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最後の戦い3/凛の活躍

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 あかねソードを使った目くらまし。
 その威力は強烈で、仲間の視界も奪いかねない。それを避けるために作った合言葉。鷲尾から聞いていたのか、その合言葉が偽物 凛にばれてしまっていて、その目くらましを使おうとした俺の目の前に、一瞬にして移動して来た偽物 凛。

 死を覚悟した俺の視界に何かが飛び込んできた。
 それは決して、異様な速さではなく、普通の人の速度だったが、見事に俺の両手を掴んでいる偽物 凛の右腕をつかみ取った。

 背後からの攻撃と言う事で、偽物 凛は気づかなかったのかも知れない。いや、今この場で敵はあかねだけと言う思いで、油断していたのかも知れない。

「私のコピーのくせに、颯太に手をかけないでよ」

 偽物 凛の背後でそう叫んだのは、あの日、このコロニーで見た濃いブラウンのショートヘアをした眼鏡姿の本物の凛だった。

「はぁぁぁ?」

 偽物 凛が蔑むような口調でそう言いながら、突き刺すような視線を背後にいる凛に向けようとした時だった。

 ごきっ!
 人の骨が砕けるような嫌な音がした。

 ドスッ。
 続けて、何かが何かにぶつかる嫌な音がして、俺の視界から本物の凛の姿も偽物の凛の姿も無くなっていた。
 辺りを見渡して二人の姿を探す。
 偽物 凛は俺から数十mは離れた場所で、自分の右腕を左手で持っていて、その右腕は手首の少し上からだらりとしていて、骨が折られた感じだ。

 凛は?
 そんな思いで凛を探すと、偽物 凛に吹き飛ばされたらしい凛が、道路の脇でぐったりとしていた。
 凛の腕は偽物 凛と同じ腕。破壊力も偽物 凛並みの筈。
 が、凛の本体は普通の人間だ。きっと、ダメージは大きいに違いない。

「凛!」

 そう言って、駆け寄ろうとした俺より先に、俺の父親が凛の所に駆け寄っていた。

「この子は大丈夫だ」

 凛の顔に自分の耳を近づけ、呼吸を感じ取った俺の父親が言った。

「弱虫のくせにぃぃ、よくもやってくれたわねぇぇぇ」
「あなたの相手は私なんだけど」

 あかねが俺の右横にやって来ていた。

「同じく、私も戦うわ」

 あかねのさらに横に、村雨ではなく、あかねソードを手にしたひなたが立った。

「ひなた、俺たちは左右から攻めるぞ」
「分かった」
「あかね。俺たちを襲ってくるあいつを止めてくれ」
「任して、お兄ちゃん」
「と言う訳だ。偽物 凛。
 お前の相手は俺たちだ」
「右手が使えなくても、お前たちぃぃ三人など敵ではないわよぅぅぅ」

 そう言い終えた瞬間、偽物 凛の姿は俺の数m前を後退していた。
 俺を襲いにやって来た偽物 凛をあかねがあかねソードで襲ったんだろう。
 あかねソードをかわすために、後退した偽物 凛。
 そこを襲おうとしているひなたに気づいた偽物 凛が再び姿を消した。
 次に見たのは、ひなたの横であかねソードを構えるあかねと、やはりその数m前で立ち止まている偽物 凛。

 偽物 凛を止められるのはあかねだけ。
 何とか隙を見つけて偽物 凛が止まった瞬間を狙うしかない。
 そのチャンスまで繰り返すしかない。

 あかねが偽物 凛を止める。が、俺もひなたも攻撃できない。
 何度目かの繰り返し。

 あかねが振り下ろしたあかねソード。その手前で止まっている偽物 凛。
 何度か繰り返している内に、偽物 凛はあかねソードの間合いを完全に見切ったようだ。
 立ち止まっている距離がぐっとあかねに近づいていた。

 まずい!
 そう思った瞬間だった。偽物 凛の右足が消えた。

 蹴りがあかねの右手に命中したのか、あかねの右手が後方に吹き飛ぶように動き、あかねソードが空に舞った。
 俺のずっと前にいるあかねは背を向けている。
 ひなたも背を向けていて、偽物 凛だけが俺に正面を向けている。

 今だ。
 あかねソードの光を拡散させた。

 俺たちがいる空間を包み込む強烈な光が収まった時、俺の前にはあかねとひなたの姿しかなかった。

 攻撃をしてこないところを見ると、偽物 凛は視覚を麻痺され、回復するまでどこかに身を潜めているのだろう。
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