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駆け出してく
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またしても二日酔いになってしまった。
望美は重い頭を持ち上げながら家を出る。
今日もお休みしてしまってはさすがに『占いの館』に迷惑をかけてしまう。
いつも望美が乗る時間帯には地下鉄は空いている。
地下鉄の座席に腰をかけて今日の事を少しだけ心配する。
いつも通りカトリーヌ先生と話せるかな。
ぎこちない感じで話してもカトリーヌ先生なら受け止めてくれるだろう。
そんな優しいところも好きだ。
望美はそんな事を思いながらニヤニヤしてしまった。
しかし現実を思い出した。
上司なのに『王子』の存在が疎ましく思ってしまうのは嫉妬だろうか。
そんな自分が子供っぽく感じて嫌になってしまう。
『占いの館』に着いたら望美の鑑定室はいつも通りの静かさだった。
エミリー先生とカトリーヌ先生はまだ来てないか、自分の鑑定室の準備をしているのだろう。
2人がやって来るまで静かな空間なのだ。
望美は鑑定室の机の上と置き物たちの乾拭きから始めた。
掃除をすると気持ちがスッキリするから好きだ。
先ほどまで悩んでいたことがあまり気にならなくなった。
拭き掃除が終えたら床を箒で掃いた。
1日経っただけで埃は割と出てくるものだ。
そうこうしていると、いつも通りカトリーヌ先生がやってきた。
「のん先生、おはよう。」
カトリーヌ先生が優しく微笑んで言った。
「カトリーヌ先生、おはようございます。」
望美もカトリーヌ先生の笑顔を見て思わず微笑んだ。
いつも通り挨拶ができたので安心した。
「昨日はいなかったから寂しかったわ。」
カトリーヌ先生が心配そうに言った。
何も聞かれてないけど心配してくれているカトリーヌ先生に何も言わないのが気が引けた。
「昨日は気分が優れなくて、エミリー先生に相談に乗ってもらってたの。」
どう言ったら正解だったのか分からなかったが、できる限り正確に伝えようと思った。
「相談事ねえ。もしかして好きな人でもできた?」
サクッと核心を突かれたので望美は焦ってしまった。
「っ違うわよ・・・!」
望美は嘘を付くのに慣れてない。
「えー何その反応!かーわーいーいー!」
カトリーヌ先生は顔が赤くなっている望美を見て嬉しそうだ。
「あ、でももし王子のこと好きになっちゃたら三角関係になるわね。」
カトリーヌ先生がイタズラっぽく笑った。
「王子じゃないわよ。」
望美が反射的に否定した。
カトリーヌ先生はそれを聞いてキョトンとした。
「そしたら誰なの?私の知っている人?」
望美はカトリーヌ先生の質問責めにドキドキが止まらなかった。
カトリーヌ先生に本当の事を言ってしまうと『告白』する事と同じ事ではないか。
『告白』だなんて人生で1度しかしたことがない。
それは高校生の時だったから、大人になった今とは状況が違う。
同僚に告白するなんて前の職場でのトラウマを再現することと同様の事ではないか。
望美がそんな考えを思い巡らせてるとカトリーヌ先生が顔を近づけて聞いた。
「誰の事を考えているの?」
カトリーヌ先生のまっすぐな瞳が望美を見つめている。
そんな瞳に望美は文字通り吸い込まれそうになっている。
望美は重い頭を持ち上げながら家を出る。
今日もお休みしてしまってはさすがに『占いの館』に迷惑をかけてしまう。
いつも望美が乗る時間帯には地下鉄は空いている。
地下鉄の座席に腰をかけて今日の事を少しだけ心配する。
いつも通りカトリーヌ先生と話せるかな。
ぎこちない感じで話してもカトリーヌ先生なら受け止めてくれるだろう。
そんな優しいところも好きだ。
望美はそんな事を思いながらニヤニヤしてしまった。
しかし現実を思い出した。
上司なのに『王子』の存在が疎ましく思ってしまうのは嫉妬だろうか。
そんな自分が子供っぽく感じて嫌になってしまう。
『占いの館』に着いたら望美の鑑定室はいつも通りの静かさだった。
エミリー先生とカトリーヌ先生はまだ来てないか、自分の鑑定室の準備をしているのだろう。
2人がやって来るまで静かな空間なのだ。
望美は鑑定室の机の上と置き物たちの乾拭きから始めた。
掃除をすると気持ちがスッキリするから好きだ。
先ほどまで悩んでいたことがあまり気にならなくなった。
拭き掃除が終えたら床を箒で掃いた。
1日経っただけで埃は割と出てくるものだ。
そうこうしていると、いつも通りカトリーヌ先生がやってきた。
「のん先生、おはよう。」
カトリーヌ先生が優しく微笑んで言った。
「カトリーヌ先生、おはようございます。」
望美もカトリーヌ先生の笑顔を見て思わず微笑んだ。
いつも通り挨拶ができたので安心した。
「昨日はいなかったから寂しかったわ。」
カトリーヌ先生が心配そうに言った。
何も聞かれてないけど心配してくれているカトリーヌ先生に何も言わないのが気が引けた。
「昨日は気分が優れなくて、エミリー先生に相談に乗ってもらってたの。」
どう言ったら正解だったのか分からなかったが、できる限り正確に伝えようと思った。
「相談事ねえ。もしかして好きな人でもできた?」
サクッと核心を突かれたので望美は焦ってしまった。
「っ違うわよ・・・!」
望美は嘘を付くのに慣れてない。
「えー何その反応!かーわーいーいー!」
カトリーヌ先生は顔が赤くなっている望美を見て嬉しそうだ。
「あ、でももし王子のこと好きになっちゃたら三角関係になるわね。」
カトリーヌ先生がイタズラっぽく笑った。
「王子じゃないわよ。」
望美が反射的に否定した。
カトリーヌ先生はそれを聞いてキョトンとした。
「そしたら誰なの?私の知っている人?」
望美はカトリーヌ先生の質問責めにドキドキが止まらなかった。
カトリーヌ先生に本当の事を言ってしまうと『告白』する事と同じ事ではないか。
『告白』だなんて人生で1度しかしたことがない。
それは高校生の時だったから、大人になった今とは状況が違う。
同僚に告白するなんて前の職場でのトラウマを再現することと同様の事ではないか。
望美がそんな考えを思い巡らせてるとカトリーヌ先生が顔を近づけて聞いた。
「誰の事を考えているの?」
カトリーヌ先生のまっすぐな瞳が望美を見つめている。
そんな瞳に望美は文字通り吸い込まれそうになっている。
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