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関所、無事(?)通過
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呆気にとられている男たちに、お構いなく村雨くんは指を動かし続けている。
男たちの表情は驚きから、嫌悪に向かっている。
村雨くんの右手は胸から離れたかと思うと、お腹の辺りから下に向かい始めた。
この子、子供だと思って油断したかも。
マジで変な知識ばかりあるエロガキ!
村雨くんの手を振り払おうか戸惑っている内に、おあきちゃんが叫んだ!
「村雨殿!
なんでそんな顔して、そんな女を触ってるのよ!」
おあきちゃんの言葉に、男たちが色めき立った。
「村雨じゃと?」
「浜路姫のお付きの者ではないのか!」
「なら、この痴れ者がやはり浜路姫か!」
気づかれてしまったらしい。すべてが水の泡。人前で、あんな事までされたと言うのに。
いえ。現在進行形と言う事に、今更ながらに気づいた。殺気立った男たちに囲まれていると言うのに、村雨くんの手は止まっていないじゃない!
「いい加減にしてよね!」
そう言って、手を振り払った。
「まだ、むちゃくちゃにしてないですけど」
そう言った村雨くんはマジ顔。
「周り見なさいよ」
「お、お、お、お任せください」
私の一喝に、目を泳がせてどもりながら村雨くんが言った。
とりあえず、頼りにならなさそうでも剣を持った男の子。村雨くんの背後に回り込み、村雨くんに盾になってもらった。と、次の瞬間、村雨くんはするりと私の前から消え去り、私の背後に回り込んだ。
な、な、なに?
もしかして、私を盾にして、自分だけ逃げる気?
慌てて振り返ろうとした時、私の耳に初めて聞く音が届けられた。
チャッ!
何の音かなんて、気になったのは一瞬。すぐに、もっと大事な身の安全をどう図るかに思考を向けた時、木の柵の向こうから予想外の人の声がした。
「ささ、何やら関所の中は取り込んでいるようです。
浜路姫、今のうちにここを抜けましょう。」
「分かりました。
急ぎましょう」
なんで?
浜路姫は私のはず。
そう思った私とは違い、男たちは今度はその言葉に色めき立った。
「浜路姫じゃと」
「ひっ捕らえろ!」
私と村雨くんの事など、すっかり忘れて柵の外に駆け出して行った。
それも全員。
「いたぞ! あそこじゃ」
「まさしく、あれぞ浜路姫じゃ!」
「追えぇ、追えぇぇ!」
そんな声と共に、さっきの男たちが駆けて行く足音が遠ざかって行った。さっきの声の主たちが何だったのか分からないまま、誰もいなくなった空間で私は少し乱れた着物を直すと、疲労感満載で地面に座り込んでしまった。そんな私を見下ろしながら、村雨くんが言った。
「ありすの策はうまくいきましたですね。
名前と言い、髪型と言い、むちゃくちゃにする策と言い、さすがです。
最後までいけなかったのが残念ですけど」
「全然うまくいかなかったと思うんですけど。
それに、あれって何なのかなぁ?」
「あれ?」
「どうして、私の胸触ったのかなぁ?」
「だ、だ、だ、だって、むちゃくちゃにして欲しいって言われましたですよね?
昼間からと言うので、ちょっと戸惑いました」
「やっぱ、君、脳みそ腐ってない?
AVとか見た事あるんじゃないよね?」
「えーぶいって、何ですか?」
「もういいです」
そこまで言った後で、ある事がちょっと気になった。
いくら言われたからって、あんな事を平気で姫にするなんて、もしかすると、村雨くんとこの体の持ち主の元の姫は、そんな関係だったのでは?
としたら、これから気をつけないと、いつ村雨くんが私にあんな事やこんな事をしようとしてくるか分からない。
もっとも、この体は私のじゃないんだけど、今は私のだし。
「えぇーっと、あんな事を今までにも、私にしてた?」
本人が聞くのは不自然と分かっていても、改めて村雨くんにも聞いてみた。
「はい」
きっぱり、村雨くんは言ってのけた。
やっぱ、そうだったんだぁ。
大きく息をはき出して、うなだれ気味に目を閉じた時、村雨くんの言葉が続いた。
「いつも、頭の中で」
「はいぃぃ?」
そ、そ、それって……。
私の動揺にもお構いなしなのか、気づいていないのか、村雨くんは平然としている。一方、おあきちゃんはかなりお怒り気味っぽい。
「村雨殿。ありす様には指一本触れないでください!
頭の中でもだめですっ!」
うんうんと頷いてしまう。おあきちゃんは私の事を思ってくれている??
あれ?
さっき私の事を「そんな女」と言ったような??
それも、私が姫だと思われないために違いない。
ともかく、今、危険人物はこの村雨くんだ。
「とにかく、私にあまり近づかないでください」
そう言うと私はさっさと一人歩き始めた。
私の警護は頼りにならない中二病の子供。なだけじゃなくて、その上、エロ知識だけは十分持っている。
も、も、もしかして、私一人の方が安全?
そんな思いさえ抱かずにいられない。
とは言え、この時代の事なんか分からないし、おあきちゃんだけでは頼りないし、村雨くんと八犬士を探す旅をするしか私に選択肢は無かった。
男たちの表情は驚きから、嫌悪に向かっている。
村雨くんの右手は胸から離れたかと思うと、お腹の辺りから下に向かい始めた。
この子、子供だと思って油断したかも。
マジで変な知識ばかりあるエロガキ!
村雨くんの手を振り払おうか戸惑っている内に、おあきちゃんが叫んだ!
「村雨殿!
なんでそんな顔して、そんな女を触ってるのよ!」
おあきちゃんの言葉に、男たちが色めき立った。
「村雨じゃと?」
「浜路姫のお付きの者ではないのか!」
「なら、この痴れ者がやはり浜路姫か!」
気づかれてしまったらしい。すべてが水の泡。人前で、あんな事までされたと言うのに。
いえ。現在進行形と言う事に、今更ながらに気づいた。殺気立った男たちに囲まれていると言うのに、村雨くんの手は止まっていないじゃない!
「いい加減にしてよね!」
そう言って、手を振り払った。
「まだ、むちゃくちゃにしてないですけど」
そう言った村雨くんはマジ顔。
「周り見なさいよ」
「お、お、お、お任せください」
私の一喝に、目を泳がせてどもりながら村雨くんが言った。
とりあえず、頼りにならなさそうでも剣を持った男の子。村雨くんの背後に回り込み、村雨くんに盾になってもらった。と、次の瞬間、村雨くんはするりと私の前から消え去り、私の背後に回り込んだ。
な、な、なに?
もしかして、私を盾にして、自分だけ逃げる気?
慌てて振り返ろうとした時、私の耳に初めて聞く音が届けられた。
チャッ!
何の音かなんて、気になったのは一瞬。すぐに、もっと大事な身の安全をどう図るかに思考を向けた時、木の柵の向こうから予想外の人の声がした。
「ささ、何やら関所の中は取り込んでいるようです。
浜路姫、今のうちにここを抜けましょう。」
「分かりました。
急ぎましょう」
なんで?
浜路姫は私のはず。
そう思った私とは違い、男たちは今度はその言葉に色めき立った。
「浜路姫じゃと」
「ひっ捕らえろ!」
私と村雨くんの事など、すっかり忘れて柵の外に駆け出して行った。
それも全員。
「いたぞ! あそこじゃ」
「まさしく、あれぞ浜路姫じゃ!」
「追えぇ、追えぇぇ!」
そんな声と共に、さっきの男たちが駆けて行く足音が遠ざかって行った。さっきの声の主たちが何だったのか分からないまま、誰もいなくなった空間で私は少し乱れた着物を直すと、疲労感満載で地面に座り込んでしまった。そんな私を見下ろしながら、村雨くんが言った。
「ありすの策はうまくいきましたですね。
名前と言い、髪型と言い、むちゃくちゃにする策と言い、さすがです。
最後までいけなかったのが残念ですけど」
「全然うまくいかなかったと思うんですけど。
それに、あれって何なのかなぁ?」
「あれ?」
「どうして、私の胸触ったのかなぁ?」
「だ、だ、だ、だって、むちゃくちゃにして欲しいって言われましたですよね?
昼間からと言うので、ちょっと戸惑いました」
「やっぱ、君、脳みそ腐ってない?
AVとか見た事あるんじゃないよね?」
「えーぶいって、何ですか?」
「もういいです」
そこまで言った後で、ある事がちょっと気になった。
いくら言われたからって、あんな事を平気で姫にするなんて、もしかすると、村雨くんとこの体の持ち主の元の姫は、そんな関係だったのでは?
としたら、これから気をつけないと、いつ村雨くんが私にあんな事やこんな事をしようとしてくるか分からない。
もっとも、この体は私のじゃないんだけど、今は私のだし。
「えぇーっと、あんな事を今までにも、私にしてた?」
本人が聞くのは不自然と分かっていても、改めて村雨くんにも聞いてみた。
「はい」
きっぱり、村雨くんは言ってのけた。
やっぱ、そうだったんだぁ。
大きく息をはき出して、うなだれ気味に目を閉じた時、村雨くんの言葉が続いた。
「いつも、頭の中で」
「はいぃぃ?」
そ、そ、それって……。
私の動揺にもお構いなしなのか、気づいていないのか、村雨くんは平然としている。一方、おあきちゃんはかなりお怒り気味っぽい。
「村雨殿。ありす様には指一本触れないでください!
頭の中でもだめですっ!」
うんうんと頷いてしまう。おあきちゃんは私の事を思ってくれている??
あれ?
さっき私の事を「そんな女」と言ったような??
それも、私が姫だと思われないために違いない。
ともかく、今、危険人物はこの村雨くんだ。
「とにかく、私にあまり近づかないでください」
そう言うと私はさっさと一人歩き始めた。
私の警護は頼りにならない中二病の子供。なだけじゃなくて、その上、エロ知識だけは十分持っている。
も、も、もしかして、私一人の方が安全?
そんな思いさえ抱かずにいられない。
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