パラメーター 命の選択

菊屋

文字の大きさ
上 下
1 / 6

理不尽な現実

しおりを挟む
何故人はこうも不平等なのだろうか

テスト結果をまとめた紙を前に俺は常々思う。

母は妹の出産後亡くなり、父は去年殉職、残った唯一の家族である小6の妹は原因不明の病で入院

そして俺、雨宮怜人は公立進学校の落ちこぼれ高校生……

家賃の安いアパートで父と母が残した保険金や遺族への補償金、そしてバイト漬けの生活で何とか生活はできているし、時間を見つけて勉強し、部活も入り人並みの高校生活はできていると思っている。しかし……

「クラス順位34/40……だめだ、徐々に落ちてきている。バイトもだいぶ減らしたのに……」

1年生の時は真ん中だったクラスの順位も2年に上がってからは落ち続けている。

進学校ゆえに早い授業、テストは基礎問題込みの応用問題が半分と残りは大学の二次試験の入試問題がそのまま出る。はっきり言って俺にはレベルが高すぎるのだ。

だから俺は毎回基礎問題を解き、応用問題で部分点を取ることで赤点は回避しているが……

「流石にここまで順位が下がるともっと勉強しないと取り戻せないな……」

バイトに日々の家事、妹の見舞い、部活……もうこれ以上は睡眠時間を削るしか勉強時間は取れない状態

しかしテスト期間に徹夜はもうやっている、これ以上すると今度は俺が死にかねない。2徹した時は酷い頭痛と吐き気に苦しめられたこともある

……俺が天才だったらもうちょっと要領よくできたのだろうか?

ふとそんなことをよく考える



俺がそんな考え事をしていると、黒板では先生がテスト結果の振り返りを始める

「えー、今回のテスト、クラス平均は8クラス中4位だ!だが、めでたいことにクラス1位は学年1位だ!おめでとう神代怜奈!」

先生の声とともに神代怜奈にクラスの視線が一斉に向き、同時に大きな拍手が起こる。

去年も同じクラスだった神代怜奈、今年も俺は彼女の素晴らしい実績にかつてのプライドをボロボロにされるのだろう。

というのも、中学までは自分は頭が良いと思っていた、しかし、高校に入ってからは大学入試問題をものともせずに解き、常に得意科目では9割叩き出すクラスの友人がいたり、神代怜奈のように全教科でそれを成し遂げる化け物もいる。

そんな彼らを見ていると、自分はどれだけ勉強しても追いつけないのだと2年にして自覚してしまった。

「はあ……まあしゃあない、今日は妹の見舞いに行くかな」

テストの結果は良くはない、しかしそれでも妹の見舞いの日は必ず行く。俺が手土産を持って行くと喜ぶ妹の顔が目に浮かぶ、それだけで俺はまだ頑張れる気がするのだ。



「あ、お忙しいところすみません、今日はお見舞いにいっても大丈夫ですかね?」

俺は妹の担当医である神代医師に電話をかける。原因不明の病故に妹は頻繁に検査をされる。だから行っても会えない時があるのだ。

「怜人君か、大丈夫だよ、いつでもおいで」

「了解です、これから向かいます」

俺はそれだけ言うと病院にむけて出発する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

我儘女に転生したよ

B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。 性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。 夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。 でも、息子は超可愛いです。 魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...