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ドライブデート
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「愛さん?どこ行きたいですか?」
普通車の窓から目の前に広がる世界は、きっと私の知らない世界。
知ってる道が全く知らない景色に見える。
それくらいに、キラキラと輝いている。
主に、隣の運転手が。
「どっ、どっ?どっ、どおー……」
私は何を言っているんだろう。
ドの4段活用をしてるんだろうか。
「とりあえず、ブランチでも行ってみます?」
「ブラッ、ンチッ……行きたいですぅー」
テレビの中でしか観たことが無いワード。
ブランチ、ブランチ、えーと、朝と昼の間に食べる食事、よね。
「近くに美味しい店があるんです」
「へっ、へぇ~っ、ぜひっ!」
緊張して指が震えるのを抑えながら、なんとか笑う。
運転する横顔が、尋常じゃなく格好良い。
「着きましたよ」
彼の自家用車だというコンパクトな普通車が、もはやベンツ。
軽トラがBMWで、コンパクトカーがベンツ。
この御方を販売店に置いたら、いくらでも車が売れるんじゃないでしょうか、皆様。
スムーズにエスコートされて助手席から降りる。
エスコート…!!シンデレラになったような心持ちで、足元がフワフワして、うまく歩けない。
「ここのチキンが美味しいって、結構人気で」
「はいぃ!チキン、大好きっでっす!」
もう自分がチキンになって、食べられたい。
あちこち、かなり肉が付いてるので、どうぞ焼いて召し上がって下さい。
「ふふ、愛さん、ほんとかわいい」
顔から発火した。
笑顔と、かわいい発言の威力や、これいかに!
「かっ?!かわっ?」
これは、今時の若者言葉で、逆にブサイクとかいう意味だろうか、とグルグル考え出す。
いやいやいやいや、これもただの冗談だ。
そう、あくまで冗談。本気にするな、私の純白脳。
「さ、いきましょう」
さり気なく手を取られて歩く。
手を、手を、手を……
繋いでるーー!!!
手汗!手汗が滝のように流れてます!!
どひゃーー!っ!!!
「どうですか?愛さん、こういうお店、好きかなと思って」
「すっ、好きっですっ!!」
主に貴方が。
メニュー表で、どうにか真っ赤に茹で上がった顔を隠して話す。
「ふふふ、良かった。どうしますか?何品か頼んでシェアしますか」
「は、はいぃ………」
そこからは、何もかも彼の提案や話題に頷くばかりだった。
沸騰した私の頭では、ちゃんと物事を考えることなど出来ない。
私の視界の全てが彼で埋まっているのだから。
「じゃあ、ーーーで、ーーーしましょうか」
「はいぃ……」
恐らく目がハートになっているだろう私は、全てイエスで食事を終えた。
「ほんとにかわいいなぁ、愛さんは。大人になった愛さんと食事が出来るなんて夢みたいだ」
「???はぁ……」
「いえ、こんな素敵な大人の女性と食事が出来て、僕は幸せだなぁと噛み締めていたんです」
ボボボ、と耳まで発火して燃え上がる。
「その服も愛さんに着てもらえて良かった。あぁ、もし良ければ、これから買い物に付き合ってもらえますか?出来れば愛さんにも見てもらいたいんです」
「はいっぜひっ!」
私にNOなんて選択肢は、そもそも無い。
自衛隊員か、どこぞの飲食店の店員のごとく、勢い良く返事する。
今日の思い出を胸に、これからの生涯を生きるのだから、たくさん思い出はあった方が良い。
「あはは、愛さん、面白いなぁ」
クスクス笑って目尻の涙を拭う様が、もはやCM。
顔が良いって、こんなにも素晴らしいことなんだ。
「じゃあ、行きましょう」
スムーズに車へとエスコートされ、私はいつの間にか助手席に再び納まっていた。
「はいぃ……はっ!私っ!お会計してないっ!あぁ!戻らなきゃ!!」
私がパニックになり助手席から降りようとすると、優しく、けれど力強く腕を掴まれた。
「支払いは済ませてあるので大丈夫です」
「え、ええっ!!払います!ごめんなさい、気が付かなくって!!」
彼に掴まれた腕は、まだ彼にしっかりホールドされたままだ。
そこから彼の少し高めの体温が伝わり、私の心臓が瀕死だ。
「いいんです。一緒に来てもらえただけで嬉しいし」
「だっだめです!!ちゃんと払いますから!おいくらですか?!」
私は夢中だった。
こんな素敵な彼との食事では、費用は全て私が払わせて頂きたい程だ。
「んー、じゃあ、次の食事では、愛さんに奢ってもらおうかな。それで良いですか?」
「あ、はい……分かりました」
分かってないけど、分かりました。
もしや、それは次もあるということでしょうか。
「さ、買い物行きましょう。愛さんと行きたい場所があるんです」
「は、はいぃ……」
もう、なんでも良いや。
これが詐欺だろうが、最終的に殺されたって、こんな幸せな最後なら本望だ。
普通車の窓から目の前に広がる世界は、きっと私の知らない世界。
知ってる道が全く知らない景色に見える。
それくらいに、キラキラと輝いている。
主に、隣の運転手が。
「どっ、どっ?どっ、どおー……」
私は何を言っているんだろう。
ドの4段活用をしてるんだろうか。
「とりあえず、ブランチでも行ってみます?」
「ブラッ、ンチッ……行きたいですぅー」
テレビの中でしか観たことが無いワード。
ブランチ、ブランチ、えーと、朝と昼の間に食べる食事、よね。
「近くに美味しい店があるんです」
「へっ、へぇ~っ、ぜひっ!」
緊張して指が震えるのを抑えながら、なんとか笑う。
運転する横顔が、尋常じゃなく格好良い。
「着きましたよ」
彼の自家用車だというコンパクトな普通車が、もはやベンツ。
軽トラがBMWで、コンパクトカーがベンツ。
この御方を販売店に置いたら、いくらでも車が売れるんじゃないでしょうか、皆様。
スムーズにエスコートされて助手席から降りる。
エスコート…!!シンデレラになったような心持ちで、足元がフワフワして、うまく歩けない。
「ここのチキンが美味しいって、結構人気で」
「はいぃ!チキン、大好きっでっす!」
もう自分がチキンになって、食べられたい。
あちこち、かなり肉が付いてるので、どうぞ焼いて召し上がって下さい。
「ふふ、愛さん、ほんとかわいい」
顔から発火した。
笑顔と、かわいい発言の威力や、これいかに!
「かっ?!かわっ?」
これは、今時の若者言葉で、逆にブサイクとかいう意味だろうか、とグルグル考え出す。
いやいやいやいや、これもただの冗談だ。
そう、あくまで冗談。本気にするな、私の純白脳。
「さ、いきましょう」
さり気なく手を取られて歩く。
手を、手を、手を……
繋いでるーー!!!
手汗!手汗が滝のように流れてます!!
どひゃーー!っ!!!
「どうですか?愛さん、こういうお店、好きかなと思って」
「すっ、好きっですっ!!」
主に貴方が。
メニュー表で、どうにか真っ赤に茹で上がった顔を隠して話す。
「ふふふ、良かった。どうしますか?何品か頼んでシェアしますか」
「は、はいぃ………」
そこからは、何もかも彼の提案や話題に頷くばかりだった。
沸騰した私の頭では、ちゃんと物事を考えることなど出来ない。
私の視界の全てが彼で埋まっているのだから。
「じゃあ、ーーーで、ーーーしましょうか」
「はいぃ……」
恐らく目がハートになっているだろう私は、全てイエスで食事を終えた。
「ほんとにかわいいなぁ、愛さんは。大人になった愛さんと食事が出来るなんて夢みたいだ」
「???はぁ……」
「いえ、こんな素敵な大人の女性と食事が出来て、僕は幸せだなぁと噛み締めていたんです」
ボボボ、と耳まで発火して燃え上がる。
「その服も愛さんに着てもらえて良かった。あぁ、もし良ければ、これから買い物に付き合ってもらえますか?出来れば愛さんにも見てもらいたいんです」
「はいっぜひっ!」
私にNOなんて選択肢は、そもそも無い。
自衛隊員か、どこぞの飲食店の店員のごとく、勢い良く返事する。
今日の思い出を胸に、これからの生涯を生きるのだから、たくさん思い出はあった方が良い。
「あはは、愛さん、面白いなぁ」
クスクス笑って目尻の涙を拭う様が、もはやCM。
顔が良いって、こんなにも素晴らしいことなんだ。
「じゃあ、行きましょう」
スムーズに車へとエスコートされ、私はいつの間にか助手席に再び納まっていた。
「はいぃ……はっ!私っ!お会計してないっ!あぁ!戻らなきゃ!!」
私がパニックになり助手席から降りようとすると、優しく、けれど力強く腕を掴まれた。
「支払いは済ませてあるので大丈夫です」
「え、ええっ!!払います!ごめんなさい、気が付かなくって!!」
彼に掴まれた腕は、まだ彼にしっかりホールドされたままだ。
そこから彼の少し高めの体温が伝わり、私の心臓が瀕死だ。
「いいんです。一緒に来てもらえただけで嬉しいし」
「だっだめです!!ちゃんと払いますから!おいくらですか?!」
私は夢中だった。
こんな素敵な彼との食事では、費用は全て私が払わせて頂きたい程だ。
「んー、じゃあ、次の食事では、愛さんに奢ってもらおうかな。それで良いですか?」
「あ、はい……分かりました」
分かってないけど、分かりました。
もしや、それは次もあるということでしょうか。
「さ、買い物行きましょう。愛さんと行きたい場所があるんです」
「は、はいぃ……」
もう、なんでも良いや。
これが詐欺だろうが、最終的に殺されたって、こんな幸せな最後なら本望だ。
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