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占いの館の王子
しおりを挟むその男を見た瞬間に水晶の映像で見た男性だとすぐに分かった。
「・・・あ、あなたは水晶の!!・・・でも、どちら様ですか?」
グキ!
「あ~!!首いったぁーい!!」
望美は水晶をキャッチした体制のままで狭いお部屋の突然の来客を見たので、首を捻ってしまった。
首を捻っても水晶は守らないといけないので、スライディングをキメたときに痛めた膝をさすることもせず
フラフラにならないように気をつけながら、机の上に水晶を戻した。
「おはよう、のん先生。大丈夫?隣から大きな声が聞こえたから心配で見にきたら、王子が来ているから驚いちゃったわよ~!」
先ほどまでは、例の男しかいなかったのだが、いつの間にやら隣のお部屋の滝沢・カトリーヌ・明美先生も一緒だった。
「王子ったらここに来るの、もの凄く久々じゃない?相変わらず、イケメンね。目の保養になるわぁ~」
望美はタイツについた埃を手で払いながら、カトリーヌ先生の褒め言葉でも、決して謙遜しない彼の態度を見逃さなかったし、
カトリーヌ先生が王子と呼んでいる男の厚い胸をしっとりと触れていることも見逃していなかった。
「カトリーヌ先生、おはようございます。朝から騒がしくしちゃって、ごめんなさい。」
2人を見ていると楽しそうで、その中に入っちゃいけないような気がして望美は少し冷たい言い方になってしまった。
「そんなことは気にしないで!イケメンさん拝めることが出来ちゃったし。それにしてもお膝大丈夫?」
カトリーヌ先生は心配そうに望美の膝もしっとりと撫で始めた。
カトリーヌ先生は、足の先から爪の先まで全身ピンクと金髪でキメている霊感占いを得意とする占い師である。
年齢は望美より2歳年上でエミリー先生と同じテノールボイスを持っている身長180センチを超えている大柄の人物である。
しかし、エミリー先生と違うところは、男性のみならず、博愛主義が強すぎて女性も、そして人間や動物以外にも大きな愛を捧げる節がある。
「カトリーヌ先生ありがとう、もう大丈夫。」
望美はピンクのネイルをしたカトリーヌ先生の手を優しく離した。
「のん先生たら、相変わらず愛の受け取り下手なんだから。」
ふっと微笑みながら、カトリーヌ先生は自分の手をそっと引っ込めた。
「王子みたいな超イケメンが来ても、厳しい眼差しをして喜ばないのは過去に恋愛でイタイ経験があったからなのっっんーっ!!・・・んーっ!んーっ!!!!」
「カトリーヌ先生っっ!!私の過去なんて見ても占い師のムダ遣いだっていつも言ってるじゃないですかー!!」
望美は思わず急いでカトリーヌ先生の口元に手をやったが、それはもう遅かった。全部言われてしまった。
しかし、これもカトリーヌ先生の気遣いなんだと望美は分かっている。
望美が初対面の男性、ましてやイケメンすぎる男性と上手く話すことが出来ないことを知っていて
あえて、王子に教えたのだ。2人が話しやすくなるように。
「もうっ!のん先生ったら!あたしのことはお邪魔みたいだから、この辺で失礼するわ~」
カトリーヌ先生はいたずらに笑いながら、自分の指にキスして、その指を望美の頬にやった。
「愛を受け取れる魔法よ~」
そう言うとスカートのレースと掌をヒラヒラとさせながら、カトリーヌ先生はお部屋を後にした。
こんな毎日がここに来てから、ずっと繰り返されている。
「のん先生、笑ってる?」
王子と呼ばれる男が望美の顔を覗いた。
「わらってなんかないっですよ!!鑑定ですか?待たせちゃってごめんなさい、今から準備しますね」
望美はその男の顔を近くで見るハメになって思わず声が上ずってしまった。
近くで見れば見るほど、男の整った顔がよく映えたし、水晶で見た映像通りに男は年齢不詳に見えたし、綺麗な目をしているから妙なオーラも感じる。
「鑑定といえば鑑定だが、父からのん先生を現地に連れて行けと言われましてね」
「お父様?」
はて、この実際には見たことのない男性のお父さんはどうして望美のことを知っているのか謎である。
「うちの父も普段はここに来ないからな。うちの父がここを経営しているんだ。」
望美は目玉が飛び出るギャグ漫画のように目を大きくした。
「あの社長の息子さんー!?」
望美は5年前の冬、仕事の成績に追われ、当時付き合っていた彼氏から『仕事と俺どっちが大切なの?』と言われ振られてしまったことを思い出した。
結局、元彼は別れてすぐに社内の望美の後輩と付き合い結婚し、望美は会社に居づらくなって辞めることを決意したのだった。
寒空の中、これからどうしたらいいのかと不安に押しつぶされまいと、ゆっくりと一歩一歩足を動かし
自分の決断は間違ってなかったと言い聞かせ歩いた家路までの道のり。
そこに望美と同じく寒そうにしている、「占い」と書かれた机に座った、どう見てもパッとしないおじいさんが目に入ったのだった。
周りにはお客さんも居ないし、人通りも少ない時間帯にただ真っ直ぐと蝋燭の火を見つめるおじいさんを助けたいような
藁にもすがる思いでこの気持ちを助けて欲しいような複雑な気持ちになり、おじいさんに占いをお願いしたのだ。
おじいさんは易占いで使う竹を手に取り、望美にこう言ったのだった。『You・・・君、うちの占いの館で働かない?』
それがここで働くきっかけとなった。
その日以来、社長に会うことはなかったが感謝の気持ちを忘れたことはなかった。
しかし感謝の気持ちとは裏腹に、社長の顔はなんともパッとしないというか、上手くオーラを消しているので思い出すことは簡単ではなかった。
そしてパッとしないあのおじいさんから、オーラ丸出しのこの王子が生まれることに、ただ驚きを隠すことができなかった。
「そろそろいいですか、お姉さん・・・」
王子は少し不思議そうに望美を見ながら顎をかいている。
「は、はい!王子!」
思わずその男を王子と呼んでしまった。
「王子ではない、雄司だ、ゆ・う・じ!みんな冗談か本気か分からないが雄司と王子を掛けて、王子と呼んでいる。」
望美は笑いを堪えるのに必死になった。なんだか面白くて仕方がないのだ。
「笑いたければ笑ってもいいぞ。ほっぺにピンクの口紅が付いているけどな。」
望美はカトリーヌ先生の魔法を消してもいいのか迷いながら、雄司の車に乗り込んだ。
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