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鈴山貴大(すずやま たかひろ)
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私の友人に、鈴山貴大という男がいる。
中規模な印刷会社で総務をしているという。
スーツは安物だし、革靴も、擦り減ってる。
腕時計もダサければ、車は持ってないらしい。
安アパートで一人暮らしをしているらしい。だから、シャツもヨレヨレなのか。
そんな感想を持ってジロジロ見ていたら、視線がぶつかり、にへら、と笑われた。
その瞬間、何故か恋に落ちた。
鈴山貴大が男にしてはあまりに美しいからだけでは説明が付かない。
私とは釣り合う訳のない男。
そして、ここは合コンの場。
中学の同級生から久しぶりに連絡が来たかと思えば、泣きながら懇願された。
『頼むよぉ~!!医者が来るからって言って女の子集めちゃったんだよぉ~!!友達で医者なんて、お前しかいないんだ~』
昔からお調子者のヤツだ。
腐れ縁というもので、仕方なく数合わせとして参加した。
が、当然、私の周りに女性陣が固まった。
「あのぉ、お医者様ってえ、忙しいんですかぁ?次のお休みっていつなんですか?」
「え~っ、ご趣味はなんですかぁ?ゴルフやりますぅ~?」
「わぁ、筋肉凄いんですねえ♡きゃあ、かっこいい~」
なにせ、私はイケメンだ。
十人に聞けば十人がイケメンと答える程のイケメンだ。
男らしい顔立ちと、恵まれた体躯。
筋肉質で引き締まった身体と長身、長い脚。
腐れ縁の同級生には済まないが、私が登場した時点で、他の男は存在しないことになる。
だから、私が他の男に話題を振っていた。
そうしたら、何の取り柄も無さそうな鈴山貴大に視線が吸い寄せられたのだ。
スーツもヨレヨレなのに、顔面が物凄く綺麗で、周りの女共が霞む。
だから余計に、誰もソイツに近寄らない。
話し掛けない。
同級生も、分かってて呼んだんだろう。悪い奴だ。
それなのに、心臓が煩い。
鈴山貴大の顔を見る度に、ドクンドクンと脈打つ。
あり得ない。
この俺が。
そんなはず無い。
相手は男だ。
しかも、あんなヨレヨレで、何の目立つところもない。金もなければ女もいない。
そんな男に、この俺が?!
あり得ない。
絶対にあり得ない。
そう思うのに、先程から視線が頻繁に合うし、合う度に心臓がはねて落ち着かない。
あまりの状況に、珍しく酒をしこたま飲んでしまった。
「えーっと、大丈夫ですか?神崎さん?」
気付けば、隣に鈴山貴大が座っていた。
周りを見渡せば女の子達は消えていた。
「ーーはっ?!え?」
同級生もいない。
というか、二人きりだ。
「だいぶ飲みすぎたみたいで……皆さん、先に帰られました」
言い難そうに鈴山貴大に言われて、僅かに記憶が蘇った。頭を抱えた。
『おい、ブス!話しかけんじゃねえよ!このバカが!!化粧濃すぎ!元の顔、こけしか?!』
『お前んち、鏡あんのか?!眼科行け!視界に入んじゃねぇ、クソが!くだらねぇ話ばっかりで、うんざりなんだよ!』
泥酔した私は、自分の異常な胸の高鳴りを誤魔化す為に、浴びるように酒を飲み、散々な罵詈雑言を周りの女性陣に言い放った……らしい。
当然、会はお開きになり、同級生は女の子のフォローを懸命にする為に私を置き去りにした。悪いことをしたとは思うが、男の友情なんて、そんなものだ。
恐らく、二度と連絡は来ないだろう。私もしないが。
「申し訳無かった……醜態を晒したようで……」
思わず謝ると、フフ、と笑い声が聞こえた。
「いえ、その…面白かったです。なんだか、すっきりしました」
そう花が綻ぶように笑った。
その瞬間、二度目の恋に落ちた。
今度は勘違いなんかじゃない。
本当のフォーリン・ラブだ。
中規模な印刷会社で総務をしているという。
スーツは安物だし、革靴も、擦り減ってる。
腕時計もダサければ、車は持ってないらしい。
安アパートで一人暮らしをしているらしい。だから、シャツもヨレヨレなのか。
そんな感想を持ってジロジロ見ていたら、視線がぶつかり、にへら、と笑われた。
その瞬間、何故か恋に落ちた。
鈴山貴大が男にしてはあまりに美しいからだけでは説明が付かない。
私とは釣り合う訳のない男。
そして、ここは合コンの場。
中学の同級生から久しぶりに連絡が来たかと思えば、泣きながら懇願された。
『頼むよぉ~!!医者が来るからって言って女の子集めちゃったんだよぉ~!!友達で医者なんて、お前しかいないんだ~』
昔からお調子者のヤツだ。
腐れ縁というもので、仕方なく数合わせとして参加した。
が、当然、私の周りに女性陣が固まった。
「あのぉ、お医者様ってえ、忙しいんですかぁ?次のお休みっていつなんですか?」
「え~っ、ご趣味はなんですかぁ?ゴルフやりますぅ~?」
「わぁ、筋肉凄いんですねえ♡きゃあ、かっこいい~」
なにせ、私はイケメンだ。
十人に聞けば十人がイケメンと答える程のイケメンだ。
男らしい顔立ちと、恵まれた体躯。
筋肉質で引き締まった身体と長身、長い脚。
腐れ縁の同級生には済まないが、私が登場した時点で、他の男は存在しないことになる。
だから、私が他の男に話題を振っていた。
そうしたら、何の取り柄も無さそうな鈴山貴大に視線が吸い寄せられたのだ。
スーツもヨレヨレなのに、顔面が物凄く綺麗で、周りの女共が霞む。
だから余計に、誰もソイツに近寄らない。
話し掛けない。
同級生も、分かってて呼んだんだろう。悪い奴だ。
それなのに、心臓が煩い。
鈴山貴大の顔を見る度に、ドクンドクンと脈打つ。
あり得ない。
この俺が。
そんなはず無い。
相手は男だ。
しかも、あんなヨレヨレで、何の目立つところもない。金もなければ女もいない。
そんな男に、この俺が?!
あり得ない。
絶対にあり得ない。
そう思うのに、先程から視線が頻繁に合うし、合う度に心臓がはねて落ち着かない。
あまりの状況に、珍しく酒をしこたま飲んでしまった。
「えーっと、大丈夫ですか?神崎さん?」
気付けば、隣に鈴山貴大が座っていた。
周りを見渡せば女の子達は消えていた。
「ーーはっ?!え?」
同級生もいない。
というか、二人きりだ。
「だいぶ飲みすぎたみたいで……皆さん、先に帰られました」
言い難そうに鈴山貴大に言われて、僅かに記憶が蘇った。頭を抱えた。
『おい、ブス!話しかけんじゃねえよ!このバカが!!化粧濃すぎ!元の顔、こけしか?!』
『お前んち、鏡あんのか?!眼科行け!視界に入んじゃねぇ、クソが!くだらねぇ話ばっかりで、うんざりなんだよ!』
泥酔した私は、自分の異常な胸の高鳴りを誤魔化す為に、浴びるように酒を飲み、散々な罵詈雑言を周りの女性陣に言い放った……らしい。
当然、会はお開きになり、同級生は女の子のフォローを懸命にする為に私を置き去りにした。悪いことをしたとは思うが、男の友情なんて、そんなものだ。
恐らく、二度と連絡は来ないだろう。私もしないが。
「申し訳無かった……醜態を晒したようで……」
思わず謝ると、フフ、と笑い声が聞こえた。
「いえ、その…面白かったです。なんだか、すっきりしました」
そう花が綻ぶように笑った。
その瞬間、二度目の恋に落ちた。
今度は勘違いなんかじゃない。
本当のフォーリン・ラブだ。
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