両片想いのループの中で

静穂

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sideY 1

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sideY 1

ずっと憧れていた。

見た目も性格も正反対なのに、二人の間に流れる、なんとも言えないあの空気。

いつも笑顔の彼の体調不良に一番最初に気付くのは彼女だし、ポーカーフェイス気味の彼女を笑わせるのは彼。

産まれた時から一緒、なんて、二次元の話だと思ってた。
物心がついて、性認識がされる頃には、異性の幼馴染なんて距離が出来る物だと思っていたし、実際多くの幼馴染達はその道を歩んでいると思う。

だから、あんなに男女で一緒にいるのに、付き合ってないとか
可愛い嫉妬からいよいよ付き合い始めるとか、
付き合い始めたと思ったら、いつまで経っても初心っぽいままとか。
いちいち私の心を刺激してくれた。

だから、何としても仲良くなりたくて。
でも、派手な私と大人しい華ちゃんの接点は中々無くて。
話せたとしても、仲良くなる段階迄は進めなくて、モヤモヤしていた、そんな時。

二人が地元でも有名な進学校を志望校にする事を聞いた。
女子の制服は夏服と冬服とで大きくイメージが変わるから、凄く人気のある高校。

…チャンス

その日から、死に物狂いで勉強した。
毎日巻いてた髪の毛も、一括りにして。
最初は自分の親にさえバカにされて。
無理だよ、何言ってんの?
そう先生からも言われて。
悔しいけど、今まで大して勉強なんてしなかったから、しょうがない。
バカにされる度に、絶対あの二人と一緒の学生生活を送るんだ!って励ましてた。

そんな風に頑張っていたから、夏の間に翔がテレビに出始めた頃から、二人の間に漂う微妙な空気だったり、肝心の受験日に翔が居ない事だったりを見事にスルーしてしまっていた。

卒業式の日。
式典が終わって教室に向かう間に翔に呼び止められて。
「お前、K校行くんだよね?お願いがあるんだけど」って言われた時はびっくりした。
普段、目立つグループにいる翔だけど、自分から女子に話しかけるなんてしなかったから。

「受かってればね。」
そう言うと、
「お前、めっちゃ頑張ってたから大丈夫だろ。…でさぁ、ここからK高受けたのって俺が知る限り、華とお前だけで…アイツ、人見知りだから、最初のうちは気にかけてやってくれないかな?」って。
「翔もいるなら今まで通りなんだからわざわざ言わなくても良くない?」って返すと、
「俺、東京行くんだよ。だから今まで通りにはいかない。」


そんな事…
…いや、予想してたかも。
夏からテレビとか雑誌で翔を見る機会が増えた。
元々目立つ存在だったけど、そこから怒涛の如く人気になった。
校内だけで無く、校外でも声を掛けられていたし、校門には毎日の様に翔目当ての女の子が待っていた。

翔は翔なりに将来を考えての判断だったのかも知れないけど、華ちゃんはどうなんだろう…

不安な気持ちを抱えたまま、私は無事に合格した。

「はなちゃーーん!!」
合格発表の日、門をくぐってすぐの所で、華ちゃんを発見した。

「掲示板、見た?」
「あっ、見ました。#由夏__ゆな_#さんは?」
「見た!受かってた!華ちゃんも受かってたでしょ?また3年一緒だね!仲良くしよ?」
「あっ、宜しくお願いします」
「ねぇー、同級生なんだから、敬語は無し!私も華って呼ぶから、華も由夏って呼んで」
「うん。宜しくね、由夏」

中学からの念願のお友達になれた瞬間!
「お友達記念に写真撮ろう!」

撮った写真は、やっぱり翔と一緒にいる時とは比べ物にならなくて、悔しかった。
無理矢理、連絡先を交換して、煩くずっと喋り続けて、それだけでは足りなくて帰りにファストフードに誘った。
同じクラスかなぁ?とか、カッコいい先生いるかなぁ?とかどうでもいい話をし尽くして。
ちょっと空いた、間。

「聞きたい事、あるでしょ?」そう華が言った。
「…うん。でも、話したくなった頃で良いよ。それ抜きで華と仲良くなりたかったから」
そう言うと、ふわっと笑ってくれて、聞いて欲しいと言ってきた。
話の内容的に、ファストフード店ではマズイ気がしたから、カラオケに移動して。
そこで、二人の別れの様子を聞いた。

…あのヤロウっっ!

華を大切に思っていながら、キチンと言葉にしなかった翔に腹が立った。

「華、いっぱい出会おう!楽しい高校生活にしよう!」

二人の出会いに思いを馳せて、高校生活をスタートさせた。
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