両片想いのループの中で

静穂

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sideS 2-2

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いつも「おやすみ」のメールが来ていた、10時。
近くにいる時は、こんな時間に寝ないだろ、と思いながら「おやすみ」と返信してた。

離れた今は、10時が近くなると落ち着かなくなった。
今日は来るのか…あぁ、やっぱり来ないか…
来ないと分かっていながら、女々しく待つ自分に嫌気が差した。
それでも、10時にケータイ触る事が辞められなくて。
一人の部屋に着くと何よりも先にメールの確認をした。

メールが来なくなって、21日目。
その日は地元の公立高校の入学式の日だった。
入学おめでとう、そう華宛のメールに打って、それ以降に言葉が続かない事に気付いた。
仕事の話は情報解禁迄出来ないし、ここの友人は芸能関係の仕事してるから、大っぴらに出来ない。
一人暮らしの寂しさは、プライドが邪魔して書けなかった。
…大人になった今なら、そんなちっぽけなプライドなんてかなぐり捨てて、甘い言葉を言えるのに。

そうして、離れて1ヶ月が経とうとした時。
同じチームだった涼からメールが入った。

久しぶり!から始まるそのメールには、華と同じ高校に通っている事や、偶然同じクラスになった事等が涼らしい軽やかな文体で綴られていた。

そして、涼が隠し撮ったと思われる、笑顔の華の写真が添付されていた。

…俺じゃない男に笑いかける、華が。

心臓を鷲掴みにされるってこんな事を言うんだ。
初めて、俺の知らない男に笑いかける華を見た。
きっとずっと、俺にだけ向けられてた笑顔。
それを今、他の男にあげるのか…?

怒りと悲しみのごちゃ混ぜになった感情のまま、涼に電話を掛けようとした。

アイツ誰だよ?
華はアイツの事好きなのか?

…あんな別れ方した俺が言えるのか?
そう思いなおして、辛うじて止めた。

問いただして、何になる?

近くにいる事も、将来を約束する事も出来ない。
待っていて、なんて言えないからあんな風に卑怯な別れ方をしたのに。

遅かれ早かれ、約束をしなかった俺達の間には必ず訪れたはずの展開。

俺に向けていた笑顔も、艶々な髪も、子供みたいな手も。

いつか他の男のものになるなんて、あの時ちょっと考えたら分かったはずだった。

それでも、会えなくても。
俺を忘れないでいて欲しかった。
忘れさせない為に、来たオファーは全部受けた。テレビや雑誌で見る機会が増えれば、忘れる暇は無いと思った。
俺は我儘だから、楽しくなり始めた仕事も華も、両方欲しかったんだ。
甘えさせてるつもりだったけど、甘えてるのは俺の方で。
子供みたいに泣き喚く事も出来ず、八方塞がりの中、ただ光を探してもがいていた。










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