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結婚?
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私は、とんでもない欲求不満女かもしれない。
今は起きたのが遅かった為に、既に11時は回っている。
昨夜、おっそろしくエッチな夢を見た。
涼さんが、その、寝ている私の身体を……
「ひゃあああーーーーっ!!」
顔を両手で隠して悶える。この発作を、朝から10回は繰り返している。
「どうしたの?愛ちゃん」
目の前で優雅にブランチを食べている涼さんが笑顔で尋ねて来るが、私は顔を見れない。
「な、なん、でも、……ナイデス」
もう、ご飯なんて食べられない。
しかも、お皿には太いバナナと太いウインナーが並べられている。
さくらんぼまである。いや、何もおかしくなんて無いはず。私が意識し過ぎなのだ。
ああ、私の脳みそがおかしくなったのか。
温かい紅茶だけ一気に飲み干して彼を見る。
「そ、それより、昨日の件なんですが」
「ん?」
やっと勇気を振り絞って彼を見れば、さくらんぼを唇に咥えていた。
脳裏に蘇る痴態。腰が勝手に揺れる。
「はわぁあーーーっ!!」
「今日は賑やかだね、愛ちゃん。そんなことろもかわいいよ」
咥えていたさくらんぼの枝を指先で摘んで、私に見せつけるように舌で実を舐る。
「美味しいな……」
私の下半身が大洪水なんですが、これはどうしたら良いのでしょうか。
コロコロと舌と唇で実を食んでいる彼を直視出来ません!!
「その、あの…昨日の件……」
「僕が結婚詐欺師って話?そんな心配してるなんて気付かなかったよ。ごめんね?はい、僕の預金通帳」
ほい、と軽く渡された通帳には、沢山のゼロ。見たことない。
「無職だけど、少し前までは公務員だったから預金はそれなりにあるんだ。退職金も使って株もやったら、かなり増えてるし。愛ちゃんが看護師さん辞めても、二人で当分暮らせる位はあるよ」
震える手で通帳を閉じる。
確かに彼の名前が書かれている。
てっきり、名前も偽名か何かかと思っていた。
「あと知りたいことある?ほら、お互いのことを何も知らないって言ってたじゃない?何でも答えるから」
彼は自分の履歴書と戸籍謄本まで用意していた。
「全部事実だよ」
にっこり笑う彼に、私は頷くしか無かった。
「えと、私は……」
「大丈夫、愛ちゃんのことは全部知ってるから」
ビク、と私の肩が揺れる。
一体、何に怯えているんだろう。
「……知ってるって?私、涼さんに何も教えて無いと思うんですけど…」
そう、私は自分のことを何も涼さんに教えていない。
そういえば、どうして私の仕事のことも知ってるんだろう。
初めての恋に浮かれて気付かなかったけど、初めて会ったあの日。私は教えて無いのに、彼は私の名前も知っていた。
ぞく、と身体が震える。
「……私、あなたに自己紹介して無かったですよね?どうして私の名前を知ってたんですか?」
震える指先を、ぎゅっと握り込む。
「なんでって…前世で君と僕は婚約者だったんだ」
「………………」
長い沈黙。ほんとにヤバい人なのかもしれない。職場の先輩の言葉が蘇る。
「ああ、説明が足りなかったね。僕は生まれ変わって篠山涼になった。前世は、鈴木将吾。覚えてるでしょ?僕のこと」
鈴木、将吾……
急にフラッシュバックする遥か昔の記憶。
幼稚園の頃、仲の良かった男の子が車に轢かれて亡くなった事故があった。
私はショックで外に出られなくなり、心配した両親が増々過保護になったのだ。
あれ以来、男の子とまともに話した記憶が無い。
「将吾……くん?うそ……」
身体がカタカタと震える。
記憶の中の将吾くんは真ん丸ほっぺのかわいい同い年の男の子。
『愛ちゃん、大人になったら結婚しよう』
シロツメグサを手にプロポーズしてくれた。
私は、たしか受け取って…
『うんっ、ケッコンする!』
結婚自体、良く分かっていなかったけれど、その響きがお姉さんみたいで、喜んでシロツメグサを頭に飾った。
『わぁ、花嫁さんみたいにかわいい!』
『ほんと?大好き、将吾くん』
真ん丸ほっぺにチュウをした。
それからすぐに、彼は死んだのだ。
「え、でも、そんな……まさか」
「僕は愛ちゃんを探したよ。誰になんて言われても君だけを探して生きて来たんだ」
涼さんが私の隣へ来て、震える私の肩を抱き寄せる。
「やっと見つけたんだよ、愛ちゃん。死んでも離さないから」
私は、何と答えたんだろう。
そこから記憶が途切れている。
「、……ん、愛ちゃん?」
気付けば、そこは明るい施設の中だった。
「??え?ここは?」
「市役所だよ。大丈夫?」
言われてみれば、説明されたようにも思う。頭がふわふわしていて夢の中みたいだ。なんだろう、この感じ、前にも……
「では、受理します」
「はい、よろしくお願いします」
私は腰を抱き寄せられて、頭を下げる彼を見詰めていた。
「これで僕達、夫婦だね」
「え……?」
見れば受理されたのは婚姻届。
「え?!あのっ」
慌てて市役所の人を呼び止めようとして彼に後ろから抱き締められる。
「愛ちゃん、サインしてくれたもんね?これで結婚詐欺だなんて言わないでしょ?もう僕達、夫婦だもん」
耳元で囁かれるイケボに腰が砕ける。
もうダメだ。条件反射で濡れてしまう。
「はぃ……」
晴れて私と篠山涼さん、いや鈴木将吾くん?は夫婦となった。
今は起きたのが遅かった為に、既に11時は回っている。
昨夜、おっそろしくエッチな夢を見た。
涼さんが、その、寝ている私の身体を……
「ひゃあああーーーーっ!!」
顔を両手で隠して悶える。この発作を、朝から10回は繰り返している。
「どうしたの?愛ちゃん」
目の前で優雅にブランチを食べている涼さんが笑顔で尋ねて来るが、私は顔を見れない。
「な、なん、でも、……ナイデス」
もう、ご飯なんて食べられない。
しかも、お皿には太いバナナと太いウインナーが並べられている。
さくらんぼまである。いや、何もおかしくなんて無いはず。私が意識し過ぎなのだ。
ああ、私の脳みそがおかしくなったのか。
温かい紅茶だけ一気に飲み干して彼を見る。
「そ、それより、昨日の件なんですが」
「ん?」
やっと勇気を振り絞って彼を見れば、さくらんぼを唇に咥えていた。
脳裏に蘇る痴態。腰が勝手に揺れる。
「はわぁあーーーっ!!」
「今日は賑やかだね、愛ちゃん。そんなことろもかわいいよ」
咥えていたさくらんぼの枝を指先で摘んで、私に見せつけるように舌で実を舐る。
「美味しいな……」
私の下半身が大洪水なんですが、これはどうしたら良いのでしょうか。
コロコロと舌と唇で実を食んでいる彼を直視出来ません!!
「その、あの…昨日の件……」
「僕が結婚詐欺師って話?そんな心配してるなんて気付かなかったよ。ごめんね?はい、僕の預金通帳」
ほい、と軽く渡された通帳には、沢山のゼロ。見たことない。
「無職だけど、少し前までは公務員だったから預金はそれなりにあるんだ。退職金も使って株もやったら、かなり増えてるし。愛ちゃんが看護師さん辞めても、二人で当分暮らせる位はあるよ」
震える手で通帳を閉じる。
確かに彼の名前が書かれている。
てっきり、名前も偽名か何かかと思っていた。
「あと知りたいことある?ほら、お互いのことを何も知らないって言ってたじゃない?何でも答えるから」
彼は自分の履歴書と戸籍謄本まで用意していた。
「全部事実だよ」
にっこり笑う彼に、私は頷くしか無かった。
「えと、私は……」
「大丈夫、愛ちゃんのことは全部知ってるから」
ビク、と私の肩が揺れる。
一体、何に怯えているんだろう。
「……知ってるって?私、涼さんに何も教えて無いと思うんですけど…」
そう、私は自分のことを何も涼さんに教えていない。
そういえば、どうして私の仕事のことも知ってるんだろう。
初めての恋に浮かれて気付かなかったけど、初めて会ったあの日。私は教えて無いのに、彼は私の名前も知っていた。
ぞく、と身体が震える。
「……私、あなたに自己紹介して無かったですよね?どうして私の名前を知ってたんですか?」
震える指先を、ぎゅっと握り込む。
「なんでって…前世で君と僕は婚約者だったんだ」
「………………」
長い沈黙。ほんとにヤバい人なのかもしれない。職場の先輩の言葉が蘇る。
「ああ、説明が足りなかったね。僕は生まれ変わって篠山涼になった。前世は、鈴木将吾。覚えてるでしょ?僕のこと」
鈴木、将吾……
急にフラッシュバックする遥か昔の記憶。
幼稚園の頃、仲の良かった男の子が車に轢かれて亡くなった事故があった。
私はショックで外に出られなくなり、心配した両親が増々過保護になったのだ。
あれ以来、男の子とまともに話した記憶が無い。
「将吾……くん?うそ……」
身体がカタカタと震える。
記憶の中の将吾くんは真ん丸ほっぺのかわいい同い年の男の子。
『愛ちゃん、大人になったら結婚しよう』
シロツメグサを手にプロポーズしてくれた。
私は、たしか受け取って…
『うんっ、ケッコンする!』
結婚自体、良く分かっていなかったけれど、その響きがお姉さんみたいで、喜んでシロツメグサを頭に飾った。
『わぁ、花嫁さんみたいにかわいい!』
『ほんと?大好き、将吾くん』
真ん丸ほっぺにチュウをした。
それからすぐに、彼は死んだのだ。
「え、でも、そんな……まさか」
「僕は愛ちゃんを探したよ。誰になんて言われても君だけを探して生きて来たんだ」
涼さんが私の隣へ来て、震える私の肩を抱き寄せる。
「やっと見つけたんだよ、愛ちゃん。死んでも離さないから」
私は、何と答えたんだろう。
そこから記憶が途切れている。
「、……ん、愛ちゃん?」
気付けば、そこは明るい施設の中だった。
「??え?ここは?」
「市役所だよ。大丈夫?」
言われてみれば、説明されたようにも思う。頭がふわふわしていて夢の中みたいだ。なんだろう、この感じ、前にも……
「では、受理します」
「はい、よろしくお願いします」
私は腰を抱き寄せられて、頭を下げる彼を見詰めていた。
「これで僕達、夫婦だね」
「え……?」
見れば受理されたのは婚姻届。
「え?!あのっ」
慌てて市役所の人を呼び止めようとして彼に後ろから抱き締められる。
「愛ちゃん、サインしてくれたもんね?これで結婚詐欺だなんて言わないでしょ?もう僕達、夫婦だもん」
耳元で囁かれるイケボに腰が砕ける。
もうダメだ。条件反射で濡れてしまう。
「はぃ……」
晴れて私と篠山涼さん、いや鈴木将吾くん?は夫婦となった。
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