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第二章

新婚さん、いらっしゃる

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ドミルとの新婚生活は、とんでもなかった。
何せ、魔王と人間。
育って来た環境が違うから、すれ違いはぁ、しょうがないんだ。

「フィガル、はい♡あーん」

「なっ、なな、なーーーーーっ!!!」

ドミルが、裸にフリフリのエプロン一枚で、我に半熟目玉焼きを、あーん♡してくる。
どっどぅどっどっ??
どうすればいいんだぁーーーーっっ??!!!

「はよ食え、馬鹿者」

スコーン!と我の後頭部に何か硬い物がクリーンヒットした。
我の銅像ではないか。
あれは、そこそこ高価な代物なはず。

「何をするっ!!メリア!!」

クワッと怒りの形相でメリアを振り向くが、素知らぬ顔で、ドミルを指さされる。

「ほら、若妻を待たせるな」

「うっ…やっぱり、俺なんかじゃ、フィガルの結婚相手として認められてないんじゃ…」

ショボン、と項垂れる裸エプロン♡ドミル。

「なっ?!そんなはず、ドミル以外に、我のけけ、けっ結婚、相手っは、いないっ!!ど、ドミルのことがっ、だ、だいしゅきっだっ!!」

今だって、眩し過ぎて直視出来ないくらい。
いや、というか、その格好が新婚の人間の標準装備とは…どうかしてるぜっ、人間。

「じゃあ、食べて?」

薄目で、なるべくドミルを見ないように気を付けながら、急いでパクっと卵を食べる。
トロッとした黄身が、なんでこんなに美味エロいんだ。

「美味しい?」

「はっ、はひっ!!」

黄身よりも、ドミルが美味しそうで、目眩がします。
とは言っても良いんだろうか。

「ど、ドミルっ、もう、我は、我慢がっ」

「はい、仕事ですよー。じゃ、ドミル殿も着替えて準備お願い致します」

「ええ、すぐに用意して向かいます。フィガル、今日も一日頑張ろうな」

裸エプロンの紐が、しゅるっと解かれたと思ったら、メリアの魔法で、その姿が一瞬隠され、次に現れたドミルは、きっちりと服を着込んでいた。

「ええぇ……なんでぇ…」

「今日も一日、しっかり働いたら、今夜はあの格好のドミル殿が相手をしてくれるそうですよ」

鼻血ブバーーーーッ!!!
後頭部、ダーーーン!!!

「フィガル??!!大丈夫かっ?!」

「はいはいはい、問題無いです。適当に転がしながら仕事させますから。じゃ、ドミル殿はいつもの部屋でお願いします」

心配そうなドミルを、メリアがヒョイヒョイ押して隣の部屋に案内する。
うう、ドミルと一緒がいいのに。

「二人一緒だと、仕事が進まないからですよ。早く終わらせれば、ドミル殿とイチャイチャしても良いですから。エプロン♡ドミル殿の為に頑張って下さいね」

もう、そりゃあすぐに仕事に取り掛かる。
無茶苦茶、仕事しまくる。
なんでも来い!全部片付けてやる。
明日の分まで済ませて、今夜から明後日の朝まで、ドミルを独り占めするんだ。

「はぁ…ほんと、ドミル殿が来てから仕事が楽になった…ドミル殿は人間の癖に字を覚えるのも早いし、賢いし、控え目で、小さくてかわいいし…」

「ドミルはやらんぞ」

低い声と共に、ほんの少し魔力を放出する。
メリアは、ハッとして、びくりと怯えたように後退る。

「…いえ、ただの冗談ですよ。魔王様のモノを欲しがる程、愚かではありません」

ふふふ、と軽く笑うメリア。
だが、我らは、それなりに長い付き合いだから分かる。

「…うむ、分かってる。我は、メリアを信じてるからな」

「…はぁ、全く、ずるいですね。あなたも」

二人で顔をみあわせて、くすりと笑い合う。
ずるいのは、お互い様だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おおわっったぁぁぁーーーーーっっっ!!!」

ぜぇはぁ、と血塗れの眼球を手から転がして叫ぶ。

「はい、お疲れ様でした。明日の分まで終わってますね。よしよし、じゃあ、明日は」

「休むからなぁあああ!!!!!」

服に多量の血液が付着してることなど関係無い。
適当に魔法で、チョチョイと綺麗に服も身体も治してドミルの元へ向かう。

「ドミルぅぅぅーーーーーっっ!!!」

バァン!と勢い良くドミルの部屋の扉を開ける。
そこには、愛しのドミル。


「え?魔王様?」

ドミルに抱き着く毛玉…いや、フワがいた。

「今、ちょうど部屋の掃除をしてたにゃ。あはっ」

何故、ドミルに抱き着く必要がある?

「そしたら、うっかり転んじゃって」

何故、更に見せつけるように、ぎゅうぎゅうとドミルにキツく抱き着く?

「ドミルが、僕を優しく抱き留めてくれたにゃ♡」

うっとりとドミルを熱い瞳で見つめるのは、何故?
何故、ドミルはフワを押し返さない?

「フワは、本当におっちょこちょいだな。気を付けろよ?」

優しくフワの髪を撫でて、ドミルが笑いかけている。
我では無く、フワに。

「殺す」

「「え?」」

ブワッと魔力を部屋中、いや城中に膨れ上げさせる。

「ぎゃあっ!!!」

「うぐっっ!?なんだ!これはっ」

二人が吹き飛ばされて、やっと離れる。
ドミルは、なんとか壁際で立っているが、フワは壁に思い切り叩き付けられた。
ざまあみろ。少しだけ、胸がすっとする。
魔法で、ドミルだけを我の元へ引き寄せる。

「わっ?!なんだ?えっ、フィガル?!」

我の腕の中に驚いているドミルを収める。
こんなにエロかわい過ぎるから、あんな毛玉に懐かれるのだ。
こんなに、こんなに…

「魔王様!!これは一体、何を?!」

扉が開いて、メリアが血相を変えて怒鳴り込んで来る。
フワと我らを見比べて、はぁ、と深く溜息をついて頭を抑えている。
頭を抑えたいのは、我の方だ。

「フワ…何度も言っただろう。ドミル殿だけはダメだと」

「うぅ…だって、フワも、ドミルを…」

「ドミル様と呼べ。ドミルは魔王である我が伴侶。お前とは立場が違う。容易に近付いても話しかけても良い相手では無い。二度とドミルに近付くな、毛玉」

床にへばりつきながらも、キッと我を睨む毛玉に怒りしか湧かない。
分かっている。
この程度で部下を消し炭にしていては、この城の使用人が居なくなることは。

「なあ、フィガル?そこまで言わなくとも…」

「なに…?ドミル、まさか、我よりも、その毛玉を」

ワナワナと震える腕が、ドミルを押し潰してしまいそうで自分が恐い。

「はいはい。ちょっと、そこまで。フワは私の方で対処しておきますので。あ、ご安心を。ドミル殿には近寄らないようにしますから」

メリアがフワを泡に包んで、ヒョイと窓の外に放り投げる。

「いやーーーっ!!ドミルぅーーーっ!!!」

遠くへ飛ばされながら、我が伴侶の名を呼び続けている。
メリアが、遠い目をしている。
不快だ。やはり殺すべきだった。

「フワ、大丈夫かな」

しかし、ドミルは、あの毛玉を気にかけている。
殺すとドミルが悲しむ?
でも、あんな毛玉一人居なくなっても。

「はい、魔王様。部屋を片付けて、さっさと二人でシケこんで下さい」

メリアに言われ、さらっと部屋を元通りにして、この忌々しい扉から出る。
ドミルが、不貞を働くなど思ってはいない。
我を何より大切にしてくれて、愛してくれているのだから。
だが、ドミルは、このように美しい。
美しい上に可憐でかわいい。
更には優秀で優しく控え目。
その上、めちゃくちゃエロい。

はっきり言ってしまえば。
こんなドミルに惚れない方が無理なんだぁぁーーーっ!!!!
あの冷血メリアでさえ、ドミルの魅力の前では、ぐらぐら揺れている。
宰相という立場と、我に勝てる見込みが無いという点で手は出さないが、それが無ければ確実に奪うだろう。
魔族は、そういう生き物だ。
つまり、ドミルは常に狙われる立場にある。
そのことを、ドミルにしっかりと教える必要がある。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「フィガル?どうした?難しい顔をして」

ポカンと我を見上げるドミル。
ドミルは、割と鈍いところがある。
そうメリアに言われた意味が、ようやく分かった。

「…ドミル。この城は危険だ。いや、魔国はドミルに取って非常に危険だ」

貞操の、な。

「ああ…そうだな。俺も…分かっては居た」

前言撤回。
やっぱりドミルは賢くて美しい。
全部分かってた。
流石は我が伴侶。好き。
二人の寝室の寝台へと、ゆっくりドミルを寝かせる。

「我はドミルを失いたくない。分かってくれるか?」

「フィガル…そこまで思い詰めていたなんて…俺が浅はかだった。すまない、フィガル。辛い思いをさせていたんだな」

ドミルの潤む瞳と見つめあい、優しく口吻する。

「ドミル…全て我に任せろ」

夜の闇に溶け合う二人。
全ては我ら二人の為に…

カチリ。


「??これは??」

「貞操帯だ。これでドミルの安全が保たれる」

フィガルは、俺には想像もつかない程の魔王としての苦労を重ねている。
それは、この眉間のシワからも分かる。
広大で多くの魔族が住まう魔国。
その全てを背負うフィガルは、常に見えない敵と対峙しているようなものだろう。
ただでさえ大変な魔王としての仕事の上に、俺。
そう、俺という人間の伴侶を持った為に、フィガルの心労を増やしてしまっているのではと、俺は常に考えている。
何とか、フィガルの負担を減らしてやれないか。
そう相談したら、メリア殿は素晴らしい案を提示してくれた。

「…やはり、魔王様の心労を癒やすのは、伴侶たるドミル殿しかおりません。このエプロンには、魔王様を癒やす魔力が籠められています。毎日、これで魔王様に餌付け…ゴホン、あーん♡をして差し上げて下さい。勿論、他に衣服は身に着けず。籠められた魔力が下がりますから」

メリア殿からの提案は、常に的を得ていて流石は宰相と納得せずには居られない。
着替えには、必ずメリア殿が同席して細かく指示を受けるのが少し恥ずかしいが、これもフィガルの為と日々努力を重ねている。

「ほら、乳首は立たせた方が、より魔王様への癒し効果があります。私は触ることが出来ませんから、ご自分で…そうです。上手ですよ?ふふっ、前も勃ち上がって来ましたね。ソコは触らず、そのままです。はぁ、こんなに美しく最高の伴侶をお持ちで、魔王様が羨ましい…」

そんな風に、いつも俺にポジティブな声を掛けて、気持ちも前向きにしてくれるメリア殿は、魔国にとって無くてはならない宰相だと分かる。
俺も、フィガルの為に出来ることは全てやりたい。
だから…



「これで、フィガルの負担が減るなら構わない」

俺の股が、硬い金属で覆われて鍵を掛けられてるけど、それも受け入れようと思う。
丁度、中央に鍵穴があって、そこに鍵を差し込んで、フィガルがカチャカチャと施錠解錠を繰り返している。
何故、これが魔国での安全に結び付くのか、今の俺には分からないけれど。
きっと、強い魔力が籠められているのだろう。
これで、フィガルが俺に割く時間や負担を減らせるならば。

「ドミル…すまない…だが」

フィガルが落ち込んでいる。
ショボンとしながら、俺を見下ろして息が荒い。
顔も紅い。心配だ。

「これ程とは…はあっ、はぁっ、なんて罪深く美しい…」

股に固く装着された貞操帯を、指先でツツツ…と撫でられる。
直接触られていないのに、なんだか変な気分になる。
貞操帯には、何か妖しい効果もあるのだろうか。
そのまま、胸にフィガルの指先が移動し、遂に胸の頂きへ到着する。
フィガルの息が荒すぎる。
ついでに、俺の息も上がっていく。

「んっ、フィガル?大丈夫か?苦しいのか?」

「はぁっ、ドミル…我の愛するドミル…」

フィガルの呟きに、胸がキュウン♡と締め付けられる。
俺もフィガルが愛しい。
俺の全てをフィガルに与えたい。

「フィガル…俺の全てはフィガルのものだ。愛してる」

「…う、う…」

「う?なんだ?」

フィガルが俯いてぷるぷる震えている。
また具合が悪いのだろうか。

「うおおおぉぉぉぉーーーーーっっ!!」

違った。雄叫びだった。
そのまま襲い掛かられた。

「んっ、フィガルっ、ちょ、どした、あんっ」

貪られた。

「ドミルぅっ!!」

唇の全てが覆われて、俺の身体の全てを暴かれて隅々まで愛される。
貞操帯も、いつの間にやら、部屋の隅へ放り投げられた。

「好きだぁぁぁーーーっっ!!」

城中に響く愛の言葉。
俺、愛されてる…♡


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はんっ、んあっ、フィガルぅっ、もぉ、むりいっ、やっ、もっとぉ♡」

気持ち良い。
全部、気持ち良い。
何もかもが気持ち良い。
息を吸うだけでイキそう。

「ドミルっ、最高だっ」

止まること無く揺さぶられながら、夜明けを迎える。
翌日じゃない。
翌々日だ。

「はぁ…もう朝か…仕事に向かわなくては…名残惜しい…」

ずるん、と抜かれてナカから漏れる液体の量が半端ない。
もはや滝のようだ。
フィガルとの愛の結晶がシーツに垂れていくのが惜しいけれど、留めてはいけないとメリア殿に言われている。

「ふぅ…ドミルのナカから全て掻き出さなくてはな…」

フィガルが、俺の尻に顔を寄せる。
指で掻き出される…そう思って身構える。
が、そこは魔王。

「じゅるるるるるぅーーーーーーーっっっ!!!」

俺の穴に唇を付けたと思ったら、自身の吐き出した大量の白濁を吸い上げたのだ。
流石はフィガル。
俺の予想など、遥かに超えて、むしろ空も超えて、ラララ星の彼方。

「ひいっーーーーーーっ!!??」

吸引力が、生半可では無い。流石は魔王。
俺の伴侶は、俺の中身を全て吸い尽くす勢いだ。
死ぬ。イキ死ぬ。が、魔王の伴侶として踏ん張る。

「ふぅ…よし。全て出したから、これで問題は無いはずだ。具合いはどうだ?ドミル。気分は悪く無いか?ん?どうした?」

「はぃ…だいじょぶれふ…」

俺は、もはや、ぐにゃんぐにゃんだった。
あまりの快楽地獄で起き上がれないし、喋れない。

「はっ!!すまない、ドミル!つい、やり過ぎてしまっただろうか!?なんてことだ!神よ、ドミルを救い給え!ああっ、今すぐ回復するからな!」

俺の身体が金色?いや、むしろ白く輝く眩しい光に包まれた。
暖かくて、フィガルの香りがして、落ち着く…

「…んあ?おぉ、治った。とても健康だ。ありがとう、フィガル」

俺は秒で完全回復を果たした。
なんて優しいんだろうか、フィガルは。
俺のことを気遣って、こんなにも…

「ドミル!あぁ、良かった!じゃあ、これ付けるぞ」

カチリ、と金属の音と共に股に、アレが装着された。
そう、アレ。

「…フィガル、これは…その、トイレの時にはどうすれば?」

「問題無い。その時には、必ず我の所へ来れば良い。一緒にトイレへ行って鍵を外すから大丈夫だ」

「うん…フィガル?それでは、フィガルの手間が増えて仕事に支障が出ないだろうか?それに、視察に出かけることだって」

フィガルは、やたらに上機嫌だ。

「大丈夫だ。視察に出かける時にはドミルも連れて行くから。今後、ドミルを一人にすることは絶対に無い。だが、そんなに心配そうな顔をされたら仕事なんて全て放り投げて…」

スパコーン!!とフィガルの後頭部から快音が響く。

「おい、魔王様。とっくに仕事の時間を過ぎてるのですが、これはどういうことですか?」

笑顔が恐いメリアが真後ろに立っていた。
流石は宰相。気配に全く気付かなかった。
元勇者の俺の勘も鈍ったものだ。
これでは、本当に魔国で一人で過ごすことなど不可能だ。
まさに秒で死ぬ。
フィガルの心配は、現実なのだ。

「メリア?!ちょっと待て!ドミルは我の仕事に連れて行くぞ!!絶対!」

「ええ、そうでしょうね。そうだと思ってましたから。問題ありません」

さらっと了承されて、フィガルはポカンとしながら頷く。
頭にハテナを浮かべるフィガル、かわいい。好き。

「あんなことがあったら、こんなことになるとは分かってました」

チラッと俺の股間に装着された物も確認されて、恥ずかしくなって思わず隠す。

「はぁ…かわいい…ゴホン。とにかく、お二方で仕事が出来るように用意してありますので、ご心配無く。ひとまず、こちらへどうぞ」

ササッと着替えて、有能過ぎる宰相殿に連れられて執務室へ向かうと、一つの部屋の真ん中が薄い壁で区切られ、左右に同じ机と椅子が用意されていた。

うん?

扉を開けて、目の前が薄い壁。
その左右に机と椅子。

「こちら側が魔王様、そちら側がドミル殿」

案内されるままに座る。
横を見てもフィガルは見えない。

「あの…?」

が、お互いの声は聞こえる。

「トイレは部屋に付いてますから、一日中、部屋から出る事も無く過ごせます。お食事も、お持ちしました」

「え、このまま…?食事も一人…?」

あまりに寂しくて、見上げるようにメリアを見遣ると、ウッとメリアが顔を抑える。

「くっ…上目遣い…はぁ、仕方ないですね」

食事の間だけという約束で、フィガルのところへ行き、二人で食事を取る。
あ、と思い出した。

「すまない、フィガル。あのエプロンを忘れてしまった」

「え、えぷ…?あっ!いや、その、あれは、我は…」

真っ赤なフィガルに、不安になる。
ストレスで体調が優れないのに、俺は伴侶として、ちゃんとフィガルを癒すことも出来ていない。
俺は、全然、役に立っていないんじゃないだろうか。

「やっぱり、今からでもエプロンを取って…」

「そ、そのままの、ドミルでっ、お願いしますっ!」

真っ赤なフィガルが必死の形相で頭を下げる。
はて、あのエプロンは、フィガルを癒やす為の装備だったはずだが?
まさか…効果が薄かったのか?
いや、メリア殿が用意した物に間違いは無いはず。

「そうか…?分かった。また必要な時にはすぐ装着するから言ってくれ」

ぶんぶんと頭を上下に振るフィガルが、最高にかわいい。
頭がもげそうで心配になるが。

「今のままのドミルが…一番好きだ…愛してる」

「フィガル…俺も、今のままのフィガルが…」

「はい、そこまでー」

すんなりとメリア殿に遮られ、いつの間にやら俺は自分の席に座り、いつの間にやら、仕事も熟していた。
ハッと気付く。
これも魔法か…?流石は宰相殿。抜かり無い。
しばらく書類仕事をこなす室内は静かだ。



「あの…フィガル?その…トイレに…」

「任せろ!ドミル!今すぐ行くぞ」

トイレの度に声を掛けるのが気が引けるけれど、フィガルはやたらに楽しそうで、なんだか俺も嬉しくなる。
メリア殿の目が光っているけれど。
本当に緑色に光っているけれど、気にしないことにした。

「この鍵を開ける瞬間が最高なんだ。そして逆に閉じる時も…はぁ、良い♡」

新しい趣味を見つけたらしいフィガルは、俺の股で目を輝かせて、かわいい。
俺も、危険な魔国で、こんなに楽しく暮らせるなんて、完全に魔王フィガルやメリア殿のお陰だ。

そして、他の沢山の魔族のお陰で、今の生活が保たれてるのだと思えば、魔族に対する恐怖心も自然と和らぐ。
結婚式でも、祝ってくれていたし。

「フィガル…あんまり見られると恥ずかしいな…」

「!!!!…解錠」

いずれ、フィガルの視察に付き添い、魔国のあちらこちらへ行くことになるだろう。
これから先、どのような危険があるか分からないが、きっとフィガルと一緒ならば大丈夫。
そう信じている。

「フィガル…愛してる♡」

「ドミルっ!良いのか?このような場所でっ!」

「良い訳あるかぁぁ!!このバカ魔王がぁ!!!」

またフィガルの後頭部に銅像が直撃した。
流石は魔王フィガル。
ノーダメージだ。格好良い。憧れる。好き。愛してる。

「あぁ!!我の銅像が割れたぁ!メリア!なんてことを!」

「仕事しろって言ってんだよ!すぐに盛りやがって、このクソ魔王様がぁ!!まだ半分も進んで無いだろが!ドミル殿を見習え!!」

本当に、この二人は仲が良い。
この魔国を繁栄させる為、こうして互いに切磋琢磨し治世を揺るぎ無いものへと…

「ドミル!!視察だ!!」

「なんだとっ?!許さんっ!ドミル殿は置いて行けっ!」

「ん?俺はいつでもフィガルと共にあるぞ」

フィガルに抱き締められ、次に目を開けたら全然知らない森の中。
メリア殿も居ない。

「流石はフィガル。移動が一瞬だな」

「ドミルっ、これで二人きりだっ!」

おお、忘れていた。
俺は解錠されたままだった。

「視察は良いのか?」

「ぐふっ…視察は、この後に予定している。まずは、我の魔力をドミルにしっかり、こってり、隅々まで塗り込むのだ。危険だからな」

なるほど。視察の時が最も危険なのだ。
俺は常に考えが甘い。
フィガルは、きちんと先の先まで考えてくれていると言うのに。

「手間を取らせてすまないな、フィガル…どうか、この未熟な伴侶を全てフィガルの魔力で埋め尽くしてくれ」

「はううぅーーーーーーっっ!!」

ブバーーーーッと鼻血を吹き出すフィガルもかわいくて好きだ。
己に治癒魔法を掛けながら、口吻される。

「んっ、フィ、ガルっ」

「全て、ドミルの全ては、我のもの…」

甘い快感が全身に染み渡る。
俺の全てはフィガルのもの。

「そう、俺の全ては、フィガルのものっ」

そこからは凄まじかった。
確かに、俺の全身の隅々までフィガルの魔力が塗り込められた。
足の指先まで、尻のシワの一本まで。
魔力…つまりフィガルの精液を塗り込まれた。

「ドミル…これで絶対に心配は要らない。これでドミルを襲う者など現れないはずだ」

「う…そうか…ありがとう、フィガル」

全身がぬるぬるしてることなど気にしてはいけない。
ナカに出されたモノは、また全て吸い出されフィガルの胃の中だ。
なんて環境に優しいんだ。流石は魔王。
そのまま服を着せられ、視察へ同行する。

「これはこれは、魔王様!!と…えっ?!まさか、そちらは…!!」

そこは、沢山の野菜を育てている畑だった。
気の良さそうな魔族に、少し安心する。

「ああ、勿論、我が伴侶だ。今後、視察には必ず同行するから宜しく頼む」

「へあっ?!こっ、こちらこそっ、お願い致しますっ!!しかし、なぜ、そのように、全身を…」

訝しげに覗き込まれて、思わずフィガルの後ろに隠れる。
しかし、これでは視察に連れて来て貰った意味が無い。

「はっ、初めまして。ドミルだ。若輩ながら魔王フィガルを支えて行く為、同行させてもらっている。伴侶として何か足りない所があれば、ご指導願いたい」

「あわわわっ!!そんな!ドミル様は、そのままで完璧でございますっ!!素晴らしい伴侶様です!!お、お願いしますから、頭を上げて下さいっ!!私の首が飛びます!!」

慌てた様子でお願いされ、ゆっくりと頭を上げると、にこにこ笑顔のフィガルと、顔を真っ青にした魔族。

「では、農作物の撮れ高は正確に報告するように。ドミルが居るから、税は少し下げておく。皆にも伝えよ」

「はっ!!ありがたき幸せ!皆も喜びます!流石は魔王様…とドミル様!ドミル様、万歳!!」

何故だか、泣きながら万歳を叫びながら見送られた。
不思議な魔族もいるものだ。
まあ、人間も様々だから、魔族も様々なのだろう。
お陰で、少し不安が和らいだ。
きっと、フィガルが俺の不安を和らげる為に、さっきの魔族に引き合わせたのだろう。
フィガル、俺の為に…優しい。好き。

「フィガル…ありがとう。好きだ」

「!!!ドミル…我も愛してる♡」

延々と終わらない視察。

魔王城では…

「あんのクソ魔王がぁっ!!!帰って来たら覚えておけよっっ!!今度こそ、ドミル殿と引き離してやるっ!!」

冷静沈着、眉目秀麗の宰相の雄叫びが響き渡っていた。



終わり
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