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目が覚めてみると
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こくり。と、首が前に傾いて、私の意識は一気に覚醒に向かった。
居眠りしちゃった。
居眠りしていいシチュエーションだったのかな?
居眠り前の記憶が定かじゃないので、今の自分が置かれている状況を確認しようと、周りに目を向けた。
部屋は四隅にある木の柱に支えられた造り。
部屋の三方は障子と襖で、見慣れたアルミサッシの窓は無い。
背後に目を向けると、見慣れたビニールクロスじゃなくって、塗り壁っぽい。
純和風の部屋に私は一人でいるらしい。
なんで?
これって、夢なの?
もう一度部屋の中を見渡して調度品に目を向けてみると、ろうそくたてのようなものが部屋の隅に置かれているのに気が付いた。
照明にろうそく?
天井に目を向けると、木の板でできた天井には、照明装置が全くない。
壁にもう一度目を向けて、スイッチやコンセントを探したけど、やはりない。
夢でなかったら、昔の時代の世界に転生っぽい。
深呼吸して、記憶をまさぐってみる。
いじめられている子犬を助けたら、その子犬が化け物で、私食べられちゃったんだった。
と言う事は、ここはあの世?
ちょっと、自分のほっぺを抓ってみる。
痛い!
死んでからも痛いのかな?
針山地獄とか言うもんね。痛くなかったら、そんなもの怖い訳ないし、きっと死んでからも痛いんだぁ。
自分が出した答えに、一人納得の私。
じゃあ、ここはあの世?
どうやら、私は犬の化け物に食べられて、死んでしまったらしい。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい」
両手を合わせ、両親に先に死んでしまった事を詫びていると、障子がするすると開いて、若い男の子が顔を覗かせた。
「いかがされましたか、浜路姫」
「えぇーっと」
そう言って、間をつなぎながら、私はその男の子を観察した。
身に着けている衣装は昔の時代の人が着ていそうな服。髪型は丁髷風だけど、頭のてっぺんは髪を剃ってはいない。
あの世って、日本の中世みたいなものなのかな?
現状を理解できず小首を傾げていると、男の子が心配そうな表情で言葉を続けた。
「姫様、どこか具合が悪いのでしょうか?」
ひめ?
ひめって、姫?
普通の女子高生から、死んで姫にランクアップって事?
何それ?
私はようやく、自分の身なりに目を向けた。
金蘭豪奢な着物に身を包まれてなんかいないけど、俗に言う着物姿。
姫のイメージからは遠いけど、私自身も昔の人の着物を身に着けている。
その時、ふと思った。
目に映る手が私の手じゃない気がしてならない。
もしかして、この体も私んじゃない?
もう一度、辺りを見渡してみる。
部屋の片隅に丸い手鏡らしきものが置いてあることに気づき、慌ててそこに走り寄って、鏡に映る自分の姿を見た。
細面。私は元々はもう少しふっくらとした輪郭だった。
ぱっちりとした目も、目じりの下がり具合が違うし、鼻の高さも違う。
誰、これ?
知らない人の顔。
そう思った時、この解を教えてくれそうな人がいる事を思い出した。
私は振り返り、障子の向こうで心配げな表情で私を見つめる男の子に手招きした。
「君、入って来てくれないかな」
「私のような者が姫様のお部屋に立ち入る事は許されておりません」
「そんな固い事言っている場合じゃないんだよね」
「は、は、は、入っていいんですか!
大丈夫です。固いです!」
「何の事?
人に聞かれたくないんだよね。
だから、こっちに来て欲しいんだけど」
「もう固いので、それがばれてしまいます!」
意味不明な事を言って男の子はその場から動きそうにないので、立ち上がって、男の子のところまで行くと、その腕をがしっと掴み、そのついでに部屋の外の景色を確認した。
木で出来た廊下。廊下に沿って造られた庭。
大河ドラマかなんかに出てきそうな昔の屋敷。
とにかく、ここが元の世界でない事だけは確実。
力を込めてぐいっと男の子を引っ張ると、あっさりと立ち上がった。
「分かりました。
入れさせていただきます」
なんか日本語変? と思いながら、部屋の奥に連れ込んでいく。
「姫様の方から夜這いを求められるなんて。
いえ、今は昼ですから、昼這いでしょうか?」
「はい?
そんなつもりは無いんだけどね」
そう言いながら、よく見ると股間部分が盛り上がっているじゃない。
固くなっているって、この事だったんかい!
この子、もしかしてエロガキ?
あまり感情を出さない私でも、眉間に皺が寄ってしまった。
「大体、どうしたら、そんな発想になる訳?
なんで、私がそんな事のために、あなたをここに呼び入れようとしているなんて、思う訳?」
「人に聞かれたくないと言うので、てっきりあの時の声を聞かれたくないのかと」
「えぇーっと。君、脳みそ腐ってません?」
どうやら、私はとんでもない男の子を部屋に引き入れたのかも知れない……。
居眠りしちゃった。
居眠りしていいシチュエーションだったのかな?
居眠り前の記憶が定かじゃないので、今の自分が置かれている状況を確認しようと、周りに目を向けた。
部屋は四隅にある木の柱に支えられた造り。
部屋の三方は障子と襖で、見慣れたアルミサッシの窓は無い。
背後に目を向けると、見慣れたビニールクロスじゃなくって、塗り壁っぽい。
純和風の部屋に私は一人でいるらしい。
なんで?
これって、夢なの?
もう一度部屋の中を見渡して調度品に目を向けてみると、ろうそくたてのようなものが部屋の隅に置かれているのに気が付いた。
照明にろうそく?
天井に目を向けると、木の板でできた天井には、照明装置が全くない。
壁にもう一度目を向けて、スイッチやコンセントを探したけど、やはりない。
夢でなかったら、昔の時代の世界に転生っぽい。
深呼吸して、記憶をまさぐってみる。
いじめられている子犬を助けたら、その子犬が化け物で、私食べられちゃったんだった。
と言う事は、ここはあの世?
ちょっと、自分のほっぺを抓ってみる。
痛い!
死んでからも痛いのかな?
針山地獄とか言うもんね。痛くなかったら、そんなもの怖い訳ないし、きっと死んでからも痛いんだぁ。
自分が出した答えに、一人納得の私。
じゃあ、ここはあの世?
どうやら、私は犬の化け物に食べられて、死んでしまったらしい。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい」
両手を合わせ、両親に先に死んでしまった事を詫びていると、障子がするすると開いて、若い男の子が顔を覗かせた。
「いかがされましたか、浜路姫」
「えぇーっと」
そう言って、間をつなぎながら、私はその男の子を観察した。
身に着けている衣装は昔の時代の人が着ていそうな服。髪型は丁髷風だけど、頭のてっぺんは髪を剃ってはいない。
あの世って、日本の中世みたいなものなのかな?
現状を理解できず小首を傾げていると、男の子が心配そうな表情で言葉を続けた。
「姫様、どこか具合が悪いのでしょうか?」
ひめ?
ひめって、姫?
普通の女子高生から、死んで姫にランクアップって事?
何それ?
私はようやく、自分の身なりに目を向けた。
金蘭豪奢な着物に身を包まれてなんかいないけど、俗に言う着物姿。
姫のイメージからは遠いけど、私自身も昔の人の着物を身に着けている。
その時、ふと思った。
目に映る手が私の手じゃない気がしてならない。
もしかして、この体も私んじゃない?
もう一度、辺りを見渡してみる。
部屋の片隅に丸い手鏡らしきものが置いてあることに気づき、慌ててそこに走り寄って、鏡に映る自分の姿を見た。
細面。私は元々はもう少しふっくらとした輪郭だった。
ぱっちりとした目も、目じりの下がり具合が違うし、鼻の高さも違う。
誰、これ?
知らない人の顔。
そう思った時、この解を教えてくれそうな人がいる事を思い出した。
私は振り返り、障子の向こうで心配げな表情で私を見つめる男の子に手招きした。
「君、入って来てくれないかな」
「私のような者が姫様のお部屋に立ち入る事は許されておりません」
「そんな固い事言っている場合じゃないんだよね」
「は、は、は、入っていいんですか!
大丈夫です。固いです!」
「何の事?
人に聞かれたくないんだよね。
だから、こっちに来て欲しいんだけど」
「もう固いので、それがばれてしまいます!」
意味不明な事を言って男の子はその場から動きそうにないので、立ち上がって、男の子のところまで行くと、その腕をがしっと掴み、そのついでに部屋の外の景色を確認した。
木で出来た廊下。廊下に沿って造られた庭。
大河ドラマかなんかに出てきそうな昔の屋敷。
とにかく、ここが元の世界でない事だけは確実。
力を込めてぐいっと男の子を引っ張ると、あっさりと立ち上がった。
「分かりました。
入れさせていただきます」
なんか日本語変? と思いながら、部屋の奥に連れ込んでいく。
「姫様の方から夜這いを求められるなんて。
いえ、今は昼ですから、昼這いでしょうか?」
「はい?
そんなつもりは無いんだけどね」
そう言いながら、よく見ると股間部分が盛り上がっているじゃない。
固くなっているって、この事だったんかい!
この子、もしかしてエロガキ?
あまり感情を出さない私でも、眉間に皺が寄ってしまった。
「大体、どうしたら、そんな発想になる訳?
なんで、私がそんな事のために、あなたをここに呼び入れようとしているなんて、思う訳?」
「人に聞かれたくないと言うので、てっきりあの時の声を聞かれたくないのかと」
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