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化け猫!
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残る二人の八犬士の内の一人を求めて、今度は山越え。
山越えの道は当然舗装なんてされていなくて、でこぼこの細い上り坂。
舗装された坂を上るよりも足が疲れてしまう。
辺りは木々に覆われた単調な光景がずっと続いているだけじゃなくて、先の光景もよく分からず、あとどれくらい歩けばいいのかも分からない。
その事が疲れを倍増させている気がする。
私の耳に届くのは、地面を踏みしめる足音と、時折聞こえる鳥たちの鳴き声だけの単調な世界。
それを打ち破ったのは一匹の猫。
キジトラが私たちの前を横切って行った。
「猫ちゃんだぁ」
単調さに飽き飽きしていたところに猫ちゃん登場で、思わずそんな声を上げた。
でも、猫ちゃんは私たちにお構いなく、どこかへと姿を消して、二度と目の前には現れなかった。
盛り上がった私の気分は再びげんなり。
「はぁぁぁ。バスでもあればいいんだけどなぁ」
そう思った時、少し離れた先に丸い物が目に入った。
「バス停だ」
その懐かしい形状のものに、思わず声を上げた。
「ばすていとはなんですか?」
信乃ちゃんが訪ねて来た。
「はっ! そうだった。
こんなものがある訳ないよね」
目をこすって、もう一度見てみた。
やはりバス停がある。
「信乃ちゃん。あそこの丸いの見える?」
「はい。
なんでしょうか?
初めて見るものなのですが、あれがそのばすていと言うものなのでしょうか?」
「でも、こんな時代にあるものじゃないんだよね」
私がそう言い終えた時、強い風と眩しい光を感じた。
ヘッドライトをバスがやって来て、バス停の前で停止した。
バスのドアが開くと、会社帰りかのような複数の人が降りて来て、木々の中に消えて行った。
バスのドアは開いたままで、私たちを誘っている。
「乗っちゃいます?」
なぜだか、そんな気分になった時、どこかで誰かが刀を抜くような音が聞こえた。
チャッ!
その瞬間、バスは禍々しい化け猫に姿を変え、ドアと思っていた所は、化け猫の牙が唾液で怪しく濡れた大きく開いた口に変わった。
「何?」
「化け猫です。
下がってください」
そう言ったかと思うと、現ちゃんはその禍々しい化け猫の左目を刀で突き刺した。
「ふんぎゃぁ」
そんな声を上げて、化け猫は小さな猫に姿を変え、木々の中に逃げ込んで行った。
「化け猫がバスに化けていたって事?」
バス停の標識があった場所に目を向けてみた。
そこには枯れた木が一本立っているだけだった。
「現ちゃん、これって、どういう事なのか説明できるかな?」
「私たちはあの化け猫の幻術にはまっていたのでしょう。
あのままでしたら、自ら化け猫の口の中に進んで入って行くところだったかも知れません」
「じゃあ、なんでその幻術が解けたのかな?」
「それは分かりかねます。
あの化け猫自らが解いたと言うことなのかも知れません」
「自分から解くかなぁ。
村雨くんは幻術を使う妙椿に詳しいんだよね?
幻術を破る方法ってあるのかな?」
「そ、そ、それは、それはですね。
わ、わ、私には分かりません」
のけぞってはいないけど、目は泳いでいる。
何か中二病的な大言壮語を吐いている訳でもなく、否定的な発言だと言うのに、どうしてどもる??
変な村雨くんの態度に小首を傾げずにいられない。
「でもね。八犬士が揃えば妙椿を倒せるんだよね?
妙椿の幻術を破る必要があると思うんだけど、違うのかな?」
「げ、げ、幻術をや、や、や。
わ、わ、私には分かりません」
再び私は小首を傾げた。
あの化け猫が本当の姿を現す直前、刀を抜くような音がした気もする。
でも、刀を抜いたところで、幻術を破れる訳なんてないだろうし。
現ちゃんが化け猫に襲い掛かった時、他の八犬士たちも抜刀していた。
きっと、化け猫の正体に気づいたのと同時に誰かが抜いただけに違いない。
そこまでは正しいはず。
でも、化け猫が幻術を解いた? 解かれた? 理由は分からない。
なんだか危機を乗り越えた理由が分からないと言うのが多い気がする。
「ともかく、急ぎましょう。
日が落ちてしまいます」
信乃ちゃんの言葉に空を見上げた。
元々、木々に光を遮られ、薄暗かった空間が少しだけ薄暗さを増し、青く白い光に赤みを帯びさせてきている気がした。
「本当に。急ぎますか」
そう言って、私は歩き始めた。
さっきまでの疲れは、近づいてくる闇と言う恐怖に押し流され、早足気味に歩いていく。
でも山は広かった。
人気のある町にたどり着く前に、空は夜の闇の気配を色濃くしていったため、途中で見つけた岩窟の中に泊まる事にした。
山越えの道は当然舗装なんてされていなくて、でこぼこの細い上り坂。
舗装された坂を上るよりも足が疲れてしまう。
辺りは木々に覆われた単調な光景がずっと続いているだけじゃなくて、先の光景もよく分からず、あとどれくらい歩けばいいのかも分からない。
その事が疲れを倍増させている気がする。
私の耳に届くのは、地面を踏みしめる足音と、時折聞こえる鳥たちの鳴き声だけの単調な世界。
それを打ち破ったのは一匹の猫。
キジトラが私たちの前を横切って行った。
「猫ちゃんだぁ」
単調さに飽き飽きしていたところに猫ちゃん登場で、思わずそんな声を上げた。
でも、猫ちゃんは私たちにお構いなく、どこかへと姿を消して、二度と目の前には現れなかった。
盛り上がった私の気分は再びげんなり。
「はぁぁぁ。バスでもあればいいんだけどなぁ」
そう思った時、少し離れた先に丸い物が目に入った。
「バス停だ」
その懐かしい形状のものに、思わず声を上げた。
「ばすていとはなんですか?」
信乃ちゃんが訪ねて来た。
「はっ! そうだった。
こんなものがある訳ないよね」
目をこすって、もう一度見てみた。
やはりバス停がある。
「信乃ちゃん。あそこの丸いの見える?」
「はい。
なんでしょうか?
初めて見るものなのですが、あれがそのばすていと言うものなのでしょうか?」
「でも、こんな時代にあるものじゃないんだよね」
私がそう言い終えた時、強い風と眩しい光を感じた。
ヘッドライトをバスがやって来て、バス停の前で停止した。
バスのドアが開くと、会社帰りかのような複数の人が降りて来て、木々の中に消えて行った。
バスのドアは開いたままで、私たちを誘っている。
「乗っちゃいます?」
なぜだか、そんな気分になった時、どこかで誰かが刀を抜くような音が聞こえた。
チャッ!
その瞬間、バスは禍々しい化け猫に姿を変え、ドアと思っていた所は、化け猫の牙が唾液で怪しく濡れた大きく開いた口に変わった。
「何?」
「化け猫です。
下がってください」
そう言ったかと思うと、現ちゃんはその禍々しい化け猫の左目を刀で突き刺した。
「ふんぎゃぁ」
そんな声を上げて、化け猫は小さな猫に姿を変え、木々の中に逃げ込んで行った。
「化け猫がバスに化けていたって事?」
バス停の標識があった場所に目を向けてみた。
そこには枯れた木が一本立っているだけだった。
「現ちゃん、これって、どういう事なのか説明できるかな?」
「私たちはあの化け猫の幻術にはまっていたのでしょう。
あのままでしたら、自ら化け猫の口の中に進んで入って行くところだったかも知れません」
「じゃあ、なんでその幻術が解けたのかな?」
「それは分かりかねます。
あの化け猫自らが解いたと言うことなのかも知れません」
「自分から解くかなぁ。
村雨くんは幻術を使う妙椿に詳しいんだよね?
幻術を破る方法ってあるのかな?」
「そ、そ、それは、それはですね。
わ、わ、私には分かりません」
のけぞってはいないけど、目は泳いでいる。
何か中二病的な大言壮語を吐いている訳でもなく、否定的な発言だと言うのに、どうしてどもる??
変な村雨くんの態度に小首を傾げずにいられない。
「でもね。八犬士が揃えば妙椿を倒せるんだよね?
妙椿の幻術を破る必要があると思うんだけど、違うのかな?」
「げ、げ、幻術をや、や、や。
わ、わ、私には分かりません」
再び私は小首を傾げた。
あの化け猫が本当の姿を現す直前、刀を抜くような音がした気もする。
でも、刀を抜いたところで、幻術を破れる訳なんてないだろうし。
現ちゃんが化け猫に襲い掛かった時、他の八犬士たちも抜刀していた。
きっと、化け猫の正体に気づいたのと同時に誰かが抜いただけに違いない。
そこまでは正しいはず。
でも、化け猫が幻術を解いた? 解かれた? 理由は分からない。
なんだか危機を乗り越えた理由が分からないと言うのが多い気がする。
「ともかく、急ぎましょう。
日が落ちてしまいます」
信乃ちゃんの言葉に空を見上げた。
元々、木々に光を遮られ、薄暗かった空間が少しだけ薄暗さを増し、青く白い光に赤みを帯びさせてきている気がした。
「本当に。急ぎますか」
そう言って、私は歩き始めた。
さっきまでの疲れは、近づいてくる闇と言う恐怖に押し流され、早足気味に歩いていく。
でも山は広かった。
人気のある町にたどり着く前に、空は夜の闇の気配を色濃くしていったため、途中で見つけた岩窟の中に泊まる事にした。
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