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神代怜奈
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「待っていたわ、怜人君」
妹の見舞いを終えて病院の入り口を出たところで唐突に後ろから声をかけられる
風にたなびく赤茶色の長髪に透き通るような白い肌、そして日本人には珍しい炎のように赤い瞳、
そこには全体的に高校生とは思えぬ大人びた風貌の女性が制服姿ですらりとした長足を見せつけるように立っていた。
彼女は俺の妹(千尋)の担当医である神代医師の妹で高校の同期でもある神代怜奈である
「ああ、神代さん……お久しぶりです。妹がお世話になっています」
俺は深々と頭を下げてお辞儀する。彼女は定期的に妹の話し相手をしてくれていて、妹をいつも楽しませてくれている。やはり女子同士だからこそ盛り上がる話などがあるのだろう。そんな感じでもう2年近く妹がお世話になっており、正直俺は頭が上がらない。
「はぁ……怜人君、あなたはまだ苗字呼びなの?兄さんも言っていたでしょ、紛らわしいから下の名前で気軽に呼びなさいって。」
呆れたのか残念がれたのか、怜奈はくるくると髪を指で巻きながらじっと俺の目を見てくる
「いや、流石にまだそれは早いかなって……」
俺は照れくさそうに眼を逸らす。正直神代医師の言葉をそのままの意味で捉えるのは流石に違うと思っている。
その上彼女は同じ高校で学年トップを争う程の頭脳を持つ。俺からすればもう雲の上の存在なのだ
「まあいいわ、それよりもこれから時間はあるかしら?」
「え?」
俺は今、神代怜奈とともにショッピングモールにいる
断じてデートでは無い、妹の誕生日プレゼントを買いに来たのだ。
「さて、去年は千尋ちゃんの好きなアニメのフィギアにしたけれど、今年はどうすれば良いと思う?」
怜奈が何かを推理するような動作とともに横目で俺を見る
「そうですね……入院中に邪魔にならないもの……やっぱり飾れるものとかで、おもちゃかぬいぐるみあたりが妥当……かな?」
「そうね、では探しましょう」
俺と怜奈は決して仲が良いわけでは無い、ただ妹を通して関わっている、そんな感じである。だから会話は事務的だし、笑いが起きることも無い。
だがそれでお互い気まずいと感じることも無いためいつまでもこんな距離感なのだ(俺が歩み寄ってないことも原因かもしれないが……)
「これなんてどうかしら?」
とあるおもちゃ屋の前で怜奈が急に足を止めて一つのぬいぐるみに駆け寄る。
彼女の目の前には本物そっくりに作られたウサギのぬいぐるみ。
モフモフした茶色の毛並みに、クリクリとした小さな黒目、耳のさわり心地は俺も癖になりそうだ
「とても可愛いな、きっと千尋ちゃんも喜ぶよ、どう思う?」
そう聞きながら怜奈は目をキラキラさせてぬいぐるみをショッピングカートに丁寧に入れている。既に買う気満々のようだ
「うーん、俺はこっちかな」
俺はその反対側の棚にきれいに陳列されているペンギンのぬいぐるみを手に取ると、怜奈に見せる。
ずんぐりむっくりとした体形、その大きさは先ほどのウサギにぬいぐるみの倍はある。
「これなら抱き心地も最高だし、寝る時も使えるはず」
俺はそういうとウサギの隣にペンギンを突っ込む
カートの中に二つのぬいぐるみ、傍から見ればぬいぐるみ好きのカップルに見えるだろう
「ペンギン……そういえば千尋ちゃん昔いった水族館でペンギンは一番好きだったそうね。」
怜奈が俺の知らない情報を平然と呟く
「え?そうなの??」
俺は思わず驚いた声を上げる
「ええ、前に好きな動物の話をした時に言っていたの、お父さんと君と三人で行った水族館の思い出を…その時に水に浮くペンギンを見て好きになったそうよ」
(まじか、全然知らなかった……というか懐かしいな、親父が殉職する半年前だっけか。)
「神代さんと妹は良く話すんですね、俺の時はそこまで話さないのに」
「まあ、千尋ちゃんは君に心配をかけたくないようですし、だから過去の思い出話は極力避けているそうよ」
またもとんでもない事実を言われた、一体彼女はどこまで妹のことを知っているのだろうか?
(ああ、そうか……そんな気遣いされてたのか。てか俺そんなに心配されてるの!?)
困惑する俺をよそに怜奈はいくつかぬいぐるみを詰めると、俺に万札を渡し、会計をするように言う。
そして会計の列に並ぶ俺を離れたところから監視するように見ては時折微笑しながら写真を撮ってくる。
(妹に送る気だな)
周囲には女性客ばかり、俺は羞恥心に苛まれながら会計を待つのだった
妹の見舞いを終えて病院の入り口を出たところで唐突に後ろから声をかけられる
風にたなびく赤茶色の長髪に透き通るような白い肌、そして日本人には珍しい炎のように赤い瞳、
そこには全体的に高校生とは思えぬ大人びた風貌の女性が制服姿ですらりとした長足を見せつけるように立っていた。
彼女は俺の妹(千尋)の担当医である神代医師の妹で高校の同期でもある神代怜奈である
「ああ、神代さん……お久しぶりです。妹がお世話になっています」
俺は深々と頭を下げてお辞儀する。彼女は定期的に妹の話し相手をしてくれていて、妹をいつも楽しませてくれている。やはり女子同士だからこそ盛り上がる話などがあるのだろう。そんな感じでもう2年近く妹がお世話になっており、正直俺は頭が上がらない。
「はぁ……怜人君、あなたはまだ苗字呼びなの?兄さんも言っていたでしょ、紛らわしいから下の名前で気軽に呼びなさいって。」
呆れたのか残念がれたのか、怜奈はくるくると髪を指で巻きながらじっと俺の目を見てくる
「いや、流石にまだそれは早いかなって……」
俺は照れくさそうに眼を逸らす。正直神代医師の言葉をそのままの意味で捉えるのは流石に違うと思っている。
その上彼女は同じ高校で学年トップを争う程の頭脳を持つ。俺からすればもう雲の上の存在なのだ
「まあいいわ、それよりもこれから時間はあるかしら?」
「え?」
俺は今、神代怜奈とともにショッピングモールにいる
断じてデートでは無い、妹の誕生日プレゼントを買いに来たのだ。
「さて、去年は千尋ちゃんの好きなアニメのフィギアにしたけれど、今年はどうすれば良いと思う?」
怜奈が何かを推理するような動作とともに横目で俺を見る
「そうですね……入院中に邪魔にならないもの……やっぱり飾れるものとかで、おもちゃかぬいぐるみあたりが妥当……かな?」
「そうね、では探しましょう」
俺と怜奈は決して仲が良いわけでは無い、ただ妹を通して関わっている、そんな感じである。だから会話は事務的だし、笑いが起きることも無い。
だがそれでお互い気まずいと感じることも無いためいつまでもこんな距離感なのだ(俺が歩み寄ってないことも原因かもしれないが……)
「これなんてどうかしら?」
とあるおもちゃ屋の前で怜奈が急に足を止めて一つのぬいぐるみに駆け寄る。
彼女の目の前には本物そっくりに作られたウサギのぬいぐるみ。
モフモフした茶色の毛並みに、クリクリとした小さな黒目、耳のさわり心地は俺も癖になりそうだ
「とても可愛いな、きっと千尋ちゃんも喜ぶよ、どう思う?」
そう聞きながら怜奈は目をキラキラさせてぬいぐるみをショッピングカートに丁寧に入れている。既に買う気満々のようだ
「うーん、俺はこっちかな」
俺はその反対側の棚にきれいに陳列されているペンギンのぬいぐるみを手に取ると、怜奈に見せる。
ずんぐりむっくりとした体形、その大きさは先ほどのウサギにぬいぐるみの倍はある。
「これなら抱き心地も最高だし、寝る時も使えるはず」
俺はそういうとウサギの隣にペンギンを突っ込む
カートの中に二つのぬいぐるみ、傍から見ればぬいぐるみ好きのカップルに見えるだろう
「ペンギン……そういえば千尋ちゃん昔いった水族館でペンギンは一番好きだったそうね。」
怜奈が俺の知らない情報を平然と呟く
「え?そうなの??」
俺は思わず驚いた声を上げる
「ええ、前に好きな動物の話をした時に言っていたの、お父さんと君と三人で行った水族館の思い出を…その時に水に浮くペンギンを見て好きになったそうよ」
(まじか、全然知らなかった……というか懐かしいな、親父が殉職する半年前だっけか。)
「神代さんと妹は良く話すんですね、俺の時はそこまで話さないのに」
「まあ、千尋ちゃんは君に心配をかけたくないようですし、だから過去の思い出話は極力避けているそうよ」
またもとんでもない事実を言われた、一体彼女はどこまで妹のことを知っているのだろうか?
(ああ、そうか……そんな気遣いされてたのか。てか俺そんなに心配されてるの!?)
困惑する俺をよそに怜奈はいくつかぬいぐるみを詰めると、俺に万札を渡し、会計をするように言う。
そして会計の列に並ぶ俺を離れたところから監視するように見ては時折微笑しながら写真を撮ってくる。
(妹に送る気だな)
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