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A級冒険者
しおりを挟む「ふぅ、随分と暑いな、今日も」
そこは奥深い森 アガ。
この森は世界一大きなポッチーノ大陸の西南。広大に広がる巨木や多種多様な植物、生物が生息している。
一年中、気温も高く水も豊富。土も肥えてたわわな果実も山程、枝からぶら下がっている。そんな恵まれた大地だからこそ、育まれたのだろう。
巨大な獣や特殊な虫、人間から見れば、いわゆる害獣が轟音と共に走り去って行く。
巨大な害獣は、攻撃されなければ襲って来ることは無い。昔は森から出ることも少なかった。森の中、各々の縄張りで暮らしていたのだ。
だが、人間は欲深い。
この害獣達の身体や卵、はたまた巣から取れる希少な物を欲しがる人間は後を絶たない。それが高額だとなれば、尚更だ。
「今回は、ミオドラゴの角だってよ。悪趣味だよな」
俺達は二人組のA級冒険者だ。俺が大剣遣いのニック、後ろを歩く弓使いがティロ。
二人共、田舎から出て来て、その腕だけで、ここまで登りつめた。
ティロが額の汗を拭いて空を仰ぐ。肩まで届く金の髪を無造作に後ろで束ねているが、それが良いと女に人気がある。顔立ちも目鼻立ちがスッキリとしていて今の流行らしい。ティロみたいに細身だが筋肉があるというのが、最も人気と噂で聞いた。きゃあきゃあと、良く街では騒がれている。
俺は、短い茶髪と四角い顔。太い眉毛に威圧的な顔で、体格も大剣を使う為に筋肉の塊みたいだ。当然、モテナイ。別に良いけど。
「全くだ。こんなものに大金を払って、これで不老長寿だなんて。騙されてると思わないのが不思議だ」
ミオドラゴの角とは、まるでドラゴンの角のように聞こえるが、実際は大きなトカゲだ。似てるようで全く違う。火も吐かないし、鱗も無い。
角と言われているのだって、世間のイメージは頭の角だろう。だが、ミオドラゴの角というのは·····
「トカゲの性器で不老長寿って、滋養強壮の間違いだろ。俺なら飲まないね、こんなもん」
うげーっと顔を顰めてティロに角を見せれば手で払う仕草をされる。近付けるな、と顔を背けられた。酷い。俺だって持ってるのも嫌なのに。なにせミオドラゴは人の3倍はある巨大な巨大なトカゲ。動きも素早く倒すのは、なかなかに骨が折れた。
普通なら兵士10人掛かりでやっとの大きく大トカゲなのだ。でもそれを、たった二人で成し遂げるのが、ポッチーノ大陸で10名程しかいないA級冒険者だ。つまりは腕が立ち、金持ちの道楽を手伝う人間が、冒険者ってわけ。俺達は、その最上級。害獣からは呪われてるかもしれない。
さて、と肩にずっしりと食い込む荷物を背負い直す。
なにせデカいから俺の荷物の半分が角に占められた。
「ま、ここからなら3日でコフトの街へ帰れるだろ。それまでの辛抱だ」
「戦利品の管理は任せたよ。私は弓使いだから重い物は持てないんでね」
ティロは、いつだって軽々とした装備で重い物は持たない。だから筋肉が太くならなくてモテる。おかしいだろ。俺もモテたい。
「なあ、ティロ。交代で持たないか?俺も少し肩が痛くて」
「そんなものを背負ったら、弓の精度が落ちる。ニックは筋トレにもなって丁度良いって言ってたじゃないか」
それとこれとは、話が別だ。
筋トレより、モテたい。本当は、めちゃめちゃモテたい。
俺は必死に食らいついた。
「じゃあ、俺が先に担いで歩くから、次の休憩からはティロが担いでくれ」
「なんだって?!そんなこと勝手に決めるな!」
言い逃げしようとして、俺は脚を速めた。獣道だから、ティロは隣には並べない。
それを良いことに、ザクザクと不満を聞き流して進む。ティロは約束を反故に出来ない奴だ。このまま次の休憩に入ってしまえば、こっちのものだ。この重くて不快な荷物をティロに持たせてやろう、とニヤニヤしながら大して警戒することなく早足で歩いていた俺は、急に視界が地面スレスレまで急降下した。
「ーーーっっっ?!?!?!」
あまりのことに言葉が出ない。咄嗟に近くにあった木の枝に捕まって、どうにか両腕は出した状態だが、胸から下が完全に埋まった。どこに?
地面に。
「ニック!!!動くな!助ける」
ティロは焦りながらも沈着冷静に縄を俺の脇の下に回し入れて、ゆっくりと底なし沼のような泥濘から引き摺り出してくれた。
命は助かった。
だが、俺の身体には深刻な変化が起きていた。
「ひぎいぃぃっっーーーっ!!!」
新品だったアーマーや服は全て溶けて、裸の筈が、胸から下は真っ黒に染まっていた。
「なんなんだ、これは····」
ティロが、泥濘から引っこ抜いた俺を地面に転がしながら、恐る恐る布を巻いた手で俺の腹を撫でた。
「ああぁぁぁぁぁぁあああっっ!!!」
神経をゴリゴリと直接抉られる程の激しい快感に、俺は全身をビクビクと痙攣させた。自分で自分が信じられないが、頭がおかしくなる程の快感なのだ。
「痛い·····訳では無いようだな。これは、まさか呪いか?」
ブツブツと言いながらティロが俺の全身をジロジロと見て、時折布で触れている。
直接触れて伝染ると困るからだろう。
だが、それだけの刺激で俺は震える程に感じてしまっていた。
「うーん、伝染る訳では無いみたいだな。仕方ない、とりあえず街まで連れて帰るか。ここに放置していくことは流石に出来ないし」
「ふーっ、ふーっ、す、すま、ない」
涎を垂らしながら、どうにか返事するとティロがイタズラっぽく笑った。
「街まで帰って、呪いが治ったら、私の願いを一つだけ叶えろよ。いいな?」
俺は頷く以外無かった。こんなことになって、酷い迷惑をかける仲間には何でもしてやる。全財産だって渡すし、お気に入りの娼婦だって譲る。
「その約束、忘れるなよ。私が約束を反故することは絶対しないのを知ってるだろう」
「わかってる、はぁ、はぁ、たのむ」
何度も頷く。あまり動くと響くから小さな動きだが、必死だった。
「ふふ、じゃあ仕方ないから連れ帰ってやる。その代わり文句言うなよ?」
小さく笑うティロは、確かに男前だなぁ、なんて悠長なことを考えていられたのは、そこまでだった。
「ぅふぐぅぅうーーーーーっっ!!!」
「ほら、暴れるなよ。牛か?お前は」
暴れたくて暴れるんじゃない。勝手に身体がビクビクと痙攣してしまうんだ。
だって、これも仕方ないのだが、なにせ運搬方法が雑。
俺の全身を大きな麻布で包んで、そのまま背中に背負われた。他の荷物も抱えているから文句も言えないが。ちなみに、あのトカゲの角も俺と一緒に巻かれた。
せっかくの獲物を置いてくのは嫌だ、とティロが言って俺と巻いたのだ。しかも、丁度股間に。嫌がらせだと思うが、運んでもらう立場としては強く言えなかった。
なにせ、俺の股間はまだ直接見ないようにしているが、酷い有様だと分かる。
ティロが歩く毎に麻布で皮膚が擦れ、その快感で腰が揺れ、固い角に股間が擦れ、俺は何度も何度も何度も何度も射精していた。
「おいおい、大丈夫か?そんな調子で街まで辿り着けるのか?少しは我慢しろ」
「ひいっ!ぐふぅぅっ、ああっ!」
快感のことしか頭に無い俺は強過ぎる快感の波に翻弄されてティロに言われている言葉も理解出来なくなってきていた。
ティロは、細身なのに俺を軽々と運んでいて、凄いなと感心したのは覚えている。
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