エロい村雨くんは天下無双の剣士……なの?

あすか

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妙椿との戦い第1ラウンド

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 目の前に広がる里見の城を村雨くんと八犬士たちと並んで、眺めてみる。
 一回目に信乃ちゃんとこの城を襲った時、城門をはじめ、信乃ちゃんの雷撃でかなりのダメージを与えた。しかも、竜が現れ巨大な猿の姿になった妙椿との激闘まで起こった事で、さらに破壊が進んだはず。
 だと言うのに、今は立派な城に修復されている。
 普通なら、そう簡単には落とせそうにない城って感じ。

 でも、私には妖力使いの八犬士たちがいる。

 対人間や対人間が造った建築物では、ほぼ無敵の力。城なんて構造物はあって無きがごとくに、踏みつぶせるはず。
 この戦いの敵は妙椿ただ一人。
 こいつに力を集中して、攻め続ければいい。

「じゃあ、全員、ガンガン行ってね」
「承知しました」
「お任せ下さい」

 私の言葉に信乃ちゃんたちが力強く答えてくれた。

「自分は行かなくていいんですか?」

 信乃ちゃんたちが私たちに背を向け、里見の城に向かおうとした時、村雨くんが言葉を挟んできた。

「えぇーっと、何の力も無い私が一緒に行っても、足手まといにしかなんないと思うんだけどな」
「そうでしょうか?」

 村雨くんは私の意見に不満らしい。
 でも、信乃ちゃんたちは私の意見に賛成してくれた。

「こちらにいて下さい」
「妙椿は我々に任せてください」
「私たちの戦いに巻き込まれては大変ですので」
「ねっ?」

 かわいく微笑みながら、村雨くんに言ってみた。
 どうよ?
 私の方が正しそうでしょ?
 そんな意味を込めて。

「そうですか。
 では、それで」
「そう言えば、村雨くんは戦わなくていいのかな?」

 ほとんど意地悪気分で言った。

「そうですね。
 私も参戦して、も、も、物の怪を」

 なぜだか、言葉をそこで詰まらせてしまった。
 この子、何なの?
 未だに分からない。

 そんな私たちを置いて、信乃ちゃんたちは妙椿が籠る里見の城に向かっていた。
 遠ざかる後姿。
 城に近づいた時、信乃ちゃんの雷撃が始まった。
 なぜだか、あの時不調だった雷撃は今は元通りになっている。

 炎を上げて、音を立てて崩れ落ちる城門。
 一回目の時と同じ。
 でも、今回は信乃ちゃん一人じゃない。
 八犬士と言う強力なメンバーが揃っている。

 角ちゃんは幻術で、八人の姿を妙椿からくらます事になっているし、誰かが怪我するような事があっても、文ちゃんが怪我を治してくれる。
 当然、妙椿への攻撃も信乃ちゃんだけじゃない。
 荘ちゃんは風による攻撃、道節ちゃんは炎による攻撃、毛野ちゃんは氷による攻撃、親ちゃんは地の力による攻撃、そして現ちゃんは水による攻撃と消火に防御。
 最強の布陣。

 妙椿も強力な敵と感じたのか、すぐにその正体を現した。
 巨大な猿の姿が城の中央に出現し、城門に向かって歩き始めた。
 角ちゃんの幻術で、信乃ちゃんたちの居場所は分かっていないはず。
 きっと、破壊された城門を目指しているに違いない。

 道節ちゃんの攻撃か、そんな動き始めた妙椿が巨大な炎に包まれた。
 全身を炎に包まれては、生きてなんていられない。

「終わったね」

 一気に決着。
 そんな気分で村雨くんに話かけた時、妙椿の全身を覆い尽くしていた炎が消え去った。
 巨大な猿の体が一気に膝をついて、崩れ落ちる。
 そんな思いで見つめていた妙椿は、なぜだか再び歩き始めた。

 まだ生きている!
 今度は妙椿の頭上に信乃ちゃんの雷撃が落ちた。
 轟く雷鳴、煌めく雷光。
 妙椿の動きは止まった。

 立ったままの立ち往生?
 そんな思いで見つめている内に、再び妙椿は動き始めた。

「嘘っ!
 炎でも、雷でも死なないの?」
「妙椿の毛は火鼠の毛と同じです。
 普通の火なら、防ぐことができます。
 雷も無力だと言うのは今知りましたが」
「って、雷もだめ、火もだめで勝てるのかな?」

 ちょっと心配にならずにいられない。

「八犬士を従えた浜路姫なら倒せる。
 そう言い伝えられています」

 なんて、村雨くんの話を聞いている内に、信乃ちゃんたちと妙椿の戦いは乱戦に入ってしまった。

 妙椿を襲う、雷、炎、水、氷に巨大な重力。
 どれも妙椿を仕留める事ができない。

 しかも、幻術が効いていないのか、妙椿は信乃ちゃんたちの方向に向かって、城の柱や壁を投げつけ始めている。

「幻術、効かないの?
 と言うか、前は妙椿も幻術を使ったよね?
 今度は使っていないのかな?」
「そ、そ、それはですね。
 わ、わ、分かりかねます」

 目は泳いで、どもっている。
 なぜにここでどもるの?
 全く村雨くんは理解できない。

「一旦、退かせた方がよくないですか?」

 今度はどもっていない。

「そうね。そうしますか」
「では、そう伝えてきます」

 信乃ちゃんたちの所はすでに妙椿との戦いの真っただ中。危険と隣り合わせ。
 そう言い残して、そんな場所に向かって行く後姿を見ていると、頼りになりそうな気が。

 村雨くんが信乃ちゃんたちのところにたどり着いた時だった。妙椿に対する注意さえ逸らせてしまうほどの禍々しい気を感じ、一気に空は闇に包まれた。

 竜が現れる?
 そんな思いで、空に目を向けた。
 あの時と同じ。
 竜は姿を現したかと思うと、炎を蓄えた大きな口を開けた。
 その先は妙椿。

 また、この絶妙なタイミングで竜が現れて、信乃ちゃんたちではなく、妙椿を襲うなんて。
 あの時と同じで、竜と妙椿の戦いが始まった。
 敵の敵は味方。
 そんな気分で、竜を応援したくなる。
 この機に乗じて、信乃ちゃんたちも。
 なんて、期待しながら、信乃ちゃんたちに目を向けると、村雨くんと一緒にこちらに向かって来ていた。

 撤退、早っ!

「このまま遠くへ逃げますよ」

 村雨くんの声が聞こえてきた。
 完全に逃亡モード。
 妙椿は竜との戦いは続いている。
 あの時と同じで、逃げるチャンスなのは確か。
 私も信乃ちゃんたちに合流し、とりあえずこの場を離れる事にした。
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