上 下
5 / 8

謝罪と反省

しおりを挟む
「皆様、お足元の悪い中、お集まり頂き、誠にありがとうございます。昨日は、混乱しておりまして、あのような態度を取ってしまったこと……誠に申し訳ありませんでした!!!」

僕が頭を下げると、一段下から、むせび泣く声が聞こえた。

そう、今日も僕は謝罪なのに、何故か一段高いところから皆を見下ろしている。
トリウスさんに、下に行きたいと言ったけど、それは絶対ダメだと断られた。

「あの、あの……本当にすみませんでした……てっきり、夢だと思って、あんな酷い態度を……」

「ーーっ!!とんでもございませんっっ!!」

一番前でむせび泣いていた男の人が、ガクリと泣き崩れながら叫び始めた。
それと共に、他の人たちも、次々と同じように叫び始める。

「我々にっ!頭を下げるなどっ………なんとお優しいっ!!!」

「どうか、そのように謝らないで下さいっ!!我らの愛し子様っ!!!」

「オゥモォリィ様ーーっっ!!!!」

「あなた様のためなら、命を捧げますっ!!!」

「「「ウォーーーっ!!!!」」」

「え、あの……いや……」

野太い。

謝罪会見を開いてもらっておきながら何だけど、洞窟に響く声が、とにかく野太い。

とりあえず、僕の謝罪は受け入れてもらえたようで、一安心して頭を挙げる。
泣いたり叫んだり、賑やかな人達だな。
命捧げるとか、ちょっと意味が分からないけど。怒られたり嫌われたりしなくって良かったな、と一息つく。だって、この世界で生きて行くみたいだから、僕は。

「オゥモォリィ様、皆のため、このような御言葉を頂きましたこと、心より御礼申し上げます。ゴホン、静粛に!!オゥモォリィ様がお困りだ!!」

流石はトリウスさん。全員が、一気に水を打ったように静かになった。静寂~

「では、オゥモォリィ様、お部屋でお休みになられますか?何かご希望がございましたら、なんなりと」

「えっと……じゃあ、その……村を?見てみたいかなーっと…ダメですか?」

チラ、とトリウスさんを見遣ると、トリウスさんが胸を抑えて倒れていた。

「トリウスさんっ?!!」

僕は慌てて高いところから飛び降りて、トリウスさんの元に駆け付けた。
心臓が悪いのかもしれない!! 

「トリウスさん!!大丈夫ですか!!!」

肩を揺すって大きな声で生死の確認をすると、トリウスさんは目を大きく見開いて、そのまま白目になった。口からは泡を吹いていた。

「と、トリウスさーーーーーんんんんんっっっ!!!!!」

僕はトリウスさんを抱えて大声で叫んだ。
せっかく、少しだけ仲良くなれたのに!!
これからお世話になるはずだったのに!!
こんな、こんな………

「愛し子様の腕の中で死ねたら最高」

「ん?」

今、トリウスさんが喋ったような?
いや、気の所為か。

「柔らかな感触、これが天国か」

「は?」

いや、やっぱりトリウスさんが喋った。
白目のままで、喋ってる。
口の端から泡垂らしながら喋ってる。

こわい。

僕は思わず抱きかかえていたトリウスさんから、ズザッと離れた。
トリウスさんは、思い切り後頭部を床に打ちつけていたが、笑っていた。

そして、ゆっくりと、トリウスさんは立ち上がった。泡が、まだ口の端から流れてるけど。
完全に立ち上がると背が高いから、ものすごく見上げる。首痛い。
と思ったら、優雅に床に跪いた。僕の前に。

「申し訳ありません……オゥモォリィ様の麗しさに、つい我を忘れてしまいました。今後、このようなことは致しませんので、どうかお許し下さい」

まるで、どこかお伽噺のプリンセスにでもなったような錯覚に襲われた。それくらい、胸がときめいた。
イケオジのトリウスさんに。

「は、はひ……大丈夫です……」

「お許し頂けて幸いです。誠にオゥモォリィ様はお優しいですな」

ニッコリと微笑むトリウスさんに、僕は頷くことしか出来なかった。
ほんの少し恐かったことは内緒だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

浮気をしたら、わんこ系彼氏に腹の中を散々洗われた話。

丹砂 (あかさ)
BL
ストーリーなしです! エロ特化の短編としてお読み下さい…。 大切な事なのでもう一度。 エロ特化です! **************************************** 『腸内洗浄』『玩具責め』『お仕置き』 性欲に忠実でモラルが低い恋人に、浮気のお仕置きをするお話しです。 キャプションで危ないな、と思った方はそっと見なかった事にして下さい…。

【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う

R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす 結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇 2度目の人生、異世界転生。 そこは生前自分が読んでいた物語の世界。 しかし自分の配役は悪役令息で? それでもめげずに真面目に生きて35歳。 せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。 気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に! このままじゃ物語通りになってしまう! 早くこいつを家に帰さないと! しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。 「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」 帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。 エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。 逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。 このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。 これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。 「アルフィ、ずっとここに居てくれ」 「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」 媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。 徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。 全8章128話、11月27日に完結します。 なおエロ描写がある話には♡を付けています。 ※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。 感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ

[R18] 転生したらおちんぽ牧場の牛さんになってました♡

ねねこ
BL
転生したら牛になってて、毎日おちんぽミルクを作ってます♡

召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる

KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。 ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。 ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。 性欲悪魔(8人攻め)×人間 エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』

淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂

朝井染両
BL
お久しぶりです! ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。 こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。 合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。 ご飯食べます。

R18、最初から終わってるオレとヤンデレ兄弟

あおい夜
BL
注意! エロです! 男同士のエロです! 主人公は『一応』転生者ですが、ヤバい時に記憶を思い出します。 容赦なく、エロです。 何故か完結してからもお気に入り登録してくれてる人が沢山いたので番外編も作りました。 良かったら読んで下さい。

潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話

ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。 悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。 本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209

色地獄 〜会津藩士の美少年が男娼に身を落として〜 18禁 BL時代小説【完結】

丸井マロ
BL
十四歳の仙千代は、会津藩の大目付の次男で、衆道(男色)の契りを結んだ恋人がいた。 父は派閥争いに巻き込まれて切腹、家は没落し、貧しい暮らしの中で母は病死。 遺児となった仙千代は、江戸芳町の陰間茶屋『川上屋』に売られてしまう。 そこは、美形の少年たちが痛みに耐えながら体を売り、逃げれば凄惨な折檻が待ち受ける苦界だった──。 快楽責め、乳首責め、吊るし、山芋責め、水責めなど、ハードな虐待やSMまがいの痛い描写あり。 失禁、尿舐めの描写はありますが、大スカはありません。 江戸時代の男娼版遊郭を舞台にした、成人向けBL時代小説、約10万字の長編です。 上級武士の子として生まれ育った受けが転落、性奴隷に落ちぶれる話ですが、ざまぁ要素ありのハッピーエンドです。 某所で掲載していたものを、加筆修正した改訂版です。 感想など反応をいただけると励みになり、モチベ維持になります。 よろしくお願いします。 完結しました。

処理中です...