美し過ぎる第三王子は鬼畜で悪魔。

五玖凛

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第一章-幼き頃の回廊

花売りの少女

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 まだ少し肌寒い早春の朝。いつもより質素の服装を纏い服装の上からポンチョ的なものを着て顔をかくしてリュクセンは出かけていた。


幼い頃初めて来た城下町はとても賑わっていた。あちらこちらに店が並び品物が売られ、客を呼び込む威勢のいい声が響く。

(城下町は久々だな)

昔王宮図書室の裏によく木の下で読書していたら。木の陰にもなっているその場所には、使われていない水路を見つけた。その場所は手入れもおされず、大人なら腰を屈めば、子供ならだったままでも通れる高さと広さだった。

 入り口に鉄格子がはめられて入るが緩んだネジをクルクルと回せば最も簡単に鉄格子は外れ、リュクセンの身体なら余裕で通れた。
枯れて何十年も経ったのか、水路は湿気もなく、匂いも気にならない。

そしてその先に辿り着いたのは王城の城下町。

最初は自分の居場所が無い王宮から逃げたい気持でよくこっそり城下町へ出歩いた。

それから街の人々から伝えられる国の現状や民の苦しみを知り、強国で豊かに見えたこの国が徐々に傾いているのをそこで初めて気付くと、王家と貴族の嫌悪感が芽生拭きれなくたった。

4年前王宮を火の海に化したあの錬金術師達による反乱後皇帝陛下は原因不明の病に罹り、以来国の政はほぼ皇帝陛下の王弟ロンドルフ公爵が牛耳っている。その次に王太子殿下だが王太子殿下は叔父であるロンドルフ公爵の言いなりと噂が経っている。

 前々から密かにロンドルフ公爵一派は反王権派閥やロンドルフの反対派閥の有力貴族はほぼ一掃され。4年という短期間いなくならずともその勢力は格段に落ち対抗できなくなり、気がついたらロンドルフ公爵王権派閥が政を掌握していたのだ。

 貴族達が私腹を肥やす為国を専横し税が上げられる。税が払えない衣食住に困った国民は路頭に迷う。生活が苦しくなった者が犯罪に手を染め、治安が悪化する。それを取り締まる為、また税が上がる。国の負の連鎖が国を蝕んでいる事は明ら

それから僕は城下町へ国で起こった事や噂を時間があるたび聞きに出向くようになった



でも今回はようやく護衛役として4ヶ月のルルもついている,彼は王族が平民と仲良く混ざっているのが不思議らしい


「殿下...どうして...そんなに馴染んでいるので...すか?」


僕は人垣を通り抜き誰もいない暗い小さな路地裏にルルを引き込んで少しムッとして小声で彼に言う

「”殿下“ではなく“リュセ“と呼んでくれと,さっき伝えただろうが」


「ごめんなさい殿.......リュ..リュセ....様」

「様はいらない。」

「.............リュセ」


決まりの悪い顔でようやく自分の名を口にしたルルを見て満足そうにリュクセンは笑う


「うむ、よろしい。今から君は僕の遠縁の親戚の子で幼馴染の“ルー”だ、そして僕が“リュセ”。分かったな」

「分かり...ました。殿下....」


言った側からルルは元の呼び方に戻っていた


「......君、僕をおちょくるのも大概にしないとそろそろキレるよ? ふふッそれにどこの幼馴染が敬語で喋り合う?普通にはなせ」

営業スマイル全開でリュセの背後からドス黒いオーラが漏れでたのを見たルルは震えながら勢い良く何度も頭を強く縦に振って「分かっりましッ...分かった!リュ..リュセ!」と言いながらリュクセンから距離をとった。


そんなやり取りをしていたらすぐ側で何やら騒がしい音が路地まで伝わって来る


「おいまたか?」
「あぁどうやら警邏局の連中がまたいちゃもんつけてるらしい」

すぐ側で八百屋のをしている主人が、道行く人に尋ねた。


「どうやら今警邏局と商工会が揉めているらしいから。あの子かわいそうに.....病に伏せた母親の代わりに店を続けてるんだって?」

「奴らか弱い女の子をいい事によってたかって.........」


最後まで聞かずリュクセンは小走りに騒ぎの中心を目指す。

人集りを潜り抜け、苦労しつつも人混みからでて目を開くと春花の香りと共に無数の花弁が宙に舞い、そして地面には無惨に広がり踏み潰された花々達。


「お願い!!もうやめてください!!」


少女の悲鳴じみた悲しい声が市場に響く

12歳前後であろう彼女は、幼いとはいえ可愛らしく魅力的な女の子だった。働き者だろう肌は少し日焼けで赤く火照って、長い栗色の髪は三つ編みにし横に流している、小さな手には働いている証に無数の小さな傷跡がある。

そんな彼女は今、三人の警邏局の役人に囲まれ苦々しい表情で顔を歪めていた。


「だからお嬢ちゃん。決められた敷地から超えて商品を置かない,そういう決まりなんだよ。」

「私は置いていません!」

「でも俺たちが見たんだよ」

「あなた達が勝手に言ってるだけでしょう!置いてあった証拠も無しに決めつけないで!」


少女の声に、三人の男達はにやにやと笑い始めた。


「じゃあ聞くが、逆に置いてないって証拠はありますかな?
こういう場合は第三者の意見を聞いたほうがいいだろう。この中の敷地から超えてないって証言してくれる人はいるかねぇ?」


警邏局の人があたりを見回したが、集まっていたやじ馬達が視線を合わせないよう逸らしたら。名乗り出る者はいない。皆巻き込まれたくないのだ。


(この下郎どもが.......)

リュクセンは小さく舌打ちをする。こんな分かりやすいかつ気分の悪い三文芝居を見ると思わなかった。

警邏局とは国内の治安を維持する部署。
本来、市民を守る為の役人がこんな三下な悪事をする事に、リュクセンはふつふつと怒りに近いイライラが沸き起こってしまう。

周りの人間は巻き込まれたくないのか、ただ見ているだけで誰も助けようとしない。幼い女の子に同情しても危険に近付きたくないのが本音だろう。


「今回は見逃してやってもいいが、まぁ誠意を見せてくれるなら...........なぁ?」


役人の腐敗を目のあたりにして、リュクセンは確信した。一番国民に関わる役人がこんな反感を抱く事をしていると、王族や貴族などはなんて思われるのか。考えるまでもない。

末端ではあるが国の役人。こんな役人が蔓延はびこるる中でいたら国民の信用は得られまい。


リュクセンは理屈などどうでも良く。

こういう力が有れば何しても構わない下郎どもが死ぬほど嫌いだ。



「花を、売ってくれませんか?」


リュクセンはフードを外し穏やかで人懐っこい笑顔を浮かべながら人垣からゆっくり前へ一歩出た。










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