルを巻いた頭を見て、クフフ、と笑う。あー、和む。ちっちゃくて可愛いばあちゃん、大好き。
「えー、海賊を狩る方?海賊じゃなくて?」
タオルの巻き方は、完全に海賊側なんだけど。
「だって、あたしゃノッキョちゃんが狩られたら泣いちゃうもの」
好き。
え、好き。何?この手の平で転がされてる感。これが年上の包容力……!!
「も~っ、上手いんだから、小梅さん~いつもより多めに揉んどくよ~」
「なんだい、とうとう胸揉むのかい」
「そこは旦那さんに頼んで~オレ、専門外だから~」
アハハ、と冗談を言いながら、小梅さんのマッサージ、そのまま筋トレ、歩行練習までやる。全部いつも通り。
え、OTだろって?それじゃあPTの真似事だろうって?
整形だと、お年寄りは、大抵みんな同じなんだよ。
あとは、手の骨折とかなら、また違うけど、大抵は、こんなもん。
お年寄りは、ホットパックとマッサージが好き。オレも同じだもん。出来ることなら、自分は何もしないで、誰かにマッサージして欲しいもん。わかる。
それが正しいとかは別にして。
「ほんじゃ、今日はここまで~」
「はい、ありがとうございましたー」
そんなこんなで、次々と患者さんをこなして、午前中の業務は終わった。
後片付けは、鈴木さんが猛スピードでやってくれていて、オレも明士も合わせようとするけれど、そもそも次元が違うらしい。
「あ、もう、そこ終わりました」
「はいっ、すみませんっ」
余計な手出しは却って足手まとい。
「では、お疲れ様でした」
「「はい、お疲れ様でしたー!また来週よろしくお願いします!」」
ペコリ、とお辞儀をして、終業時間ピッタリで鈴木さんは裏口から出て行った。流石だ。もはや感動するレベルに仕事が早い。
「ほら、あんた達もさっさと帰りな!」
中本さんに追い出されるように、オレ達も慌てて着替えて裏口から出る。
鈴木さんは、終業5分前には着替えていたような……働くママは大変よな。尊敬。
「昼飯、どーする?」
午前仕事は12時30分まで。
現在、12時40分。丁度、昼飯時である。
「あー……丼系?それか、麺類?」
「最近、俺達、野菜食ってねぇだろ。野菜食おうぜ」
「野菜ってさ、なんか食った気がしねぇんだよなー。水っぽかったり、カサカサしててさー」
「ノッキョ……それが野菜であり、それが生きるってことだ」
「意味分かんねぇ」
そんなこんなで、難関サラダバーを擁するファミレスへ行くことにした。
「いらっしゃいませー、2名様ですか?」
「はーい、2名でーす」
暖かい店内は、それなりに賑わっていた。
ファミリーも1人も、グループも。
すぐに席に通されて、ランチメニューを選ぶ。
「あー、日替りかなー」
「ハンバーグ食いてえ」
「あと、サラダバーとスープバー付ける?」
「えー、スープバーって、意味あんの?水分じゃん。ドリンクバーで良くね?」
「お前なぁ、スープには栄養が溶け出してんだよ、多分だけど」
「なにそれ。説得力無いわー」
ごちゃごちゃ言いながらも、二人共、日替りランチを頼み、スープバーとドリンクバー、サラダバーも付けた。豪華な昼飯である。
「んじゃ、取ってくるわ」
「あいよー」
荷物番と取りに行く係で、一人ずつ順番に行くスタイル。一応ね。リスク管理は大事。
「はい、次、どぞ」
「うぃー」
明士が戻って来て、次はオレ。
うーん、野菜、あんまり好きじゃないんだよね。
周りをキョロキョロしながら、レタス、キャベツ、ブロッコリー、プチトマト、あと安定のポテトサラダを載せてシーザードレッシング。
うん、濃厚で良い。
サラダには濃厚さを求めるから、次はゴマドレッシングだな、と次の予定も決める。
ついでにスープも注いで戻る。
ドリンクバーは明士のもついでに取りに行く。健康がどうたら面倒なこと言う癖に、明士はコーラばっか飲むんだよな。
酒はカルアミルクだし。糖尿になるぞ。
「はいよ、お待たせ」
「ん、サンキュ」
メインが届くまで、モシャモシャとサラダとスープ、ドリンクを飲んで待つ。食べ過ぎるとメインの美味さが落ちるから加減したい。
「なー、明日のゲーセンだけどさ」
「んー?なに?」
シーザードレッシングの優秀さに感謝してブロッコリーを食べていると明士が話始めた。
「軍資金、どれくらいにする?」
「あー、それな。超大事」
話題は、ゲーセンで幾ら使うか問題。これは、かなり重要。なにせ働いてるからね、オレ達。しかも独身、ルームシェア。
使おうとすりゃあ、それなりに使えちゃうわけで。ある程度、決めておかないと悲惨な月末を迎えます。
「キャッシュレスでも出来るだろ?財布開かないと加減わからなくなるよな」
「だよなー!やっぱ両替した100円が無くなるまでとか、アナログじゃないと止められなくなるよなー」
うんうん、と頷きながらプチトマトを噛み砕く。プチトマトは好き。
「お待たせしましたー。ハンバーグランチのお客様」
「はい」
「彩りチキンプレートのお客様」
「はーい」
そうこうしてる内にメインも届きました。勿論、白米もセット。やっぱガツンと腹に溜まらないとね。
ガッツリ食べながらも、明日の作戦会議をする。
「じゃあさ、キャッシュレス使わないって、どう?で、現金だけで最初に両替した分だけにする、とか」
「あー……なるほどね。でも、あと一回って思った時に、ついキャッシュレス使っちゃうんだよなぁ」
「それは、もうズルと見なそう。明日はキャッシュレスNGで」
「OK……最初の両替が肝だな。幾らにするかで、運命が変わる」
物凄い真剣に話し合ってるけど、ゲーセンの話しだから。
「……だな。同額で勝負するか?」
「……それな……こうなったら、勝負するか」
メラメラと燃えたぎる熱い闘志。サラダも進む進む。明日に向けて栄養バランスもバッチリ決めて、オレ達は、明日、旅立つ。
「あらぁ、ノッキョちゃん、今日は海賊狩りかい?」
杖をついた可愛いばあちゃんが、オレのタオルを巻いた頭を見て、クフフ、と笑う。あー、和む。ちっちゃくて可愛いばあちゃん、大好き。
「えー、海賊を狩る方?海賊じゃなくて?」
タオルの巻き方は、完全に海賊側なんだけど。
「だって、あたしゃノッキョちゃんが狩られたら泣いちゃうもの」
好き。
え、好き。何?この手の平で転がされてる感。これが年上の包容力……!!
「も~っ、上手いんだから、小梅さん~いつもより多めに揉んどくよ~」
「なんだい、とうとう胸揉むのかい」
「そこは旦那さんに頼んで~オレ、専門外だから~」
アハハ、と冗談を言いながら、小梅さんのマッサージ、そのまま筋トレ、歩行練習までやる。全部いつも通り。
え、OTだろって?それじゃあPTの真似事だろうって?
整形だと、お年寄りは、大抵みんな同じなんだよ。
あとは、手の骨折とかなら、また違うけど、大抵は、こんなもん。
お年寄りは、ホットパックとマッサージが好き。オレも同じだもん。出来ることなら、自分は何もしないで、誰かにマッサージして欲しいもん。わかる。
それが正しいとかは別にして。
「ほんじゃ、今日はここまで~」
「はい、ありがとうございましたー」
そんなこんなで、次々と患者さんをこなして、午前中の業務は終わった。
後片付けは、鈴木さんが猛スピードでやってくれていて、オレも明士も合わせようとするけれど、そもそも次元が違うらしい。
「あ、もう、そこ終わりました」
「はいっ、すみませんっ」
余計な手出しは却って足手まとい。
「では、お疲れ様でした」
「「はい、お疲れ様でしたー!また来週よろしくお願いします!」」
ペコリ、とお辞儀をして、終業時間ピッタリで鈴木さんは裏口から出て行った。流石だ。もはや感動するレベルに仕事が早い。
「ほら、あんた達もさっさと帰りな!」
中本さんに追い出されるように、オレ達も慌てて着替えて裏口から出る。
鈴木さんは、終業5分前には着替えていたような……働くママは大変よな。尊敬。
「昼飯、どーする?」
午前仕事は12時30分まで。
現在、12時40分。丁度、昼飯時である。
「あー……丼系?それか、麺類?」
「最近、俺達、野菜食ってねぇだろ。野菜食おうぜ」
「野菜ってさ、なんか食った気がしねぇんだよなー。水っぽかったり、カサカサしててさー」
「ノッキョ……それが野菜であり、それが生きるってことだ」
「意味分かんねぇ」
そんなこんなで、難関サラダバーを擁するファミレスへ行くことにした。
「いらっしゃいませー、2名様ですか?」
「はーい、2名でーす」
暖かい店内は、それなりに賑わっていた。
ファミリーも1人も、グループも。
すぐに席に通されて、ランチメニューを選ぶ。
「あー、日替りかなー」
「ハンバーグ食いてえ」
「あと、サラダバーとスープバー付ける?」
「えー、スープバーって、意味あんの?水分じゃん。ドリンクバーで良くね?」
「お前なぁ、スープには栄養が溶け出してんだよ、多分だけど」
「なにそれ。説得力無いわー」
ごちゃごちゃ言いながらも、二人共、日替りランチを頼み、スープバーとドリンクバー、サラダバーも付けた。豪華な昼飯である。
「んじゃ、取ってくるわ」
「あいよー」
荷物番と取りに行く係で、一人ずつ順番に行くスタイル。一応ね。リスク管理は大事。
「はい、次、どぞ」
「うぃー」
明士が戻って来て、次はオレ。
うーん、野菜、あんまり好きじゃないんだよね。
周りをキョロキョロしながら、レタス、キャベツ、ブロッコリー、プチトマト、あと安定のポテトサラダを載せてシーザードレッシング。
うん、濃厚で良い。
サラダには濃厚さを求めるから、次はゴマドレッシングだな、と次の予定も決める。
ついでにスープも注いで戻る。
ドリンクバーは明士のもついでに取りに行く。健康がどうたら面倒なこと言う癖に、明士はコーラばっか飲むんだよな。
酒はカルアミルクだし。糖尿になるぞ。
「はいよ、お待たせ」
「ん、サンキュ」
メインが届くまで、モシャモシャとサラダとスープ、ドリンクを飲んで待つ。食べ過ぎるとメインの美味さが落ちるから加減したい。
「なー、明日のゲーセンだけどさ」
「んー?なに?」
シーザードレッシングの優秀さに感謝してブロッコリーを食べていると明士が話始めた。
「軍資金、どれくらいにする?」
「あー、それな。超大事」
話題は、ゲーセンで幾ら使うか問題。これは、かなり重要。なにせ働いてるからね、オレ達。しかも独身、ルームシェア。
使おうとすりゃあ、それなりに使えちゃうわけで。ある程度、決めておかないと悲惨な月末を迎えます。
「キャッシュレスでも出来るだろ?財布開かないと加減わからなくなるよな」
「だよなー!やっぱ両替した100円が無くなるまでとか、アナログじゃないと止められなくなるよなー」
うんうん、と頷きながらプチトマトを噛み砕く。プチトマトは好き。
「お待たせしましたー。ハンバーグランチのお客様」
「はい」
「彩りチキンプレートのお客様」
「はーい」
そうこうしてる内にメインも届きました。勿論、白米もセット。やっぱガツンと腹に溜まらないとね。
ガッツリ食べながらも、明日の作戦会議をする。
「じゃあさ、キャッシュレス使わないって、どう?で、現金だけで最初に両替した分だけにする、とか」
「あー……なるほどね。でも、あと一回って思った時に、ついキャッシュレス使っちゃうんだよなぁ」
「それは、もうズルと見なそう。明日はキャッシュレスNGで」
「OK……最初の両替が肝だな。幾らにするかで、運命が変わる」
物凄い真剣に話し合ってるけど、ゲーセンの話しだから。
「……だな。同額で勝負するか?」
「……それな……こうなったら、勝負するか」
メラメラと燃えたぎる熱い闘志。サラダも進む進む。明日に向けて栄養バランスもバッチリ決めて、オレ達は、明日、旅立つ。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
すこやか食堂のゆかいな人々
山いい奈
ライト文芸
貧血体質で悩まされている、常盤みのり。
母親が栄養学の本を読みながらごはんを作ってくれているのを見て、みのりも興味を持った。
心を癒し、食べるもので健康になれる様な食堂を開きたい。それがみのりの目標になっていた。
短大で栄養学を学び、専門学校でお料理を学び、体調を見ながら日本料理店でのアルバイトに励み、お料理教室で技を鍛えて来た。
そしてみのりは、両親や幼なじみ、お料理教室の先生、テナントビルのオーナーの力を借りて、すこやか食堂をオープンする。
一癖も二癖もある周りの人々やお客さまに囲まれて、みのりは奮闘する。
やがて、それはみのりの家族の問題に繋がっていく。
じんわりと、だがほっこりと心暖まる物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
夜食屋ふくろう
森園ことり
ライト文芸
森のはずれで喫茶店『梟(ふくろう)』を営む双子の紅と祭。祖父のお店を受け継いだものの、立地が悪くて潰れかけている。そこで二人は、深夜にお客の家に赴いて夜食を作る『夜食屋ふくろう』をはじめることにした。眠れずに夜食を注文したお客たちの身の上話に耳を傾けながら、おいしい夜食を作る双子たち。また、紅は一年前に姿を消した幼なじみの昴流の身を案じていた……。
(※この作品はエブリスタにも投稿しています)
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
猫のランチョンマット
七瀬美織
ライト文芸
主人公が、個性的な上級生たちや身勝手な大人たちに振り回されながら、世界を広げて成長していく、猫と日常のお話です。榊原彩奈は私立八木橋高校の一年生。家庭の事情で猫と一人暮らし。本人は、平穏な日々を過ごしてるつもりなのだけど……。
御手洗さんの言うことには…
daisysacky
ライト文芸
ちょっと風変わりな女子高校生のお話です。
オムニバスストーリーなので、淡々としていますが、気楽な気分で読んでいただけると
ありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる