不本意恋愛

にじいろ♪

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結婚式

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あれよあれよと時間は過ぎ。

私達は結婚式を迎えた。
え、別れなかったのか?うん、だって、私も打算的な女ですから。

「愛、すっごく綺麗だよ。このまま天に昇ってしまいそう。僕の女神、消えないで」

なんてウルウル瞳で訴えてくる超絶イケメン。この最高優良物件を袖には出来なかったのよ。
そりゃあ、あの告白はどん引きしたよ。
あり得ないことばかりで、はっきり言って犯罪だからね?
でも…彼が私にとって欠かせない存在になってたことも事実で。

「涼も、ほんっとに素敵。格好良過ぎて鼻血出そう」

私は普通だが、新郎姿の彼は本当に本当に別次元に格好良い。やっぱり別れなくて良かったと噛みしめる。
真っ白の新郎姿が、こんなに神聖に見える男がいるだろうか、いや、いない。

「鼻血出したら僕が全て吸い込むから心配しないで。むしろ、愛の鼻血が吸えるなんて幸福過ぎて興奮する」

あ、中身はこれだった。うん。
でも、これも良しと思えるようになった。
愛なんて呪いみたいなもんなんだから。

両サイドから花が私達に向けて舞う。

「「「おめでとー!!早乙女…いや、篠山ちゃん!!」」」

「「涼、おめでとう!!」」

私の同僚や上司、彼のご両親が参列してくれた結婚式。
こじんまりとして、それでいて温かかった。
天国の両親も喜んでくれてるかな。

「ありがとうございます!!」

「ありがとう」

彼も私も幸せに包まれて歩く。

「「「お幸せにーー!!!」」」

私達はハネムーンに旅立った。

「「「ハワイ、楽しんでーー!!」」」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それからしばらくして、私の懐妊が判明した。

「愛、絶対、絶対に無理しちゃだめだよ」

「分かってるってば。いってきまーす」

私は妊娠したことを今日、職場に報告する。きっと皆は実の孫が出来たように喜んでくれる。

「おっはよーございまーす!」

「篠山ちゃん、この人…」

なぜかそこには、彼がいた。

「今日から、こちらで介護士として働かせて頂きます。篠山涼です。篠山愛の夫です。どうぞ宜しくお願いします」

皆の目が点である。当然、私も。

「愛は、僕との愛の結晶を宿しています。重労働は決してさせないで下さい。全て僕が代わりますから」

ポカーン。シーン…名前の愛と、愛の結晶の愛、被ってて分かりづれぇ…

「いやいや、なんでここにいるの?」

「なんでって、僕も働くって言ってたでしょ?ここで愛が出産するまで期間限定で働くことにしたんだ」

「はい、自己紹介して頂きました介護士の篠山涼さんです。皆さん、協力して業務に当たって下さい。では、各自業務へ」

師長の一声で、逆に皆がシュバっと集まって来た。

「なになに、妊娠したの?篠山ちゃん。いや、愛ちゃんか?紛らわしいわね」

「おめでとう!なによ、早く言いなさいよ!」

「なんでも頼ってよね?身体が一番大事なんだからさ」

口々に優しい言葉を掛けられて涙目になる。

「うぅ、ありがとうございます~っ」

「ありがとうございます、皆様」

私の腰を抱く夫を、皆様が生暖かく見ている。

「…それにしても、イケメンね」

「まさか妊娠した奥さんの為に就職までしちゃうなんて」

「あんた、澄ました顔でヤルじゃないの」

このこの、と小山さんに脇を小突かれて、彼は照れ臭そうに答えた。

「ええ、毎日ヤリまくって溢れる程、注ぎましたから。子種が届いてくれて良かったです。まさに愛の結晶です!」

彼のドヤ顔。
再びのポカーン……から、皆、爆笑した。
看護師長も泣きながら笑っている。彼は何で笑われているのか分からないようにキョトンとしている。
私は居た堪れない。穴があったら入りたい。

「あの…なんか、すみません」

「「「最っ高!!面白いじゃない!」」」

爆笑がナースステーションに響いている。
恥ずかしいけらど、どうやら彼は受け入れて貰えたようだ。
彼は正直に答えただけだろうけど、こういう下ネタは案外好まれるのよね。

「あー、笑った。じゃ、みんな業務につくよー」

「「「はい!!」」」

今度こそ、一斉にバタバタと仕事へ向かう。

「ほら!種持ちも、こっち来て!教えるから」

「え、種持ち?僕は愛と」

「介護士と看護師じゃ仕事違うから!力仕事はあんたが請け負うけど、他の仕事は別!いいから、さっさと行くよ!」

種持ち旦那は、介護士の先輩に引き摺られるように連れて行かれた。

「愛~っ」

「涼、頑張って!」

泣きべその夫は、一声応援すれば途端にシュタっと立ち上がり、キビキビと指示に従って動き始めた。変わり身はやーい。

「なかなか良いわね、あの種持ち。力はあるし覚えも良さそうよ」

師長さんが面白そうに彼を指す。嫌われなくて良かった…のか?いや、種持ちって。

「どうぞ宜しくお願いします!あの…そのアダ名は」

「さっきので完全に決まったわね。今日中には院内全域に篠山ちゃんの旦那は種持ちって広まるわよ。まあ旦那がいれば、セクハラも無くなって一石二鳥じゃない?」

「そうだね。一石二鳥、いやぁ男手が増えて助かるよ」

後ろに急な院長ー!!!
毎回、恐いんですけど!!

「院長先生!夫が、ご迷惑おかけします!こちらでお世話になるとは知らなくて」

「いいのいいの。前から彼から聞いてたから。生霊よりも生身で近くに居た方が彼も安心でしょう。幽霊騒ぎも無くなって、男手が増えて皆の腰痛改善、セクハラも撲滅。うん、一石三鳥」

ははは、と笑ってシワシワ院長先生が去っていく。一番得したのは院長先生では?

「なんか、院長先生に上手くやられた感じはあるわね」

看護師長が笑う。

「私も、そう思います。まさか、涼を操作出来る人間が私の他に存在するとは…」

顔を見合わせて笑う。

「クワバラ、クワバラ。はいっ、仕事ね!あなたは無理しないこと!」

「はいっ!困った時には皆さんに頼ります!」

「そうそう、忘れないでね。仕事はチームワークだから」

私は笑顔で業務へと向かった。
何となくだけど、全てが上手く行く気がする。
怪しすぎる詐欺師かと思ったら、病んでる系とんでも整形ストーカー男と、結婚して子供産みます。
私の理想?いえいえ、理想通りは顔と身体だけです。
じゃあ、この結婚は不本意かって?それは違う。
私の理想が変わったの。
あの異常な愛情を注いで来る彼が、今の私の理想。
だから、これは最高の結末。
こんなに幸せにしてくれて、神様が本当にいれば御礼を言いたい。

「神様、ありがとう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやー、ヒヤヒヤもんだったね」

ここは白い白い広い部屋。
その真ん中にはコタツやみかん、お菓子にお茶が並ぶ。
5人の本物の神様が薄型テレビの向こうに映る人間達を観察している。 
どの神様も年齢性別不詳だが、共通してるのは、一様にほっとしていること。

「まったく、とんでもない人間がいたもんだ」

「あの女の子に執着するあまり、まさか神を脅迫するなんてな」

「あり得ないよね。あの子と結婚するために今すぐ記憶を持ったまま生まれ変わらせろ、若い男は近付けるな、あと何だっけ?」

「自分と結婚するまで彼女の処女を守れ(笑)」

愚痴と一緒にお茶が進む、進む。

「予定外の事故で急死した幼子を迎えに行った新米天使が、その幼子に胸倉を掴まれて泣いてココに来たのが昨日のようだ」

「とても子供とは思えない脅迫だったな。新米天使を『ブチ殺すぞ!』とは」    

「俄然、興味が湧いてしまったのが良かったのか悪かったのか」

「男が幸福になったのは分かるが、あの娘にとっては、幸か不幸か判断がつかん」

「まあ、そんなもんじゃろ。人生」

「禄でも無い奴を転生させたよな。なんだよ、生霊って。あんな力、与えちゃダメだろ」

「いやいや、あれ生霊じゃないから。人を掴める生霊なんているわけないじゃん」

「「「え」」」

流石に神の時が止まる。

「待って。アイツ、あれ使って年寄りびっくりさせて心臓発作起こさせたけど、生霊じゃないなら犯罪じゃないの?神が犯罪を助長してない?」

「あの年寄り達は、どっちみち次の日には死ぬ予定だったから問題無いよ。それに生霊じゃないけど人間でも無いから、法律じゃ裁けないよ」

「「「あーー………」」」

「ま、なんでも良いじゃん?どうせ人間なんて生きても100年ぽっちなんだから。細かいことは気にしない。神だもん」

ズズ、と皆でコタツでお茶を啜る。

「うん、そうだね。面白かったから良しとしよう」

「それよりさ、新しいミカン持って来てよ」

「えー、コタツから出たく無いー」

テレビの向こうには、笑顔の二人。
どうやら子供も産まれるらしい。
あのヤバい男には似ないでほしいと神達が腹の子に祈るばかりである。

「ほんと、人間て面白いよなー」

「邪神より恐ろしい奴もいるけどな」



人間て面白い。




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感想 1

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みんなの感想(1件)

もくれん
2024.07.06 もくれん

すみません、とっても楽しく読みました。

ごめんね愛ちゃん……涼くんの狂愛楽しいです、大好物でごめんね🤗と思いながら読ませていただきました🙇
まさか天使脅して神様巻き込んでるほどの執着とは。拍手です涼くん〜〜〜👏

ありがとうございました!!✨✨✨

にじいろ♪
2024.07.09 にじいろ♪

もくれん様

嬉しい感想、ありがとうございます〜(⁠◕⁠ᴗ⁠◕⁠✿⁠)
不本意な感じ、好きなんです(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)
兎に角やり過ぎ、好きなんです✧⁠◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠✧
後半の行き過ぎて意味不明なところは、ご容赦下さい(⁠◡⁠ ⁠ω⁠ ⁠◡⁠)

にじいろ♪は、やり過ぎ、ド変態バンザイを信条に、日々書き進めております(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)
不本意恋愛は、にじいろ♪的には珍しいNLものですので、喜んで頂けたなら、誠に嬉しい限りです(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+

他にもド変態モノばかり取り揃えておりますので、お時間があれば、また是非お立ち寄り下さい✩
もし、流石にこれはちょっと……というものがございましたら、すみませんが、教えて下されば………
もっとやります!!(⁠ノ⁠◕⁠ヮ⁠◕⁠)⁠ノ⁠*⁠.⁠✧ワーイ

そんなド変態にじいろ♪ですが、どうぞ見捨てずに、今後もお時間があれば、見てやって下さい(⁠人⁠ ⁠•͈⁠ᴗ⁠•͈⁠)
どうぞよろしくお願い致します✩

もくれん様に幸多からんことを祈りながら✩

にじいろ♪




解除

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